渋谷ヒカリエが教えてくれたWebサイトリニューアルの真髄と覚悟
今日は、渋谷ヒカリエのコンセプトから見えてきた、Webマスターが見習うべき「Webサイトをリニューアルすること」の本質的な意義や、「現状と将来」の考え方について、軽いコラムを。
渋谷ヒカリエが4月26日にオープンしました。東急や東京メトロが中心となって、渋谷駅の東口に作られた、商業・オフィス・文化施設が入る地上34階、地下4階の大規模複合ビルで、9年の歳月をかけて完成したとのこと。
さて、その渋谷ヒカリエが、なぜWebサイトのリニューアルに関係するのでしょうか?
渋谷は、地域の発展とともに変わり続けてきました。
駅ビルや周辺の建物も、新しい建物ができたり、増築してつなげられたりし続け、時代とともに人の流れも変わっていきました。ヒカリエの場所に以前あった東急文化会館、宮益坂、公園通り、センター街、109、道玄坂、そしてセルリアンタワーができ、マークシティができ……(私は昔からの変遷に詳しいわけではないですが)。
そうして大きく複雑になっていった渋谷ですが、いつからか「渋谷はわかりづらい、駅に降りてどっちに行けばどこに行けるのかわからない」と言われるようになりました。
地上3階地下5階の東京メトロの渋谷駅構内図が「まるでRPGのダンジョンのようだ」とおもしろがられはするものの、皆が「渋谷は複雑な場所」「そういうもの」だと思い、それを改善できるとは思っていなかったのではないでしょうか。
しかし、東急は、そこに大きくメスを入れたのです。渋谷の人の流れを変え、新しい価値で新しい時代を作るために、渋谷ヒカリエを作りました。
そのために、古い東急文化会館を取り壊して大きな施設を作り、既存の駅から大きな動線を設けたのです。
これって、企業Webサイトのリニューアルと似ていませんか?
長年かけそれぞれの時代に合わせて作ったコンテンツがつぎはぎされていて複雑でわかりづらくなっている企業Webサイト。
そのわかりづらさの背景には、さまざまな人(部署)の事情がからんだ「これは変えられないんだよね」「そういうものだと思うしかないんだよね」という部分も。
そのため、スマホ対応するにも全体に手を入れるには手間とコストがかかりすぎ、今の忙しさがあるため最低限の部分的対応で済ませるしかなかったり。
渋谷を変えるのでも、Webサイトをリニューアルするのでも、現状を大きく変えるには、大きなビジョンをもって成さねばならず、かつ、その大きなアクションを実行するための覚悟が必要なのだな、と思います。
そして、ヒカリエがそれ自身によって渋谷を変えるために作られたように、Webサイトのリニューアルにも、その向こうに大きなゴールがあるべきなのです。「サイトをリニューアルすること」は目的ではなく、何かを達成するための手段でしかないのですから。
それは、サイト訪問者にとってのUXを次の段階に引き上げることかもしれません。
検索エンジンやソーシャルメディアとの親和性を改善することかもしれません。
スマホやタブレットを含めたマルチデバイス対応を進めることかもしれません。
運営サイドのミスを減らし効率をアップさせることかもしれません。
サイトの目的を「売ること」から「売る手前のコミュニケーション」にシフトすることかもしれません。
そして、大きな変革には、それを明確に示すフラッグシップが重要です。ヒカリエのような大きくて明確なシンボルがあることで、関係者もお客さんも、渋谷の変革をイメージしやすくなり動きにつながるのです。
さらにヒカリエに学ぶところは、「渋谷の人の流れを変える」という大きな動きをしつつ、細かい点でも「おもしろい」「新しい」といった感性面もこだわっていること。古い百貨店のような画一的なスペースにテナントを押し込む形態ではなく、「あら、ステキね」「カッコいい」と思える雰囲気作りがされているのは、六本木ヒルズあたりから強くなってきた傾向なのでしょうか。
そして、忘れてはいけないのが広報面。宣伝広告やテレビ取材はもちろん、人の話題にのぼるような要素を積極的に含めて表に出していくことで、「へー」「行ってみようかな」「おもしろそう」のキモチや話題を広げられるのです。ヒカリエではたとえばネット系企業の移転だったり、ロブションのパン屋、歌舞伎、ビームス ライツなどですが、Webサイトではもっとさまざまな魅力を考えられますよね。でも、奇をてらいすぎるのではなく、サイトの本来の目的と同じ方向性をもった話題の作り方をするように心がけましょうね。
ヒカリエはまだ始まったばかり。渋谷の人の流れを大きく変え、その状態がなじむには、しばらく時間がかかるでしょう。9年かけて作ったヒカリエは、「50年前のDNAを引き継ぎ、50年100年先の未来を見え据え」ているそうです。
あなたのWebサイトは、どれぐらいの時間をかけて、どれぐらい先を見据えて、どれぐらい大きな変革を、何のために起こしますか?
ソーシャルもやってます!