【レポート】デジタルマーケターズサミット2023 Winter

Z世代の“次”を考えるレゴグループの「CX戦略」と「デジタル活用事例」

子供たちの支持を受け続けているレゴグループの「Z世代の次を考えるCX戦略」は何か? その戦略に基づくデジタル活用事例も併せて紹介する。

ブロック玩具で知られる「レゴグループ」は、創業90年を超える企業として、グローバル展開をしながら着実に成長を遂げてきた。Z世代やアルファ世代が注目される中、はたしてレゴグループはどんな姿勢で顧客の心を掴んでいるのか。レゴジャパンの宮下麻未氏が「デジタルマーケターズサミット 2023 Winter」に登壇し、その一端を語った。

レゴジャパン株式会社 マーケティング デジタルマーケティングマネージャー宮下麻未氏

新しい施策をやるとき、皆さんは何から始めますか?

レゴグループはデンマークで1932年に創業。世界120カ国以上で商品展開しており、代表的製品であるブロック玩具の知名度は日本国内でも極めて高い。ちなみにブランド名の由来はデンマーク語の「よく遊べ(LEg GOdt)」からだという。創業者はもともと大工で、当初は木製のおもちゃを製造・販売していたという。

講演冒頭、宮下氏は次のように聴講者に問いかけた。

新しい施策をやるとき、皆さんは何から始めますか?
私たちは、会社の理念を再確認することから始めます(宮下氏)

レゴでは、企業理念を7項目で分類し「ブランドフレームワーク」として整理しているという(下図)。

レゴグループのブランドフレームワーク

信念: 子供たちが私たちのロールモデル
ミッション: ひらめきを与え、未来のビルダーを育てる
ビジョン: 遊びながら学ぶ
アイデア: システム・イン・プレイ
価値: 想像力・創造力・楽しさ・学び・思いやり・品質
約束: 遊びの約束、人との約束、パートナーとの約束、地球との約束
スピリット: 最高なものだけが「十分」といえる

どの施策を進める場合でも、このブランドフレームワークを確認し、『この企画は我々のミッションを叶えるものなのか』『我々の提供する価値に見合うものなのか』といったことをいつも意識しています(宮下氏)

なぜ、ブランドフレームワークを重要視するのか?

では、なぜブランドフレームワークが重要で、常に意識すべきなのか。宮下氏はその理由として、次の3つを挙げる。

  1. 多様性の尊重
  2. オーナーシップ(当事者意識)
  3. ビジネスをする意義

1. 多様性の尊重

レゴグループはデンマークを本拠としつつ、世界各地に40以上のオフィスを構えている。当然、働く人たちの国籍・人種・家族構成・職歴は異なる。そうした違いを超えてフラットに働くためにも、「多様性の尊重」が重要になってくる。多様性があるということは、それぞれの意見を尊重するということになる。このブランドフレームワークを基に、コミュニケーションすることでスムーズに議論ができるわけだ。

2. オーナーシップ(当事者意識)

さらに、レゴ社内には役職・肩書きに関係なく、広く従業員にオーナーシップを求める社風があるため、皆がそれぞれやるべきことは何かという意見をもっている。意見の相違があった場合でもブランドフレームワークを中心に据えることで、レゴグループとしてやるべきことが自ずと見えてくる。

3. ビジネスをする意義

多様性を尊重する土台があり、各従業員にオーナーシップがあると、何か施策を行う際に意見がぶつかってしまう弊害も起こりかねない。そこで、前提としてブランドフレームワークを共有することが重要になる。

何をミッションとし、何を意義としてこのビジネスを行っているのかを確認し合うことで、1つの方向に進みやすくなる。多様性を尊重するからこそ、ブランドフレームワークが大切なのだ。

ブランドフレームワークが反映されたレゴ製品

レゴブロックにも、ブランドフレームワークが反映されている。レゴブロックでの遊びは、大切なスキルを楽しみながら身に付けられるように設計されている

レゴブロックは、大切なスキルを楽しみながら身に付けられるように設計している
©2023 The LEGO Group.

レゴブロックは説明書通りに作ることもできれば、子供たちの自由な発想で組み立てることもできる。「つくってみよう、ためしてみよう」「できない、でもあきらめたくない」という気持ちは、大人が仕事をしていく上でも大切な問題解決スキルにつながる。

そのスキルをレゴブロックでの遊びを通じて子供のうちから習得できるわけだ。しかし、子供たちに「大人になった時の問題解決に役立つからレゴで遊ぼう」といっても遊んでもらえるはずもない。子供たちが「遊んでみたい!」と思うには、子供たちへの見せ方が大切になる。

子供の『やってみたい!』を後押しするのは『楽しさ・好奇心』。そして、子供たちの遊びが進み、さらに『続けたい』と思わせるのは、『達成感』『周囲の励まし』も欠かせません(宮下氏)

ブランドフレームワークを踏まえたCX戦略

玩具をとりまく市場も変化し続けている。この変化に対応するために、レゴグループではどのようなCX戦略を考えているのか?

“子供たちがレゴブロックでの遊びをもっと楽しむにはどうしたらいいか?”がレゴのCX戦略の基盤です。新しい施策を実施するときは、まず“自分たちの企業が何をビジネスの意義としているのか”をしっかり考えた上で取り組む必要があります(宮下氏)

「子供たちがレゴブロックでの遊びをもっと楽しむにはどうしたらいいか?」をまずは意識する

また、安全性も施策検討の際には重要な要素だ。レゴブロック自体の安全性はもとより、アプリなどを通じたオンライン上での取り組みも子どものプライバシーを守るため、安全性を担保し法律を遵守した仕組みや、誹謗中傷リスクへの対応などの確認が大切になる。

レゴのCX戦略に基づくデジタル活用事例

ここからは、「子供たちがレゴブロックでの遊びをもっと楽しむには?」というCX戦略基盤に基づいて、実際に展開しているデジタル活用事例を見ていこう。

達成感を味わえ、楽しみを増やすアプリ「レゴ ビルダー

レゴ製品のパッケージには紙製の組み立て説明書が封入されているが、これをアプリ化したものが「レゴ ビルダー」である。完成見本が3Dモデルとして収録されており、これを画面上の操作で回転させることも可能だ。つまり、紙よりも理解しやすく、それは結果的に、レゴブロックでの遊びをさらに楽しむことにつながる。

組み立て説明書をアプリ化した「レゴ ビルダー」

コロナ禍で在宅時間が増えたことをきっかけに「みんなで組み立てる」機能も追加した。これは1つのパッケージのブロックを、アプリの指示に従いながら複数人共同で組み立てるという仕組みで、仲間・家族と完成の喜びを共有できるという。

ブロック以上に、デジタルとの融合でストーリーを組み立てるシリーズ「レゴ シティ ミッション」

「レゴ シティ ミッション」は、レゴブロックとデジタルが融合した製品だ。箱の中にはブロックが入っているが、その組み立てはアプリ内のアニメーションに沿って行う。

前述のアプリ「レゴ ビルダー」内で「レゴ シティ ミッション」製品を指定すると、ストーリー仕立てのアニメーションが再生される。そのストーリー中で出されるミッションにこたえる形でブロックを組み立てていくという構成だ。

ストーリー仕立てのアニメーションに沿って組み立てていく「レゴ シティ ミッション」。説明どおりだけでなく、アレンジへの挑戦もできる

ストーリーに没入しながら、レゴブロックでの組み立てを楽しんでもらえる。ミッションが進むと、たとえば『助けてほしい』『君の力が必要なんだ』というように子供に呼びかける言葉が表示されるなど、ストーリーとブロックの組み立てが融合したような遊びができます(宮下氏)

安全に子供どうしでの交流を楽しめる「レゴ ライフ

「レゴ ライフ」は、グローバル展開をしている子供向けSNS。アプリで提供されている。レゴ製品でおなじみのキャラクターを着せ替えたり、作った作品の写真を投稿したり、他のユーザーの投稿に「いいね」をつけたり、SNSならではの交流が楽しめ、共感やお互いを認め合う体験ができる。

SNS上でのアクティビティでつながり、共感や、お互いを認め合う体験ができる「レゴ ライフ」

安全への配慮もなされており、さまざまなルール・仕様が盛り込まれている。たとえば、プロフィール用画像として顔写真は登録できず、キャラクター画像をアバターにする方式を採用。またユーザーIDは言葉のランダムな組み合わせで作り、実名が公開されないようになっている。投稿内容についてはレゴグループ側でモニタリングを実施。また欧州および米国で定められた子どものプライバシーを守る法律に基づき保護者の身元確認もとっている。

『レゴ ライフ』を通じて、インターネット上で顔が見えない相手に対しても思いやりをもって接する経験をしてもらいたい。子供たちはいずれ成長し、実際のSNSを使うことになると思うが、その前段階の練習の場として活用することもできる(宮下氏)

重要なのは、子供たちの“ワクワク感”

最後に宮下氏は、まとめとして次のように話し、講演を終えた。

新しいことを始めるときこそ、基本理念に立ち戻ることがレゴグループのスタイルです。新しい技術・マーケティング概念が登場すると、それをどう使うかに目が向きがちで、ともすれば手段と目的をはき違えることにもなってしまいます。しかし、企業理念であるブランドフレームワークを常に意識し、子供たちの楽しさ、“ワクワク感”をどうすれば提供できるかに挑戦していきたいです(宮下氏)

※商品名には登録商標マークがつき、正しくは「レゴ®」の表記となる。

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