『クリエイターのための権利の本』(全6回)

引用のどの程度ならOK? 引用の5条件を理解して、正しく使おう!

ブログの記事を書く際に、書籍に乗っていた文章を引用したい。どの程度なら許される? 引用する際のルールについて解説します。Web担特別連載(第5回)

書籍『クリエイターのための権利の本』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開。

CHAPTER 3 文章・コピー
SECTION 04
どの程度の引用なら許されるの?〜著作権と引用ルール〜

Q. ブログの記事を書く際に、書籍に乗っていた文章を引用したいと思うんですが、どの程度なら許されますか? それと、引用する際のルールについても知りたいです。

引用の5条件

著作権法32 条1 項では、「公表されている著作物を引用して利用できる」とされています。ただし、一定の条件をみたすことは必要です。この「一定の条件」というのは大きく分けて以下の5つに分類されます。

Memo

第32 条
1 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

①公表された著作物であること

著作権者が公表した著作物が引用の対象となります(著作権法4 条1 項)。著作権者が未公表の著作物は引用だからといって無断で公表することはできません。また、手紙やメールなどの特定の人に宛てられた著作物も公表されたとはいえないため、この条件をみたしません(P096参照)。

Memo

この引用の条件は、特に区別性と主従関係の位置付けについては様々な整理の仕方、見解があります。どこに位置付けられるにせよ、引用の5 条件をみたしていれば適法な引用になると考えられます。

②「引用」であること

「引用」の定義は著作権法にはありません。裁判例では次の2つの条件をみたすことが必要とされています。

区別性 引用部分は他の部分と区別されている

引用はカギカッコや斜体などで、どこからどこまでが引用か区別されていなければなりません。例えば、利用する側の表現と利用される側の著作物とが渾然一体となってまったく区別されず、それぞれ別の者により表現されたことを認識し得ないようなときには引用にはなりません。

主従関係 自分の文章が「主」、引用部分は「従」である

引用はあくまでも補足的情報で、主となる内容は自分のオリジナルの文章であることが求められます。また、量と質の両面から、どちらが主なのかが判断されます。

なお、この区別性と主従関係については様々な整理の仕方、見解があります。明確な決まりはありませんが、誰が見ても「引用」だとわかるような工夫と配分を心がけるようにしましょう。

Memo

東京地判平成30 年2月21日(平成28 年(ワ)第37339 号)裁判所ウェブサイト〔沖縄うりずんの雨事件〕は、「著作物の利用行為が「引用」との語義から著しく外れるような態様でされている場合、例えば、利用する側の表現と利用される側の著作物とが渾然一体となって全く区別されず、それぞれ別の者により表現されたことを認識し得ないような場合などには、著作権法32 条1 項の適用を受け得ないと解される。」と判示しています。

③引用による利用行為が「公正な慣行」に合致し、「引用の目的上正当な範囲内」であること

引用は目的に応じて適切な量を使用し、引用しすぎてはいけません。ここでは著作権者への経済的な影響の有無など様々な事情が考慮されます。法律の条文には、引用の分量についての具体的な数字はありません。ただ、主となるべきオリジナル部分が従であるべき引用部分より少ないようでは、主従関係が明確とはいえないでしょう。なお、引用の必然性を求める見解もありますが、そこまで厳格な解釈は必要ないという理解が一般的です(中山信弘『著作権法〔第2版〕』(有斐閣、2014)324頁、作花文雄『詳解 著作権法〔第5 版〕』(ぎょうせい、2018)326頁)。

Memo

東京地判平成30 年2月21日(平成28 年(ワ)第37339 号)裁判所ウェブサイト〔沖縄うりずんの雨事件〕は、この要件について「他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などを総合考慮すべき」と判断しています。

④出典の明示

誰が書いた何という文章かの出所を明らかにしていることが必要です。ウェブサイトであれば記事タイトルとURL が該当します。書籍であれば著者名、書名、出版社、出版年の明記。雑誌であれば、雑誌名、号数、出版社、出版年、引用箇所の掲載頁を明記することが好ましいとされます。

Memo

厳密にいうと、出典の明示(著作権法48 条1 項1 号)は引用の要件ではないという見解も有力ですが(中山信弘『著作権法〔第2 版〕』( 有斐閣、2014)325 頁)、「公正な慣行」として出典の明示も考慮されるとする判決もあります(東京高判平成14 年4月11日(平成13 年(ネ)第3677 号)裁判所ウェブサイト〔絶対音感事件控訴審〕)。いずれにせよ、出典は明示しておくようにしましょう。

⑤引用部分を改変していない/引用した文章を勝手に編集してはいけない

要は引用部分を勝手に改変しないということです。

このようにルールさえしっかり守れば、参考となる文章を掲載することは著作権法で認められていますので、有益に活用しましょう。言い換えれば、引用5 条件の範囲を一つでも逸脱してしまうと著作権侵害となります。

Memo

東京高判平成12 年4 月25日判時1724 号124 頁〔脱ゴーマニズム宣言事件控訴審〕では、漫画のカットの配置を変更した行為について同一性保持権侵害とされています。

歌詞の引用

引用の対象になる著作物の種類は何も限定されていません。そのため、歌詞も文章と同様に引用のルールに沿っていれば利用可能です。ただし、歌詞の一部の引用ではなく歌詞を丸ごと載せてしまうと、引用の範囲を外れる可能性が高いです。その場合、一般社団法人音楽著作権協会(JASRAC)などの著作権管理団体から許諾を取り、使用料を支払う形が一般的です。なお、JASRAC との利用許諾契約を締結しているサービスを利用すれば利用者自身の支払いは発生しません。

JASRACとの利用許諾契約が結ばれているサービスは、JASRAC ウェブサイトで公表されています。具体的には、ブログであれば、アメーバブログ、ライブドアブログ、Seesaaブログ、Yahoo! ブログなどがあります。これらはサービス運営者がJASRACと包括的な契約締結をすることで、ブログ内で歌詞掲載が可能になっています。

Memo

JASRACとの利用許諾契約が結ばれているサービス(http://www.jasrac.or.jp/info/network/ugc.html)。

動画サイトであれば、ニコニコ動画、YouTube が該当します。プロモーションビデオ、ミュージックビデオをそのまま掲載する行為は著作権やレコード会社の著作隣接権の侵害になるのでNG ですが、「歌ってみたシリーズ」は利用許諾契約のためOK になっています。

ケース別の引用方法例

ブログやSNS における具体的な引用の例について、ケースごとに解説します。

ブログで他人の投稿、コメントを掲載する場合

ブログには読者からのコメントが寄せられることがあります。これらのコメントは、短文でありふれた表現であることが多く、その場合は著作権は発生しないこともあると考えられます。ただ、長文であったり、あわせて画像も投稿されていたりする場合には、著作権が発生することも十分ありえます。

コメントの引用は、読者とのコミュニケーションにもなるので、大きな問題につながることは、まずありません。ですが万が一に備えて、ブログの利用規約などで「投稿されたコメントは記事内での転載・引用が可能」な旨を記載し、可能であればコメント記入時に許諾を得るように設定しておきましょう。

なお、一般的なブログサービスでは、コメントを投稿した時点で著作権は「サービス提供会社」もしくは「ブログ管理者」に移行するという規約を設けています。しかし、投稿者がコメントを投稿すると規約に同意したとまで認められるかは定かではなく、契約の有効性の問題になります。

ブログ管理者がコメントを使用したい場合は、著作権が譲渡されたとは考えず、適法な「引用」として利用するのが安全です。

Memo

経済産業省「電子商取引及び情報材取引等に関する準則」(平成29年6月)198 ~ 199頁参照

FacebookやTwitterなどのSNS 投稿を掲載する場合

投稿を単純にコピー&ペーストするのは著作権侵害となります。ただし、各SNS の埋め込み機能を利用すれば問題ありません。各SNS の利用規約には、埋め込み機能を使っての引用や転載を承諾する旨が記されています。埋め込み機能の利用は簡単なので、ぜひ活用しましょう(図01)(図02)。

図01 Twitterのツイートを埋め込む
図02 Facebookの投稿を埋め込む

YouTube 動画を掲載する場合

YouTube の投稿も埋め込みができます(図03)。なお、埋め込み自体はリンク先のサイトからユーザーに著作物のデータが直接送信されるため、原則として著作権侵害ではありません。しかし、TV 番組や有名人のPV 集の無断アップロードなど動画自体が著作権侵害であることを知りながら、又は不注意で埋め込みをする行為は、著作権侵害になるおそれがあるので注意が必要です。

図03 YouTube動画を埋め込む

Memo

  • 大阪地判平成25 年6 月20 日判時2218 号112 頁〔ロケットニュース24事件〕
  • 知財高判平成30年4月25日(平成28 年(ネ)第10101 号)裁判所ウェブサイト〔リツイート事件控訴審〕

イラストや写真、動画を掲載したい場合

引用のルールに沿っていれば、イラストや画像も掲載可能です。例えば、マンガのコマについても、解釈・批評を行うために引用として使う必要がある場合は問題ありません。画についても同様です。ただし、違法アップロードされた画像や動画を引用すると、出典として記載したURL が違法コンテンツへの誘導とされる可能性があります。引用する場合は公式がアップロードした画像や動画以外の引用は避けるべきです。

COLUMN

SNSのアイコン

SNSのアイコンなどに、芸能人やキャラクターの画像を「引用」や「私的使用目的の複製の範囲」として使用している人がいます。これらは、条件をみたしていないので引用にもあたりません。また、非営利で使用していると主張しても、公に利用していることが明確なので私的使用目的の複製にはなりません。

Memo

引用の条件をみたさなくても著作権者が許可していれば、もちろん利用可能です。佐藤秀峰氏による漫画「ブラックジャックによろしく」は、クレジットを明記して公開後

に、メールで報告をすれば、自由に二次利用ができるようになっています。(http://mangaonweb.com/company/download/way.html

引用は非常に便利な仕組みです。条件をしっかりと理解した上で、積極的に活用しましよう。
まとめ
  • 引用は著作権法32 条1 項で規定されている5 条件をみたしている場合に限り認めれられる。
  • 文章のみならず、画像や動画も5 条件をみたしていれば引用可能。
  • 引用は無条件の転載を許可するものではない。条件をみたしていない場合は違法となる。
  • SNS の投稿を引用する場合は埋め込み機能を利用しよう。

※Web担特別転載では掲載のないページの注釈も原文のまま掲載しています。指定のページやChapterご覧になりたい方は、書籍でご確認ください。

クリエイターのための権利の本
  • 著者:大串肇、北村崇、染谷昌利、木村剛大、古賀海人、齋木弘樹、角田綾佳
  • 発行:ボーンデジタル
  • ISBN:978-4-86246-414-9
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