Googleアナリティクスの導入から、運用、活用まで、正式なサポートがない初めての人でもゼロから学んでいけるように、丁寧に解説していく。
Googleアナリティクスとは/衣袋教授のGoogleアナリティクス入門講座モバイル利用の際に問題が生じていないかをさらに詳しく確認するには?
モバイル利用の際に問題が生じていないかをさらに詳しく確認するには?
セカンダリディメンションの解説はここまでにして、ここからは、さらに掘り下げた分析について解説していく。
第35回からここまでで、モバイルデバイスによる利用がどれぐらい進行しているのか、その度合いを調べるレポートを詳細に見てきた。
- モバイルの重要度はどれぐらい? モバイルからの利用規模を把握する分析方法 [第35回]
- カスタムレポートとピボットテーブルを使ったモバイル分析(便利なレポート自動作成リンクあり) [第36回]
- スマホ? タブレット? モバイル端末の種類ごとの訪問数や画面サイズをわかりやすく確認する方法[第37回]
これらのデータだけからでも「レスポンシブWebデザイン」への対応が急務なのか、どの程度まで、どのように対応していくべきかなどに関するヒントは十分得られる可能性はあろう。ここからはさらに踏み込んで、各種デバイスからの利用などに関してユーザーに問題が生じていないか、そういう問題や課題を発見することができないかどうかについて考えていこう。
モバイル環境からの利用で容易に問題点として考えられるのは、
- ユーザーが移動しながら利用しているときに問題が発生していないか
- 画面表示が狭い条件下での利用に特有の問題が生じていないか
などがあろう。この問題点の評価軸は、たとえばじっくり見てくれないために、直帰率が高いのではないか、その結果、サイトの売上などの目標達成や成果を阻害しているのではないかという点だろう。
図8は[ユーザー]>[ユーザーの環境]>[ブラウザとOS]レポートを表示した上で、データ一覧表示部の表示形式から「データ」(図8赤枠部分)を選択した表だ。
このレポートでは、ブラウザ別の「訪問数」「訪問別ページビュー」「訪問時の平均滞在時間」「新規訪問の割合」「直帰率」といった指標を見ることができる。
図8からは、
- モバイル環境とPC環境との違いがあるのか
- あるとすれば、どの程度の違いがあるのか
- 問題は深刻なのか
といったことを読み取るべきだ。どこのデータをどのように見ていけばいいのだろうか。
まずは、プライマリディメンションの「ブラウザ」に着目しよう。例として挙げているこのサイト(データ)のブラウザには、PC環境のブラウザと、モバイル環境のブラウザが混在している。ブラウザが「Chrome」「Firefox」「Internet Explorer」など、ほとんどがPC環境からの閲覧と思われる場合の直帰率は、平均すると60%台後半で、訪問別ページビューは約2.0、訪問時の平均滞在時間は1分半くらいだ。直帰率は高く、1訪問あたりのページビュー数や滞在時間は多く(長く)ない印象がある。
これに対して、モバイル環境が大半と思われる「Safari(in-app)」「Android Browser」は、直帰率が70%台後半で、訪問別ページビューは約1.5、訪問時の平均滞在時間は1分超ぐらいだ。上記のPC環境のデータと比較して、大幅にユーザーの利用状況が悪いとも言い切れない感じがする。
PC | モバイル | |
---|---|---|
直帰率 | 60%台後半 | 70%台後半 |
訪問別ページビュー | 約2.0 | 約1.5 |
訪問時の平均滞在時間 | 1分半ぐらい | 1分超ぐらい |
数ある指標の中でも、最も重要な指標の1つである「訪問数」は量を示す指標で、全体に占める影響度合いを示す大事な指標だ。その右側の指標群(図8青枠部分)も同じく量的指標で、ユーザー体験の質を測る指標と言ってもよいだろう。「訪問別ページビュー」は1訪問あたり平均のページビュー数、「訪問時の平均滞在時間」は1訪問あたりの平均滞在時間である。もし、モバイルでの閲覧に何らかの問題があり、そのせいで「直帰率」が高い、すなわち1ページ見ただけで帰ってしまう訪問が多ければ、「訪問別ページビュー」と「訪問時の平均滞在時間」の2つの指標は相対的に低くなるという関係性がある。
もちろんPCとモバイルで利用シーンがまったく異なる場合もあるだろうから、大きな乖離があっても即問題ということにならないかもしれない。もし明らかに大きな乖離があるという状況が把握できたのであれば、ここから先はアクセス解析データをさらに細かく分析するのではなく、各種モバイル端末を使って実際にユーザーと同じようにサイト内を巡ってみたり、実際の利用者に感想を聞いてみたりするのもよいのではないだろうか。
[ブラウザとOS]レポートの3つの指標グループも使える
これ以外の評価軸として、「指標グループ」を解説しておこう。
標準のレポート群にデフォルトで用意されている指標群のセットを「指標グループ」と呼ぶが、今回見ている[ユーザー]>[ユーザーの環境]>[ブラウザとOS]レポートの「指標グループ」には、「利用状況」「目標セット」「eコマース」(図9赤枠部分)の3つが用意されている。
「利用状況」指標グループ
「利用状況」は、「訪問数」「訪問別ページビュー」「訪問時の平均滞在時間」「新規訪問の割合」「直帰率」といったような図8で扱った指標群である。今回説明してきたように、多くの場合は、この「利用状況」の指標群を組み合わせて、問題を探っていく。
「目標セット」指標グループ
「目標セット」は管理画面で目標設定されていると表示される。目標は最大20個で、目標セットは最大5つの目標を4セット作成することが可能なので、図9の「目標セット1」のようなタブは「目標セット4」まで最大4つ表示される可能性がある。目標設定のしかたについては、「プロファイルの目標を設定する[第5回]」で詳しく説明したので、そちらを参照していただきたい。
「目標セット」の指標グループを選択すると「訪問数」「コンバージョン率」「平均目標値」「各目標のコンバージョン率」の指標群が表示される(図10)。
図10では目標設定が1つで、実際の表示形式としては、「目標1の目標名(目標1のコンバージョン率)」(図10赤枠部分)となる。複数目標設定をしている場合は、その右横に「目標2の目標名(目標2のコンバージョン率)」のような表示項目が増えていく。
「eコマース」指標グループ
「eコマース」は管理画面でeコマースの設定を有効にしていなくても表示される。ただし、その場合は、売上関係のすべての指標はゼロなので、実質的に見る意味はない。「eコマース」の指標グループを選択すると「訪問数」「収益」「トランザクション数」「平均値」「eコマースのコンバージョン率」「平均訪問単価」の指標群が表示される(図11)。
環境別に指標を比較して、改善の必要性を判断する
「目標セット」と「eコマース」の指標グループには、成果に結びついたかどうかの視点で評価できる指標群が揃っていると言えるだろう。
図12のように、WindowsなどのPC系のOS環境と、AndroidやiOSなどモバイル環境からの成果を比較して、
- モバイル環境からの成果が著しく低くないか
- 「利用状況」の指標グループから見たユーザーの質との対比で成果はどうなのか
といった視点で各指標を見ることで、モバイル環境からの利用行動を改善させることが急務なのかどうかといったことを判断することができる。
筆者の『ユニバーサルアナリティクス版Googleアナリティクス完全マニュアル(PDF)』が発行されました。
筆者が講義を行うGoogle アナリティクス徹底講座も、定期的に開催しています。 → Google アナリティクス ゼミナール
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