【レポート】Web担当者Forumミーティング 2019 Autumn

オズモールのファンマーケティング戦略、キーワードは「かけがえのない女友達」

オズモールが設定する7つのペルソナやファン化を支えるマーケティングテクノロジー、組織について紹介
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雑誌「オズマガジン」のWeb版として誕生し、330万人もの会員を擁する「OZmall(オズモール)」。これだけ多くの会員を囲い込める秘訣の1つに、ファンマーケティングの取り組みである“女友達マーケティング”がある。

Web担当者Forum ミーティング 2019 秋」では、オズモールを提供しているスターツ出版の額奈緒子氏と田沼和義氏を迎え、トークセッションを開催。オズモールが設定する7つのペルソナや、デジタルマーケティングの施策、ツールやテクノロジー、組織体制などが語られた。モデレーターは、オズモールのデータ活用において長年支援しているブレインパッドの今野淳一氏が務めた。

オズモールのトークセッション
左から、株式会社ブレインパッド プロダクトビジネス本部 プロダクト開発部 企画グループ 今野淳一氏/
スターツ出版株式会社 オズモール編集長 額奈緒子氏/
スターツ出版株式会社 WEBソリューション推進部 統括部長 田沼和義氏

コンセプトは「心ときめく“おでかけ体験”を一緒に」

オズモールは、20代から40代の働く女性をターゲットにしたWebメディアで、会員数は330万、月間PV数は5,000万を超える。独自の基準で選んだレストランやホテル、ビューティサロンなどが予約できる「プレミアム予約サービス」も提供している。

額奈緒子氏
スターツ出版株式会社 オズモール編集長 額奈緒子氏

オズモールのコンセプトである「心ときめく“おでかけ体験”を一緒に」について額氏は次のように説明した。

オズモールのユーザーである“働く女性”のライフスタイルは多様化しています。たとえば、「一人で過ごす時間」や「大切な人と過ごす時間」を豊かにしたいと考えたとき、オズモールは、おすすめスポットを紹介したり、一緒にお出かけをしたりできる“女友達”でありたいと考え「心ときめく“おでかけ体験”を一緒に」というコンセプトができました(額氏)

また、マーケティング、Web開発者、デザイナーなど、オズモールにかかわるスタッフは100人以上いるが、そのさまざまな職種の人々がユーザーを理解していないと良いサービスを提供できないとも語る。

コンセプトには、全スタッフも一緒にオズモールの「おでかけ体験」を作っていこう、というメッセージも込められています(額氏)

女友達マーケティングプロジェクトで価値観を共通言語化

しかし、一言で「女友達」といっても、その言葉から連想するイメージは人によって異なる。では、オズモールが考える「女友達」とはどんな存在なのだろうか? 

私たちが考える「女友達」は、いわゆる“おせっかいな女友達”です。ユーザーから相談されたら、最適な場所を紹介したり、おいしいお店を紹介したり、ユーザーに一歩踏み込んだコミュニケーションをすることを目指しています(額氏)

オズモールでは、コンテンツや予約の導線、あるいはコールセンターへの問い合わせに至るまで、あらゆるコミュニケーションのタッチポイントで、「ユーザーにとっての大事な女友達」という価値観を大切にしている。

こうした価値観を共通言語化するために行ったのが「女友達マーケティングプロジェクト」だ。プロジェクトでは、オズモールに携わるスタッフが、ユーザーのペルソナやカスタマージャーニーを描くワークショップを行った。

ワークショップでは、任意で参加した50人ほどのスタッフが、いくつかのグループに分かれ、ユーザーの興味関心、何をしているかを話し合って、1人のペルソナ像を考えていったという。

女友達マーケティングプロジェクトでは、ペルソナ像を考え、カスタマージャーニーを描くワークショップを実施

ユーザーアンケート「OZ勢調査」

さらに、オズモールのスタッフの思い込みペルソナを作らないために、定量情報として、「会員の予約データ」や「お金の使い方に関するアンケートデータ」などを参照しながら進めていった。その成果として生まれたのが、「OZ勢調査」だ。ワークショップで定義したペルソナ像をさらに明確化するため、ユーザーアンケート調査の結果も反映。『OZ勢調査レポート』という小冊子にまとめている。

額氏によると「もともとアラサーの独身女性をペルソナに設定していたが、サービス開始から23年が経過し、ユーザー層はさらに多様化してきた」と再定義の背景を語る。OZ勢調査レポートは、主に広告主にツールとして配布されているが、社内では、ユーザー像やブランドについての共通言語として、コンテンツ作り、考え方に活用されているそうだ。

7つのペルソナ

ブレインパッドの今野氏は、「OZ勢調査レポートで特徴的なのは、ペルソナが7つ設定されている点」だと説明する。

7つのペルソナのなかには、「パートナーをこよなく愛する既婚男性」というペルソナもある

そして、オズモールを擬人化し、自らコミュニケーションすることをベースに行うのが「女友達マーケティング」だ。

今野氏は、「携わるスタッフ自らが、ユーザーを理解するためにワークショップを行い、ペルソナやカスタマージャーニーマップを作る取り組みはすばらしい」と絶賛する。

今野淳一氏
株式会社ブレインパッド プロダクトビジネス本部 プロダクト開発部 企画グループ 今野淳一氏

女友達マーケティング活動の3つのポイント

では、女友達マーケティングの具体的な活動はどのようなものなのか? デジタルマーケティングを統括している田沼和義氏によると、そのポイントは3つあるという。

  1. 指標
  2. 投資の優先順位
  3. 行動指針
田沼和義氏
スターツ出版株式会社 WEBソリューション推進部 統括部長 田沼和義氏

① 指標

オズモールでは「指標」として、「LifeTime Communication」を設定している。これは「ユーザーと末永くお付き合いできるようなコミュニケーションを評価指標に設定している」ということだ。

CRMマーケティングをはじめたときに、LTV(Life Time Value)という指標を女友達マーケティングにそのまま使うのは相応しくないと考え、業績ではなく、コミュニケーションを重視する指標としました(田沼氏)

テーマ

② 投資の優先順位

2つめは「投資の優先順位」である。まず注力するのは「Low Hanging Fruits」(低いところにぶら下がっているフルーツ)、すなわち、大きな努力をしなくても成果があげやすい領域だ。

注力する領域にマーケターの思いが先行しないよう、成果の大小、難易度の高低でマトリクスを作成し、整理を行っています(田沼氏)

優先順位の考え方

しかし、「Low Hanging Fruits」の領域はやがて小さくなっていくのも事実。そこで、次の“果実”を育てるための土壌作りと種まきの優先順位を高くし、投資をしていくことが大事だと考えているそうだ。

③ 行動指針

3つめは「行動指針」。オズモールでは「pDCA」と、プランニングを表す「P」が小文字で表現される。この狙いは「ユーザーとのコミュニケーションを中心に、小さな改善と挑戦を繰り返すこと」にある。「P」に時間をかけず、たくさん施策を実行し、成功体験を積み重ねることがイノベーションには必要だからだ。

行動指針

マーケティングテクノロジーの歩み

続いて今野氏は、額氏と田沼氏とともに、オズモールのマーケティングテクノロジー活用を長年支援しているブレインパッドとの歩みを含む2009年~2019年の10年間の取り組みを振り返っていった。

オズモールの10年の歩み

スマホアプリの強化

以前からあったスマホアプリを2016年に強化した。その背景には、アプリのログイン率の高さがあったという。

予約をスムーズに行うためにアプリをダウンロードしているユーザーが多く、実に80~90%がログインした状態でアプリを使っていることがわかりました。アプリの特性を活かして、ユーザーごとに最適化した情報を届けられるように強化していきました(額氏)

たとえば、美容院であれば、行きつけのお店が決まると、2~3か月後に再来店するサイクルが確立される。そこで前回行ったサロンへ再予約しやすいように「TOPページにユーザーごとに表示させた」ところ、予約のコンバージョン率が高まったそうだ。

また、銀座のサロンに予約を入れたユーザーは、「せっかく銀座に来たのだから寄り道したい」というニーズが多いという。それに対して、寄り道でおススメのカフェや周辺のイベント情報をお知らせできるようにした。

過去の予約履歴から、「ユーザーの利用するエリアや子ども連れなどの条件に近い店舗の情報をレコメンド」したりする施策も行っている。

さらに、お出かけ当日の天気によって行き先や洋服選びが変わることから、「天気予報のAPIと連動」し、予約日の天気情報や、雨予報であれば雨の日でも楽しめるスポットを案内するなどの施策も行っているという。

これらの施策は「Rtoaster(アールトースター)」を活用して行っており、アプリのパーソナライズを強化することで、Webとの差別化を図っています(額氏)

FSPの導入

2018年にはFSP(Frequent Shopper Program:フリークエンシープログラム)を導入した。これは、購買頻度や金額に応じてステージを設け、ポイントや割引を付与するものだ。田沼氏は「導入直前までは、1年間で利用回数をカウントし、1年間使われなかったらリセットする設計だった」と話す。

しかし、女友達とのコミュニケーションを考えたとき、「久々に会ったからといって、関係がリセットされることはない」ことから、仕様を見直し、制度導入からの累積カウントでステージを分ける設計とした。

企業の視点で考えると、1年でポイントがリセットされることはよくある。でも、「心ときめく“おでかけ体験”を一緒に」作る”女友達”の視点で考えると、ユーザーとの関係を積み重ねることで、相手への信頼が生まれるはずです(田沼氏)

2017年、MAツールProbance(プロバンス)の導入でマーケティングデータ活用の基礎構築が整った

そして話は「システム・ツール導入」に移る。

オズモールでは、2011年に「プライベートDMP」を、翌2012年には「レコメンドエンジン」を構築した。これらはブレインパッドが構築に携わり、オンプレミスをベースに、今も運用を続けている。2017年からは、この基盤の上にMAツールが本格的に稼働している。

具体的には、プライベートDMPには「Rtoaster(アールトースター)」を、施策実行のためのMAツールには「Probance(プロバンス)」を採用した。特にMAツールについては、「それまで試行錯誤を繰り返して、Probanceは3つ目のツールだったが、使い勝手の良いツールにようやく出会うことができた」(田沼氏)と評価している。

2017年、Probance(プロバンス)を導入した

2018年、予約サービスの開発部門と統合

「組織体制の変遷」としては、2013年には、施策展開の業務が増えたことにより、マーケターを3名から8名に増員。2016年にはマーケター以外の編集者やエンジニア、デザイナーが統合された組織体制とした。これにより、「意思決定のスピードが上がり、施策の実行スピードが高まる」効果が得られた。

2018年には、予約サービスの開発部門と統合し、予約事業のマーケティング体制を強化。2019年からは、雑誌も含めたOZブランド全体のデジタルマーケティグを担当する組織へと進化を遂げようとしている。

ブランド全体のデジタルマーケティング担当組織へと拡大中

今後については、「パーソナライズの進化」「コミュニケーション設計の見直し」をテーマに掲げる。

密にユーザーとコミュニケーションを図っていく中で、よりセグメントされたユーザーに対するコミュニケーションのとり方や、タイミングを最適化することを考えていきたい(額氏)

OMO(Online Merges with Offline)をキーワードに、オンラインとオフラインを融合したコミュニケーション設計の見直しに今後は取り組んでいきたい(田沼氏)

最後に今野氏は、2004年の設立以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」というミッションを掲げ、一貫してデータ分析に地道に取り組んできたブレインパッドについて紹介した。

戦略コンサルティングやデータサイエンスを軸とする「データ活用におけるプロフェッショナルサービス」と、プロダクトを軸とした「データ活用に紐づくプロダクトサービス」という2つのビジネスアプローチで、今後もマーケティングパートナーとして顧客とともに価値を作っていきたい──今野氏はこのように語り、セッションを締めくくった。

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