AIが接客する未来は実現するか? AIコミュニケーションの現状課題と、サイバーエージェントのAI研究
1月31日にレッジが六本木アカデミーヒルズにて開催した、『THE AI 2018』。その中から、サイバーエージェントのセッション「人をAIが接客する世界」を前半と後半に分けてお伝えします。
前半部は、サイバーエージェントの中で、AIを活用した広告配信技術の研究・開発を目的とした組織「AI Lab」の主任研究者である馬場さんのセッション。
接客におけるAI活用の課題やロボットを挟んだ、三者間コミュニケーションの研究についてプレゼンをしていただきました。
株式会社サイバーエージェント AI Lab研究員/大阪大学 招聘研究員。
研究組織AI Labの接客対話の研究に従事。大阪大学石黒研究室との共同研究講座を主導。
サイバーエージェントの「AI Lab」とは?
- サイバーエージェントが得意とする広告配信技術へのAI活用を研究
- 機械学習、計量経済学、コンピュータビジョン、自然言語処理、HAI/HRIなどを専門とするさまざまな研究者が所属
- 複数の大学・機関との産学連携
など、広告配信技術の工場を目指して、企業内で閉じずに大学と共同しながら研究・開発を行っている研究機関。
詳細は、以下の公式ページに載っているので、ご確認ください。
今の音声対話では、本当の意味での接客はできない
まずは、音声対話を用いた接客の現状と課題について話していただきました。
現在の音声認識の正確性は99.4%。人間にほぼ近づいているそうです。また、複数人の同時発話も聞けるようになっているとか。
ただ、問題も発生しているそうです。
「問題は、『入力から対話までの時間差が出てきてしまう』ことです。音声対話は処理に時間がかかるRNNモデルを使っていたり、クラウド上で対話を処理するので遅延時間ができます。
その結果、応答の発話が遅れてしまう点が接客に活用しようとした際の問題ですね。」
たしかに、スマートスピーカーを使用した際、「話しかけてから数秒後に反応が返ってくる」という状況はよくあります。エンタメ的な使い方なら我慢できますが、接客相手としてはトラブルにつながります。
「コミュニケーション相手としては、自然な対話にならず、違和感が出てしまいます。これは、接客をする上で信頼の損失につながります。
なので、本当の意味での接客をさせることは現実的にきびしいです。」
最近、ロボットによる接客サービスは増えていますが、「本当の意味でのコミュニケーションとは何か?」を考えると、まだまだ人間の代替はできないのが現状です。
一方で、LINEをはじめとするメッセンジャーツールで見られるテキストによる自由対話はいかがでしょうか。
AIは誤認識を認識できない
「テキスト対話に関しては、一問一答に関する技術は進んでいますが、まだ実用的ではないですね。
なぜなら、一問一答では、接客の一部しかできません。質問に対して、前提を確認したり、前の文脈を読んで会話をすることができないので。
また質問の誤認識も発生してしまいます。今のAIは、『誤認識』を認識せずにそのまま処理してしまいますね。」
たとえば「今日の天気は?」みたいな質問と回答をセットで想定しやすいものは、すでに、家庭でも使われつつあります。
誤認識に関しては、間違った解釈や顧客とその友人との会話に誤って反応する状況も想定できます。話題性目的では有効かもしれませんが、「人間と同じ接客をさせる」のは厳しいのが現状、といったところなのかもしれません。
選択式対話が現実的な方法
一方で、「AIがあげた選択肢を、ユーザーに選んでもらう」選択式対話に関しては、ビジネスでも応用できる可能性があるという話も。
「違和感のないものが作りやすいのが選択式対話です。チャットボットに選択ボタンをつけたり、ロボットに選択するためのディスプレイをつけたりして比較的簡単に実装できます。
ほかの方法がないかをAI Labでも研究しています。それが、次にお話をする三者間対話です。」
クレーマーの感情を対話型AIで抑制する研究
AI Labで研究をしている「AIを交えた複数人対話」。どんなことができるのでしょうか。
「三人の話者のうち、一人が顧客、もう一人が企業側の有人サポーター。もう一人が企業側のAIエージェントの設定で会話を成り立たせる仕組みです。この状況で、ユーザーに自由入力をさせてもチャットボットの会話が破綻しない仕組みを考えました。」
そもそもの発端は、カスタマーサポートに寄せられる顧客からの理不尽なクレームをやめさせるために、AI活用を考えたことだそうです。
「1対1での対応だと、オペレーターが顧客をなだめるのは難しいです。なので、顧客と人間のオペレーターの間に会話ができるAIエージェントを交えて、三人の小さな社会を構成し、クレーマーの感情を抑制しようとしました。」
実験内容を紹介します。
仲間意識を芽生えさせたのちに、AIがオペレーターの味方をした場合、クレームが収まるのではないか?
という仮説の元に行われた実験です。
- 人間のオペレーターとクレーマー、そしてAIエージェントの間で三者間対話を行う
- AIエージェントは、最初はクレーマー側に賛同しオペレーターを批判する
- 途中からAIが批判を止めオペレーター側につく
「結果としては、顧客がAIエージェントに対して味方意識をもったことが分かりました。ただ、もともとの狙いであった怒りに関してはさらに高まってしまいました。
ただ、『AIが顧客の味方になる技術』自体は価値があります。今後、ブラッシュアップをし実際に活用していくので、続報をおまちください。」
今後、研究成果のビジネス活用を続々と進めていく
AI Labでは、今回紹介した研究例以外にも、深層学習による接客対話技術や商業施設内でのロボット接客の取り組みもしているそうです。
リアルなコミュニケーションを追求したロボット接客の実現が楽しみです。
後半では、サイバーエージェントで人とロボットのコミュニケーション研究をしている岩本さんのセッションです。
「AI:人工知能特化型メディア「Ledge.ai」」掲載のオリジナル版はこちらAIが接客する未来は実現するか?AIコミュニケーションの現状課題と、サイバーエージェントのAI研究 | Ledge.ai(レッジエーアイ)2018/02/23
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