Googleの決算書をわかりやすく解説:2023年4Q 過去最高売上を記録! 知っておくべきポイントは?
定期的にニュースをにぎわすビッグテック各社の決算発表。これは一企業の株価を左右するだけでなく、我々がいる業界の近未来の動向を占う意味でも重要な情報です。最新の2023年第4四半期の決算情報を使って、Googleのビジネスの基本的な分析をしてみましょう。
決算情報は四半期ごとに発表される
まず、Googleの決算情報は、親会社であるAlphabet(アルファベット)の決算に含まれます。Alphabetの決算月は12月なので、1Q(1-3月期)、2Q(4-6月期)、3Q(7-9月期)、4Q(10-12月期)と分けられ、それぞれ4月、7月、10月、1月に情報が出そろいます。
決算発表予定日は、Alphabetの公式サイトや各金融情報サイトなどで確認できます。ちなみにビッグテック各社の決算期が同じとは限りません。マイクロソフトの決算月は6月ですので、同社の1Qは7-9月期になります。会社間の比較をする場合などは、1Qといっても同じではありませんので注意してください。
事業セグメントごとに数字を見る
Alphabetの投資家情報サイトにいくと、各四半期の決算発表情報をPDF形式でダウンロードができます。
この中にはたくさんの情報が含まれていますが、今回は事業ごとの売上と営業利益に注目します。全体の売上や営業利益だけを見ても、上がったり下がったりした要因がわかりませんので事業セグメントごとの情報を使います。
【Alphabetの事業セグメント】
- Google Search & other:検索広告その他
- YouTube ads:YouTube広告
- Google Network:※1 掲載パートナーによるGoogle検索広告、ディスプレイ広告、Admobによるアプリ広告など
- Google subscriptions, platforms, and devices(前四半期までGoogle others):※2 Google One、YouTubeプレミアム、 Google Play Passなどのサブスクサービス、AndroidやChromeなどのOSやプラットフォーム、Google Play Store、Google Workspace、Pixelスマートフォン、Nest、Chromebooksなどのデバイス
- Google Cloud:Google Cloud Platform
- Other Bets:※3 Waymo、VerilyなどのAlphabetの新規事業
Googleの広告事業(資料にもGoogle advertisingという項目がありますが)は、Google Search & other、YouTube ads、Google Networkの合計だと考えてください。
各事業セグメントの数字はこれでわかりますが、一つの四半期の数字を見るだけではよかったのか、悪かったのかはわからないので、何か比較対象が必要です。そこで、前の年の同じ時期に対してどうだったか(前年同期比)とアナリスト予想に対してどうだったかの二つを見ます。
時系列でトレンドや変化を見る
Alphabetの決算情報は2020年度までさかのぼれます(2024年1月現在)。まず、単純に事業セグメントごとの前年同期比を見てみます。
- Google Search & other:前年同期比112.71%
- YouTube ads:前年同期比115.53%
- Google Network:前年同期比97.90%
- Google subscriptions, platforms, and devices:前年同期比122.71%
- Google Cloud:前年同期比125.66%
- Other Bets:前年同期比290.71%
となり、Other Bets(290.71%)、Google Cloud(125.66%)の順に良かったことがわかります。広告事業だけにフォーカスしてみると、Google検索広告とYouTube広告は、下落が始まった2021年後半から2022年に底を打ち、現在は完全に復調していることがわかります。前年同期比を四半期ごとの推移で見ると、それがわかりやすいです。
一方、Googleネットワークは下落幅は改善したものの、前年同期比マイナスになっている状況です。今後もChromeのサードパーティCookieサポート廃止の影響を受ける可能性もありますし、Googleの反トラスト法(独占禁止法)違反訴訟(AppleのSafariブラウザでGoogle検索を初期設定にしている契約の件)の行方を注視していく必要がある領域です。
それでも、Google広告事業の売上合計は655億1700万ドルと史上最高を記録しました。非常に大きな数字です。
しかしながら、アナリスト平均予想の661億ドルには届かず、株価は下落してしまいました。期待が高いというのも大変です。
このアナリスト平均予想またはコンセンサス予想は、アナリストの「期待値」の平均です。企業は常にこれを上回る必要があり、下回ると株価に影響を及ぼします。アナリスト予想に興味がある方は米国企業であればYahoo Financeなどに個別の銘柄ごとに掲載されていますのでチェックしてみてください。
利益が出ているのかを確認する
売上を出していても、事業にかけるコスト(サーバー費、人件費、その他)が大きいと、実際は利益が出ていない可能性があります。そのため、事業セグメントごとのOperating Income(営業利益=本業の儲けが出ているかの指標)を確認します。
2023年第4四半期に関しては、Googleサービス(広告事業、サブスク、プラットフォーム、デバイスの合計)が全体の利益をけん引しています。それ以外でいうと、Google Cloudは前年同期は赤字だったのがようやくプラスが定常的に出るようになり増えてきました。WaymoなどのOther Betsは赤字幅は縮小しましたが、依然マイナス。Aphabet-level activitiesというアルファベット全体に関わる費用に関してのマイナスが大きいのは、ここ最近のレイオフに関連する退職関連費用が大きいためです。
その他見るべきところ
Alphabetの投資家ページからWebcast & Transcriptをクリックすると、動画による決算説明と質疑応答セッションが掲載されています。
- AlphabetとGoogleのCEO サンダー・ピチャイ氏
- GoogleのCBO フィリップ・シンドラー氏
- AlphabetとGoogleの社長兼最高投資責任者(CIO)、最高財務責任者(CFO)ルース・ポラット氏
上記3人がそれぞれ説明しています。決算資料ではカバーしきれない情報がかなり出てくるので非常に重要です。動画はもちろん英語ですが、Webcast & Transcriptのページには、話した内容が全てテキスト化され、掲載されているので、オンライン翻訳などにかければ日本語で理解ができます。
動画の中から、広告に関する情報を抜粋して紹介します。
2023年第4四半期の売上は863億1000万ドル(約12兆7300億円)で、前年同期比約13%増と成長を見せたが、広告売上はアナリストの平均予想を下回った
営業利益は236億9700万ドル(約3兆4900億円)で前年同期比は約30%増
YouTube PremiumとMusic、YouTube TV、Google Oneを中心としたサブスクリプションサービスとはAI関連サービスが寄与したGoogle Cloudが全体をけん引
AIへの投資に関してはさまざまなことに取り組んでいる。Gemini Ultraがまもなく登場(2024/2/8に正式発表)。Search Generative Experience(SGE)の初期段階の成果には満足している
Google広告の検索その他の売上は前年同期比13%増となり、リテール部門の堅調な成長が再びけん引。特にAPACの小売業が好調
YouTube広告の収益は、ダイレクトレスポンスとブランドの両分野の成長により、前年同期比16%増。また、ネットワーク収入は前年同期比2%減少
広告プロダクトでは、第4四半期にP-MAXおよびデマンド ジェネレーション キャンペーンが明るい話題に
広告クリエイティブの生成AIは、第4四半期に採用が増加
GeminiがGoogle広告の新しい会話体験を提供するのが最近の大きなニュース。米国と英国の広告主にベータ版として公開されており初期のテスト結果はよい
SGEは、検索結果とともに関連性の高い広告を表示することで、人々のコマーシャル・ジャーニーを向上させる新たな機会を創出。また、AIを活用した結果の上または下に表示される広告は、人々が行動を起こしたり、企業とつながったりするための有益な選択肢を提供するため、人々が有益だと感じていることもわかっている
YouTube全体で視聴時間を伸ばし続けており、中でもショートフィルムとコネクテッドTVが大きく伸びている。ショートは引き続き最優先事項で毎月20億人以上のログインユーザーがおり、1日の平均視聴回数は700億回。ショートの収益化も順調に進んでいる
設備投資に関しては、第4四半期の設備投資額は110億ドル。技術インフラへの投資によるもので、サーバーへの投資が最も大きく、次いでデータセンターへの投資。いずれもAIの活用増と成長機会に対する先行投資。2024年の設備投資額は2023年よりも大幅に増加すると予想される
営業力強化の面では、いくつかの再配置、あるいはポートフォリオの調整を実施。大口かつ先進事例となる顧客に対応するLCS(ラージ・カスタマー・ソリューションズ・チーム)、エントリーレベルや中小組織に対応するGCS(グローバル・カスタマー・ソリューションズ・チーム)の2チームがある。GCSは急成長しているチャネルでもあり、第4四半期は特に力強い成長を遂げた。そのため、GCSにより多くのリソースを集中させるための調整を行った。ただ、AIに役割を奪われたからリストラするわけではない。AIを活用したソリューションによって、実際に大規模なROIを実現する大きなチャンスがあると考えているからこそ、このような調整を行っている
まとめ
いかがでしょうか。決算資料だけではわからないことが、動画ではたくさん語られていますよね。
今回はキホン中のキホンをお届けしました。決算情報の読み解き方は他にも見るべきポイントはありますので、続編でまたお伝えできればと思います。
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