今は電話よりチャットが好まれる「チャットネイティブ」の時代

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今は電話よりチャットが好まれる「チャットネイティブ」の時代

―― トランスコスモスでは、チャットにかかわるサービスを続けてリリースしています。これも消費者目線と関係があるのでしょうか。

佐藤はい、「今は電話で話すよりもチャットの方が楽」という人も多い。言うなれば「チャットネイティブ」なんですよね。Webで見た広告をクリックして、Webサイトを表示して、商品をカートに入れて、会員登録をして……という手順を踏むよりも、チャットで済ませてしまった方が楽なんです。

トランスコスモスは長期にわたりカスタマーサポートをやってきているので、消費者とのコミュニケーションは強みでもあります。従来だったら電話でコンタクトセンターにつながっていたところが、チャットネイティブはスマートフォンのチャットでつながる。それは今の時代とても自然なことです。それでサポートとデジタルを融合させた「DECAds(デックアズ)」という統合プロダクトを立ち上げました。

DECAdsが起動している様子。チャットボットとのやりとりでコミュニケーションが進む
DECAdsが起動している様子。チャットボットとのやりとりでコミュニケーションが進む

―― DECAdsでは、広告をクリックするとチャットがスタートするものもありますね。これまでは、広告をクリックしてからコンバージョンに至るまでのステップをできるだけ少なくしようという考え方が主流でした。一見それに反しているように見えます。

佐藤消費者が何を求めているかを知るには、コミュニケーションを取るのが一番と考えました。DECAdsは、チャットボットと人の両方が対応できるように組み立てています。単純な回答であればチャットボットがすぐに案内できますし、間違えてはいけないものなら人が対応する。運用コストも下がって、コミュニケーションの質も上がります。

消費者の考えを知るにはコミュニケーションを取るのが一番

コミュニケーションを経て購買率やブランドイメージが高まる

―― ほかの施策と比べて、マーケティングの観点においてチャットはどのような効果が期待できるのでしょうか?

佐藤まずはコミュニケーションのデータが取れることです。これは、今まで活用しきれていなかったデータです。また、コミュニケーションをとることによって購買する確率が大きく上がります。これはまだ全部計測しきれてはいないんですが、ただ広告をクリックしたのと比べてチャットを経由し自分で答えながら進んだ場合は記憶のレベルが高まるという結果が出ています。

―― 記憶のレベルが高まる。それは興味深いですね。

佐藤はい。さらにいろいろな事例がありますが、カスタマーリテンション(顧客維持)にもデジタル上で顧客の声を聞くことが重要であるというデータもあります。さらに、コミュニケーションの体験は友人に共有する時代です。正しいことをやっていれば、正しく広がっていきます。

佐藤俊介氏

有人対応のデータがチャットボットのもとになる

―― チャットボットが受け答えするとしても、学習するための大量のデータが必要ですよね。そのデータはどのように準備すればいいのでしょうか。

佐藤基本的な構造としては、有人対応したコミュニケーションの内容をデータとして蓄積していきます。その会話データをベースにストーリー仕立てでシナリオを作っていく。何もないところから作るシナリオよりはるかに精度が上がりますよね。そのデータも、コミュニケーションのデータでないと参考にできません。ランディングページのクリック率をいくら見ても、シナリオには役立てられません。

コミュニケーションのデータがシナリオになったり、チャットボットになったりします。サポートのデータがこれまで広告に活用されることはなかったと思いますが、これからはあらゆるデータを施策に使っていくべきです。広告は広告だけ、ECは購買データだけ、サポートはサポートだけということではなく、すべてのデータが横につながっていくという時代に入っていきます

―― 「そんなデータ、持っていないよ!」という場合はどうすれば?

佐藤われわれは「DECode(デコード)」というDMPを独自で用意していて、そこにサポートのデータを蓄積しています。DECAdsを利用する際は、ワンストップでDECodeを活用できるように提供します。そのデータの分析にはAIを活用しています。

―― チャットボット用のシナリオを作るって、とても大変そうです。

佐藤簡単ではありませんが、今こうして普通に会話しているのと一緒ですよ。1つのことを話して、次の話にいく。最初から完成されたシナリオを求めるのではなく、改善を繰り返し精度の高いものを生み出していく運用型のモデルになります。

広告、EC、サポートなどあらゆるデータが横につながっていく時代

―― チャットボットというと、最近はAIが注目されていますね。

佐藤世の中で語られている希望的AIと、現実的AIにはまだまだ隔たりがあります。皆は希望的AIのことを語るんですが、今のAIが自由に会話をして正しくコミュニケーションするのは無理があります。「年齢は何歳ですか」みたいな単純なやりとりならいいですが、消費者目線で要望に応えるという意味では、まだ難しいですよね。

逆に画像認識などある機能においては、人間の目よりもAIの方が優れていることもあります。機械でやれることと人がやれることを正しく分けて、「今の段階で何を達成できるか」を見極めたうえでAIを搭載するならありだと思います。

マーケティングの視点はKPIから全体を俯瞰するOKRへ移行している

佐藤俊介氏

―― 有人対応にしてもチャットボットにしても、企業としてはこれまでなかったコストがかかることになります。そこはROI(投資対効果)の視点ではどうなんでしょう?

佐藤はい、もちろんサポートにはコストがかかります。それでもROIが良くなればよいわけです。広告の1クリックの価値が上がるだけでなく、これまで取れなかった有効データが取れるようになるという価値もプラスされます。また、これまで非効率と思われていたメディアも見直されるかもしれません。これは広告活動において非常に大きなことです。

今は単純に「KPIを追う」という考え方ではなくなってきています。グーグルが採用しているという「OKR(Objective and Key Result:目標と主な結果)」という指標がありますが、「全体的に見てどんなリターンがあるか」という見方がどんどん当たり前になってきています。

KPIはあくまで1つの軸です。そこばかりを見ていると、無駄を省いて洗練されていくに従いどんどんビジネスが狭まってきます。だからデジタルマーケティングでは、データの扱いも含めて「全体を俯瞰して見る」ことが必要です

―― なるほど、DECAdsは「チャットを使った広告手法」ととらえていましたが、そうではないんですね。

佐藤はい、「広告の担当者が文章を考える」とか「クリック率が上がる」とかそういう狭い話ではなく、「企業全体として、どう消費者とコミュニケーションを取るか」という視点なんです。

今の時代に合った、デジタルマーケティングの正しいフレームワークを考えていこうということです。今はスマートフォンというデバイスがあり、チャットネイティブという状況があるから、チャットというコミュニケーションを採用したにすぎません。仮に同じことを5年前、もしかすると5年後にやってもダメだと思います。

今は単純に「KPIを追う」という考え方ではなくなってきている

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―― 最後に、企業内のマーケターの方にメッセージがあれば。

佐藤繰り返しになりますが、大事なのは「消費者目線でビジネスをとらえよう」ということです。そんなことは当然皆わかっているんですが、今のデジタルマーケティングは必ずしもそうではないというギャップがあるのが現実です。根幹をしっかりとらえて、消費者に合わせて変えていく。決して楽な道ではありませんが、やらなければいけません。

もしデジタルトランスフォーメーションのパートナーが必要であればご相談ください。トランスコスモスは扱っている事業が広いので、1か所にまとめた方が楽ということもあると思いますので(笑)。

―― 本日はありがとうございました!

佐藤俊介氏

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