2015年2月に40億円の増資を発表したばかりの、印刷通販を手がけるラクスル。テレビCMを展開し、他の施策に相乗効果を与えることで、マーケティング効果を高めているという。今後の展開などを含め、ラクスル・経営管理部 財務・経理グループ マネージャーの西田真之介氏に話を聞いた。
CMで見て「なんとなく知っている」ことが重要
西田真之介氏
――御社のサービスのターゲット層は。
BtoB企業の中でも“スモールB”をメインターゲットとしています。中小企業や、地域でお店を開いている方、たとえば飲食店やマッサージ店を開いている事業者など、ロットは多くないが品質の高い印刷物を注文したいという利用者が大多数です。最近は、大手企業の部門単位で当社をご利用いただくケースも増えてきました。
――BtoBネット通販では、ターゲットにあった訴求を行うことが難しいといわれています。ターゲットに対し、どのようにアプローチしているのでしょうか。
主に3つの方法でアプローチしています。まず、ここ半年で最も力を入れているのはテレビCMです。2つ目は、webマーケティングの中でもSEO対策にここ一年ほど力を入れています。3つ目が、リアルな現場でも「ラクスル」を知ってもらえるように、最近は弁護士や税理士を対象としたセミナーなどに協賛しています。セミナー後半に時間をいただきサービスを紹介したり、クーポンを提供することで、まずは使ってもらうという機会を作っています。
日本はテレビ離れが進んでいると言われることも多いですが、実際にCMを流してみるとかなりの効果を感じています。「ラクスル」のことを知らない状態でwebやセミナーで接点を持った時よりも、ラクスルをCMで見て「なんとなく知っている」という状態の方が反響が大きいため、それぞれの施策への相乗効果も出ている印象があります。
ラクスルが流しているテレビCM
――事業を展開する上で、最も重要視している数値は何ですか。
まずは新規獲得件数です。いくらリピート率などを高めても、限界がありますので、まず新規獲得件数を増やすことを重要視しています。そのためにアプローチの施策を実施しているのです。また、新規獲得件数との掛け合わせにはなりますが、リピーターとして積み上げていく率「リテンション率」も重視しており、使ってもらう回数を増やしていくための取り組みも行っています。
「リテンション率」を高める施策として、最近はメルマガでいくつかのパターンを試しています。現時点で見えてきた傾向としては、利用に応じたクーポンを提供するより、印刷にまつわる便利な情報を発信することが反応がいい。たとえば、この用紙はこうした用途で利用するのがいい、といった情報をお伝えすることの方が結果的に顧客がとどまる率が高くなるという結果が出ています。これがBtoCだったらたぶん異なった結果になると思うのですが、当社の場合はBtoBなので、ちょっとした価格差よりも、購入のしやすさであったり、欲しい情報がしっかりあるサイトのほうが求められる傾向にあるためだと思います。
印刷会社から企業のマーケティング支援会社に
――ほかにもサービスの拡充は進めているのですか。
チラシを印刷してもそれを配らなければ意味はないわけですので、折込チラシやポスティングのサービスを提供しています。また、そもそもどんなデザインのチラシを作ればわからないといった中小企業も多いと聞いています。そのために、チラシのデザインまで含めて注文するサービスや、テンプレートから選べるサービスも充実させています。
最近はテレビCMを始めたこともあり、印刷に慣れていない人も多くサイトを訪れていただけるようになっています。そのため、初心者に対して優しいサービスを拡充しなければならないと考えています。ただ、初心者だけが使いやすいサイトになってしまうと、コアな顧客が離れてしまうことが考えられます。そのあたりの調整は大事だなと感じています。
また、他のBtoB通販企業との連携も最近強化しています。たとえば、2015年1月には歯科医院向け医療器具通販を行っているフィードと連携し、歯科医院のパンフレットや名刺、封筒、診察券などの印刷をフィードのサイト上で申し込むことができるOEMサービスを始めました。他にもBtoB向けECサイトとの連携を進めており、いずれも反応が良いのでさらに強化していきたいと思っています。
3月3日からチラシを制作し、効果検証を行うサービスも開始した
――消費者向けECではスマホ経由の売り上げが大きく伸びてきています。御社ではいかがでしょうか。
印刷の場合、デザイン入稿や紙質など、最初に登録する際にさまざまな項目を入力する必要があるため、パソコンで注文する方が多いのが現状です。ただ、すでに登録しているデザインを再度プリントしたり、簡易印刷においてはスマホ経由が伸びてきています。ユーザビリティを高めたスマホサイトにすれば今よりももっと、スマホだけで完結するユーザーは増えると思うので、スマホの最適化はさらに進めていく予定です。
――現在、決済としてネットプロテクションズが提供する「FREX B2B後払い決済」を利用しています。その理由は。
最大の理由は、請求書をもらいたいという会社さんが多かったことです。請求書の発行やその後の支払い状況を確認したり、支払わない場合の督促はとても大変な作業。そうしたことに労力を割かれるのが問題となっていました。こうした業務をすべて請け負う企業を探していて、「FREX B2B」にたどり着きました。また、最近では小規模の取引先が急激に増え、そうした会社ですべて与信を行おうとすると大変でした。今の成長があるのも「FREX B2B」のおかげだと思っています。
――今後の展開としてどういったことを計画していますか。
会社のイメージとして、ただ単に印刷が安くできる会社から、企業のマーケティング支援を行う企業である、ということを強く打ち出していきたい。まずは、印刷周りから提供していくことになりますが、最終的には「ラクスルに任せればマーケティングについては安心」と思ってもらえるような会社にしていきたいです。ただ、大企業をターゲットにしていくというよりも、今の顧客である、中小企業さんと一緒に成長していきたいと考えています。
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企業を対象に通販を手がける「BtoB通販」を展開し、事業を伸ばしている企業が目立ってきている。ただ、BtoB通販はターゲットが限定されているため、独自のマーケティングが必要といわれる。成長しているBtoB通販企業はどのようなマーケティングを行っているのか。「BtoB通販企業のマーケティング術」という連載で成功事例を取り上げていく。
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オリジナル記事:40億円の増資を実施したラクスルのBtoB通販マーケティングの秘訣は“テレビCM”にあり | BtoB通販企業のマーケティング術 | ネットショップ担当者フォーラム
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