杉原剛のデジタル・パースペクティブ

Facebook・Instagram・TikTokはAmazonになりたいのか? SNSのECサイト化に迫る

各プラットフォームが進めているECサイト化「オン・プラットフォーム・コマース」について。

商品認知から購買まで“SNSプラットフォーム”で完結する未来

3大ソーシャルメディア・プラットフォームであるFacebook、Instagram、TikTokは、本来の使い方に加えて、集客・販促・購入促進をするための場としても広く認識されています。

たとえば、「ソーシャルコマース」とは、SNS上で商品やサービスを認知・販促し、最終的にECサイトへ誘導し購入してもらう仕組みのことです。SNSが本来得意とする出合いを創出するという価値にECを組み合わせることで、購買プロセスを完結していました。

一方で各プラットフォームでは、SNS上で決済機能がないためにECサイトへ誘導していたという側面もあり、近年、ショップ機能やチェックアウト機能を拡充しています。「オン・プラットフォーム・コマース」つまり、プラットフォームを離れることなく購入が完結できるように試みてきました。

しかし、機能として拡充・実装されているものの購入に関しては、自社ECサイトやプラットフォームが連携しているShopifyなどの大手ECプラットフォーム上のショップに誘導する、というのがほとんどでした。

大手ソーシャルネットワークは“オン・プラットフォーム・コマース”を推進

この流れに待ったをかけるように、Facebook、Instagram、TikTokは、外部のECサイトへの誘導をやめさせ、購入をオン・プラットフォームで完結させるための強引な動きを見せています。

Facebook・Instagramの動向

Metaは今年4月に、FacebookとInstagram上のショップはFacebookのチェックアウトを使用する必要がある、と発表しました。FacebookとInstagramでチェックアウトができないショップは、コンテンツ公開APIを使って商品にタグ付けすることができなくなります。

また、2024年4月24日以降、FacebookとInstagramでチェックアウトができないショップはアクセスできなくなります。つまり、これまでのように、外部のECサイトへの誘導はできなくなり、FacebookとInstagram内で購入が完結する選択肢しかなくなる、とショップに言い渡したということになります。ちなみに、この変更は広告には影響せず、外部ECサイトへのリンクは引き続き可能です。

TikTokの動向

TikTokも、オン・プラットフォームで購入を完結できるTikTokショップを北米で開始したばかりです。そして、米国のテックメディアであるThe Informationは、TikTokも外部のEコマースサイトへのリンクを禁止する予定であると報じています。詳細や時期は不明ですが、この変更はTikTok Shopと呼ばれるネイティブのショッピング機能に影響する可能性が高いです。

TikTokはすでに、Shopifyを利用した「TikTok Storefront」機能を9月に停止すると発表しています。TikTokは、TikTokショップで商品を販売したいブランドやマーチャントを募集しており、将来的には広告事業の次の柱として、2028年までに米国のTikTokショップで約400億ドルから600億ドルの収益を上げたいと考えている、とThe Informationは報じています。

メリット:プラットフォームside

Facebook、Instagram、TikTokにとってのメリットは次の3つ。

ユーザーに対しスムーズな購買体験を提供できる:
プラットフォーム・ネイティブなチェックアウト機能を利用すれば、ユーザーにとってショッピング体験は途中で分断されることなく、よりスムーズになる可能性があります。その結果、ソーシャルコマースとしての存在感を高めることができます。

プラットフォーム自体の売上増:
購入が増えることで、販売手数料も得られますし、プラットフォーム内における購入を促進するための広告出稿も増えるでしょう。事業の多角化で、広告に偏重していた売上にEC売上が加わり、経営面でリスク分散もできますし、両事業のシナジー効果も大きいでしょう。

ユーザーの購買データが得られる:
その裏で最も大きなメリットは、ユーザーのデータが得られることだと思います。ソーシャルメディアとして保有してきたユーザーの属性や趣味嗜好データに加え、購買データが加わることで、さまざまな可能性が広がります。広告事業へのインパクトも大きいでしょう。

デメリット:ブランド・マーチャントside

一方、ブランドやマーチャントのデメリットは以下の通り。

購買顧客データの減少:
得られるデータが著しく少なくなることが最大のデメリットです。そもそも、ソーシャルメディア・プラットフォームでオン・プラットフォーム・コマースが普及してこなかった最大の理由が、ここにあります。今回のように、プラットフォームが強硬にオン・プラットフォーム・コマースを推進することで、ブランドやマーチャントは売上をとるか、顧客データをとるか(握られないようにするか)という選択を迫られるようになります。

◇◇◇

多くの買い物客にとって、発見はソーシャルアプリで起こり、買い物はそのアプリが誘導する先で起きています。Facebook、InstagramそしてTikTokは、そのギャップを埋めようとしているのです。

これらのプラットフォームは、Amazonにトラフィックを誘導したいわけではなく、Amazonになりたいのです。逆に今、AmazonはInspireなどの試験的なソーシャルプラットフォームの取り組みをしています。Amazonは、ソーシャルメディア・プラットフォームがショッピングという課題を解決する前に、ソーシャルコマースを解決したいと考えています。

どちらが早いか、数年後のコマースの覇権をにぎるのが誰になるのか、目が離せない状況になっています。

この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

インフルエンサーマーケティング
インフルエンサー(世間に与える影響力が大きい人物)を活用し、商品の宣伝をSNS投 ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]