導入ハードルが下がった「LINE広告」とゼロ円から始められる「LINE公式アカウント」の活用術
月間利用者数8,200万人(2019年9月時点)という巨大なコミュニケーションプラットフォーム「LINE」には、いくつかの広告商材がある。ただし、LINEの広告には「大企業向け」「費用が高い」「運用が難しい」というイメージをもつ人もいる。「しかし、それは変わってきている」と話すのが、LINEでSMB事業を担当している川代宣雄氏だ。
川代宣雄氏とともに、LINEの水谷拓樹氏、スタークスの大塚真吾氏が「Web担当者Forum ミーティング 2019 秋」に登壇。LINEの広告商材のアップデートと、EC事業者のLINE公式アカウント活用事例などを紹介した。
「LINE広告(旧LINE Ads Platform)」のアップデート
冒頭にも触れた通り、LINE広告は「大企業向け」「費用が高い」「運用が難しい」というイメージが持たれていた。最初に登壇した川代氏は、これらのイメージを払拭し、「どの規模の事業主にも」「予算に合わせて」「簡単に」利用できるようにしていくという。
その一例が、LINE公式アカウントの統合だ。これまで主に大企業向けに提供されていたLINE公式アカウントは、2019年4月から中小企業や店舗に活用されていたLINE@などを統合して生まれ変わり、0円から始められるフリープランが用意された。
また、広告配信プラットフォーム「LINE広告(旧LINE Ads Platform)」(以下、LINE広告)のアップデートを行った。
LINE広告とは
LINE広告とは、次のような面に広告を配信するサービスである。
- Smart Channel(トークリスト最上部)
- LINE NEWS
- タイムライン
LINE広告のサービス開始は2016年6月だが、さまざまな改善を続けており、直近では市区町村レベルのターゲティング配信も可能になっている。
また、2019年には、トークリスト画面の最上部に広告が配信できる「Smart Channel」をスタートし、ファミリーアプリ以外の外部メディアアプリにも配信できる「LINE広告ネットワーク(旧LINE Ads Platform for Publishers)」というアドネットワーク事業もスタートした。
川代氏によると、「直近でLINE広告の在庫は倍増している」という。
LINE広告の特長
EC企業のLINE広告の利用は、アカウント数、金額ともに順調に伸長しているという。その理由として川代氏は「事業成長にとって新規顧客は非常に重要。月間利用者数8,200万人(2019年9月時点)のユーザーがいるLINEでは、LINEでしかリーチできないユーザーを数多く保有している」と述べた。
2019年7月にマクロミルが行った調査によると、LINE、Twitter、Facebookと複数のサービス を利用するユーザーが多いなかで、LINEのみ使用するユーザーが39.9%に達した。
そんなLINE広告の特長は、次の2点だ。
- 新規顧客を獲得できる
- リーチのボリュームを担保できる
これを裏付けるように、LINE広告での配信は、配信量を担保できるオーディエンスターゲティングやルック・アライク(類似配信)の割合が多い。
機械学習を利用した自動最適化配信
また、「運用が難しそう」というイメージを払拭するものとして、LINE広告では自動最適化配信の機能を提供している。目標CPAを設定すると、機械学習により目標CPA内で自動入札する仕組みで、LINE広告のアカウントの60%以上の企業が導入しているという。
オンライン申し込みに対応
さらに、2019年11月18日から、LINE広告はオンライン申し込みへの対応を開始した。これまでLINEで広告を配信する場合は、代理店を介して申し込みをする必要があり、配信までに数か月を要していた。それが、申し込みやアカウントの開設、配信設定や支払い登録の全てがオンライン上で完結できるようになった。
とはいえ、LINE広告は運用型広告なので、配信すればすぐにパフォーマンスが出るというわけではなく、安定化には時間がかかる。川代氏は、「運用のノウハウ、LPやクリエイティブ、配信設計が重要になるので、導入支援や広告効果改善のサポートを継続的に行っていく」と語った。
「LINE公式アカウント」のアップデート
続いて、 LINEの水谷拓樹氏が登壇し、「LINE公式アカウント」について紹介した。
契約体系の整理
LINE公式アカウントも「大企業向け」「費用が高い」というイメージがあり、契約タイプによって利用できる機能に差があるなど複雑な状況だった。そこで、契約体系の整理を行い、シンプルな料金プランに改定した。
料金プランは3種類、使える機能に差はなく、異なるのは無料で送れるメッセージ通数と追加メッセージの料金だけだ。つまり、フリープランであっても、「月1,000通までなら無料でメッセージが送付できて、画像配信やターゲティングも可能」ということだ。
また、「無料から始めてスタンダードプランに変える」ことも「スタンダードプランからフリープランに戻す」こともできる。スタンダードプランでは、実際に何通くらいのメッセージを送信するものなのか気になるところだが、水谷氏は「大規模に使っているトップ3のうち2社がECで、数百万円規模で使っている」という。
さらに、利用者からのレポーティングや運用支援の機能要望に応え、「AI応答メッセージ」「レポート機能強化」「A/Bテスト機能」「カルーセル機能」などもリリースしたほか、自由な表現やリッチなコンテンツが活用できるMessaging APIのアップデートも引き続き強化している。
さらに、チャットコマース(ユーザーが企業側と対話しながら商品を購入できる考え方、中国のSNS「WeChat」にあるような世界観)にも取り組んでいるところだという。
友だちの獲得支援
LINE公式アカウントでは友だちを多く集めることが重要だが、そのための取り組みとして、「LINE CPDスタンプ」と「友だち追加広告(CPF)」の2種類を提供している。
- LINE CPDスタンプ:CPDはCost Per Downloadの略で、ダウンロード数に応じた価格でLINEプロモーションスタンプを実施するサービス。これまで、スタンプは1,000万円からのメニューしかなかったが、「中小企業でも使いやすい価格帯や課金形式を導入した」と水谷氏。
- 友だち追加広告(CPF):CPFはCost Per Friendsの略で、友だち追加数に応じた課金形式の広告配信メニュー。従来はLINE広告の配信機能の一つだったが、 LINE公式アカウントの管理画面からも配信可能になった。
Messaging APIの活用
LINE公式アカウントから配信するメッセージの価値を高めるには、ユーザーのセグメンテーションやコンテンツの最適化が必要だ。さらに、自社の購買データや自社サイトの行動履歴と紐づけると、効果は倍増する。これを「仕組み化」「自動化」「カスタマイズ」することが最も重要であり、そのためにはMessaging APIの活用が必要となるが、テクノロジーパートナーとの連携でそれを実現しているという。
LINE公式アカウントのEC事業者事例
続いて、テクノロジーパートナーであるスタークスの大塚真吾氏が、実際にLINEを活用して成果を上げているEC企業の事例を紹介した。
スタークスは主にカスタマーサービスのシステムを提供しているが、大塚氏は、LINEのメッセージは開封率が非常に高く、あらゆる業界でLINEを活用した成功事例が出ているとして、「LINEでカスタマーサービス対応したお客様のリピート率が2倍になった旅行サイト」「フォームからLINEに変えて新規問い合わせが10倍になった不動産サイト」などの事例をあげた。
一方で、EC企業はまだLINEを使いこなせていない印象だといい、セミナーなどで理由を聞くと、おおむね以下の3点に集約されるという。
- 「LINEはメルマガツール」という勘違い
- 顧客DBとLINEアカウントが連携しないと効果がないと思っている
- 「EC×LINE活用の全体像」がわからないため、本気で取り組んでいない
しかし、大塚氏がさまざまな導入支援をしてわかったのは、“LINEはECのフルファネル(全てのステップ)で使える”ということだ。
キャンペーン(メルマガ)はもちろん、「集客」「CV獲得」「CS決済」「CRM」「物流」など、ECのフルファネルで使える。しかも、開封率が高いので、部分的に使っても業績がアップする(大塚氏)
さらには、LINE活用をフルファネルで使うためのステップ(戦略)も明確になりつつあり、LINE公式アカウントなどのアップデートに見るように実現コストも下がっている。大塚氏は、まずECでのLINE活用の全体像として、以下の図をあげた。セッションでは、このうち赤く囲んでいる3つの用途について解説した。
CV獲得
離脱対策にLINEを使うことで、新規CVを獲得できる。方法は、ECサイトやLPから離脱した顧客に、LINE Botで友だち追加を促し、コミュニケーションを続けてコンバージョンしてもらうというものだ。
カスタマーサポート
カスタマーサポートの負担を減らすために、電話とメール以外にボットによる自動回答も増えている。そして、WebチャットよりもLINEの方が慣れているという人が多い。
たとえば、以下の図は、「カスタマーサポートからのメールを、顧客がなかなか見てくれない」という課題を解決するためにLINEを使った事例を示している。メールが未開封の顧客に対して、「カスタマーサポートからメールで返信しているので見てください」というメッセージを送るというものだ。プッシュ通知を活用することで、メールを見てもらえる可能性が高まるのだという。
決済や発送など、メールが届かないことで機会損失につながるケースもある。開封率が高いLINEの特長を活かすことで、売上貢献だけでなく、カスタマーサポートの工数削減に寄与することができる。
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)
よくあるアプローチに、「クーポン付きバースデーDM」をLINEで送るというものがある。LINE公式アカウント運用では友だちの数が重要だ。バースデーDMを送ることで、ブロック率が抑えられる効果もあるという。
その他、コミュニケーションを取りやすいLINEの特長を活かして、試着代行のサービスを行っているアパレル企業の事例も紹介された。自分の体格などを伝えると、同じような体格の店員がその服を着てみせてくれるというものだ。また、LINEはアンケートを取りやすいため、どのような悩みがあるかをアンケートし、その結果をMAのセグメントに使う化粧品会社の例もあるという。
LINE公式アカウント活用の3ステップ
LINE公式アカウントの特長としては、以下の2点があげられる。
- 開封率が高い
- コミュニケーションがとりやすい
一方で、課題もある。
- 友だちが増えないと売上へのインパクトが出ない
- さらに効果的に運用するには、顧客DBとLINEアカウントを紐付ける必要がある
これを乗り越えるための戦略として大塚氏が紹介したのが、次の図が示す3ステップだ。
最後に大塚氏は、EC業界歴12年、LINE活用1,000社から得た気づきとして以下をあげ、講演を締めくくった。
- LINEは、電話/メール/DM/SNS/自社アプリと比べても、圧倒的なポテンシャルがあるプラットフォームである
- 集客からCRMまでフルファネルで活用できる
- どの順番で取り組めばよいか、全体戦略が見えつつある
- とはいえ、いきなり完璧にしようとせずに、各社にとって効果のでる活用法から始めればOKで、それで業績はアップする
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