Web広告研究会セミナーレポート

7800万ユーザーが利用するLINEの「データ活用」と「広告がもたらす価値」

Web広告研究会の11月月例セミナー「アドテクノロジーとデータ活用が健全に機能する時代は本当にくるのか?」の第1部をレポート。
Web広告研究会セミナーレポート

この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

インターネットやスマートフォンの普及に加え、IoTやAI活用が加速し、企業が取り組むべき「データ」の量は膨大になってきている。一方、個人情報保護法やGDPRなどによって、プライバシーへの配慮も、より厳しく求められるようになった。「データ=資産」という捉え方は、企業だけでなく個人にとっても同じで、“守るべき大切なもの”という認識が重要だ。

Web広告研究会の11月月例セミナーは、「アドテクノロジーとデータ活用が健全に機能する時代は本当にくるのか? ~企業や個人が安心してデータを活用(提供)できる世の中にするために必要なこと~」がテーマ。第1部では、7800万ユーザーが利用するLINEが、プラットフォーマーの視点からデータ活用の課題を考察した。

※肩書きや数値などはセミナー当時のものです。

ネット時間の8割をアプリで消費、月1回以上起動するアプリは30個程度

LINE株式会社
エンタープライズ事業部 事業部長
LINE Ads Platformセールス・コンサルティング室長
大阪オフィス代表
池端 由基 氏

まず池端氏は、「我々を取り巻くビジネス状況には、さまざまな課題がある。それがプラットフォーマーの環境、データに対する捉え方などに変化を生み出している。LINEでも、どのように価値あるデータを取得するか、そのやり方を変化させている」と前置きし、具体的な説明を進めた。

LINEが実施したインターネット利用調査によると、10~30代に加え、40~50代以上でもモバイルのインターネット利用が定着している。

またニールセンによれば、スマートフォンの利用時間のうち80%はアプリで消費されているという。一般的なユーザーの場合、「月に1回以上」利用するアプリは30個、そのうち「10回以上」利用するアプリは12個だった。12個のアプリには、日常的に使う「メール」「検索」「地図」「乗り換え案内」なども含まれているため、アプリ市場が激戦区だとあらためてわかる。

「人の集まる場所を見極めることが重要。10回以上の利用を目指すのが重要だが、優秀なライバルが多く、ベンチ入りすら難しい状態だ」(池端氏)

Nielsen Mobile NetView 2016年7月発表データより

「日々変わっていく人の気持ち」をデータとして読み取る重要性

データといっても、Web/アプリ/デバイスなど多数の切り口があり、1st/2nd/3rdパーティなど取得方法によって精度も量も変わる。「今、データの取得方法も価値も変わってきている。価値あるデータ、本当に必要なデータについて熟考し、どう再定義するかが大切だ」と池端氏は指摘する。

本当に必要なデータをもう一度考えてみる

日々の生活のなかで多様なアプリやサービスに触れる現在、ユーザーの気持ちは変化しやすい。そして、ユーザー行動のなかには感情の変化が現れる。「リスティング広告の効果などで考えると、やはりその瞬間のユーザーの気持ちやモチベーションがひも付いたものの効果が高い。そうした観点から、日々変わっていく人の気持ちをデータとして読み取ることの重要性が高まるだろう」と池端氏は考察した。

データからユーザーの感情を読み取るには、データが1つのキー(1 ID)で管理されている必要がある。また、初期登録情報でなく、日々変わっていく情報を常に拾い上げる必要もある。これらを可能にするのがプラットフォームだ。

必要なデータを取得するために重要なこと

データの取得と活用におけるLINEの戦略

現在、LINEのユーザー数は約7800万人超。そのうち85%がほぼ毎日LINEを使用している。「毎日ログインするLINEで、どう揺れる感情を捉えるか」という部分では、「多くの行動の起点になるプラットフォーム」ということを意識しているという。

LINEは、コア事業として広告、戦略事業としてFinTechとAIを展開。サービスにおいても、主軸のコミュニケーションサービスのほか、それに連携する形で、ニュースやショッピング、フードデリバリー、保険、決済などを提供している。

こうした展開が目指しているのは、LINEの「スマートポータル」化だ。LINEがあらゆる行動の入り口になれば、1 IDでさまざまなデータを取得できるため、データの価値がさらに高まる。

LINE法人事業では、1st/2nd/3rdパーティデータを付き合わせ、取得したデータからセグメントを生成し、「LINE Ads Platform(運用型広告)」「LINE Sales Promotion(販促施策)」「LINE Account Connect(LINE公式アカウント関連)」といった商品でデータ活用を行う、「データドリブンマーケティング」のサイクルを目指しているという。

「1 IDでないと、なかなかユーザーの本当の部分が理解できない。LINEがデータの“ハブ”となり、ユーザーの日々の感情を捉えていく」(池端氏)

LINE法人事業が目指すデータドリブンマーケティング

データ利用は「ユーザー体験をさらに豊かにする」ためにある

データドリブンマーケティグを実践するには、ユーザー行動データの取得がカギになる。一方、「ユーザーや消費者が思っているデータ利用の認識と、企業側が思惑として持っているデータや広告の認識がずれている」という問題がある。たとえば、広告にターゲティングされたくないというユーザーの声だ。

この点について池端氏は、「広告が本来もたらす価値」という観点から説明する。広告の役割は、目に見えないお金以上の価値や、想い・思い出を知覚・体験させるものだと、池端氏は話す。データやテクノロジーは手段でしかなく、「お金以上のストーリー、目に見えないお金以上の価値を体験・認識してもらうのが、広告本来の役割」だという。

データ利用が与える広告価値とはなにか。たとえば、熊本市はLINEアカウントを活用して、災害などの緊急情報、地域のお得情報など、「地域住民に役立つ、価値のあるデータ」をセグメンテーションして配信している。また、LINEは電気・ガス・航空・運輸などのインフラ企業と連携して、友だち登録していないユーザーへもプッシュ通知が行える「通知メッセージ」と呼ばれる機能を提供している。

これらは、必要性の高いメッセージをユーザーに届ける取り組みとして、ユーザーから好意的に受け入れられているという。

ターゲティング/セグメンテーション、リターゲティングは、データ活用において「無駄をなくして効率化する」という方向に働きがちだが、「“無駄をなくせる”より“価値ある情報を届ける”“体験を豊かにする”という考えが、プラットフォーマーには大事」であり、今後のLINEが目指す方向だと、池端氏は説明する。

データやテクノロジーの利用は効率化ではなく、ユーザーの体験向上のためにあるべきだ。LINEもプラットフォーマーとして同様の考えを持っているが、ユーザーと企業の間で認識の差が生まれるのは、こうした考えが伝えきれずに誤解があるからだという。

データ利用が健全に機能するためには、ユーザーの理解を得ることが重要だと、池端氏は講演を締めくくった。

「パーソナライズされた広告やサービス提供をするうえでは、ユーザーがどうすればそういった広告を受け取らなくてすむのか、ユーザー理解を含めて、自己コントロール方法を丁寧に説明することが大事。データを利用することで、生活がどのように便利になるのか、わかりやすい説明やコンテンツを通して、ユーザー理解を募っていく必要がある。こうしたコンテンツ作りも、プラットフォーマーに求められる重要な仕事。LINEとしても、コンテンツと体験を通して、ユーザー理解を後押ししたいと考えている」(池端氏)

データを利用してユーザーの体験をもっと豊かなモノにする

2018年11月27日開催 月例セミナーレポート第2部

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Web広告研究会サイト掲載のオリジナル版はこちら:
『7800万ユーザーのプラットフォーマーLINEが考える「データ活用」と「広告がもたらす価値」』2018年11月27日開催 月例セミナーレポート第1部(2019/03/13)

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