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アリババ創業者ジャック・マーがビジネスマンに贈る12のメッセージ

アリババグループの創業者で現在は会長のジャック・マー氏が、早稲田大学が輩出した3人の企業家と、来場者からの質問に答えた。

この記事は、姉妹サイトネットショップ担当者フォーラムで公開された記事をWeb担当者Forumに転載したものです。

「人からの信頼はどうすれば得られますか?」「挫折してしまう起業家を勇気づけてください」「日本企業にとって、中国市場はまだチャンスがありますか?」──。4月25日、早稲田大学大隈講堂に集まった若者たちからの質問に、アリババグループの創業者で会長のジャック・マー氏が答えた。

「人を信頼したいならまず自分が信頼を得なければならない」「意見が合わなくてもチームに入れるべきは裏表のない人」。ジャージ姿でリラックスした様子のマー氏が、リーダーとしての心構えから、未来のITや教育、そして中国EC市場などについて語った。

左からジャック・マー氏、今林 広樹氏(早稲田大学大学院基幹理工学研究科博士課程、EAGLYS代表取締役)、葦苅 晟矢(あしかり・せいや) 氏(早稲田大学大学院先進理工学研究科博士課程、エコロギー創業者)、玉城 絵美 氏(早稲田大学 創造理工学研究科 総合機械工学専攻・准教授、H2L創業者)
左からジャック・マー氏、今林 広樹氏(早稲田大学大学院基幹理工学研究科博士課程、EAGLYS代表取締役)、葦苅 晟矢(あしかり・せいや) 氏(早稲田大学大学院先進理工学研究科博士課程、エコロギー創業者)、玉城 絵美 氏(早稲田大学 創造理工学研究科 総合機械工学専攻・准教授、H2L創業者)

ジャック・マー氏(以下、敬称略):私は小さい頃から日本のテレビを見ていましたから、早稲田大学を知っていました。今日参加してくれた3人のアイデアを聞いて感動しています。素晴らしいアイデアを持った人には課題がある。その課題は通常、成績が優秀な人から出るものです。

学問に邁進したい人は起業家にはならないでしょう。起業家になるのは学校の成績が悪い人です。成績が優秀なら大企業に勤めることはたやすいかもしれません。私を含めた成績の悪い人間は雇ってくれる企業がないから起業するしかなかったのです。

私が人々に必要だと思っているのはIQ(Intelligence Quotient/知能指数)とEQ(Emotional Quotient/心の知能指数)、そしてLQ(Love Quotient/愛の指数)です。愛も必要なんです。気持ちが大事。IQ、頭が抜群に良ければ成功は簡単かもしれません。EQ、苦難を乗り越えた上で人と上手く付き合うことができればチャンスも開けるし成功できます。でも、LQがなければどんなに成功しても尊敬されることはありません。愛すべき人になれません。愛される人にならなければなりません。成功にはこの3つのバランスを取ることが必要だと思います。

起業家には情熱とビジョンが必要です。ビジョンは人と違うものでなければなりません。99%の人と同じビジョンでは勝算はありません。違うからこそ勝てるのです。そして情熱が必要です。私はアリババを19年間経営してきました。この19年、毎年、毎月、いや毎日、他の人から「自分たちが正しいことをしているのか」「仕事と呼ぶのにふさわしいものだろうか」「本当にそんなことが実現できるんだろうか」と絶えず問われます。従って、起業家は自分がやることに信念を持っていなければなりません。

ベンチャーキャピタリストに信じてもらうためではなく、資金のためでもない。人が「良い」と言うことを信じてはだめです。自分が自分なりの方法でしかできないことがあると自信を持ってください。人と違うからこそ起業家なのです。自信があれば「自分を信じてくれ」という言葉の説得力も増します。最初から世界中の人々を説得しようと思っても無理です。最初は自分の周りのチームの人たちだけを引っ張っていければいいんです。自分のビジョンを信じて共有してくれる人をまずチームとして引っ張っていってください。

人と意見が合わなくても心配することはありません。時間と努力が証明してくれます。ビジョンそのものが証明してくれるのです。時間が味方してくれる。これがビジネスの成功に共通した鉄則です。明日、来年にすぐ結果が出るとは思わない方が良い。明日、勝てると思いますか? 世の中そんなに簡単ではありません。5年、10年先を見越して、心底自分がコミットできること。人に反対されようが嫌われようが、自分が「これだ」と思ったものがあるなら、それを良くしていくことにコミットすべきです。それは私の生き方そのものです。みなさんもそうしてください。

ジャック・マー氏

質問① どうしたらチームメンバーからの信頼を得られますか? また、責任を持って働いてもらうにはどうしたらいいですか? 
─今林氏からの質問

ジャック・マー人を信頼したいなら、まず自分が信頼を得なければなりません。自分を信じてもらうこと、それが一番大事なことです。その後で、自分が信頼できる人でチームを組みます。本当に裏表なく有言実行する。シンプルに、裏表のない人をチームに入れるべきです。意見が違っていても、そういう人をチームに入れるべきです。

信頼を得るためには悪い時も良いときも率直に話さなければなりません。隠し事はいけません。そして、みんなが落ち込んでいるときは良い話をする。みんなが浮かれているときは少し釘を刺すというようにします。

信頼関係とはすぐにできるものではありませんが、創業期にチームに加わった人なら、ゴール、ターゲット、ビジョンに信頼を寄せてくれれば容易に引っ張っていくことができます。自分自身への愛や忠誠心からでなくてもいいのです。

私はチームに「一緒に戦おうとしているもの、それを愛し、それに賭けてくれて、信じてくれ」と言いました。最初からは難しいことかもしれませんが、長いことやっているとその方がたやすいです。

ビジネスは楽しいです。人との付き合いそのものですから。成績が優秀な人はビジネスモデルやテクノロジー、製品について考えることにとらわれ過ぎていることが多いですが、これから創業する起業家なら、少なくとも持っている時間の30%は人に充てなければなりません 雇う人、一緒に仕事をする人の声によく耳を傾けてください コミュニケーションをしっかり取ってください。

ジャック・マー氏と今林氏

質問② アリババ創業当時のビデオを見ました。どうやってチームに「我々は正しい方向に向かっているんだ」と信じてもらったのですか? 
─今林氏からの質問

ジャック・マー私はラッキーでした。17名の創業メンバーは私の話を聞いてくれました。そして私ほどスマートでもなかった(笑)。外から引き合いもなかった。誰も我々がスマートだと思っていなかったからです。我々は行き場がなかった。だから結束したんです。

いま、みんながスマートな人を雇おうとしている。でもスマートな人を管理することは難しい。MBAを持っている全員がその会社のトップになることは難しい。みんなが戦略を議論したがる。でも、現場の仕事はなかなかしない。スマートでない人の方が管理しやすい。彼らは自由な発想を持っています。

自分たちの将来についてどうやって信じてもらうか? 毎週、毎日、毎時、毎分、彼らに語り続けるのです。そうやって彼らも私と同じ考えを持つようにする。アリババというのはそうやって成長したのです。みんな若く、問題は次々と起こりました。しかし、問題をオープンに語り合いました。それしか方法がなかったのです。そうして少しずつ、10年先、15年先のビジョンを持って、来月、来年のゴールも設定し実践することで、毎月、毎年、進歩することができると彼らに証明します

私は特に人をキープしようとはしません。でも、ミッションとビジョンは最初から共有します。共有できればみんなは会社にとどまる。残ってくれればもちろん良いんですが、辞める人もいても良いと思います。友だちとして、パートナーとして仕事をする限り、人としてお互い信頼感を持って接することができる。それがすべてなんじゃないですか?

質問③ 世界の食糧危機をどう考えますか? 昆虫をタンパク源とするという私の考えをどう思いますか?
─葦苅氏からの質問

ジャック・マーセッションに参加されている皆さんは世界が抱えている問題を解決しようと思っているんですね、会社を大きくしたいと思うならば、より大きな問題を解決すれば会社は大きくなります。でも大きな会社は責任も大きいのです。それはお金のことだけでなく責任そのものが大きい。

我々は長生きしたいと思っています。日本はとっくに長寿国家ですが、30年先にはデータとテクノロジーのおかげで120歳まで生きるかもしれないと言われています。想像してみてください。世界の人口は今70億人ですけど、それが150億人くらいになります。しかし、世界にそれだけの食料のリソースはない。水もない。環境も足りない。大きな問題です。日本はそれほど食料問題を抱えていないかもしれませんが、考えてください。世界には本当に食料の問題があるんです。次の10年、20年の間にはこれはもっと大きな問題になるでしょう。

昆虫を食べるという話は勇敢ですね。私はちょっと考えたこともありません。昆虫はどちらかというとペットとして一緒にいたいですね。食べ物としてはどうだろう。今日の話はとても興味深いのでリサーチしてみます。海老も昆虫として考えるならば、海老は受け入れられます(笑)。

質問④ あなたはいろいろな企業に投資をしていますが、大学の研究をビジネスにする時に大事なポイントはなんですか?
─葦苅氏からの質問

ジャック・マー需要がマーケットにあるかどうかということです。私はそれほど多くの研究者を知りませんが、論文を書くことに熱心な先生が多い。我々が主眼にしているのは「成果を出せるか」ということです。多くの企業が研究室の研究を支援する流れになっているが、なかなか上手くいっていないと思います。というのは、今まさに芽生えようとしている分野は研究室の中にあるかもしれませんが、大学の外にもどこにでも知識が偏在しています。大学だけに知識が集中する時代ではありません

むしろ、例えば研究者が我々のような企業をフォローする方がいい。我々はどこに投資をしたら良いのか、どこに需要があるのかわかっています。 どちらかというとビジネスが先行して、それを支援する研究を大学の研究室はするべきではないかと思います。これは私個人の考えで、こんなにたくさんの大学の先生の前で言うのは恐縮ですが、あえて率直なことを言うとそう思うのです。研究者の頭の中にあることをビジネスにするのは大変難しいことです。

質問⑤ あなたの話し方はとてもユニークですが、どうやってその話し方を身に付けたのですか?
─葦苅氏からの質問

ジャック・マー確かに「ジャックは話し方が上手だね」と人に言われます。でも私は考えるのが得意だと思います。人とは違う発想を持っているということです。つまり、言葉が上手いわけじゃない。中国語も上手くないし、英語も聞いておわかりのように「OK(まあまあ)」というか、通じるかもしれませんが先生から見ればどうでしょうか。

中国でも日本でも、多くの学生は読むことはできても話せない。どうしても臆してしまうんですね。恥ずかしがる必要はありません。人に自分をわかってもらうため、コミュニケーションのために臆せず話すべきです。少なくとも私の英語はドナルド・トランプの中国語より上手いでしょう。そうでしょ?

私の仕事は人を説得することですから、どういう言葉を使うかということよりも、自分がどういう考えを持っているか、それをしっかり伝えることの方が大事です。なので、私の話し方は美しくないと思います。ただ、違う着想点をみなさんに紹介したいです。私の会社のメンバーは「仕事」を担っていますが、私は「話すこと」を受け持っています。これは人の考えをシェアするための話をすることです。

話す上でまず大事なのは、裏表なく本当のことを言うこと。それして、自分の考えを伝えること。つまり、ジャック・マーが何を考えているのか?それを伝えることです。新聞に書いてあることを言うだけでは、他人の時間を無駄にするだけです。私の話を聞きに来ている人は、それだけ時間をかけてくれているわけですから、私だけのユニークな着眼点を話さなければなりません。話を長く引っ張る必要はありません。ポイントを絞って切り込む話し方が大事です。

ジャック・マー氏と葦苅氏

質問⑥ 視覚だけでなく音や体の動きなどをシェアするサービスに取り組んでいます。そういったサービスはアリババでは人気が出ると思いますか? また、あなたはどういった経験をシェアしたいですか?
─玉城氏からの質問

ジャック・マーとても面白いアイデアですね。考えたこともありませんでした。よく「ジャック、登山は好き?」と聞かれて「良いですね」と答えると、「じゃあヒマラヤに登りませんか?」と言われるので「それは遠慮します」と言っています。ただ、「山頂までのエレベーターができたらヒマラヤに行きますよ」と言っています。しかし、この視覚を共有するというのは面白いですね。ヒマラヤにエレベーターができるのを100年も待たずに、登山経験が共有できそうです。

私が怖いのはスピード。スカイダイビングのような急に落ちる感覚が怖いんです。ただ、怖いけど安全なら共有したいですね、経験として。それは着眼点として面白いと思います。私は筋トレが嫌いなんです。だから寝ている間に誰かがやってくれて、それが自分の筋トレになるとか、ボディーがいろいろ用意されていて、その日に好きなボディーを使う、そんな筋トレプログラムがあると良いですね。500年後には実現するかもしれません。

アリババがそういったシェアリングサービスをするとしたら、世界中の人に他国の文化、歴史、立ち振る舞い(行動)を経験してほしいと考えますね。今は必ずしも平和が保証された時代ではありません。他の国の人に対して、互いに尊敬し合うということが必ずしもないからです。他国の文化や場所を共有でき、「他の人はどう感じているのか?」ということをシェアできれば素晴らしいと思います。

共有できれば世界はもっと相互理解が深まると思います。相互理解が深まればもっと結束できると思います。そしてもっと平和になり、互いに支え合えるようになるでしょう。非常に良いアイデアだと思います。

質問⑦ 多くの起業家が早稲田大学から誕生しています。でもギブアップしてしまうこともあります。彼らを勇気づけるメッセージをお願いします。
─玉城氏からの質問

ジャック・マークリエイティブでしっかりとしたビジョンを持ち、自分が何を求めているのかはっきりとわかっていても、それでも簡単ではありません。誰もが起業家になれるわけではありません。アイデアがあるからといってすぐに起業家になれると思ってはだめです。

でも、チームに参加してアイデアを持っている人と一緒になり、そこで経験を得るということはできます。ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグのように学校を辞めるという考えは持たないでください。退学して成功する人は少ないんです。100人の起業家のうち、95人はあなたが知らない間に失敗するんです。残りの5人のうち4人が死んでいくのをあなたは目撃します。本当に成功者として残るのは1人です。それも運が必要です。チームが優れているから生き残る1人になれるのです。

起業家ならば責任をしっかり取らなければならない。参加してくれるチームのメンバーに対して責任を取らなければならない。もしあなたがチームに参加するなら、お金のために戦うことではなく、人々の生活をより良くし、変えていくという経験を得られます。

起業家としての経験は素晴らしいものがあるけれど、決して簡単なことではありません。厳しいことが多いです。ですから、学生に言うのは「試すことにコストはかからないでも。ギブアップしてはいけない。始めたのならやり続けてほしい」ということです。

ジャック・マー氏と玉城氏

質問⑧ 「アリヘルス」のビジネスは何をゴールにしているのですか?
─来場者からの質問(大学院で生物学を学ぶ男子学生)

アリヘルス(阿里健康)のスクリーンショット
アリババグループのヘルステック部門「アリヘルス(阿里健康)」
http://www.alihealth.cn/

ジャック・マー人類には2つの目的があると思います。幸福(Happiness)と健康(Health)です。何をするにしてもそうです。この世界に生まれたのは勉強するため、仕事をするためだけではない。幸せに健康に生きるために生まれたのだと思います。それを私たちは「2-H戦略」と呼んでいます。「アリヘルス」はデータテクノロジーやAIを使い、みんなが幸せで健康に生きることを目的としたサービスです。

次の30年、人類は大きな変化を経験するでしょう。ガンや難病も問題にならなくなるかもしれない。寿命も長くなるでしょう。それはデータのおかけだと確信しています

AIやマシンラーニング、ロボティクスの話をします。マシンは人間よりスマートになる。でも人間の方が知性を持つでしょう。マシンはマシンができることを改良していくでしょう。でも人は人しかできないことを磨いていくでしょう。人間はこれまでの200年、世界中で何が起こっているかを把握したがったが、次の100年ではデータの発達により、人々は自分たちのことを把握することになります。 データを使った健康産業では、人間が内なる自分自身を知ることになると思います。

従って、質問者が専攻している生物学の役割は大きいと思います。人類を助けているのです。人間の幸せと健康をサポートすることは我々の喜びです。「アリヘルス」はデータを使って人というものを理解し、健康を高めることに焦点を当てています。

質問⑨ ITはどのように教育を変えると思いますか? そしてその中でアリババはどのような取り組みを行いますか?
─来場者からの質問(女子学生)

ジャック・マー私が思うに、ITは教育を変えると思います。あるいは、教育を変えるためにITを使う、その両方ができると思います。今後30年、データ技術によって世界は大きく変わります。多くの仕事はなくなるでしょう。ただ、多くの新しい仕事が出てくるでしょう。そうした新しい職業の雇用に人が対応できないかもしれない。そのために教育を変えなければならない

世界中のほとんどの大学は大きな課題に突き当たるでしょう。教育制度は変える必要があると考えるのはそのためです。例えば、機械学習の方がより早く計算できるし、落ち込むこともないし、いつもハッピーでいつも賢く、疲れることもない。とても子どもは追い付かないでしょう。従って、いかに機械と違うことを学校で学び、将来の仕事に就くための技能を付けるかということが大事です。私もそれを心配しています。

いま私は中国で中等、高等教育をそれぞれ独自に立ち上げています。生徒にはもっとクリエイティブで革新的で建設的になるよう、教える試みをしています。ダンスやスポーツをしながらクリエイティブである人を生み出したいと思っているのです。

生徒にもっとクリエイティブで革新的な人、建設的な人となるよう教えるには、ハートが大事だと考えています。賢明な知恵というのはハートからです。知識は頭かもしれません。機械にはチップはあるけどハートはありません。

人間ができることはいくらでもありますので心配はありません。ただ、教育は抜本的に見直す必要があるでしょう。ITがあろうとなかろうと、いずれにせよ将来を考えるべきです。特に教育改革に注力すべきです。教育改革に早く取り組んだ国が来たる未来に追いつけるでしょう。遅れればトラブルになるでしょう。

ジャック・マー氏

質問⑩ 日本のメーカーにとって中国市場は可能性があるのでしょうか? 「Taobao」に出店した方が良いですか? それとも独自でやるべきでしょうか? 
─来場者からの質問(化粧品メーカー勤務の女性)

ジャック・マー宣伝をする機会を与えてくれてありがとうございます(笑)。21世紀は女性がますます重要になって、男性よりも自己主張が強くなっていますが、それは良いことです。アリババの秘密の1つは、社員の47%が女性だということです。どの国でもどの会社でも、優れた組織にしたいなら、もっと女性を雇用するべきです。女性はユーザーフレンドリーです。21世紀では女性がますます重要になってきます。

ご質問に答えると、大きなチャンスがあります。日本の製品が中国にどんどん進出しています。中国には3億人の中所得者がいます。次の10年、15年で5億人が中所得者になります。優れた商品を待っています。日本には優れた商品やサービスがたくさんあるので、中国に行って市場を開いてください。TmallやTaobao、Alibabaを使わなくても、行ってできることをとにかくやってください。そして商品を改良してください

もちろん日本は課題を抱えていると思います。日本の何百万という中小企業がそういった課題に直面します。日本の銀行に勤めている人から聞きました。高齢化が進んでいる。そして、子どもたちは親の仕事を継がない。それは日本にとって、また人類にとって大きな損失だと思います。 技術や知識はしっかり共有するべきです。中国に限らずアフリカでも東南アジアでもどこでもそうだと思います。ですからグローバルにオープンマインドでどんどん進出してください。これがすべてだと思います。

ジャック・マー氏

質問⑪ 中国人留学生が就活でとても苦労しています。 
─来場者からの質問(男子学生)

ジャック・マーどの国でもどの大学でも、学生にとって仕事を探すことは難しいことですよ。誰も容易に仕事には就けません。世界はこんなに広いのですから、日本だけで仕事を探さないことです。世界中どこにでも仕事はあります。自分が心地良いと思っているテリトリーから離れて仕事を探すべきです。男性だろうが女性だろうが、持っているビジョンを共有し、一緒に戦ってくれる同士を探しましょう。志を同じくする人、つまり自分にコミットできるか、そこに自己犠牲を伴って完遂できるか、それが重要なことだと思います。

早稲田に留学しているのですから、素晴らしい日本の企業はいくらでもあります。そういうところも就職先として考えたらどうですか? 日本と中国の橋渡しは重要ですから、日中関係の友好関係をさらに強められる人を大学から雇うことは、アリババとしても大歓迎です。

ジャック・マー氏

質問⑫ 日本の企業で不祥事が問題になっています。信用を失ったとき、それをどう再構築すればいいのでしょうか。 
─来場者からの質問(男性)

ジャック・マー信頼というのは短期間では得られません。信頼をなくしてはまた回復する。信頼はずっと保証されるものではないのです。私も父から長年信頼されませんでした(笑)。 信頼を得てもまた失う。でも決してあきらめないことが大事です。人からの信頼を得られるようにあきらめないということです。ビジネスでお客さまからの信頼を失ったときも、友人や同僚やパートナーから信頼を失ったときも、決してあきらめてはいけません。

誰もが過ちを犯します。私もそうでした。この19年間、いろんな問題がありました。他の人から「ジャック、アリババはすごく大きくなったね」と言われますか、あまりにも多くの過ちがありました、自信を失うこともありました。

取引先からの信頼を失うこともあります。例えば模造品がサイトにたくさん掲載されている場合どうしますか? 泣き寝入りですか? クレームを入れるだけですか? いや、ここでは信頼を取り戻すために是正措置を取らなければならない。1年だけでなく、これから100年以上ビジネスをやっていくためには、信頼を回復しなければなりません

信頼を回復してはまた信頼を失うということの繰り返しです。従って、起業家としてはいろんな種類の異なるお客さまから、いつでも信頼と尊敬を得られるように努めなければいけません。創業者、株主、お客さま、従業員、パートナー、そしてメディアといったお客様からいかに信頼を得るか。それが企業の仕事です。

幸か不幸か互いに信頼しない世の中になってきています。だから通商摩擦も起きています。現代にはあまりにも多くの問題が山積みとなっていますが、決してあきらめてはいけません。信頼は得るだけではなく積み上げて作っていくものなのです。

オリジナル記事はこちら:アリババ創業者ジャック・マーがビジネスマンに贈る12のメッセージ(2018/05/21)

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