インターネットがコンピューターをつなぎ、言語が人をつなぐ。企業が翻訳しないならユーザーがする
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この記事は、第1章「翻訳経済の新しいルール」から、1-1「インターネットがコンピューターをつなぎ、言語が人をつなぐ」と1-2「企業が翻訳しないならユーザーがする」の内容をお届けします。
インターネットがコンピューターをつなぎ、言語が人をつなぐ
フランス、ブラジル、日本の人が英語のWebサイトを閲覧できるからといって、彼らがそれを理解できるとは限らず、ましてやそこで買い物をするかどうかはわかりません。
そんなことは世界トップ企業の幹部たちもよくわかっていると思うかもしれませんが、彼らは私たちとは全く異なる世界に住んでいます。ある国のある企業のCEOが、別の国の企業のCEOを訪ねるとき、おそらく共通語として英語を使用するでしょう。経営層が次第に、世界中の人が英語を使いこなしていると思うようになるのも無理はありません。しかし、相手が英語を話し、理解するからといって、他の従業員や顧客もそうであると言えるでしょうか?いいえ、実際にはそうではありません。
英語教育は世界中でかなりの割合で行われていますが、実際のところ、ほとんどの人が英語をすらすらとは話せず、今後もそうはならないでしょう。これは、多くのアメリカ人が数年かけて第二言語を学んでも、その言語をすらすらと話せるようにはならないのと同じことです。英語は世界のリングワ・フランカ(母語が異なる人どうしの共通語)かもしれませんが、ほとんどの人にとっては常に第二言語です。最も重視されるのは母語です。円グラフは今日、34億人いるインターネットユーザーの母語を示しています。
インターネット上で現在最も使用される言語は中国語で、これに英語、スペイン語が続いています。しかし、上位10個の言語をサポートしたとしても、膨大な数のインターネットユーザはカバーできないままです。このグラフで最も大きい部分を占めているのは「その他の言語」です。この部分には、イタリア語、オランダ語、スウェーデン語、ヒンディー語、タミル語など100以上の言語が含まれています。今後10年間で新たに10億人のインターネットユーザーが増えると、この割合はさらに拡大するでしょう。英語の割合は縮小する一方です。
インターネット上での英語のWebサイトの重要度が下がるわけではありません。英語はグローバルWebサイトを開設する企業にとって、デフォルトの言語であると考えられます。しかし、グローバルな成功を望む企業は、英語以外のWebサイトの追加や拡張を続ける必要があるのです。
母語で話す:マルチリンガルインターネット
インターネットは、利用する人、そのためのコンテンツを作成する人、それを通じて買い物をする人の姿を鏡のように映し出します。インターネットユーザーが増えるにつれ、この鏡は世界中の多くの言語を映すようになるでしょう。
グローバル化の際に経営層が確認する最も一般的な質問は、どの言語をサポートする必要があるかということです。翻訳は安くはありません。それに1回支払ってそれっきりの静的リソースでもありません。原文が変われば、それを翻訳したテキストも変えなくてはなりません。ほとんどの企業がそうするように、日常的にテキストを作成したり更新したりする場合、翻訳のコストは大きくなります。
言語は目的達成のための手段であるため、言語戦略を開発する最もスマートな方法は、ターゲットとするユーザーから考えることでしょう。中国本土、ドイツ、フランス、イタリアで成功しようと思えば、簡体字中国語、ドイツ語、フランス語、イタリア語をサポートする必要があります。グローバル化への野望が大きいほど、言語サポートにかかるコストも大きくなります。何年かかけて言語を増やしていくのが確実です。次のグラフは、各企業が2004年から2017年にかけてサポートした言語数の合計を示しています。
Facebook、FedEx、Adobe、Appleなどの企業は、過去10年間でサポートする言語の数を倍に増やしています。
今日、インターネットを使用する人々の大部分は英語を母語としていません。こうした人々の購買力が増すと(これは確実です)、企業やその競合他社は、これらの新しいインターネットユーザーに彼らの母語で語りかけるようになるでしょう。
企業が翻訳しないならユーザーがする
世界で最も普及している翻訳ツールは何でしょうか?
おそらく皆さんも使用したことがあるGoogle翻訳です。このツールは過去10年かけて発展してきました。次の図は2006年におけるGoogle翻訳のスクリーンショットです。当時、中国語、日本語、韓国語はまだベータ版でした。
次の図で示すように、Google翻訳は長期にわたって言語を追加し続けてきました。
Google翻訳は、現在では全インターネットユーザーの99%をカバーする100以上の言語をサポートしています。
Google翻訳がどのように普及してきたかを理解するために、2016年における利用状況を見てみましょう。
- 1日に1,000億語が翻訳される
- 全世界に5億人のユーザー
- 最もよく使用される翻訳は、英語、スペイン語、アラビア語、ロシア語、ポルトガル語、インドネシア語のいずれかの組み合わせ
- Google翻訳の一番のヘビーユーザーはブラジル人
機械翻訳が言語を民主化する
Google翻訳は機械翻訳エンジンとして知られています。この言葉が生まれたのは、コンピューターが機械と呼ばれていた数十年前です。いかに長い間、エンジニアたちが人の言葉を翻訳できるコンピューターを作り出そうと取り組んできたかがわかるでしょう。
2006年には、Google翻訳の品質は非常に悪く、多くの翻訳者はこれが人間の翻訳者に取って代わることはないだろうと考えていました。現在では、コンテンツの要点を理解するには十分な品質であるものの、まだ人間の翻訳者に取って代わるほどではありません。企業はプロの翻訳者に依頼してユーザーマニュアル、Webサイト、ソフトウェアを翻訳しています。
しかし、それ以外の私たちにとってはGoogle翻訳で十分です。それに、1日に1,000億語も翻訳できるほどプロの翻訳者はいません。普通のWebユーザーが、プロにお金を払ってまで外国のWebページを翻訳することもありません。こうした状況にぴったりフィットするのがGoogle翻訳です。現在、皆さんの会社のWebサイトも、きっとGoogle翻訳を利用してユーザーの言語に翻訳されていることでしょう。
そこそこの品質が完璧に勝る
Google翻訳の成功は、全く翻訳がないくらいなら、そこそこの品質の翻訳でも人々はすんなり受け入れることを示しています。Google翻訳が「一般の人々」に翻訳をもたらしたのです。これにより世界中に門戸が開かれ、言語への期待が高まりました。驚きに値しませんが、現在では多くの大企業が機械翻訳を使用しており、中には1ヶ月に数十億語を翻訳している企業もあります。Intel、Autodesk ※7(次の図を参照)、Adobeなどの企業は現在、ユーザーが一部のWebページを自動翻訳できるようにしています。
多くの企業がこれに続くでしょう。企業がWebサイトを翻訳するか、それともユーザーが翻訳するかのいずれかです。
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著者が運営するBlog「Global by Design」の日本語訳を手がける、株式会社ミツエーリンクスの木達一仁氏が監訳! Web担当者、Webマーケター、広報・PR担当者はもちろん、Webデザイン/サービスのデザイナーやアプリ開発者など、幅広く役立てていただけます。
推薦コメント:木達一仁(監訳者)
日本の将来の景気低迷を懸念する記事を多く目にする昨今、日本企業は今後ますます海外に目を向け、インバウンドとアウトバウンドの両面からビジネスの拡大を検討することになるでしょう。ビジネスの、ひいては自社のWebサイトやアプリのグローバル化に取り組もうとされている皆さんにとって、本書が良き手引きとなることを願ってやみません。
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