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デジタルマーケティング業界にスター選手を! 次世代リーダーを育成し評価される組織へ

Web広告研究会代表幹事の田中滋子氏に業界全体の現状、今後の舵取りについての意見を聞きました

この記事は、D2Cスマイルで公開された記事を、許諾を得てWeb担当者Forum向けに特別公開したものです。

こんにちは。D2Cスマイル編集部です。

昨年11月18日、公益社団法人日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会(以下、Web広告研究会)の新代表幹事に、日本電気株式会社CRM本部シニアエキスパート田中滋子氏が就任されました。

Web広告研究会のロゴ

Web広告研究会は、1999年に設立され、広告主、媒体社、広告会社などが会員になっており、各種セミナー、調査、アワード「Webグランプリ」の運営などを通じて、市場の活性化や情報共有等を行っている業界団体です。

Webグランプリの様子

田中氏は、1996年以来、BtoBソリューション系サイトの企画運営、Webマーケティングに携わってこられた方です。まさにこの道のエキスパートであり、Web広告研究会という新たな場を得て、業界全体の現状をどのようにとらえ、今後の舵取りに関してどのような意見をお持ちかをお聞きしました。

さまざまな枠を取り払い、デジタルマーケティングの存在意義を底上げする

田中滋子氏
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会 新代表幹事 田中滋子氏

「これまで、Webマーケティングと言えば、BtoCの企業の方に比べ、BtoBの企業の方は少し引き気味で見ていたような気がします。私は20年ほど前からWebを中心に、BtoBの領域でデジタル活用にチャレンジしてきましたが、最近では、この差が急激に縮まってきているように感じます。BtoBの企業においてもWeb活用の機運が高まり、当研究会にも多くの方々が参加しています。つまり、デジタルマーケティングやWebを活用したマーケティングということについてBtoBだ、BtoCだという境がやっとなくなりつつあると感じています」と田中氏はいいます。

Web広告研究会では毎年3月にその年の「WAB宣言」を発表しています。昨年の宣言は「脱 媒体別戦略」でした。これは、壁、あるいは枠組みというものを取り払って統合マーケティングへの道を歩むべきだという提言と読み替えることができます。

脱媒体別戦略の意図は、自分がどのメディアの担当であっても、そのメディアだけのことを考えるよりも先に、全体設計について考えるべきであろうゴールイメージを共有し、その上で、それぞれの担当メディアの戦術をそのイメージに合わせて最適化していくべきではないかという意味です。

多くの企業がこうした考えを持ち始めていると私は思っています。今はKPIも媒体ごとに異なりますし、それぞれの評価指標はもちろん必要なのですが、最初に皆が共有すべき全体としてのKPIが存在して、初めて部分最適として成り立つものという認識を持つとよいのではないかと思います

デジタルマーケティング分野を開かれた機能・組織としていくためにすべきこと

テレビやラジオ、あるいは新聞や雑誌などの各媒体は、広告主に対して、受け皿となるメディア各社があり、間をつなぐエージェントがあり、長年にわたり、ビジネスとして有効に成り立つだけの体制を築いてきました。

これらのメディアに対して、デジタルメディアは、技術も日進月歩で、担当者があたかも専門職のように技術的進歩に必死についていって、多くの作業を内製化し、しかも消費者とメディアを通じて直に対応するということも少なくありません。いいレスポンスもクレームも、直接、自分や自分の所属する部署に返ってくるわけです。

だから、どうしても特殊な機能、部署になりかねないケースもあります。他のメディア担当者と、KPIも合わなければ、使用している用語も合わない。外部からは、何が大変で、何がすごいのかを理解されにくいという面があったのではないでしょうか。

最近では、それまでデジタルの経験がない人たちも配属されるようになり始めました。数は少ないですが、新卒からそうした部署に配属されることもあります。

加えて、統合マーケティングという立ち位置で、販促キャンペーンごとに各メディア担当者が集まってキャンペーンやプロモーションの設計をするという場も多くなっています。

そうしたときに、どれだけ皆の意識やレベル、視点を合わせられるかがこれからのポイントだと思っています。その点を手助けするのも、私たちWeb広告研究会の責務だと思っています

そこで、さまざまな模索が始まっています。たとえば、現在年一回(東京、大阪併せて二回)、6月に行っているWeb初級プロデューサー講座の開催回数やその内容も見直していく検討も始めたそうです。

講座のイメージ写真

最近は、ベンダーさんからの参加者が増えています。本来は広告主のWeb担当者のスキルアップが狙いですが、そのためにも内容など、いろいろと検討していくべきだろうと考えています。そこで現在は、企業の教育プランや課題についてヒヤリングを行っている最中です

世代の垣根を越えて意見や情報を交換、切磋琢磨して知見や技術を磨く場にしていきたい

Web広告研究会には、10の委員会があります。それぞれの委員会が毎月一度ミーティングを行っているそうで、その委員会への参加者は固定化する傾向にあるといいます。

年齢層によって意識の違いがあるように思います。若い方ほど、『忙しいのに、なぜ外部に出かけていく必要があるのか?』と思うものだと思います。しかし、特にこの分野は広く情報交換や同じ悩みを持つ方同士の切磋琢磨が必要だと思います。だから、できるだけ敷居を低くして、来れば役に立つ、そして楽しいと誰もが思える場にしていく必要があると思っています。もしかしたら、そうした若い方々が集まる別の委員会を作ったほうがいいかもしれません。

いずれにしても、積極的に参加して、かつ発言していただくことがWeb担当者の声を広げることになります。自分自身の問題意識をテーマにしてもらい、場合によってはその若い方自身が率先して、そのテーマについてのディスカッションをリードしていただくこともよいのではないかなと思います

この領域に関しては、初心者かどうかと、年齢は必ずしもリンクしません。若い人がプレイヤーとして達者であったり、役職者が初心者であったりするケースもあります。その一方、デジタルに関しては初心者の役職者であっても、マーケティングについての知見は豊富かもしれませんし、社内における発言権は若い人たちよりも総じて大きいでしょう。

そうした世代の垣根を超えて一体となり、デジタルマーケティングやWebマーケティングに関する理解を深め、企業における位置づけを高めることも、Web広告研究会の重要な役割だといいます。

Web初級プロデューサー講座のイメージ写真

デジタルマーケティングの領域は、急激に当たり前のものになっています。もちろん企業によってその位置づけは異なりますが、今、Web活用を意識しない企業は、あまり存在しないでしょう。

これまでは、半ば職人的、属人的ともいえる専門の担当者の世界だったものを、今後は、初心者にもオープンにしていく必要があり、Web広告研究会は、そのための教育や意識づけといった活動をされているのです。

各委員長が集まって全体設計をどうしていくべきかというディスカッションをしています。広告主として全体としての広告設計、マーケティング設計をどうすべきか、という話し合いです。そうした活動も昨年から始めています

若返りとスターの育成によってデジタルマーケティング担当者の地位を高める

もう一つの課題として、スターを作るということもあるそうです。

今、日本の広告主、ナショナルクライアントで必要なことの一つは、デジタルの活用にも理解があって、マーケティングについてもしっかりと把握している、そういった方が経営層に入るということだと思います。だから、ジョブローテーションの中に、デジタル部門を経験した人が上層部に行くという道を作り出すことも、重要な課題だと思っています

田中滋子氏

そのためにも、若手のWeb広告研究会への参加を活発化させることも重要だといいます。

今年はより若い人にセミナー等で登壇してもらうなど、工夫をして、若い人を受け入れる下地を作っていきたいと考えています。

また、幹事は現在27人いますが、その方々の若返りも必要で、現在、次世代のリーダーを育成していこうという考えを醸成しつつあるところです

「WAB宣言」を始めた2003年から見直してみると、当初は、インターネットをプロモーションの手段として強調していました。そこに絞ることで、インターネットがいかに使えるメディアかということを主張していたわけです。その後、ビッグデータといった概念が登場。インターネットをプロモーションの枠に留まらず、ビジネスに貢献できるメディアと捉えるようになってきました。いわば、経営戦略に使えるツールとなったのです。

「現在は、ビジネスに貢献できる=企業の価値を高めるためのツールとしてインターネットを位置づけています。こうした宣言が、経営トップ層の目にもふれることで、デジタルマーケティングの担当者の社内における地位を高め、組織の中でしっかりとその力を発揮し、評価されていくという方向を目指しています」と田中氏。

Web広告研究会のこうした取り組みを中心に、「Web担当者」の枠組みから脱却し、デジタルマーケティングを経営政略の要とする動きは、今後、飛躍的に広がっていくのではないでしょうか。

オリジナル記事:Web広告研究会 新代表幹事 田中滋子氏に聞く―企業価値を高めるデジタルマーケティングの地位向上を目指して(2016/02/22)

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