Googleの決算書、注目すべきポイントは? TAC:トラフィック獲得コストを理解しよう
Googleの親会社であるAlphabetが2024年第1四半期の決算を発表しました。決算情報は、Alphabetの投資家情報サイトで確認できます。第1四半期の内容を簡単に振り返りつつ、前回解説した記事に加えて、もう一つの重要な指標「TAC(Traffic Acquisition Cost:トラフィック獲得コスト)」について解説したいと思います。
Alphabetの2024年第1四半期決算はYouTube広告、クラウドがけん引し好調
Alphabet全体の売上高は、前年同期比15.4%の805億3900万ドルで、市場予想785.9億ドルを大きく上回りました。純利益は236億6200万ドルで、なんと前年同期比57.2%増という結果でした。
セグメント別売上は以下の通り:
- Google Search & other:461億5600万ドル(前年同期比+14.4%)
- YouTube ads:80億9000万ドル(前年同期比+20.9%)
- Google Network:74億1300万ドル(前年同期比-1.1%)
- Google subscriptions, platforms, and devices:87億3900万ドル(前年同期比+17.9%)
- Google Cloud:95億7400万ドル(前年同期比+28.4%)
- Other Bets:4億9500万ドル(前年同期比+71.9%)
広告事業は616億5900万ドルで、前年の545億4800万ドルから13%増でした。ただ、7四半期連続で、Google ネットワークは売上高を下げました。
Google クラウドは売上高が前年同期比28.4%で、営業利益も前年の1.91億ドルから9億ドルへ大幅に増加しました。完全に収益の柱の一つに成長しつつあります。
好決算の結果、AlphabetはGoogle創業以来初の1株あたり20セントの配当を実施しました。
目立たないが重要な指標「TAC」
TACはTraffic Acquisition Costの略で、「トラフィック獲得コスト」と訳されます。TACとは、トラフィックを獲得するためにGoogle ネットワークのパートナーやブラウザプロバイダーに支払う費用のことです。
Googleが広告収益を上げるためには、Google 検索やYouTubeなど、自社のサービスだけでなく、外部のウェブサイトやアプリ運営者に広告掲載をしてもらったり、ブラウザにGoogleの検索機能を搭載してもらったりする必要があります。
もちろんこれは無料ではないわけで、Googleが広告主から受け取る広告費を、各ウェブサイトやアプリにおけるインプレッションやクリックに応じて売上を折半します。このかかったコストの総計をTACと呼んでいます。
TACは原価の一つで、大きくは2つで構成されます。
- ブラウザプロバイダーや携帯電話会社などの検索ディストリビューションパートナー
- Google ネットワークパートナー
Googleの原価はTAC以外にもあり、データセンター費用やYouTubeなどのコンテンツ費用なども含めると、売上の42%ほどを占めます(2024年Q1決算情報から)。
決算発表で特に重視されるのは、このTACです。原価が増え、利益を圧迫することを金融関係者は好みませんので、TACが増えていないかは株価にも影響してきます。
TACの推移を見てみましょう。年間でいうと、2022年から2023年にかけては4%ほど増えています。
折れ線グラフはTACが広告事業売上に占める割合であるTACレートを示しています。これは大きな変動はなく、3年間ほどは21~22%で推移しています。
ただ、前述の通り、Google ネットワークの売上は続落しており、決算資料にも、TACが増えたのは広告主予算がGoogle ネットワークからGoogle 検索にシフトし、検索事業が好調だったため、検索ディストリビューションパートナーへの支払いが増えたから、と説明しています。
また、Google ネットワークのTACレートが若干悪化しているのは、パートナーへの支払いボリュームに比べ、収益パフォーマンスが悪化しているためと捉えることができます。
まとめ
いかがでしょうか。今回はGoogleの決算からTACの重要性を学ぶことができました。TACの概念は他のプラットフォーム企業、アドテク企業、パブリッシャーでも存在しますので、売上だけではなく、利益があがっているかを理解するために重要な指標です。ぜひ意識してみてください。
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