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買い物時の対話はボットでも高まる! 「私のために感」がデジタル接客を伸ばす ―― サイバーエージェント

サイバーエージェント AI Lab主任研究者がチャットボットコミュニケーションの最前線を語る

7月26日にレッジが六本木アカデミーヒルズにて開催した『THE AI 2nd』。サイバーエージェントによるセッション「購買意欲を高めるチャットボットコミュニケーションの研究と実現」の講演の模様をお届けします。

『THE AI』

株式会社レッジが「未来ではなく、今のAIを話そう。」というテーマで主催する、大型のAIビジネスカンファレンス。具体的すぎたり抽象的すぎる話ではなく、ビジネスにおいてどの程度のコストで、どこまで活用可能か? という視点で、AIのスペシャリストたちが語ります。

THE AI 2ndの詳細はこちら

登壇者は、AIを活用した広告配信技術の研究・開発を目的としたサイバーエージェント AI Lab主任研究者である馬場氏。チャットボットコミュニケーションをどのように科学しているのかを詳しくお話いただきました。

馬場 惇

株式会社サイバーエージェント / リサーチサイエンティスト
2014年京都大学大学院情報学研究科博士前期課程修了。人工知能技術の研究組織「AI Lab」にて、接客対話エージェントの研究に従事。2017年4月から大阪大学石黒研究室との産学連携の元、招聘研究員として阪大に常駐して研究を進めている。

デジタル接客を科学する。選択式コミュニケーションの利点

インターネットで商品を購入するユーザーが増え、今やオンラインでの販売体制を築くことが必須の小売業界。そこで生まれたのが、オンライン上でも顧客に対し接客する、デジタル接客という概念。

馬場氏によると、デジタル接客には以下3つの種類があるといいます。

  • 音声認識
  • テキストによる自由対話
  • 選択式対話
――馬場
音声認識でいうと、その正確さは今や99.4%。人間と近いところまできています。

しかし入力 → 対話の処理をクラウド上で行うため、遅延が生じます。デジタル接客ではユーザーとの自然な応対が求められるため、音声だと対話に違和感が生じてしまうという課題があります。

一方、一問一答形式の自由記述はどうでしょう?

自然言語処理技術は進んでいますが、質問の前提や、文脈を織り込んだうえでのコミュニケーションが未だに難しいので、接客のごく一部しかカバーできません。また、質問の誤認識が発生すると、コミュニケーションにひずみが生じてしまいます。」

こうした技術的ハードルのなか、現実的なデジタル接客を実現できるのが「選択式対話」なのだそう。

音声認識で発生するようなコミュニケーションの違和感も、自由記述での誤認識も、選択肢により対話を制限しているため起こりません。そのためAI Labでは選択式対話でのコミュニケーションの可能性に注力しているとのこと。

――馬場
「選択式対話は、ユーザーに想像力既成事実を与えられるという利点があります。これにより、ユーザー心理を購買へ誘導することができます。」

図の例1の条件では、ユーザーはNOと言えない状態です。ここでは、ユーザーは「これってもしかして、一押しなのかな?」と、想像力を駆り立てられます。

例2の条件では「これいいかも」のみ選択でき、チャットのログには「これいいかも」という発言が残ります。そうすることで「さっきいいかもって言っちゃったし、撤回しにくい…。」といった既成事実ができるわけです。

想像力と既成事実を与えてユーザー心理に働きかけることで、ユーザーが購入に至るまでに離脱しそうなポイントにおいて、うまい抑止力になっています。

4℃のプレゼント相談ボット。チャットボットがユーザーの意思決定をサポート

デジタル接客ツールとして特に期待が大きいチャットボット。ECサイトやLINE、Facebook Messengerなどで見かける、ユーザーが企業・サービスの情報をチャットを通して知ることのできる双方向コミュニケーションツールです。

ですが、webサイト上のページ右下にチャット開始ボタンを表示した場合、実際にチャットが開始される割合はわずか約1%と、未だ一般に広く浸透し切っていないのがチャットボットによるデジタル接客。しかし、この技術はECが普及していくなかで、間違いなく伸びていく分野です。

AI Labとジュエリーショップ4℃を運営するFDCプロダクツとの実証実験「プレゼント相談ボット」に関連して、チャットボット接客をこのように述べています。

――馬場
「何かを購入する際に、人に相談したい場面はたくさんあるはずです。男性が女性へのジュエリーを選ぶ際に相談できるのが、このプレゼント相談ボットです。

実証実験の結果、ユーザーとのインタラクション設計次第で、購入意欲を高めることができることがわかってきました。」

たしかに女性へのジュエリー選びは、男性にとっては猫の手も借りたいほどの超難問。自分に身近でない商品は、誰かに相談したうえで購入の意思決定をしたいと思うことは多々あります。

そんなプレゼント相談ボットでは、選択式対話を取り入れています。以下がその特徴です。

  • 本来のECサイト上では選べない条件を提示し、情報をヒアリングする機能
  • 商品をレコメンドし、ユーザーの気になった部分をヒアリング。条件を固定し候補をさらに絞っていく機能(ユーザーに3回絞ってもらいそこから最適な商品群をレコメンド)
  • ヒアリングした内容から共感・感想を述べることで購入を後押しする機能

これらの特徴は、普段店員さんに接客される感覚に近いです。店員は、客のニーズを引き出しておすすめ商品を提示したり、ときには褒めたりして、客に購入を促すコミュニケーションをとります。この一連の流れが、チャットボットで再現されています。

――馬場
「この実証実験で明らかになりつつあることは、チャットを開いて対話に至るユーザーは全体で約20%。ここを高めることが私たちの課題です。

逆に対話を開始したユーザーのうち、商品提案まで至るユーザーは約80%と、非常に高い割合になっています。

また、新規ユーザーのCVRが再訪ユーザーより高いということと、女性よりも男性のCVRの方が高いということが明らかになっています。」

――馬場
「ここまで実証実験をやってきて、技術的にまだまだ発展途上ではありますが、同時に大きな可能性のある分野だとも感じています。購入時に相談したい場面は多いはずなので、対話エージェントの価値は高いです。

今後も研究と実用をおこなっていきたいと思っています。」

目指すのは対話エージェントと人が当たり前に共存する未来

チャットボットによるデジタル接客の課題は、そもそも利用し始めるユーザーがそれほど多くないこと。これに対しては能動的な「声がけ」が必要だといいます。

――馬場
「大事にしたいのは『私のためにやってくれている感』。現状のチャットボットはユーザーサイドから能動的にアクションしなければ機能しません。

チャットボットを用いたデジタル接客では、相手に意思を感じるような形でのコミュニケーションを実現したいと思っています。」

デジタル接客は、未だ一般層には浸透しきっていない状態。しかしこれからのEC全盛の市場で、潜在的な可能性を持っています。

徐々に見え始めている「私のためにやってくれている感」は、今後ユーザーの満足度や信頼を担保していく基盤となっていきそうです。

近い将来、接客の主体がデジタル化する、そんな接客コミュニケーションの今と未来を感じる講演でした。加速するデジタル接客の波に乗り遅れないようにしたいですね。

『THE AI 2nd』その他企業の講演資料は下記からダウンロード可能

『THE AI 2nd』のその他の登壇企業の資料は、下記からダウンロード可能です。

田村 宣太
幼少期から海外を渡り歩き、さまざまな文化に触れながら育つ中で『価値のある情報を活かせる場に届ける』ことに興味を持つ。専門はマーケティング領域だが、その領域で活きるテクノロジーに関しても高い関心を寄せている。

「AI:人工知能特化型メディア「Ledge.ai」」掲載のオリジナル版はこちら「私のためにやってくれている感」 ── サイバーエージェントが科学するボットによる接客コミュニケーション

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