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データは分析しただけでは終わらない、仮説を結び付けてアクションに落とし込め:マーケターの本棚

スマートニュースでデータアナリストを務める有野寛一さんに、マーケティングやデータ分析を行なう上で感銘を受けた2冊を紹介してもらいました。

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世界中に数多あるマーケティング関連本。どれを読めばマーケティングが分かるようになるのか。何から読めばマーケティングを理解しやすいのかを見極めるのは大変困難です。

「いっそ、あのマーケターの本棚をのぞき見できたら良いのに……」

そんな願いを実現したのが、連載「マーケターの本棚」です。今回はさまざまな企業でマーケティングや広報を担当、現在はスマートニュースでデータアナリストを務める有野寛一(ありの・ひろかず)さんに、マーケティングやデータ分析を行なう上で感銘を受けた2冊を紹介してもらいました。

<プロフィール>
有野 寛一:1995年よりweb制作に従事、多数のwebサイト制作に携わる。後にヤフー、ミクシィにてサービス開発からマーケティング・広報を担当。その後、KADOKAWAにて出版社のデジタル戦略に携わる。現在は、スマートニュース株式会社ではデータアナリストとしてパートナーに役立つデータ分析を行い、情報発信している。著書(監修)に『会社のWebサイトはこう作る―企画・発注から運営・管理まで』がある。

ユーザー獲得に苦労していたマーケター時代に感銘を受けた本

『次世代コミュニケーションプランニング』
著者:高広 伯彦

私はwebディレクターからキャリアをスタートし、株式会社ミクシィ(現在の株式会社MIXI)のサービス企画に入り、初めてマーケティング職に就きました。

SNS「mixi」をより良くし、多くのユーザーに使ってもらう仕事を4、5年やっていたのですが、ある程度の規模になってからはなかなかユーザーが増えなくて。そのとき、サービスを使ってもらうためにマーケティングをしているつもりでしたが、実は全然できていなかったんです。

というのも、私はmixiのサービス内で施策を展開していたので、ユーザーに対して「使ってよ」と言っていることになっていたんですね。つまり、やっていたのはインナーマーケティング。当然、その人たちはすでに使ってくれているので、新しいユーザーは増えません。

そこに気づいて、じゃあどうすれば良いのだろうと答えを求めて本を漁ったときに出会ったのがこの本でした。

ターゲットがどう思うのか「コンテクスト」を意識したコミュニケーション

本書は「メディアとは何か」「広告とは何か」を、すごくわかりやすく紹介しています。もちろんそれもすごくためになるのですが、一番感銘を受けたのは、最後に書かれていた「コンテクスト」という言葉を元にした「コミュニケーションプランニング」についての章でした。

当時、多くの人に使ってもらうため商業施設にテントを張って「登録してください」みたいなこともやりました。でも、mixiは友だちと使うものなので、そこで登録して瞬間的にユーザーは増えるものの、その人たちは使い続けませんよね。

そのことに悩んでいたとき、この本の「コンテクスト」という言葉がしっくりきたんです。mixiを使い続けるための「コンテクスト」をきちんと作ってユーザーに提示する必要があったんだなと。それまで一方的に「登録してください」と言っていましたが、コミュニケーションメッセージを変えるなど、できる範囲でコンテクスト作りを実践しました。

結局ミクシィではやりきれなかったのですが、後のキャリアにおいて「コンテクスト」の考え方はすごく役立っています。

その後、転職して出版社のKADOKAWAに入り、週刊アスキーのwebの担当になったのですが、当時の編集部は、週刊アスキーの誌面の記事をそのままwebに転載しているだけ。コンテクストを無視した状態でした。

雑誌の週刊アスキーを毎週読んでいる人には「先週もお伝えした通り」と書いても通じます。けれど、webでその記事にいきなり触れたユーザーは「先週って?」となりますよね。

記事のタイトルも「基本これ知ってるよね」という前提で考えるのか、知らない人も考慮するのか。テキストでコミュニケーションする以上、コンテクストの考え方は絶対に避けて通れません。私は編集部内で、雑誌とweb、それぞれの読者とのコンテクストを考えてタイトルや書き出しを意識するよう訴えました。

デジタル戦略全般にも携わらせてもらい、広告出稿の手法もだいぶ変えました。出版社のマーケティングでは「有名な〇〇さんが新しい本を出しました」と著者の名前で引っ張ると楽なんです。けれど例えば「1人で娘を育て上げた」みたいなテーマの本だったら、著者の名前だけでなく「ひとり親に向けた本」といった内容をプレスリリースのタイトルにきちんと入れるようにすれば届く読者層が広がりますよね。プレスリリースも広告も、コンテクストを踏まえてコミュニケーションをしていくように変えていきました。

分析して終わりではない、仮説の構築・検証の大切さを理解できる1冊

『データ分析力を育てる教室』
著者:松本 健太郎

KADOKAWAにいたとき、データを使って説得することを結構実践していました。webの記事は、タイトルを変えるだけでわかりやすくPVが変わります。そういう数字の変化を編集部に共有していたら、データ分析の需要がどんどん高まっていきました。

私が以前に多少のデータ分析みたいなことをやっていたことから、社内で「有野っていう奴に言えばすごい分析をしてくれるらしい」みたいな噂が広がり、どんどん分析の依頼が来たんです。

しかし、分析依頼の結果を伝えると「もうすでに知ってる」と言われてしまって腑に落ちないことも多くて。それで分析をもっと活かしたいと考え、スマートニュースに転職しました。けれど記事を配信する媒体社さんの分析をしているんですが、ここでも同じで「すでに知ってる」みたいなことを言われるんです。

なぜかというと、期待値が高すぎるんですね。みなさんデータ分析をすると何でも答えが出てくると思っています。でも本当は、仮説の構築、検証をしっかりやらないといけません。そのことを理解させてくれたのがこの本です。

分析結果を言語化してどう伝えるか、必ずしもグラフやレポートだけではありません。もっと手前に課題があったり、思っていたものと異なる課題を解決する必要があったりもします。一連のデータ分析のプロセスに関して、1つ1つ考えるきっかけになったのもこの本でした。

データと仮説を結び付け、次に取るべきアクションを想定するまでのプロセスが重要

本書で特に役に立ったのは、仮説検証と、データが出たあとにどうするか、というところです。仮説は結構思いつくのですが、止まってしまうこともあります。例えば、野球の記事が人気だと言われると、プロ野球や大谷選手の活躍を想像すると思いますが、最近の大谷さんの事件に関する記事は果たして野球に関する記事と言えるのか? と。

以前、新庄さんが監督に就任したとき、テレビ番組に多く出演していました。野球ではなくバラエティの枠組みですが、AIに分類させると「新庄さんが出ているから野球の記事」という扱いになってしまうんです。

では、それらの記事のPVが高いというデータから「野球が人気」と解釈してしまって良いのでしょうか? きちんと紐解くと、新庄さんがたくさんのテレビ番組に出て露出が増えていたので野球に関する記事が人気あるように見えていた、ということがわかります。つまり、データと前提の仮説をちゃんとつなげて考えること、結果をブレイクダウンしていく必要があるのです。

もう1つ大事なのは、データを見たときに次にとれるアクションが何か、ということです。ユーザーが伸びているというデータを見たとき、広告を増やしていたからユーザーが伸びていたからと言って、さらに広告を出すというのは本当に正しいのでしょうか?

大事なのは、そこから何ができるか。例えば「広告以外でオーガニックユーザーを増やすためにコンテンツマーケティングで記事を倍に増やしましょう、いまの編集体制でできますか?」とか、次のアクションを想定した上でデータを見た方が良いでしょう。データを出したときのコミュニケーションと、それができる範囲の行動なのか考えられると良いですね。

本書には分析の仕方、みたいな具体的なやり方は出てきません。データ分析をどう見るかというところに重きが置かれています。漠然と「データ分析って何?」と思っている人や新卒の人、何となくマーケティング担当になってしまい、これからデータ分析をはじめる人などにおすすめです。

これから「データ分析」をはじめる方、キャリアに悩んでいる方にもおすすめ

今回紹介した2冊は、キャリアに悩んでいる人にもぜひ読んでもらいたいです。いま、エンジニアをやっていて、もうちょっと幅を広げたいという人は「次世代コミュニケーションプランニング」は役に立つと思います。マーケターで広告出稿や広告プランニングを考えたりする人はいますが、その知見を活かしたデータ分析ができる人はほとんどいません。なので、マーケターの人は、これらの本を手にデータ分析を始めてみるのも良いと思います。自分のもう1つの武器として持つという意味で、どちらもオーバーラップできるはずですよ。

 

「note」掲載のオリジナル版はこちら データは分析しただけでは終わらない、仮説を結び付けてアクションに落とし込め:マーケターの本棚

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