データ活用革命のヒント

「オルタナティブデータ」として注目を集めるデジタルマーケティングデータ:その活用の現状と未来について

デジタルマーケティング業界の外部から注目を集めているオルタナティブデータについて、インティメート・マージャー簗島亮次氏が解説します。

Webサイトの閲覧履歴、SNS投稿内容、位置情報など、デジタルマーケティングで使用されているデータは、その活用範囲を広げつつあります。

多くの企業は、顧客の行動、市場トレンド、競合の動向など、さまざまなデータを分析することで、効果的かつ競争優位性を確保するための戦略を立てています。一方で、顧客が行動を起こす際に収集・参照する情報が多様化してきているため、従来型データの分析だけでは、真に顧客を理解し、市場を予測することが難しくなっています。

そこで近年、注目を集めているのがオルタナティブデータです。オルタナティブデータに属するデータはデジタルマーケティングの業界で使われているデータも多く、今後デジタルマーケティングのデータ活用の領域はさらに広がっていくことが予想されています。今回は、オルタナティブデータ活用の現状と未来について解説します。

オルタナティブデータと伝統的データ

オルタナティブデータの対義語である「伝統的なデータ」とは、公式で体系化されたデータソースを指します。政府機関や企業が定期的に提供する公的データや報告書などがこれに当たります。代表的な伝統的データには、以下のようなものがあります。

  • 人口統計データ:国勢調査データ、人口動態統計
  • 企業の財務データ:企業の決算報告書(PL、BS、CF)、年次レポート
  • 経済統計:GDP、失業率、消費者物価指数(CPI)、貿易統計など、政府や中央銀行が提供するデータ
  • 市場データ:株価、為替、商品価格など、証券取引所や市場が提供するデータ
  • 業界レポート:各業界団体が発表する市場調査や動向レポート

データの作成・提供者が明確であり、データが精査されているため信頼性や標準化度合いが高く、従来の分析手法や意思決定プロセスにおいて、中心的な役割を果たしてきました。

これに対し、オルタナティブデータとは、非伝統的なデータソースから取得されたデータのことです。 Webサイトの閲覧履歴、SNSの投稿内容、Eコマースサイトやレビューサイトの価格動向やレビュー内容、生活者の位置情報データ、衛星画像データなど、多様なデータソースが含まれます。

これらオルタナティブデータの活用により、伝統的データの分析では捉えきれなかった生活者行動や市場トレンドを、より深くリアルタイムに理解することが可能になります。 そうした背景からオルタナティブデータの利用は拡大しており、2034年には市場規模が6,353億米ドルに達すると予測されています(出典:Precedence Research, "Alternative Data Market Size, Share, and Trends 2024 to 2034")。

オルタナティブデータの主な活用方法

オルタナティブデータは、現在すでにさまざまな分野で活用され、ビジネスに革新をもたらしています。

  • 金融業界:従来の信用リスク評価は、信用情報機関のデータに依存しており、情報が少ない若年層や新規顧客への対応が課題でした。オルタナティブデータは、Web閲覧履歴や消費行動など、多角的な視点から顧客を理解することで、より精度の高いリスク評価を可能にし、新たな顧客層へのサービス提供を促進しています。
  • リテール業界:日常生活における生活者の購買行動は、オンラインとオフラインを横断する複雑なものになっています。オルタナティブデータは、これらの行動を包括的に捉えることで、より精度の高い需要予測や、顧客一人ひとりに最適化されたマーケティング施策の実施を可能にしています。
  • 投資業界:ヘッジファンドなどの投資家は、オルタナティブデータを用いることで、企業業績や市場トレンドに関するより深い洞察を得て、投資判断の精度向上に役立てています。
  • 営業活動の効率化:従来のマクロ経済指標に加え、オルタナティブデータを用いることで、より精度の高い経済予測が可能になりつつあります。たとえば、衛星画像データから工場の稼働状況を把握したり、農業収穫量を推定したり、SNSの投稿内容から生活者の感情や動向を分析したりすることで、経済の動向をリアルタイムに把握することができるようになっています。

オルタナティブデータ活用の課題と解決策

オルタナティブデータの活用には、いくつかの課題も存在します。まずは、データの品質です。オルタナティブデータは特定の目的に沿って収集されたデータではないため、ノイズや偏りが含まれています。

データの精度を確保するためには、適切なクレンジングや検証が必要となります。また、分析には高度な専門知識やデータ分析技術が必要です。適切な分析手法やツールを用いなければ、データから真に有益な情報を抽出することはできません。

これらの課題を解決するために、オルタナティブデータの提供に携わっているデジタルマーケティング業界も対応を開始しています。

まずは高精度なデータ収集です。長年のデジタルマーケティングにおける経験やデータ基盤、パートナーシップを通じて、高精度なデータセットを提供し始めています。

次に、各業界に特化したデータセットの提供です。金融、リテール、製造など、各業界のニーズに合わせたデータセットを提供することで、より実用的なビジネスソリューションの実現を支援しています。

私たちインティメート・マージャーも2024年12月から、これまで膨大なオルタナティブデータを収集・分析してきた強みを最大限に活かし、各業界のニーズに応じた高精度な分析と、実用的なビジネスソリューションである「オルタナティブデータセット」の提供を開始しました。

オルタナティブデータがもたらす未来

オルタナティブデータは、企業が競争優位性を築くための重要な要素となりつつあります。生成AIや機械学習技術の進化によりオルタナティブデータの分析は高度化し、より精度の高い予測や意思決定が可能になります。

また、IoTの普及により、オルタナティブデータの取得範囲や種類、取得量は飛躍的に増加し、さらに多様なデータセットが利用可能になると予想されており、今後もますます重要な役割を果たしていくと考えられます。

デジタルマーケティングに関わるデータは、デジタルマーケティングの世界を超えて活用されるようになります。企業はオルタナティブデータを活用することで、これまで見えなかった顧客の真のニーズ、インサイトを理解し、新たなビジネスチャンスを発見し、より迅速かつ的確な意思決定を行うことができるようになると思います。

私たちインティメート・マージャーも、各業界のニーズを捉えたオルタナティブデータセットを拡充し、企業のデータドリブンな意思決定とビジネス変革を支援したいと考えていますので、データの取得と分析、活用に関してお困りの際は、ぜひご相談ください。

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