サイトリニューアル成功のカギを握る「4つの確認事項」とは?/失敗しない! はじめてのサイトリニューアル(連載第1回)
自社サイトを運営していると、じつにさまざまな理由でサイトリニューアルの機会はやってきます。
- 自社サイト経由の問い合わせが伸びない
- 検索エンジンからの集客が毎年減り続けている
といった明確な理由にもとづいて行われる例はまれで、
- 競合サイトがリニューアルしてから景気がよさそう
- 世の中のデバイストレンドに自社サイトが乗り遅れている
- ブランドリニューアルにあわせて自社サイトも一新したい
など、なんとなくリニューアルをしようという雰囲気になって始動することも少なくありません。
そういった「なんとなくリニューアル」では、デザインや機能、コンテンツの充実など、「どのように作るか」に目が行きがちです。しかしながら、どんなにカッコよくて、先進的な機能を搭載したサイトであったとしても、結果に繋がらなければ、リニューアルは成功とは言えません。
結果とはすなわち、会社の売上や利益への貢献です。経営的な視点で見れば、リニューアルの成否は、
- リニューアル前より、どれぐらい会社の利益に貢献できたのか
その1点で判断されることになります。
そのため、企業の事業戦略や営業戦略に基づき、「何のためのリニューアルか」「どのように自社事業に貢献できるか」という視点で、Webサイトのあるべき姿を最初に描くことがポイントになります。
以上の観点から、リニューアルを始める前に、あらかじめ確認しておくべき事項は4つあります。
- 事業や組織におけるWebサイトの役割
- 数年後を見据えた「目指すゴール・ありたい姿」
- リニューアルの目的
- 経営計画・事業計画との整合性
順番に説明していきます。
1.ビジネスプロセスマップでサイトの役割を確認しよう
リニューアルにあたり、まず現時点で、Webサイトが自社事業や組織の中でどういう役割を担っているかを把握しておく必要があります。
現状を把握しておかないと、そもそも何のためのリニューアルなのか、そのためにどの機能を改善するのかという目的が立てられないからです。
現状を把握するには「ビジネスプロセスマップ」が便利です。
ビジネスプロセスマップとは、事業を構成する要素がどのように関連しているのか、プロセス全体を見やすいようにした図のことです。
ビジネスプロセスマップを作ることにより、Webサイト、バックエンドシステム、関係部署、顧客の関係性と、事業への貢献度、ボトルネックなどを洗い出すことができます。
このように図示化して整理することで、並行して以下の2つの内容を把握しましょう。
リニューアルサイトに関連している自社サイトやシステムはどこか?
サイトのリニューアルは、他のサイトやシステムにも影響を及ぼします。対象サイトへのリンク元やリンク先との調整が必要になったり、バックエンドで使用している社内外とのシステム連携についても見直しが必要となったりすることがあります。
自社サイト以外へも影響が及ぶ場合には、それらのサイト、システム担当者とも連携しなくてはなりません。各所の改善要望も意見として聞き入れることで、より良いリニューアルを実現できます。
リニューアルサイトに関連している部署はどこか?
サイトやシステムでの繋がりがなかった場合であったとしても、営業部門がそのサイトを使って営業や提案活動を行っていたり、広報・IR部門が企業情報提供のためにさまざまな媒体でサイトを紹介していることも考えられます。
サイトの見やすさ、使いやすさといったUI/UX観点での改善は、実際にサイトを活用している社内の声を聞くことも重要になるため、それら関係部署へのヒアリングなどは忘れずに実施しましょう。
2.数年後を見据えて「目指すゴール・ありたい姿」を考えてみよう
リニューアルしたサイトはその後、最低3年、長くて5年は使い続けることになります。
ですので、サイトリニューアル直後のことだけではなく、数年後のサイト運営、事業計画、経営計画を見越した準備ができるように情報を収集しておかなくてはなりません。
今回リニューアルの対象になっているサイト(およびその事業)は、自社の中で中心的な位置付けでしょうか? それとも、立ち上げ期でさまざまな挑戦を求められる位置付けでしょうか? それを知るために、自社の経営計画(中期計画)や事業計画を確認してみるといいでしょう。
日々、サイトを運営している担当者としては、どうしても自分の運営しているサイトを中心にものごとを考えてしまい、運営の中で気づいた細かな改善点やお客様の声に応えたくなります。
会社が、サイトに対していつまでにどういう成果を期待しているのかを確認し、その成果に応えられるだけの受け皿を用意しておくことが求められます。
たとえば、以下のような経営計画の各項目があれば、そこからサイトリニューアルで注力すべきポイントも想像できるかもしれません。
経営計画の項目 | リニューアル時の注力ポイント |
---|---|
売上利益計画 | 利用者数や取引数、アクセス数の増加に耐えられる環境を準備 |
開発投資計画 | 機能開発などサイトに関わる投資がある場合は実現時期などを把握 |
商品、市場別の計画 | グローバルナビゲーションやカテゴリ追加ができるようにサイトを設計 |
翌年度重点商材 | サイトの中でもっとも目に入る、アクセスしやすい箇所に配置 |
リニューアルしたあと数年後の経営計画から逆算して、WebサイトのKPIをそれぞれどれぐらいに引き上げたいのかなど、「目指すゴール・ありたい姿」を決定します。
3.リニューアルの目的を設定しよう
「目指すゴール・ありたい姿」が決まったら、Webサイトの「現状・実態」と比較して、Webサイトの果たすべき役割や改善点の概要を洗い出しましょう。
「現状・実態」と「めざすゴール・ありたい姿」の差が、今回のリニューアルによって解決すべき課題であり、リニューアルの目的、すなわち「アクションプラン」となります。
すべての改善を一度に実施することが難しい場合も多いため、その場合は、その改善が及ぼす成果を定量的に表し、施策優先度を付けておくといいでしょう。
また、実際にリニューアルプロジェクトが始まる際に作成するRFP(Request For Proposal:提案依頼書)では、
- 必ず実現したいこと(MUST要件)
- できれば実現したいこと(WANT要件)
に分けておくことで、予算に合わせて、どこまでをいつまでに実現するかを検討する材料にもなります。
4.経営計画・事業計画とすり合せてみよう
リニューアルの目的を設定したあと、改めて自社の経営計画や事業計画と照らしあわせます。
リニューアルの目的や方針が固まれば「あとは推進あるのみ!」と言いたいところですが、プロジェクトを開始する前に、目的や想定スケジュール(いつまでにリニューアルしたいか)に、経営計画と齟齬がないかを最後に念のため確認します。
ここで齟齬があると、推進しているプロジェクト期中での軌道修正を余儀なくされることも起こりえます。もし齟齬がある場合は、調整してから着手した方が、結果的にスムーズにサイトリニューアルのプロジェクトを推進できます。
早くリニューアルに着手したいという思いをいったん抑えて、振り返ってみましょう。
今回は、おもにサイトリニューアルを取り巻く定性的な情報を収集してから、目的を策定する手順をご紹介しました。
この連載では、我々ナイル株式会社がWeb・SEOを中心としたデジタルマーケティング支援のなかで手がけたサイトリニューアルの実績や経験をもとに、どうすればサイトリニューアルをスムーズかつ効果的に実施できるかを解説していく予定です。
次回は、自社サイトと競合サイトを定量的に比較して課題の洗い出しを行う方法について詳しく説明します。
ソーシャルもやってます!