「一番はGoogle+」と締めくくる、鏡の売りかたに見る読ませる工夫
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の276
新聞でも使われる作文法
ネットでは最初の数行・数文字で読者のハートをゲットしなければ、ブラウザの「戻る」ボタンで帰っていきます。読まれない文章は飛べないブタより価値がありません。そこでオススメするのが「コラム」的作文法です。
まず、旬のネタや目を引くテーマで心をつかみます。次に話題を変えて本題に入ります。商売用のコンテンツなら、ここにセールストークや商品紹介が入ります。そして最後に文章をまとめて完成です。
コラム(短編)なので論理を積み重ねる必要はなく、それでいて、なんとなく説得力があるように錯覚させることが狙いです。実はこの方法、新聞の一面コラムでちょいちょい見かけます。時事ネタを皮切りに、各社の主張を展開し、最初のネタで結ぶ(締めくくる)というものです。
それでは次から「鏡を売るためのコラム」のはじまりです。
次世代ネットサービスの主役
すっかり次世代ネットサービスの主役を「LINE」に奪われたFacebook。Web業界ではこうした主張をよく耳にするようになりましたが、そもそもFacebookは国内ではそれほど定着していません。いうなれば鳴り物入りで来日した外国人タレントが、ポッと出の新人アイドルに抜かれたようなものです。さしずめ「mixi」は「モーニング娘。」といったところでしょうか。陰りが見えるという声もありますが、固定ファンはいまだに多いので。
それでは新人アイドル「LINE」の魅力はなんでしょうか。識者はさまざまな理由を挙げますが、なんといっても最大の魅力は「無料通話」です。ガラケー以来の「ケータイユーザー」にとってわかりやすいアドバンテージであり、「無料通話」とは、PHSの「ウィルコム」の躍進の背景でもあり、人はまだまだ「話したい」ということなのでしょう。
コールセンターの必需品
ところで「話す」のが仕事の、コールセンターやサポート窓口を務めるオペレーターの必需品をご存じでしょうか。それは、
鏡。
手のひらに収まるぐらいの鏡を、モニターの横やデスクの目立つ場所に置いておき、お客様の対応をしているときの自分の表情を確認するのです。
「声の表情」は「顔の表情」とリンクしているといいます。街中でケータイ片手に頭を下げているサラリーマンの姿も同じで、電話の向こう側からは、頭を下げている姿は見えないはずなのに、ついつい「態度」にでているというわけです。
電話で話す機会の多い方は、「鏡」を手元に用意されてはいかがでしょうか。そこで今回ご紹介する「鏡」は……と、商品説明へと移ります。
転調のブリッヂとなる「ところで」
「鏡」を売っている商売は限られており、強引すぎるという批判もあるでしょうが、しばしお待ちください。まずは解説です。
「ところで」と置いて「LINE」や「Facebook」から話題を変えます。無関係な話題に転じても、前段の一部を受け継ぐことで統一感を醸し出すのです。ポップスで楽曲中に転調する際に、前後に共通する要素があるコードを奏でるようなもので、この例では「話す」がそれに当たります。
そして「話す」というバトンを受けたのは「オペレーター」です。先の例えが強引だという批判に答えるなら、こう展開させることもできます。
ところで「話す」のが仕事の、コールセンターやサポート窓口はストレスの溜まる仕事といわれています。見知らぬ不特定多数の方と会話する緊張感からくるのでしょう。電話だと居丈高になる人もいますからね。そこで今回ご紹介する……。
と、つなげれば清涼飲料水でもマッサージ器でも、「商品開発」の回で紹介した「温泉の素」でも売ることができます。
最もポピュラーな利用法
話題を変えるバトンを「固有名詞」にする方法もあります。「LINE」の運営会社「NHN Japan」は韓国ナンバーワンの検索ポータル「ネイバー」の日本法人と、「ライブドア」が経営統合して生まれた会社です。すると「ネイバー」から「韓流」のグッズ、「ライブドア」なら「ベンチャー」と展開できます。
あるいは「ウィルコム」をフィーチャーして、CMキャラクターを務める「佐々木希」さんを経由して「美容グッズ」へと転じることも可能です。
お気づきでしょうが本稿で「LINE」や「Facebook」を取り上げたのは「Web担当者Forum」の読者向けです。ターゲットとする読者層や時事にあわせて「ネタ」を仕込めるのが「コラム」の利点で、少し前なら「オリンピック」ですし、いまの季節なら「残暑」や「夏休みの宿題」がキャッチーでしょう。
誤解を恐れずにいえば、要するに「なんでもアリ」です。「つなぎ」は「連想ゲーム」の世界で、多少の経験は必要ですが、慣れてしまえばどんな「ネタ」でも調理できますし、どうしてもつなげないときの強引な技もあります。それがこれ。
さて、本題です。
こう切り出されて、次を読まずにやめるのは困難です。
大団円のラストレクチャー
強引な場合はもちろん、上手にバトンを渡せたとしても、そのまま終われば散漫な印象は残ります。韻を踏んだり、暗喩でまとめる方法もありますが、最も簡単な方法が新聞コラムも利用する「振りだしに戻る」です。
先の鏡のコラムなら、「鏡」を軸にしつつ「LINE」の機能に触れて結びます。
いままでなら謝罪の電話中は、鏡の中に映る殊勝な態度の自分を確認するだけですみました。しかし「LINE」には動画を送る機能もあります。「謝罪している姿を動画で送れ」なんていわれたら……米つきバッタのような映像を送らなければならなくなるのでしょうか。
こうすることで書き出しと結びが揃い、まとまりがあったように「錯覚」させることができます。また、少しひねりを入れた、こんな結び方もあります。
冒頭でSNSの人気について触れましたが、ちなみにわたしの「なかま」のあいだのナンバーワンSNSはダントツで「Google+」。そこにはリアルの「AKB48」のメンバーがいるからです。
SNSをアイドルと例えた「伏線」を結びます。コツは「後付け」でOK。冒頭に多くの「余談」を仕込んでおくとつなぎやすくなります。
今回のポイント
伝えたいことと読者の興味を両立させるコラム的手法
最後に話を戻すことでまとまりを演出
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