建物に著作権はある? 写真の撮影許可は必要? トラブルになるポイントを解説
書籍『クリエイターのための権利の本』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開。
CHAPTER 2 写真・イラスト・デザイン
SECTION 04
東京スカイツリーなどの写真を利用する際は許可が必要?
Q. 東京をイメージするデザインを作るために、東京スカイツリーの写真を撮影して素材として使用したい。こういう時って、建物の持ち主に許可を取らなきゃだめ?
建築の著作物の自由利用
一般住宅など、ごく一般的な建造物については著作権を気にする必要はありません。ただ、創造的・美術的な建造物は、それ自体が絵画などの美術品と同じように著作権が発生します。
ではもし東京スカイツリーが創造的・美術的な建造物として著作物と判断された場合、写真撮影をすると複製権の侵害となってしまうのでしょうか?
著作権法は一般人の行動を過度に制約しないように原則として自由利用できるという規定を設けています(著作権法46条)。
第46条(公開の美術の著作物等の利用)
美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合
原則として建築の著作物は方法を問わず自由に使用してOK(46条はしら書き)、でも上の4つのケースに該当する場合はダメだよ(46条1号〜4号)、という内容です。
この規定によれば、たとえ著作権のある建築物であっても、写真として撮影するだけであれば、著作権法46条はしら書きの自由利用の範囲であり、特に問題はありません。
Memo
著作権法10条1項5号は、著作物の例示として「建築の著作物」をあげています。ただ著作権法では「建築の著作物」についての定義はありません。裁判所は、一般住宅の水準では足りず、いわゆる建築芸術と見られる芸術性、美術性を求めています。
大阪地判平成15年10月30日判時1861号110頁〔グルニエ・ダイン事件〕
自由に利用できない場合
「著作権者に与える影響が大きいだろう」ということで自由利用が禁じられているのは、建築物を建築により複製する(46条2号)、つまり無断で建築物を建設するようなケースです。それ以外は、例えば、建築物のミニチュアを作成することも著作権法上は自由に行うことができます。商用利用であっても同様です。
商標登録の有無に注意
著作権は問題ないとしても、商標には注意が必要です。例えば、東京スカイツリーは、その名称、ロゴ、シルエット、立体形状などが商標として登録されています(商標登録第5143175号、商標登録第5822813号(図01)、商標登録第5476769号(図02)、商標登録第511134号(図03)など)。
登録商標は、指定商品との関係で商標の使用を独占するという制度です。ランドマークに使用されるような建造物は、東京スカイツリーと同様に商標登録されているケースがあるので注意が必要です。
スカイツリーのような誰でもわかるランドマークの建物で、建物の写真を使ってはいけないというわけではありません。問題は名称、ロゴ、シルエットや立体形状などが商標として登録されていることがある点です。写真やイラストを利用する際はこの商標を侵害してはいけません。
Memo
「東京スカイツリー」(名称)商標登録第5143175号
Memo
東京スカイツリーの場合は、「東京スカイツリー知的財産使用に関するお問い合わせ」ページで問い合わせを受け付けています。(http://www.tokyo-skytree.jp/property/)
「太陽の塔」は建築物?
大阪の万博記念公園に設置されている岡本太郎「太陽の塔」は、いわば「大きい美術著作物」であって、建築著作物ではないという解釈もあります(阿部浩二「建築の著作物をめぐる諸問題について」コピライト467号(2000)16頁)。「美術の著作物」とも「建築の著作物」とも解釈されうる著作物については、著作権法46条4号、つまり、専ら販売目的での複製が許容されるかどうか違いが出てくるため、その利用には慎重な判断が必要です。
- 特定の建築物を撮影して素材として利用しても著作権法上は問題ない。
- 写真をベースにどのような素材をどの商品に使用するかによっては商標権を侵害するおそれがある。
- 商標権の判断は難しいので専門家に相談するなど慎重に検討すべき。
※Web担特別転載では掲載のないページの注釈も原文のまま掲載しています。指定のページやChapterご覧になりたい方は、書籍でご確認ください。
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