『リードビジネス“打ち手”大全』(全11回)

リードは熟すまで待て! ポイントは営業担当のノウハウを「仕組み化」

リードを獲得したからといってすぐに顧客になってもらえるわけではありません。相手が検討している期間に「買う気」を引き出す仕掛けを紹介します【第6回】

書籍『リードビジネス"打ち手"大全 デジタルマーケで顧客を増やす 最強の戦略86』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開。

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ナーチャリングとは
時を待つことである

リード育成プロセスは営業に学ぼう
Chapter 3 育成と判定 「買う気」を引き出す仕掛けの数々

リード育成(ナーチャリング)のプロセスに「こうすれば成功できる」と言える普遍的な必勝法はありません。営業部門が持つ自社ならではのノウハウを言語化・手順化して取り込んでいくことが重要です。

リード育成は相手の検討を「待つ」プロセス

「リード育成」という用語には少し補足が必要です。英語の「Lead Nurturing」を訳して「リード育成」としていますが、自社の思い通りにリードを「育て上げる」ことを表すわけではありません。

リード育成とは、リードの成約見込みが高まったかどうかを判定し、営業活動に入るため営業部門に引き渡すまでの間、関係を維持する手法や過程のことです。「育てる」よりも、育つのを「待つ」ことだと考えて取り組むべきです。

営業の持つノウハウをデジタル向けにアレンジしよう

では、具体的に何をして「待つ」のがいいかというと、「こうすればいい」と言える画一的な方法はありません。「メールマガジンを配信する」「Webサイトの情報を充実させる」といった基本中の基本といえる施策はありますが、それだけでは不十分で、営業部門に引き渡せるまでリードが育つのは、ずっと先になるでしょう。

育成プロセスの施策は、自社の営業担当者が行っている営業活動を参考にして、デジタル向けにアレンジしてください。訪問先の企業で提案を行って案件化したり、獲得したばかりの見込み顧客から話を聞いて顧客化したりするノウハウを、営業担当者は持っているはずです。

しかし、そのノウハウは言語化されていなかったり、他者がやっても再現できなかったりすることも多いでしょう。本書の冒頭では「嗅覚」と表現しましたが、しばしば営業担当者が持つノウハウは「勘と経験と度胸」(略して「KKD」)のように揶揄されることもあります。

簡単なことではありませんが、自社の営業担当者が持つノウハウを何とかして言語化し、「仕組み化」することから、リード育成を始めましょう。以下の内容を営業担当者からヒアリングし、リード育成の方針としてまとめていってください。

顧客はどのような人か?

営業担当者は、営業先を選ぶ基準を持っています。業種、職種、事業規模などといった属性も挙がると思いますが、それらとは別に「嗅覚」の働くポイントがあるはずです。

言い換えると、「このような課題や関心を持つ人には売りやすい」という条件です。例えば、デジタル文書管理ソリューションを扱う営業担当者では「長く事業を続けていて、溜まった書類の整理に困っている企業にニーズがある。顧客企業内に文書のデジタル管理に関心を持つ人がいたら、その人の相談に乗っていくことで導入まで話が進みやすい」などといった話を聞き出しましょう。

このことから、リードの中から「業歴が長い」「書類のデジタル化に高い関心がある」という属性にあてはまる人を選んで営業に引き渡せば、案件化の可能性が高いと考えられます〔図表49-1〕。なお、対面の営業では業歴や書類のデジタル化への関心を会話の中で聞き出せますが、デジタル接点を使うリードビジネスでは、アンケートを実施するなど、聞き出し方を別途考える必要があります。

営業の「嗅覚」が働くポイントを聞き出す〔図表49-1〕

優先的に対応する対象は?

営業担当者が同時に対応できるリードの人数には限界があります。そのため、どのような状況や属性のリードを優先的に営業に引き渡すべきかを決めましょう。

例えば「事業規模が大きい相手を優先」「事業所が近い相手を優先」のようなものを確認します。

成約に至る有効な手は?

営業担当者のノウハウを聞き、デジタル接点のコミュニケーション施策で代替する方法を考えます。例えば「検討期間が長いため、月に一度は顔つなぎで訪問する」ということなら「月に一度のメールマガジン」によって関係の継続を図ります。

また「ある程度検討が進んだ相手には、試用機を1、2カ月試してもらうと話が進みやすい」というノウハウがあったら、検討が進んだと見られるリードに対して、メールで試用をすすめるようにします

言語化したリード育成の方針をまとめておく

営業担当者から聞いたノウハウを、リード育成の方針としてまとめましょう。ヒアリングした内容(前段を参照)から、「営業対象」「優先順位」「育成施策」の3つの項目を簡潔に言語化します。

「営業対象」は「顧客はどのような人か?」と聞いた内容から、ターゲットとしたい業種、職種、企業の事業規模などの一般的な属性と、「嗅覚」の働くポイントとなる条件を挙げます。

「優先順位」は、聞き出した優先的に対応する対象の条件をまとめます。「育成施策」は「成約に至る有効な手は?」で聞いた内容から、デジタル接点を使って行う育成施策の案を書きます。 以下のように、表にまとめるとわかりやすいでしょう〔図表49-2〕。この内容をもとに、以降で具体的な施策を考えていきます。

リード育成の方針をまとめる〔図表49-2〕

まとめ リード育成に、どの企業でも使える決まった方法はありません。自社の営業部門が持つノウハウを取り入れ、デジタル用に変換して手法化しましょう。

過去に著者が行った、「Web来訪者の購買マインドを育成する、リードナーチャ リングの施策と可視化」についてのセミナー内容が、動画付きでご覧になれます。是非ご覧ください。

Web来訪者の購買マインドを育成する、リードナーチャリングの施策と可視化

↑動画・記事はこちらから

『リードビジネス“打ち手”大全』
  • 上島 千鶴 著
  • 発行:インプレス
  • ISBN:978-4-295-00319-9
  • 価格:2,500円+税

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「勘と経験」や「足」だけに頼るのでないデジタルデータを活用した、新しい顧客との関係の作り方を、企業のマーケター・営業担当者・経営者向けに解説します。展示会に出展するとき、メールマガジンの運営に悩むときなど、実際にリードビジネスに取り組む中で突き当たる課題や問題に、具体的な“打ち手”を提案。困ったときに開けば、必ず状況を切りひらくヒントが見つかります。

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