企業ホームページ運営の心得

ヤフー vs 楽天よりも、今日はポイント勝ちの話をしよう

中小の出店者にとって「Yahoo!ショッピング」無料化のメリットを考察
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の334

三木谷浩史氏の焦燥

酩酊状態の人に「酔ってる?」と尋ねると、ほぼ100%「酔ってない」と答えます。詐欺師や悪徳業者が猫なで声で「悪いようにはしない」と諭すときは100%悪いようにするときです。

はっきり言って、影響はまったくないですね。動揺もない。(新規出店・退店など)数字面でも影響は皆無。

と日経新聞(2013年10月27日 電子版セレクション)に答えていたのは「楽天市場」の三木谷浩史社長。孫正義ヤフー会長が「革命」と宣言した、ヤフーショッピングおよび、ヤフーオークションの出店・出品手数料の無料化についてのコメントです。三木谷氏は彼ご自慢の「楽天経済圏」が、いまよりも遙かに小さかったころから

楽天市場にないものはない。

と吹聴していた人物。しかし、短いコメントで「はっきり」「まったく」「皆無」と繰り返し強調しているところに動揺が透けて見えます。

ヤフーの真の敵は

影響がないわけはありません。俗に「楽天税」と呼ばれる売上に応じたロイヤルティは「2.0~6.5%」で、これが「非課税」になれば、出店者の利益が増え、値引きにまわせば価格競争力を高めることができます。算数レベルの話です。

日経新聞は、“年商数千万円規模が中心の楽天出店者にとって、年間数十万円の出店料と数%の手数料は年商を捨てるほど重たくはないだろう”と指摘しますが、これはゼロサムといった極論により読者を誘導する手法。売り上げが立っている楽天市場から退店しなくても、ヤフーにも出店することは可能。わずかな価格差で動く客がいるネット通販において、「免税ショップ」は魅力的に映ることでしょう。

同記事はヤフーの「無料革命」を「楽天つぶし」ではないと仮定し、真のターゲットは「グーグル」と結論づけるもの。議論の誘導方法はともかく、この結論には私も同意します。

打倒するのは仇敵

かつて検索エンジンの覇権を握ったのは「ヤフー」でした。語弊を怖れずに言えば、グーグルはそこに技術を提供する下請けの立場でしたが、今は検索業界の玉座に座ります。FacebookやTwitterといった新興勢力の追い上げがあるものの、「検索」においてグーグルはトップを独走し続けています。さらにグーグルは「ショッピング」により勢力圏の拡大を目指し、その足音にヤフーが恐怖を覚えるのはかつての記憶の囁きです。

ヤフーショッピングは国内において、アマゾン、楽天のはるか後方の3位です。さらにグーグルショッピングがひたひたと迫ってきています。浮かんでくるのは「じり貧」の3文字。そこで孫正義氏の得意技「無料」で起死回生を目指します。算数ができる経営者なら、リスクゼロで販売チャネルを増やせる機会を見逃すことはありません。仮にすべてのネットショップが参戦すれば、ネット上で販売されている商品情報のすべてをヤフーは押さえることになります。

ヤフーも無料ではないが鍵

情報を押さえるものが世界を制することは、ヤフーが示し、グーグルが上書きしたネットの覇道です。

ヤフーが提供するプラットフォームで売買が行われるということは、価格比較サイトの「価格.com」や、商品販売における「オリコン」のような情報、そして消費者の購買行動という「ビッグデータ」を「ヤフー」は押さえることができます。さらに、商品情報のような「人手」が介在する情報の収集をグーグルは苦手とします。つまり、

敵の弱点を自社の強みに変える

まさしく社会システムをひっくり返すことで立場を入れ替える「革命」というのが、私の見立てです。

また、ヤフーにあって楽天が模索しているのが世界に開かれた扉です。孫氏は(親会社のソフトバンク)は米国ヤフーと創業期からの付き合いがあり、ニューヨーク市場への上場が噂された中国を代表するネット企業「アリババ」へも出資しています。つまり、この革命が成功すれば、世界への扉は自動ドアのように開かれる……と巨人達の話はここまでとして、ヤフーショッピング無料化によるメリットを街角レベルの視点で考えようというのが本稿の主題。

ポイントの勝ち負け

「無料」とうたうヤフーですが、売上に応じ「ポイント原資」は徴収されます。この「ポイント」こそがポイントです。

ネットの大手ショッピングモールは、売上に応じてお客に還元される「共通ポイント制」を採用しています。目的は客の囲い込み。ヤマダ電機のポイントをエディオンで使うことができないように、店舗単独のポイントなら各店舗ごとの囲い込みも期待できますが、モールの共通ポイントは、モール内の店舗ならどこでも使えます。

つまり、ライバル店の利益になるかもしれず、その逆もしかり。そして「ポイント勝ち」する店舗と、「ポイント負け」する店舗に分かれます。前者はポイントで買い物され、後者はポイント利用の少ない店です。

ヤフー経済圏の魅力

ヤフーは「Tポイント」に加盟しています。Tポイントは説明不用なくらいに普及している共通ポイントサービスで、利用者は4000万人(2012年5月時点)を超え、ファミレス、コンビニ、コインパーキングの利用でも貯めることができます。つまり、ヤフーショッピングとは「Tポイント」による「ポイント勝ち」を期待できる市場ということです。

「ポイント勝ち」する商材の具体名は、守秘義務に触れるので控えますが、少しヒントを。全国一律に販売されている娯楽系で数千円程度の商品と、そのリユース品などが堅調です。また、食品系ではお店独自の「お試し企画」が利用される傾向があります。前者は純粋に価格の比較で選択される商品であり、ポイントを利用しやすい価格帯にあるのが理由で、後者はポイント利用による割安感から「失敗してもいい」という気楽さが背中を押すようです。

「ヤフー vs グーグル」あるいは「ヤフー vs アマゾン vs 楽天」なのか。いずれにしろ競争のあるところに市場が生まれます。そしてそれはチャンスです。

今回のポイント

ポイント勝ちする商材で勝負する

ヤフーの仮想敵はグーグル……とみています

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