人手に頼らないWebサイトの戦略的品質管理指南

ビジネスに不可欠のWebサイト。その品質が企業の業績に直結

Webビジネスの現状と品質管理に対する企業の取り組み、そして実践的品質管理の具体策について、紹介していく。
バーチャルコミュニケーションズ 2010/4/6 9:00 | |

インターネットの普及に伴い、ビジネスにおけるWebサイトの重要性はますます高まってきている。と同時に、企業のWebサイトが一定の品質を確保できないことでブランドにダメージを与えてしまうリスクが増大しているのも事実だ。この記事では、Webビジネスの現状と品質管理に対する企業の取り組み、そして実践的品質管理の具体策について、紹介していきたい。

企業サイトはすでにミッションクリティカルな“基幹店”

※この調査でいう「Webサイト価値」とは、Webサイトの事業貢献度を、商品の販売促進の貢献度(売上価値)と、ブランド向上への貢献度(情報価値)の2つの視点から評価した金額を指している。

日本ブランド戦略研究所が毎年発表している「Webサイト価値ランキング」の2009年版によると、1位となった全日本空輸のWebサイトには896億3,500万円の価値があるという。それ以外でも、トップ30にランクインされている企業はいずれのWebサイトも数百億円の価値があると評価されている。現代の企業活動において、Webサイトはそれだけの価値をもっているということだ。ディスクロージャーが当然のように求められる昨今、株式公開企業にとってIR情報の開示は大前提となっている。1日に数十万人ものユーザーがWebサイトを検索・利用している昨今、ビジネスにおけるWebサイトは欠くことのできない存在だといっても過言ではない。

Webサイト価値ランキング 2009
日本ブランド戦略研究所のWebサイト価値ランキング2009より

企業の業績におけるWebサイトの重要性、価値がどれほど高いかという例を紹介しよう。アメリカのサウスウエスト航空の年間売上は約1兆円だが、航空券売り上げの約78%がインターネット上での販売によるものとなっている。日本の市場でも、全日空では国内線航空券全売上の約6割を全日空の「ANA SKY WEB」が占めているという。

Southwest Airlinesの2008 Annual Report
サウスウェスト航空の2008年度年間レポートでは、「航空券収入の78%程度がsouthwest.comで予約されたもの」と記載されている。

Webサイト&店舗の相乗効果も

「ユニクロ」ブランドでおなじみのファーストリテイリングでは、2009年8月期の決算において、ネット販売も含む通販売上高が前年比31.1%増の188億5,400万円と過去最高額を記録したという。カタログ販売からスタートした店舗以外での商品販売において、試行錯誤を繰り返しながらも、現在では、ネット商品を先行販売させることで商品動向を見極め店舗販売に生かすというシステムを確立し、ネット販売と店舗販売の協力・補完関係を築いてきた成果である。

紳士服大手の「AOKI」も、もともと全国に店舗を構えながら99年から楽天市場に出店していたが、2009年9月より自社ECサイトを開始した。全国展開する店舗との連動を強め、ECサイトでの購入希望者が近くの店舗で試着できるなど独自のサービスを展開しながら、売上高を中長期(約5年後)で全体の10%増を目指すという。現在、同社はファッション部門で約870億円の売上高を記録しているが、10%増というのは、数十店舗分の価値を生み出す計算となる。新たに店舗を展開して人員を確保する以上に、充実したECサイトを構築・運営するほうが効率の良い販売実績につながることは一目瞭然だ。

こうした例からもわかるとおり、今や企業のビジネスはWebサイトなしには成り立たない状況になっている。

ブランド戦略に欠かせない品質管理

企業によっては、ブランディングという観点からWebサイトを立ち上げるというところは少なくない。これまでは単純な広報ツールとして、あるいは販売チャンネルとして機能してきた企業Webサイトだが、近年、そうした単一的な機能にとどまらず、より大規模で複雑化し、ユーザーの消費・購買行動全般にわたって切り離せない存在して受け止められつつある。

しかし、企業の考えるWebサイトの目的が何であったとしても、その企業名を冠したWebサイトにおいて、リンク切れがあったり、ユーザーが欲しい情報にたどりつけなかったりなどの不備があっては、効果を出すどころか、悪印象からブランドに傷がついてしまうことになる。まして、商品を購入するつもりのユーザーがECサイトを閲覧している際にリンク切れに嫌気してWebサイトから離脱してしまうというような事態が起これば、そのユーザーは簡単にライバル商品へと流れていってしまう。

Webサイトのクオリティ(品質)が維持されなければ、ブランディングどころではなく、売上の低下、ひいては業績悪化をにつながりかねないのだ。

反対に言えば、Webサイトの品質を常に維持・管理してその向上に務めている企業であれば、そのWebサイトに対するユーザーの信頼が高くなり、それがそのまま売上高に反映されることになる。つまり、Webビジネスは、品質管理が伴って初めて機能するのである。

たとえて言うならば、Webサイトのリンク切れとは、次のような状況に相当するだろう。

  • デパートを訪れた人が目的のフロアに移動しようとしたら階段が壊れていた
  • 購入した商品を持ってレジに行ったのに、レジには誰もいなかった

これではユーザーは商品を購入することができずに他店に行ってしまい、二度と足を運んでくれないだろう。

昨今の時代におけるWebサイトの品質管理への認識は、インターネット黎明期のそれとは大きく変えなければいけない。一昔前に比べるとはるかに広い層のユーザーがインターネットを利用しており、Webサイトは問題なく使える状態が当然だと考えられている。Webサイトに何らかの問題があればビジネスに悪影響を与える。そう、Webサイトの品質は、企業の命綱でもあるのだ。

◇◇◇

次回は、各企業のWebサイトの実情を数値をベースにご紹介しつつ、数万件ものWebサイトの問題点を抱えながらも、わずか1年で解決し、Webサイトの品質管理を理想的な形で実践したベストプラクティスから品質管理のヒントを抽出する。

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