O2Oの上位概念?「OMO」をLINEで実践! LINEプラットフォームを利用するメリットを徹底考察
これまで、第1回で「LINEはすべての企業が本気で向き合うべきプラットフォーマーであること」、第2回で「大まかに5パターンのストーリーでLINEの活用拡大をしていくことが多いこと」を解説した。今回は、その中でも「OMO」(Online Merges with Offline)に関する事例をメインに紹介する。
「OMO」は、O2Oの上位概念。サービス全体の改善のためにリアルとデジタルを統合活用
近年「OMO(Online Merges with Offline)」という言葉が注目されている。あくまで個人的な印象だが、企業が取り組んでいるOMOのほとんどは、「O2O(Online to Offline)」と変わらないことが多いと筆者は感じている。実際、この2つはどう違うのか?
O2Oが理想としている世界観、そしてOMOが理想としている世界観は、以下のイメージだろう。O2Oでは、オフライン(リアル)とオンライン(デジタル)は明確に別物と捉え、両方のチャネルに対して相互誘導を図っていくのに対し、OMOでは、オフライン(リアル)を“オンライン(デジタル)の一部”と捉え、サービス全体の改善のために双方のデータやチャネルを統合活用していくというのが私の理解だ。
両者の大きな違いは、「各チャネルを通して提供するサービスのUXを、データやデジタル特有のUIを通じて最大化させる」というポイントにある。OMOの優位性は「誘導に留まらないデータ・チャネルの統合活用」という点にあると言えるだろう。
一方で、「OMOを実践するつもりが、O2Oにとどまってしまっている」という事例をよく見かける。たとえば以下のようなパターンだ。
- リアルのサービスの利便性を補完する施策(デジタル上にリアルのサービスのFAQを置いている、など)
- リアルの行動データを取得して、デジタル上での広告のCPA最適化に利用する施策
このような施策は、上述した「誘導に留まらないデータ・チャネルの統合活用」という、本来のOMOの目的が達成されていない。OMOを実現することで得られる“顧客向けの体験価値の向上”がなされていないのである。
OMOの理想がO2Oにとどまってしまう、2つのパターン
OMOの理想がO2O施策にとどまってしまうというケースで、筆者は何度も同じパターンに出くわしている。それは、下記の2つの課題を抱えているパターンだ。
1. データ基盤構築と利活用の難しさ
例:リアル側のデータを取得する方法の導入がコスト等の関係で難しく、断片的な情報しか取得できない。また、その取得した情報もリアル側の部門が管轄するデータベースに保管されており他部門が活用できる状態になっておらず、双方のデータをマージさせて顧客体験を改善するほどの活用ができない。
2. 顧客向けUI開発のコスト
例:リアルのサービスを改善するため、顧客向けのUIとしてアプリやデジタルサイネージの導入による顧客体験の改善案を検討したが、導入コストや保守コストが高く断念。手離れのいい単発の施策を実施することで、OMOのミッションを達成したことにしてしまう。
LINEはOMOの実現ハードルを下げられる実践的なプラットフォーム
こうした状況に対しLINEは、OMOの課題を解決しやすいプラットフォームだ。たとえば「LINE login」を利用したLINE会員証施策、LINE Beacon、LINE Things、LINE SP Solutionなど、LINEを活用することで、オフライン環境にあるユーザーの行動データを取得することが簡単になってきている。
参照:オプト提供の「TSUNAGARU」、aimerfeel(エメフィール) LINE公式アカウントへ店頭で使えるポイントカード機能を実装
今までOMOといえば、専用のアプリを作ったりセンサーを導入したりと、実行上のハードルが多種多様に存在した。そのため得られるメリット(顧客への提供価値、他社との差別化)に対してデメリットのほうが上回っていたという印象だ。だが、前述の通りLINEがプラットフォームとして提供しているAPIを活用することで、ゼロからUIやCMSを作らずとも、企業が簡単にOMOの実践できるようになってきた。
またLINEはメガプラットフォームなので、OMOを実践しようとした際に、ベンダーや広告代理店に頼ることもしやすい。自社開発を限りなく減らせるので、組織上の問題も超えやすい。
サントリー「TOUCH-AND-GO-COFFEE」の事例
具体的な事例として、サントリーの「TOUCH-AND-GO-COFFEE」を考察し、LINEを活用したOMOの実践例として特徴的な点を示したいと思う。
1. 「データ基盤構築」と「利活用の難しさ」への挑戦
オフラインの顧客接点におけるデータを取得し、オンライン上のコミュニケーションやサービス改善をするためには「オフラインデータの取得」と「取得データの活用可能な形式での保持」が必要だ。TOUCH-AND-GO-COFFEでは、LINE公式アカウントを“顧客向けのサービス提供UI”として活用をしており、顧客の商品カスタマイズ・注文・支払いまでがLINE上で完結する仕組みになっている。
この仕組みのおかげで、ユーザーのLINE User ID(UID)と紐づけて、すべての購買関連データをマーケティングに利用できる。これにより、今までオフライン扱いだった店舗での注文データが、オンライン上で獲得できたことになる。さらに、これらのデータを利用することで、顧客からのニーズを定量的に把握し商品開発に活かしたり、サービスのUIやUXの改善につなげたりすることが簡単に実行できる。
2. 顧客向けUI開発のコストを削減
TOUCH-AND-GO-COFFEの事例が、こうした効果を狙ったものかは定かではないが、サービスのUI開発においてLINEというプラットフォームの優れている点を、うまく利用していると感じる。
- 基本的なUIがすでにユーザーも使い慣れているLINEトーク画面である。 これによりデザインを考える工数が削減できる。
- アプリストアへの申請が不要。 ローンチまでのリードタイムをコントロールしやすい。LINE Messaging API(旧ビジネスコネクト)を利用し、LINE上でUIを開発する場合、ネイティブアプリのアプリストア審査のような審査が不要であり、バグ修正などのアップデートも即時、ユーザー向けに反映できる。
- ベンダーのパッケージツールを活用することで簡単にUIが開発できる。 これによりCMSでメンテナンスができる。
- 利用できるモジュールが豊富にそろっている(LINE pay、LINE login等)。 LINE社がOMOを明確な企業戦略に据えていると考えられる。
LINEを活用したOMOの実践は、間違いなく今後重要になる
これまでOMOの実践がO2Oにとどまってしまっていた理由は、包括的に考えると複数ある。デジタル施策がプロモーションの領域にしか影響を及ぼせない部署編成になっていること、プロモーションのKPIで利用できる予算が限られていたことも大きな課題だった。
たとえば、デジタルをわかる人がOMOを実践しようとしても、店舗のオペレーションまで変えられるだけのコストを払えなかった。また、その改善により得られるメリットを他部署に説明ができなかった。
こうした課題を解決する方法として、“LINEを活用したOMOの実践事例を作ること”が最優先だと筆者は考えている。LINEを活用し、安く・早く事例を作ることで、デジタルを絡めたサービス改善の重要性を社内に指し示すきっかけを作れるからだ。
AWS(Amazon Web Services)がスタートアップの起業ハードルを下げたように、LINEの簡易なUIの流行が、OMOのUI開発のコスト・スピード・実行難易度を一気に下げている気配を、筆者はすでに感じている。LINEを活用したOMOサービスとして、直近の事例として以下をあげておこう。
- アイカサ
アイカサスポットにある傘のQRをLINE公式アカウントで読み込み、照合すればその場で簡単に傘を借りられるサービス - next
採用活動における学生とのコミュニケーションをすべてLINEで完結することができるサービス - JINS
LINE公式アカウント上で測定待ち時間や、度数の確認ができるサービス - 損保ジャパン日本興亜
撮影した自動車の画像をLINEトークに送信すると、リアルタイムで自動車の損害額が送られてくるサービス
LINEを活用してOMOを実践している企業が得られるメリット
ちなみに、LINEを活用してOMOを実践してみると、前述のような直接的なメリット以外にもメリットがある。それは前回までにお話しした、“プラットフォーマーとしてのLINEに対する対抗力を付けること”だ。
LINEを活用したOMOを実践している企業は、LINE社からすれば、自社の拡大戦略の最先端事例を作ってくれるありがたい企業に見えるはずだ。LINE社から寄り添って、新しい技術のトライアル提供、新しい協業を提案されるケースもある。企業として得られるメリットは、新しい機会創出にもなるのだ。
現場の担当者はまずなにから/どこから考えるべき? OMO実現の8ステップ
こうした情報を踏まえ、いまOMOやO2O・オムニチャネル促進のミッションを持っている現場担当の方に、下記の「OMO実現のロードマップ」をお勧めしたい。
- 手法論ありきではない、「達成すべき自社のOMOの理想」を考える。
- 理想の実現をゴールに置いたとき、いつまでにその構想が実現できればよいかを検討する。
- 理想の実現までのステップとして、社内で巻き込まなければいけない部門を洗い出す。
- 巻き込むべき部門を順番に攻略していくために、どんな実績が必要かを考える。
- 必要な実績を最短で出すために、LINEを使ってできることはないかを考える。※広告代理店やベンダーに相談するなどすると早い。
- 出たアイディアを煮詰め、自部署の上長稟議などを経て実践する。
- 出た実績をもとに関係部門を巻き込み、大きな理想に向けて協力体制を敷く。
- 協力体制のもと、本質的なOMOの実現のための投資をする。
今回は「OMO」というトレンドワードに沿ってLINEの活用事例をご紹介した。次回以降は「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「AI活用」についても触れていく。LINEというプラットフォーマーの成長を、うまく自社の成長のために活用して、成功を収める企業・担当者が少しでも増えてほしい。
「TSUNAGARU」は、LINE公式アカウントを開設する企業向けに、オプトが提供するマーケティングツールです。ASPサービスにて、Messaging API配信をより高度に活用できます。
IDシンク、メッセージ配信、BOTによる自動応答、AIチャット、バーコード表示、アンケート作成、クリックデータ収集、LINE Beacon管理、MA(マーケティングオートメーション)機能、コールセンターサポート、UID統合分析などの機能を搭載し、Messaging API配信を導入・実装する上での企業のシステム開発負荷を大幅に軽減。LINEを含めたネット広告領域の効果の最大化、ユーザーのLTV向上を実現いたします。
オプトでは、企業様へのLINEを活用した統合マーケティング施策のご提案を行っており、企業様のニーズに合わせ提案から改善まで全てサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。
TSUNAGARU
https://tsunagaru.linebc.jp/
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