文書制作の国際標準DITAとは。「DESIGN IT! Forum 2009」が情報改革をテーマに8月末開催
8月27日から8月28日にかけて、DESIGN IT!, LLC.が主催するデザインとITの融合をテーマにしたイベント、「DESIGN IT! Forum 2009」が東京で開催された。DESIGN ITは、ITとデザインを融合し、人々がITを目的達成のためにスムーズに利用できるようにビジネスの革新を実現し、ひいてはよりよい社会を実現する。そうした、ITとDESIGNの潮流を作るべく、2005年に活動を開始。昨年には、関連雑誌「DESIGN IT! magazine」を創刊している。
DESIGN ITの主なテーマは、「ストラテジー」「デザインマネジメント」「ユーザビリティ」「インタラクション」「情報アーキテクチャ」「コンテンツマネジメント」の6つ。2009年のテーマは、「企業情報の構造改革~DITA-XML-CMSによるコンテンツマネジメント戦略~」。6つのテーマのコンテンツマネジメントを中心に、情報の構造改革をテーマに講演がスタートした。
「企業の情報提供は大きく変わろうとしています。クラウドのように、ネットワークを使いさまざまなデータを引き出して新たなサービスが生まれている。こうしたなか、データを引き出しやすくするため、企業の情報構造そのものが変革を起こさなければならないのではないか。そこで、コンテンツマネジメントのなかでも、情報の構造改革を掲げました
」(DESIGN IT!, LLC.代表 篠原 稔和氏)
DITA:コンテンツを再利用しやすくする文書制作の国際標準
基調講演のスピーカー、ジョアン・ハッコス氏は、コンテンツマネジメントから情報アーキテクチャ、ユーザビリティにいたる情報マネジメント分野の世界的エキスパート。27日の講演でジョアン氏は、「エンタープライズパブリッシングの目標というのは、より正確かつ迅速に、顧客に対して効果的に情報を伝えること
」としつつも、現実には製品開発の技術情報やビジネス関連情報が顧客向けになっていないことを指摘。これを解決する方法として、構造化されたトピックベースの情報を構築すること、「XMLベースのオーサリング」と「トピックベースのコンテンツ」、DITAによる情報構築が有効だという。
DITA(ディタ:Drawin Information Typing Architecrure)とは、企業における製品マニュアルや社内文書など、XML準拠の各種文書制作プロセスの国際標準だ。DITAタグを記述して文書を制作するもので、専用エディタもある。国際的な標準化団体OASIS内のDITA技術委員会が2005年にDITA 1.0を発表し、現在は1.2の仕様を評価中で、ジョアン氏は創設メンバーでもある。日本では、今年2月にDITAコンソーシアムジャパンが発足している。
企業が発信する顧客向けの技術情報は、製品開発プロセスの初期に発生するが、開発段階の情報は顧客向けに最適化されていない。より構造化された、トピックベースの情報を構築するべきだが、異なるフォーマットや言語で書かれていることもあり、明確なプロセスがないのが現状だという。また、さまざまな言語でグローバルに提供する必要もあり、翻訳やDTPが大きなコストを締めるという問題もあるという。
こうしたときに有効なのが、今回のテーマでもある文書制作標準のDITAだ。技術開発用のソースをDITAで制作することで、構造化された情報を構築できるようになり、コンテンツへの再利用もしやすくなる。たとえば、製品のバージョンアップごとに、設計書やWebサイトのヘルプなど、複数の更新が必要になるが、もととなる文書を修正することで関連コンテンツをまとめて修正できる。DITAによって、同じ文書から製品マニュアルや技術情報など、ニーズにあわせたコンテンツを簡単に作成できる。
DITAは日本でも普及するのか
カンファレンスの最後には、参加者からの質問を交えながらパネルディスカッションも行われた。海外では、大手製造業やIT企業などで採用が進んでいるというDITA。実際にDITAを採用して成功した企業としては、技術開発用のソースを用いてカタログを数分で自動的に作成する企業や、DTP・翻訳の費用を50%削減した例などがあるというが、日本企業の採用は少ないという。日本企業では、横河電機がグローバルで取扱説明書を制作するために、DITAを採用した例があるという。
日本でどのようにDITAを広めるか、といった議論では、政府による後押しや海外事業部からの圧力など、何かしらのきっかけがないと難しいだろう。組織横断型の経営者、CIOの存在が居ないことも課題だといった議論がなされていた。
DESIGN IT!
http://www.designit.jp/
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