企業ホームページ運営の心得

Web屋の営業マン必見。リピーター対策の特効薬

リピーターの確保に有効なのがイベントです。機動性の高さを活かしてイベントを仕掛けます
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の弐百伍

2年後には誰もいない

Web屋の営業マン必見。リピーター対策の特効薬

早いもので来週は3月。うっかり時の流れを忘れてしまうほど、Web担当者の仕事は多岐にわたります。アクセス解析からのコンテンツのブラッシュアップに、リスティング広告を効果測定して見直し、加えてツイッターの公式アカウントがあれば、情報発信を忘れないようにしながら、フェイスブックなどのネット業界の「お祭り」にもキャッチアップしなければなりません。それに加えて「イベント」を仕掛けることもWeb担当者の重要な仕事です。

ネット黎明期から繰り返されるように、サイトの成功はリピーターの確保にあります。たとえば、日本人の20代の男性をターゲットにしたとすると、およそ726万人(総務省 人口推計)で、このサイトに毎日1万人の来訪者があったとして、リピーターがまったくいなければ約2年後には誰も訪れなくなる計算です。いささか極端な例ですが、リピーターを増やさなければ早晩同じ結論に達します。そこで活用するのが「イベント」です。それはWeb屋の営業にも使えます。

もちろん、継続的な成長のためには新規顧客の獲得も重要です。そして「新規ご契約キャンペーン」も立派なイベントの1つです。

もてなしのこころ

野菜を並べているだけの八百屋と、「春だ! フレッシュ苺まつり」と店頭で試食会を実施する店のどちらに好感を持つでしょうか。極論すれば、イベントとはお客様に買い物を楽しんでもらおうという「もてなしの心」をアピールするために行うものです。もちろん、安売りだけではありません。今年のバレンタインデー、我が町、足立区の躍進企業「スーパーベルクス」では、お刺身盛り合わせのパックに小さなチョコレートを貼りつけて販売していました。刺身とチョコの食べ合わせは好みではありませんが、そこに「おもてなしの心」を見つけます。

Webでも同じです。訪問するたびにイベントが用意されていると、ライバルサイトで「カートにいれる」をクリックする前に「比較対象」として訪問してくれる可能性が高まります。また、イベント見たさの「暇つぶし」での訪問も期待できるでしょう。

援護射撃に殺される

上司に理解があれば、すぐにイベントに着手します。思いついたイベントをその日に実施できる機動性の高さはWebの最高の長所です。そして後述するようにイベントの種は尽きることはありません。しかし、イベントを提案して、身内に背後から撃たれたWeb担当者を私は知っています。どれだけアイデアを出しても、「前例がない」「必要がない」「社風にそぐわない」と完全否定されるというのです。

まず、我が国では新しいチャレンジは否定される確率の方が高いとあきらめてください。理不尽に憤ることは日常で、障害は自分を磨くチャンスです。反対に屈することなく、まずは「季節イベント」の実現を目指します。季節イベントとは、卒業式、花見、春のレジャー、入社式、入学式、そしてゴールデンウィークと、毎年必ずやってくる行事です。

夏休みの宿題の法則

季節イベントには「締め切り」があります。これが守旧派に決断を迫る口実となります。保守派、改革派を問わず、日常は忙しく、タイムリミットのない提案は後回しされてしまうのです。しかし、一足飛びにイベントが開催できることはないでしょう。そこで社内プレゼンの許可まで取ることを第一段階とします。「開催」ではなく「検討」までとハードルを下げることで、保守派を土俵に上げるのは社内政治の基本です。

プレゼンのために資料を集め、企画書を書きます。資料も作文も我田引水を怖れることはありません。お気づきの方もいるでしょうが、実はこれ「商売用コンテンツ」の作り方です。「商売用コンテンツ」は学術論文や新聞報道ではありません。利益のためのものですから「我田引水」こそ正解です。

メンテナンス契約を取る練習

社内プレゼンは日頃のコンテンツ作りの「実力テスト」です。「利益」「集客」「認知度」など具体的なメリットを保守派にアピールします。合格すればイベントを実施でき、不合格なら修行のやり直しです。ちなみに「とにかく一度やらせてください」は、一度しか通じない捨て身の戦法で社内政治では愚策です。

イベントはWeb屋にとっての強力な武器です。前述のプレゼンを客の前で行うことを「提案型営業」と呼びます。クライアントの立場に立ち「竹の子祭り」「夏野菜フェスタ」「秋の味覚 満足満腹市」と年間のイベントスケジュールを提案して「保守契約」を狙うのです。CMSがかまびすしい昨今ですが、イベントを仕掛ける「企画力」をもつクライアントはわずかです。さらに更新のための写真撮影、文章を用意するとなると素人にかかる負担は膨大になると告げ、ニッコリ笑顔で「プロにお任せ」と口説くのです。提案型営業とは、需要を待つのではなく、需要を創り出すことで、更新依頼を待つのではなく更新の必要性を創り出すことです。

サイトの新設やリニューアルほど儲かりませんが、定期的な更新を受注することで経営の安定度が飛躍的に高まります。小さなWeb屋さんにオススメです。

日経新聞は1月1日に価値がある

イベントの種は尽きません。全国的な季節イベントだけでなく、地域の祭りや行事もあり、その年限定のイベントもあります。以下に2011年3月分を列挙します。

  • 3月3日:博多駅 新駅ビル開業
  • 3月5日:東北新幹線「はやぶさ」登場
  • 3月12日:九州新幹線 鹿児島ルート全線開業
  • 3月19日:北関東自動車道 全線開通

本社が九州にある、社長が東北の出身、Web担当者の初恋の人が北関東出身者と結婚したなどと「便乗」すれば、毎日のようにイベントを開催できます。この日程は日経新聞の1月1日号に掲載された「年間予定」よりの抜粋です。

折角のイベントを忘れては意味がありません。以前、週間と日々の予定は「ルーズリーフ」に記すとしましたが、月間は明治安田生命の生保レディから毎年いただくカレンダーに記入します。もちろん、グーグルカレンダーでも構わないのですが、掲示した「壁」を見るだけで予定を大づかみできる視認性の高さから、私は明治安田生命のカレンダーがお気に入りです。

ちなみに、この「イベント」を実現させる技術は、どの会社に移っても、どの業界にいっても使える「技術(スキル)」で転職の際の箔付けができます。特に中小企業の経営者はキャリアの中身はよくわからなくても、こういう「おまけ」のアピールに喰いつきがよいので。

今回のポイント

イベントはもてなしの心

そしてWeb屋の営業ツールとなる

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