Web広告研究会セミナーレポート

“マーケティングの再定義”から見つめ直す、デジタル時代の「顧客体験」【ニューバランス 鈴木健氏】 ― 第33回WABフォーラムレポート(2)

Web広告研究会の第33回WABフォーラム。セッション第1部にニューバランス ジャパンの鈴木健氏が登壇し「デジタル時代の顧客体験」について語った。
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この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

「“マーケティングの再定義”は“競争場所”と“ノウハウ”から」「カスタマージャーニーを理解したうえで体験を提供することが重要」――ニューバランスの鈴木健氏考える「デジタル時代の顧客体験」の真意とは?

公益社団法人日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会(以下、Web広告研究会)は3月25日に、第33回WABフォーラムを開催。2019年のWAB宣言「Web/デジタルの枠を超えて、顧客の期待を超える体験を」に続くセッション第1部では、ニューバランス ジャパンの鈴木健氏が登壇し「デジタル時代の顧客体験」について語った。

■「Customer Experience at Center(顧客体験を中心に)」ということ

<写真:Web広告研究会 幹事 イノベーション委員会 委員長 鈴木健氏(ニューバランス ジャパン DTC&マーケティング ディレクター)>

鈴木氏は「マーケティング畑を15年ほど歩んできたが、最近、担当領域が直営店やEコマースなど、直接販売するチャンネルに変わった。本日のテーマにも近しいものがあると思う」と挨拶してセミナーをスタートした。

まずデジタル時代におけるマーケティングでは、TV視聴時に他のデバイスを使う割合が、すでに77%に達しており、TVは1番目ではなく2番目のスクリーンに位置付けが変化した。同時にSNSでの意見をもとに購買する人が74%存在するなど、 “スマホで生きる世代”いわゆるミレニアル世代が台頭してきたことも大きな変化だという。

<図:TVは“第2のスクリーン”に位置付けが変化>

ではこの“スマホで生きる世代”のユーザーたちは、どのようなメディアをどう利用しているのだろうか。

鈴木氏は会場で、こうした世代のインフルエンサーが「5分間でどのようなSNSでどれぐらい使いこなしているか」を観察した動画を上映。ムービーでは3人の若者が登場し、Instagram、Twitter、LINEにとどまらず、17Live、TikTok、Snowといったアプリも並行して起動して、投稿・会話を行うとともに、コンテンツを楽しむ様子を映し出していた。

動画内で彼らが行った「インタラクション数(いいねやリプライ、投稿や動画閲覧などを行った数)」で見ると、5分で147回、68回、34回と回数も多くばらつきはあるが、ある種の傾向が見てとれるという。それは「検索でもググらない。InstagramやTwitterで情報を探していること」だと鈴木氏は指摘。こうした特徴を踏まえ、IoT(Internet of Things)が注目されているように、“IoE(Internet of Everything)”すなわち「 インターネットにつながっているものすべてを視野に入れ、マーケティングを再定義することが課題」だとした。

■“マーケティングの再定義”は「競争場所」と「ノウハウ」から

この“マーケティングの再定義”という課題に対して、鈴木氏はまず「競争場所の再定義」をあげた。

例として、AmazonがDash Buttonの提供を停止することに触れ、「これはDash Buttonが機能しなかったのではなく、生活者の行動を見たうえで、バーチャルダッシュでもいいのではないかと判断した結果。まさに競争場所を再定義した結果」だと説明した(Dash Buttonは、ネットにつながる物理的なボタンで、ボタンを押すだけで決められた消費財などが自動的にアマゾンで注文されるというものだった)。

<写真:変化について語る鈴木氏>

「たとえば、洗剤のテレビCMなどは、認知を向上させ、バイヤーが店舗の棚を確保する補助の目的でやっていた。習慣行動化している場合は、棚の前でブランドのプレゼンスが高いのが一番よかったが、それが棚の前から家に変わったのがDash Buttonだった。さらにそれがスマホに変わったということだ」と解説。スマートスピーカーのEchoも、そうした発想の延長上にあり、 “スクリーンの次にくる競争場所”という意味合いがあるという。

また鈴木氏は、新しいイノベーションとして「3つのGo」を挙げる。
・移動型ゲームのPokemon GO
・無人店舗のAmazon Go
・人工知能のAlpha Go
これらはカテゴリとしてはバラバラでテクノロジーも異なるものだが、いずれも新しい“体験”を生み出すものとして注目だれている。

そして「 これまでの経験ややり方ではない、新しいノウハウの再定義」も必要だとし、「ミレニアル世代、それに続くZ世代は、スマホを使いこなしているが“体験”も求めていることがヒントになる」「リアルな体験がもっとも影響力を持つ」とする米国での調査結果を紹介した。

■これからの店舗は「体験やつながりを提供する場所」に

続いて鈴木氏は、
「リアル店舗はメディアになる」(ダグ・スティーブンス『小売再生』より)
「小売というのは、“人”と“物”をつなぐ“場所”である」(劉潤『新・小売革命』より)
といった言葉を引用しつつ、「キャッシャーのない店舗」「体験しかしない店舗」が誕生しつつあると最新事情を紹介。

氏が属するスポーツ業界では、他店舗にある商品を購入できるサービス、店のどこからでも支払いができるサービスなども登場しているという。中国では、アリババやシャオミーといったIT企業もストアを作り始めている。“リアル体験のデジタル化”の実践が進んでいる印象だ。日本ではTRIALなどがあげられる。

<図:小売とは、“人”と“物”をつなぐ“場所”>

■カスタマージャーニーを理解したうえで体験を提供することが重要

「音、味、興奮といった体験は五感に寄って作られる。五感は場所で明確になる」――そんなキーワードとともに鈴木氏は、「たとえばコンサート会場の写真を見たときに想像される音があると思うが、そのイメージはその場所が定義しているものだ。だからクラシカルな雰囲気の会場写真を見れば、クラシック音楽のイメージが浮かぶ(ロック音楽を想像することはない)」として、夜の飲み屋街、熱狂的なサッカー会場、さらに、会場全体でプロジェクションマッピングを行っている美術館などのスライドを見せていく。

<図:コンサート会場の写真を見たときに、どんな音が想像できるか>

こうした 体験について考えていくことが、冒頭にもあげた 「顧客体験を中心に(Customer Experience at Center)」という方向性につながる。具体的な顧客(ペルソナ)の具体的な目的(旅の終点)にそってどのような体験(そのひとの感情的反応)をしているかを一連のプロセスで示すのがカスタマージャーニーだが、そのなかに体験が含まれる。「カスタマージャーニーを把握したうえで、きちんと体験を提供することが重要だ」(鈴木氏)。

そしてカスタマージャーニーや体験では、
・店舗やブランドとの出会いという「Personalize(1st MoT:最初の真実の瞬間)」
・実際に使用して感じる「Achieve(2nd MoT:第2の真実の瞬間)」
といった既存の顧客接触の前段階として、
・情報を通じて商品の価値に気づく「Discover(Z MoT:最後の真実の瞬間)」
がある点にも言及する。一般に“体験”というとAchieveのみだと思われがちだが、実際にはその前にPersonalizeやDiscoverの段階が存在する。「このすべてを“体験”として考えないといけない」と鈴木氏は指摘する。

<図:カスタマージャーニーにおける3つ体験のモデル>

あわせて鈴木氏は、顧客中心アプローチの1つとして「ジョブ理論」を紹介した。人が何かを買ったり利用したりするのは、その商品を“役務を果たしてもらうために雇う”という考え方から、機能面などで商品を取捨選択しているという考え方だ。

<図:ジョブ理論は多くのマーケターが言及している考え方だ>

このようにさまざまな観点から「体験」を語った鈴木氏は、「 広告からストーリーテリングへ(From "Advertising" to "Storytelling")」という言葉を掲げ、「顧客が何を体験したがっているかに応じて、メッセージを伝えることが今後さらに重要である」として、セミナーを締めくくった。

3月25日(月)第33回WABフォーラムレポート(3)

3月25日(月)第33回WABフォーラムレポート(4)

3月25日(月)第33回WABフォーラムレポート(1)

(C)2019Web Advertising Bureau. All rights reserved.

Web広告研究会サイト掲載のオリジナル版はこちら:
“マーケティングの再定義”から見つめ直す、デジタル時代の「顧客体験」【ニューバランス 鈴木健氏】 3月25日(月)第33回WABフォーラムレポート(2)(2019/05/23)

※記事初出の時点で誤記がございました。訂正してお詫び申し上げます。(編集部 2019/07/02)
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