プロ厳選! ユーザーを理解する調査手法

ユーザーの隠れた本音を聞く! 9つのポイントでデプス・インタビューを攻略する

「ユーザーの無意識」にアプローチし、新しい製品開発や既存サイトのリニューアルなどを行うときに役立つ手法「デプス・インタビュー」技法を前編・後編に分けてご紹介。
ユーザーを理解する調査手法vol.3

アンケートやフォーカスグループインタビューなどさまざまなマーケティングリサーチのなかでも「ユーザーの無意識」にアプローチし、新しい製品開発や既存サイトのリニューアルなどを行うときに役立つ調査手法「デプス・インタビュー」技法を前編・後編に分けてご紹介します。前編の今回は「デプス・インタビューとは何か?」と9個のポイントでデプス・インタビューの疑問を解決していきます。後編は、デプス・インタビューの精度を高めるための10のコツをご紹介します。

デプス・インタビューとは?

デプス・インタビューとは、通常の質問では得られないような個人の奥深くに秘められた心理や感情、考えなどを聞き出す質問技法で、主に質問者と回答者という面接形式で行います。

臨床心理の面接技法や、「なぜ」を繰り返す特殊な質問技法などを用いて、熟練した面接者が行います。この記事では、熟練者でない読者の皆さんでも取り組めるように、デプス・インタビュー実施前、実施中、実施後の3ステップに分け、そのシチュエーションにおけるよくある疑問に答える形の「逆引きリスト」でご紹介していきます。

でもその前に、なぜデプス・インタビューをしなければならないのか、そのきっかけから考えてみたいと思います。

どんなときにデプス・インタビューを用いるべきか?

突然ですが、皆さんに質問です。普段使っているWebサイトや製品、サービスに関して、

  • 何が気に入っているから使うのですか?
  • 普段使っているWebサイトがどのようになっているとより便利になりますか?
  • なぜほかのWebサイトや製品、サービスを使わないのですか?

などのことを、他者に明確な言葉で客観的で論理性のある説明ができますか。お気に入りの製品やサービスについては、明確なニーズを語ることができたとして、普段さほど強いこだわりや関わりを自覚して使用していない製品やサービスの場合は難しいのではないでしょうか。ある研究によると、一般的な生活者が「明確に言葉にできる欲求」の全体を100%だとすると、せいぜい5%程度だといわれています

明確に言葉にできる欲求は5%

信じられますか? たったの5%ですよ! ですから、Webサイトのリニューアルや新製品の開発、次世代のサービスを創造する際に、デプス・インタビューなどの手法を使って、ユーザーさえも気付いていない無意識を引き出す必要があるのです。

9個のポイントでデプス・インタビューの疑問を解決!

インタビュー実施前
①インタビューする人(被験者)はどのように選べばいいの?

デプス・インタビューにおける被験者の選定方法は、大きく分けて2パターンあります。

  • 利用しているユーザーから優先度の高いユーザーを選ぶ

    インタビューする人を選ぶために、アンケートなどの定量調査データを活用して、利用している人をいくつかに分類(クラスタリング)して、その分類に重要度を付けます。

    重要度の高い分類に属しているユーザーのなかから、今回調査したい条件に合う人や個別の属性、回答傾向からウェイトを付けて優先選定候補者としてリストアップします。

    その後、電話やメールなどでインタビューの依頼をしていきます。時間や予算、センシティブな配慮事項などの制約条件が強くない場合のプロジェクトではこの選び方をします。

  • 仮説条件に合う身近なユーザーを選ぶ

    簡単でカジュアルなインタビューの場合は、定量調査の分類などは行わず、調査対象の仮説に適合する条件や優先したい条件を設定し、その条件に見合うユーザーを見つます。

    もっとカジュアルな場合は、身近な周囲の人たちのなかから感性評価で適合可能性の高い人に依頼することもあります。

②調査対象に対してどのくらいの人数にインタビューしたらいいの?

1つのセグメント(クラスタ)につき、10名程度が理想です。時間や予算などの制約条件が厳しい場合は、5名程度とするケースが多いです。

1セグメントあたりなぜ10名なのかという根拠は、あるテーマに関する質的調査を被験者に対して行う際に、新しい発見(findings)が10名を超えたあたりから急激に減少するという調査結果があるためです。

逆にいうと、10名以下の場合はまだ新たな発見が出てくる余地があるということです。ですので、可能であれば1セグメントあたり10名±2名程度の被験者にインタビューできるといいです。

③インタビュー中の質問者と被験者の人数構成は?

質問者は、理想的にはマンツーマンですが、商用リサーチである都合上、リサーチチームは、次のような2~3名で訪問するケースが多いです(後述)。

  • メインインタビュアー
  • サブインタビュアー兼観察、記録者(後述
  • オブザーバー(VTR撮影などの補助的記録者やクライアント側の同席者など)

被験者側は、1名~複数名で調査対象によって異なります。たとえば、住宅について調査する場合は、夫婦または、子供や祖父祖母も含めた家族ということもあります。

本来的には、発言を否定したりする人がいない環境でじっくりと被験者に向き合う、というのが理想ではありますが、被験者にとって、調査しているテーマと普段関わっているフィールド(=現場)でリラックスして構えずに考えや感情を引き出すことが重要です。

④インタビューの内容をどうやって記録に残すの?

事前または、現場での個人情報収集許諾が得られれば、「音声」「映像」「現場での書取り」で記録します。熟練した記録者は、現場でマインドマップ的な記録手法で描画することもあります。ボイスレコーダー、ビデオカメラ、ノート、ペンなどの準備が事前に必要です。

⑤インタビューは、どんな場所で行うのか?

デプス・インタビューを行う場所は、一般的なリサーチルームやテストラボではなく、ユーザーの自宅や職場などで実施します。聞き出したいテーマが行われる現場 = フィールドで実施した方が、被験者が発話する情報以外に、住まいや暮らしぶりなど物理的な環境から非言語的な質的情報を収集できるからです。

⑥インタビュー時間はどのくらい?

一般的には90~120分くらいです。長い場合は180分くらいに及ぶこともあります。

⑦事前に準備する質問項目は?

「調査対象となるテーマ」や「最低限確認や言語情報を引き出したいこと」などの仮説をもとに次のような視点で最小限の質問項目は決めておきます

  • 必ず聞くべきこと、確かめるべきこと
  • テーマに関連した直接的な考え、感情、行動(Think-Feel-Do-Say)

デプス・インタビューは、アンケートのように事前に決められた質問を順序立てて、質問するのではなく、質問を起点とした対話の流れに応じて臨機応変に、質問の変更や追加を行うことで被験者の自由な反応を引き出すことを重要視します

このようなやり方を心理学の分野では「半構造的面接技法」と呼びます。

質問者にとって聞きたいことや確認をしたいことだけでなく、それら以上に被験者が話したいことを引き出し、心ゆくまで話してもらえるようにするために、適切なタイミングで、適切なフックとなる質問をすることが重要です(後述)。

理想的なインタビューは、被験者が「これまでも話したかったけれど意識的に考えたことがなかったこと」が引き出せる状態です。

インタビュー実施中
⑧インタビュー中の質問はどのようにしていくといいの?

インタビュー中は、で用意した最低限聞きたい質問を被験者に尋ねながら、さらにその質問を掘り下げて拡張していく質問を投げかけていきます

  • その理由やきっかけ
  • なぜそう思うのか、なぜそれをするか
  • それによって何を期待するか

あとは、繰り返し出てくるキーワードや気になった事柄などを適宜質問の中心に持ってきて、掘り下げと拡張を繰り返しながら質問をしていきます。

ここでいう「拡張」というのは、次のような思考軸をズラす方法や「過去」「現在」「未来」の時間軸を動かしていくことを指します。

  • 「ある考え」を聞いたら、それをどう「行動」しているのか
  • 「ある行動」が気になったら、その行動をしているときに「何を考え」ているのか、どんな「気持ち」なのか

たいてい、一番被験者が話したかったこと、普段は敢えて話さなかったこと、今までいえなかったことなどの発言や行動が引き出せるのは、リラックスして、安心した状態のラスト20分とか30分だったりします。

インタビュー実施後
⑨インタビューした内容をどうやってWebサイトや製品に落とし込んでいくの?

一概にはいえませんが、よく行うプロセスは次の通りです。

  1. インタビュー内容を文字で書き起こす
  2. 特徴的な発言や行動、しぐさを短いセンテンス単位でクラスタ化してExcelにリスト化する
  3. 上記の具体的な発言や行動を、「心の声」に置き換えする
  4. 「心の声」をさらに「価値」に置き換えて、解釈・推察される「期待価値」と「未充足価値」として抽出する
  5. 「抽出価値」を1つ1つのカードにして(コードと呼びます)近いものや相関性をもつもの同士グルーピングする
  6. 個々の「価値」をいくつかのカタマリにして、それぞれの価値のカタマリをさらに相関性をもったグループに分けて「◯◯な価値」などとラベルを付ける

ここまでの1~6の作業手法をKA法と呼びます。

左:心の声を価値に置き換えるサンプル 右:KA法の様子

こうやって生まれた「価値」をマップ化したものを「統合価値マップ」と呼びます。それと並行して「ペルソナ」をモデリングしてから、統合価値マップとペルソナをもとにユーザージャーニーマップを発想し作成します。

ユーザージャーニーで明確化された現在の問題点(As-Is)を解決するための目標(To-Be)を作り、目標を達成するシナリオや解決アイデアを発想して、製品の改善指針や新規設計のためのコンセプトに落とし込んでいきます。

このような手順を踏んだ後、専門的に研究開発する部門に引き渡すこともあれば、ストーリーボードやコンセプトスケッチまで作り込みすることもあります。

◇◇◇

いかがでしたか。デプス・インタビューを行う意味、どのように行うのか、イメージしていただけましたか。

私たちマーケターは、ユーザーやコンシューマー、ビジネスユーザーに対して、「大きな誤解や過度な期待をしている」とハーバードビジネススクールの名誉教授であるジェラルド・ザルトマンは自著『心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす』でも語っているように、私たちマーケターは消費者に的確な質問をしさえすれば、

  • 消費者は自らの思考プロセスと行動を容易に説明できる
  • 消費者の思考プロセスは筋の通った合理的なものである
  • 消費者は言葉で考える

などと考えがちです。ですが、前述で触れた「たった5%の真実」が示しているように、こういった考え方は企業側の都合のよい解釈に過ぎません。

私たちマーケターはまず、消費者のとる行動や思考の大半は直感的かつ情緒的で非合理的なものであることを十分に理解したうえで、明確な言葉として語られることのない「真実の95%」を引き出すために、今回ご紹介したデプス・インタビューを行うことで初めてユーザーにとっての本当のニーズや期待を垣間見ることができるのです。

次回は、「デプス・インタビューの精度を上げる10のコツ」と密接な関係を持つ調査手法の「観察法」、定性的なデータを定量的に可視化するいくつかの手法について紹介と解説をしていきます。

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