プロモーション施策の1つとして注目されることが多いインフルエンサーマーケティング。しかし、消費者のネットリテラシーが年々高まっていることもあり、「狙った効果が出ない」と悩む企業も少なくない。インフルエンサーマーケティングの支援事業を展開するA(エース)の出嶋翔氏(最高執行責任者/Chief Operating Officer)、白潟愛氏(SNS Marketing Division Manager)に、インフルエンサーマーケティングを成功に導くポイント、国内EC事業の成功事例を聞いた。
「人気がありそうな人を起用すればいい」時代は終わった ――近年の国内インフルエンサーマーケティングの概況を教えてください。
出嶋翔氏(以下、出嶋氏) :国内でインフルエンサーマーケティングが台頭した2017年頃は、「インフルエンサーが投稿すれば売れる」という時代でした。
しかし、消費者のネットリテラシーが高まってきた 結果、「インフルエンサーは、紹介している商品が本当に好きなわけではなく、PR案件として投稿している。それならインフルエンサーが商品を紹介しているだけだから購入しなくてもいい かな」という空気感が漂ってきています。
そうした空気感の影響か、PR案件でインフルエンサーを起用する事業者側の意識も変わりつつあります。従前は「とにかくフォロワー数が多い人を起用したい」といったフォロワー数絶対主義の価値観でしたが、それが薄れつつある のです。
A(エース) 最高執行責任者/Chief Operating Officer 出嶋 翔 氏 出嶋氏 : 理由は、インフルエンサーの定義や質が曖昧になっている から。フォロワーや「いいね」を買う人も多くいますし、実際の著名度やフォロワー数とは関係なく自身で「インフルエンサー」と名乗る人も現れています。これに加えて、コロナ禍の経済悪化や広告単価の上昇といった外的要因によって、広告予算を削らざるを得ない 状況も生まれています。
「インフルエンサーマーケティング」の価値が実際よりも低く見られている風潮もあります。実際には、ほかの施策よりも劣るわけではありません。自社ブランドに合う効果的なインフルエンサーマーケティングを展開した結果、売上アップ、認知拡大といった成果を十分にあげている事例も多くあります 。
――インフルエンサーマーケティングならではの特長はどのように考えていますか。
白潟愛氏(以下、白潟氏) :インフルエンサーを通して情報を伝えることによって、「信頼度が高い情報」「好感度が高い情報」として消費者に受け取ってもらえる こと。ブランドの公式サイトなど、ほかのチャネルよりも見込み顧客の興味関心を高めたり、売り上げにつなげやすい という特長があります。
ECサイトを運営する企業の多くが達成したいと考えることは「EC・店舗ともに売り上げを伸ばしたい」「ブランドの認知を拡大したい」「公式SNSのフォロワー数を増やしたい」。インフルエンサーマーケティングは「事業者が抱くどのような課題も解決できる万能薬」ではありませんが、ターゲットとする顧客のペルソナを明確に定め、そのターゲットにリーチできるインフルエンサーを起用して最適なプロモーションを展開することは、顧客獲得に大きく寄与 することがあります。
A(エース) SNS Marketing Division Manager 白潟愛氏 国内EC事業者のインフルエンサーマーケティング成功事例 ――国内EC事業者の成功事例を教えてください。具体的にどのような施策を展開したところ、どのような成果につながったのですか。
白潟氏 :エースが支援した国内アパレルECのインフルエンサーマーケティングの成功事例を3つピックアップしてお話します。
1つ目はベルーナさん。ファッションブランドの1つ「GeeRA(ジーラ)」 はECモールに出店しており、各商品ページへの訪問者数をKPIの1つに設定しています。インフルエンサーマーケティングを始めたある年の夏シーズンは、注力したアイテムが、狙い通りにECモールのカテゴリーランキングで1位を獲得。さらに総合ランキングでも1位 になりました。
その影響で、前年比で上位商品の売り上げは倍増。ECモールに出店していた「ジーラ」ショップ全体の売り上げは前年比20%増 になりました。さらに、その年の秋冬シーズンでも複数のカテゴリーで狙っていたアイテムをランクインさせることができ、夏シーズンよりもさらに高い成長率を記録したのです。
ベルーナが展開する20~30代女性向けのアパレルブランド「ジーラ」の公式ECサイトトップページ 白潟氏 :「ジ―ラ」は20~30代女性向けのブランド。カタログ通販からECに販売チャネルをシフトし、公式アカウントの運用、インフルエンサーマーケティングに注力しています。
インフルエンサーの起用には、ただ「フォロワー数が多い」といった数字だけではなく、「『ジ―ラ』の服を着てフォロワーにどのような好影響を与えるか」「投稿を見た人が真似したいと思えるか」を総合的に判断 。さらに、「ジ―ラ」スタッフのアカウントも創設し、ブランドではなく「人」のファンになってもらう施策も展開 しました。
公式アカウントでは、最初は広告を使わず、今いるフォロワーに有益な情報を伝え、エンゲージメントを高めることに力を入れました。毎月1000人のペースでフォロワー数が増えるようになり、アカウントが育ってきたところで広告運用を開始 。このタイミングでインフルエンサーマーケティングを始めました。こうした取り組みが実を結び、フォロワー数拡大につながりました。
「ジ―ラ」スタッフのアカウントの一例 出嶋氏 :2つ目、3つ目の事例は、事業者名は匿名で「a社」「b社」とします。a社は、プロモーションを強化する商品の売上アップを目標に、複数のインフルエンサーと組んでマーケティングを行いました。
a社が意識したのは、各インフルエンサーが得意とする「文脈」。つまり、PRしやすい商品、言葉選びなどに合わせて短尺動画や静止画などを用いつつ、インフルエンサー1人ひとりの個性を生かした訴求 をすること。この施策が成功し、広告の費用対効果を示すROASは300%を超えました 。ROASの基準値は100%で、数値が高いほど広告の費用対効果が高いことを意味します。
b社はインフルエンサーの選定に特にこだわりました。b社が展開するブランドでは子ども向けのアイテムも扱っていることから、インフルエンサーを選ぶ際、フォロワーの興味関心軸の上位に「子ども服」や、自社ブランドに類似した属性のブランドが入っているか――といった視点で、フォロワーの属性を細かくチェック しました。
その上でa社と同様、個々のインフルエンサーにとってPRが得意なアイテムを選んでコーディネートを組んでもらうといった工夫を織り交ぜたところ、インフルエンサーの施策前と比較して2週間で売り上げが3倍にアップ した商品がありました。
売れていない商品をプロモーション商材に選ぶのはNG。インフルエンサーの強みは既存の人気商品にブーストをかけること ――成功事例を踏まえて、インフルエンサーマーケティングをこれから展開しようとするEC事業者に喚起したいことは。
出嶋氏 :インフルエンサーマーケティングを展開する際、最も重要なのはインフルエンサーの選定 だと考えています。しかし、それ以前の段階で事業者側がまず意識するべきことは、売れていない商品をプロモーション商材に選ばない ことです。
インフルエンサーが得意なのは、扱う商品のうち一定数売れている商品の人気にブーストをかけること 。現時点であまり人気がない商品を売ろうとしても効果につながりにくいという傾向があります。
「ほかの商品よりも初動の売り上げが良い」「お気に入りに保存している人が多い」など、一定の人気がある商品を選ぶのがおすすめ です。そのうえで、このあと紹介する「インフルエンサーマーケティングの勝ちパターン」を意識していくと、成功率が上がると考えます。
インフルエンサーマーケティングの勝ちパターン 自社に最適なインフルエンサーを選ぶための3つのポイント ――売上アップ、認知拡大など、自社の目標達成のために最適なインフルエンサーを見つけるポイントは。
白潟氏 :一言で言うと、「フォロワー数よりもフォロワーの質を見る 」ことです。エースでは、提供するインフルエンサー分析ツール「Astream」を活用して、クライアントとなるEC事業者が起用する候補となるインフルエンサーを抽出し、それぞれのインフルエンサーのフォロワーの特性を徹底的にチェック します。
出嶋氏 :具体的には、次の3点がポイントです。1つ目は、EC事業者がプロモーションを強化したいブランドや商品のターゲットに刺さりやすいインフルエンサーであるかどうか 。
これを評価するには、そのインフルエンサーのフォロワーについて、次の項目をチェックする必要があります。
居住エリア 年齢層 SNSをアクティブに利用しているかどうか 興味関心の軸がブランドや商材とマッチしているかどうか これらがEC事業者のターゲット像に一致していると、インフルエンサーマーケティングを実施する際、見込み顧客に情報が届きやすくなります。
2つ目は、影響力を持つインフルエンサーかどうか 。そのインフルエンサーの投稿に「いいね」やコメントがどのくらいあるか、ポジティブな反応が多く返ってきているか ――といったエンゲージメント率を見ることで判断できます。エンゲージメント率が高いほど、熱量の高いファンがついていると言えます。
3つ目は、インフルエンサーが自身のフォロワー数を維持できているかどうか 。直近6か月を目安に、インフルエンサーのフォロワー数の推移をチェックし、フォロワー数が減っていないか、新たに獲得したフォロワーからフォローを解除されず、キープできているかを確認しましょう。
インフルエンサーの得意な表現を生かし、消費者に“PR投稿の嫌悪感”を感じさせない ――選定したインフルエンサーにはどのような投稿をしてもらうと効果的か。
白潟氏 :インフルエンサーからのPR投稿に対して、投稿を見た人に「PR投稿への嫌悪感」をなるべく抱かせないこと が重要だと考えています。「どうせPR案件」と思われないように、個々のインフルエンサーの個性に合わせて、フォロワーの特性に寄り添った投稿をするほうが、結果的にフォロワーに刺さりやすい のです。エースでも、この視点を持つEC事業者のほうが、成果につながりやすい傾向が見られています。
たとえば、インフルエンサー「あかちゃす」さんは、共感しやすいテーマにHowTo要素を加えたストーリーに仕立てた投稿が特長です。たとえば「本命チョコの渡し方」とうたった恋愛系の動画投稿など。動画のなかで、家庭や学校での会話シーンを交えながら、自然に商品やテクニックを紹介 しています。その結果、広告であるとわかっていても視聴者は夢中になってしまう のです。
弊社が某シャンプーブランドのPR投稿として依頼した際、「好きな人との勉強会」をテーマにした動画は154万回再生を記録 しました。フォロワーに対するリーチ率が平均20~30%とされるなか、驚異的な1200%のリーチ率 を達成しています。
インフルエンサー「あかちゃす」さんの投稿の一例。「好きな人との勉強会」をテーマに、ストーリー仕立てで某シャンプーブランドのPR投稿を行った
白潟氏 :エースでは、訴求ポイントを絞り、個々のインフルエンサーが得意とする表現に沿った訴求を意識することをおすすめ しています。インフルエンサーにPRを依頼する事業者からすると「あれも、これも全部伝えたい」となるのですが、そうすると「単なるCM」になってしまう。
インフルエンサーマーケティングの市場規模は、毎年約20%増で拡大していますが、一方でインフルエンサーの数はあまり変わっていません。つまり、1人のインフルエンサーが請け負うPR案件量が増えています。消費者はPR投稿を目にする機会が増え、その結果、PR投稿そのものへの嫌悪感につながってしまいやすい状況 です。これは業界全体の課題ですし、事業者は嫌悪感を抱かせないマーケティングを意識することが必要 です。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」 で公開されている記事のフィードに含まれているものです。 オリジナル記事:「フォロワー数が多い人を起用すれば良い」時代は終わり。EC事業者がインフルエンサーマーケティングで成功するための鉄則とは? Copyright (C) IMPRESS CORPORATION, an Impress Group company. All rights reserved.
越境ECに対して、私自身もずっと疑問に思っていたことをキレイコムの上田氏がはっきりと発言してくれました。
ECビジネスが成功するか否かは、運営・運用です。これは国内ECも越境ECもまったく同じ。ECサイトを作ったから売れるわけでも、システムを導入したから売れるわけでもありません。
いかにお客さまに認知してもらい、興味を持ってもらうか。国内とは文化や商習慣が異なるわけですから、自社自ら入りこんで「ツボ」を探さなければいけないわけです。