8月のGoogleコアアルゴリズム更新はYMYL狙い撃ち? E-A-Tとの関係は? 順位変動データで分析
グーグルが8月に行った広範囲なコアアルゴリズムのアップデートに関してデータで解説する。どんな規模だったのか? 順位が上がったサイトと下がったサイトの傾向は? YMYL(お金と人生)カテゴリのサイト狙い撃ちだったのか? E-A-T(専門性・権威性・信頼性)シグナルの捉え方との関係は?
グーグルは8月に「広範なコアアルゴリズムのアップデート」をリリースしたと発表した(ダニー・サリバン氏の@searchliaisonアカウントを通じて)。アルゴリズムトラッカーやウェブマスターのSNSでは、Moz自身のMozCastシステムも含めて、数日間にわたり検索順位に大きな変動があったことを確認した。
上図のMozCastでは検索順位の変動を「気温(華氏)」で表しており、気温が高いほど激しく変動していることを表している。8月1日~2日に(いずれも華氏114度あたりで)ピークを迎え、検索順位の変動は4日間続いた(紫色のバーはすべて114度を超えている)。この傾向はやや落ち着いたが、8月7日のデータはまだ変動が続く可能性を示唆している。
8月2日には、MozCastで2018年の最高値となる114.4度を記録した。注意してほしいのは、MozCastは当初、平均気温が70度になるよう調整していたが、2017~2018年の平均気温ははるかに高くなっているということだ(2018年は90度に近い)。
カテゴリ別の変動率
8月のアルゴリズムアップデートは、いわゆるYMYL(Your Money or Your Life:お金や人生)に関するクエリを対象にしたもので、健康関連のサイトに大きな影響を及ぼしたとの憶測がある。MozCastは、20のキーワードカテゴリに分類される(おおむねGoogle Adsのカテゴリに対応している)。以下は、8月2日のカテゴリ別の気温だ。
一見すると、「健康」カテゴリが最も影響を受けているように見える。このカテゴリのキーワードは、その日の平均気温が124度だった。
ただし、8月1日にはすべてのカテゴリで気温が100度を超えたことに注意してほしい。これは、1つのカテゴリが爆発的に上昇し、残りのカテゴリには変化がないという状況ではない。
さらに注意するべき点がある。この傾向は、気温が大幅に上昇した他の3日の間に変化し、他のカテゴリの方が高い平均気温を示したという点だ。今回のアップデートは複数日にわたり、広範なカテゴリに影響を及ぼした。
勝者となった上位30サイト
では、このアップデートによって(現時点で)大きな恩恵を受けたのは誰だろう?
僕はいつも、勝者と敗者の分析をすることをためらってしまう。特にパターンを見つけるには便利なのだが、多くの落とし穴があるからだ。その理由は次の2つだ。
何よりもまず、アルゴリズムのアップデートとは何の関係もない多くの理由で、サイトのSERPのシェアが増減する可能性がある。
第2に、勝者と敗者の分析はどれも、特定の時間を切り取ったものにすぎない(そして大抵の場合、それはわずか1日のことだ)。
このアップデートが複数日に及んだことは分かっているので、僕は7月31日から8月7日までのSERPシェアの増加率(または減少率)を調べることにした。この分析で、「シェア」とは、MozCastのデータセット1万件の中で検索結果の1ページ目に表示される割合のことで、加工していない値だ。
僕はこの分析を、7月31日のデータセット全体で少なくとも25件表示されるサイトだけに限定した(これを下回ると、データのノイズが非常に多くなってしまうからだ)。上位30サイトを次に挙げる。
最初の列(7-Day %)は7日間の増加率だ。
最後の列(Share)は全体のシェアだ。これは、巨大サイト以外のすべてのサイトできわめて低くなっている(Wikipediaは5%台という高い水準で推移している)。
分析に深入りしすぎる前に、2番目の列(Max %)に注意してほしい。これは、そのサイトの7月におけるSERPシェア最高値からの変動率だ。そのサイトがもともと変動しやすい性質かどうかは、7日間のシェアを見ても分からない。
それを端的に示しているのがtime.com(27位)だ。TIMEは7日間でシェアが19.5%増加している。これは素晴らしいことのようだ。しかし最終的なシェアは7月の最高値から54.4%減少した。ニュースサイトとして、TIMEの検索順位は変動しやすい性質があるため、このことがアルゴリズムのアップデートと大いに関係があるかどうかは分からない。
同様に、7月の最高値が8月7日のピーク値に近いかそれを上回っているサイトとしては、次のようなものがある:
- LinkedIn(3位)
- AMC Theaters(5位)
- OpenTable(21位)
- World Market(24位)
- MapQuest(25位)
- RE/MAX(28位)
これらのサイトの増加率は割り引いて考えてほしい。
敗者となった上位30サイト
同じ分析を、減少率が特に大きかったサイトに対しても行える。この場合、「Max %」(最大比率)は7月の最低値に対して計算したものだ。ここでも、7日間の減少率が7月の最低値からの減少率と大きく異なるように見えるサイトには注意されたい。
最初の2つの列を比較すると、すぐに目に入るのはVerywell Health(7位)だ。このサイトは7日の間に52.3%減少したが、7月の最低値からは200%強も増加した。このサイトのSERPシェアは7月の第1週には非常に低い値で推移していたのが、その後、急激に上昇している。興味深いことに、Verywell Family(2位)とVerywell Fit(11位)も敗者の上位30サイトに挙がっており、ここに特別な事情があることを示唆している。
なお、Prevention(1位)やLIVESTRONG(5位)などの大企業を含め、このリストにある健康関連サイトの傾向はつかみやすい。このリストがアルゴリズムのアップデートによって打撃を受けたすべてのサイトを表しているかどうかは不明だが、僕たちのデータは確かに、他の人たちが目にしている状況を反映しているように思われる。
E-A-Tを備えているか
今回のアップデートは、グーグルが先ごろ検索品質評価ガイドラインを変更したことに関連しているとの憶測がある。
しかし実際には、新しいガイドラインに基づくマニュアル評価が原因で(しかもこれほど早く)検索順位に大きな変動が生じる可能性はきわめて低い。とは言え、ガイドラインの更新と今回のアルゴリズムのアップデートが、品質に関して共通の哲学的視点を持ち、このテーマに関するグーグルの最新の考え方を共有していることは十分考えられる。
また、YMYLとのつながりを理論化したマリー・ヘインズ氏の記事では、グーグルがE-A-T(Expertise:専門性、Authoritativeness:権威性、Trustworthiness:信頼性)のシグナルをより詳しく観察する可能性があるとの見解を挙げている。
確かに興味深い理論だが、僕のこのデータセットではそうした問題に適切な答えは出せない。
- フォーチュン(敗者24位)
- IGN(敗者23位)
- Android Central(敗者27位)
などのサイトの順位が低下したことは、健康関連以外の垂直カテゴリにおける権威性や信頼性について興味深い疑問を投げかけているが、わずかな外れ値だけを根拠に推測するのはためらってしまう。
現時点でのアドバイスとして、今回のアップデートはまだ段階的なリリースの途中か調整中の可能性があるので、引き続き注視していく必要があるという点だ。
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