TLDで考えてみるドメイン名の選択/知って得するドメイン名のちょっといい話 #6
ドメイン名の一番右側の部分で日本でよく見かけるのは「.jp」「.com」「.net」といったところだが、最近ではほかにもいろいろな種類のものが登場し、使われるようになってきた。さて、それらの意味や使い方の違いは何だろうか。
ドメイン名には意味がある
独自ドメイン名でウェブサイトを運営したい、というからにはドメイン名にこだわるのは当然ですね。すでにドメイン名を登録している方も、これから登録しようとしている方も、意味のある名前を考えたはずです。
ドメイン名は、「○○○.jp」、「○○○.com」の「○○○」の部分を希望する文字列で登録することになりますが、その右側にある「.jp」や「.com」の部分は「トップレベルドメイン(TLD:Top Level Domain)」と呼ばれます。
TLDには国別TLD(ccTLD)と、それ以外のTLD(gTLD)の2種類があります。たとえば「.jp」は日本のccTLDで、「.com」や「.net」がgTLDです。これらはおなじみのものですが、そのほかにもあまり知られていないTLDや新しく作られたTLDなどがあります。
新しく作られたTLD
「.info」や「.biz」というTLDを見たことはあるでしょうか? 最近のニュース記事では「.mobi」や「.asia」というTLDも取り上げられました。これらは新しく作られたTLDです。
インターネットの広がりの中でドメイン名の登録も増加し、希望の文字列がすでに登録されていることが多くなりました。また、限られたコミュニティー向けのドメイン名に対する要求も大きく、これらを解決するために、国際機関であるICANNは、TLD新設の議論を推進し、2001年から2002年にかけて7つの新しいTLDを設置しました(表1)。
TLD | 主な用途 | 取得時の制約 |
---|---|---|
.biz | ビジネス | なし |
.info | 情報提供 | なし |
.name | 個人名 | あり |
.museum | 博物館・美術館 | あり |
.coop | 協同組合 | あり |
.aero | 航空運輸業界 | あり |
.pro | 専門職(弁護士・医師等) | あり |
TLD | 主な用途 |
---|---|
.asia | アジア太平洋地域 |
.cat | カタルーニャ地方 |
.jobs | 人的資源管理 |
.mobi | モバイル機器・サービス |
.tel | テレコミュニケーション |
.travel | 旅行業界 |
表1にあるTLDの中でも、「.biz」「.info」は、登録にあたって資格などの制約がほとんどないために、少しずつ数を増やしています。希望の文字列のドメイン名が「.jp」や「.com」で空いていなかった、という場合も「.biz」や「.info」なら登録できるかもしれません。また、2003年末以降、ICANNは2回目のTLD新設の動きを進めており、2006年11月1日現在、6つのTLDの設置が承認されています(表2)。
新設するTLDはICANNに提案されたものの中から選ばれますが、そのTLDを設けることがインターネットのためになるかどうか、という審査を経て決定されます。
「.xxx」というアダルト業界向けのTLD提案が不承認になった、という最近のニュースをご存知の方もいると思います。
現在は、日本で用いられているドメイン名の多くが、「.co.jp」「.com」「.jp」ですが、これから新しいTLDも少しずつ増えてくるかもしれません(グラフ1)。
TLDの違いは「見る側」にどう受け止められるか
徐々に増えてきたTLDですが、独自ドメイン名を登録する側にとって、TLDは希望の文字列が登録できるものであれば、どれでもよいのでしょうか?
限られたコミュニティーの中で用いるなら、それでもいいかもしれませんが、不特定多数を対象とするサイトや、ビジネスで用いるものであれば、そのドメイン名がアクセスする人=「見る側」から、どのように見られるかを意識する必要があります。
たとえば、「.jp」や「.com」は、日本国内でよく知られていますが、「.biz」や「.info」などは、それをドメイン名だとは思わなかった、という声もあります。
また、「.jp」と「.com」にも「見る側」が向ける意識には差があります。JPRSの調査の結果、「.jp」では6割が「日本」のサイトだとイメージするのに対して、「.com」ではほとんどがどこの国のサイトか具体的なイメージを抱いていません。このような視点もドメイン名を登録するときには知っておいたほうがよいでしょう(グラフ2)。
あまり知られていないTLDを利用する場合の注意
最近は「.jp」以外のccTLDを日本国内で見ることが増えてきました。ccTLDの中には海外からの登録を認めているものもあります。また、小さな島国などではccTLDの権利を海外企業に売却してしまう事例もあり、これらがgTLDと同様に、世界中にサービスされていることがあります。有名なところではツバルの「.tv」やココス諸島の「.cc」などの例があります。
登録したい文字列が有名なTLDで登録できないとき、これらのTLDはその助けになるかもしれません。しかし、その前にいくつかの注意点を知っておくことが必要です。
ドメイン名はTLDごとに登録管理組織が決められていて、登録管理やDNSの運用を行っています。「.jp」ではJPRSが登録管理組織です。サービスの形や品質は登録管理組織ごとに異なりますが、DNS設定情報や登録者情報の変更などがスムーズに行えるか、問い合わせやトラブルは迅速かつ的確に対応されるか、という点は重要です。
海外のドメイン名を登録していたが、突然英語のメールが届いて、よくわからないので放置していたらドメイン名を失ってしまった、というような事故の話もよく聞きます。
また、登録管理組織が運用するTLDレベルのDNSは、24時間365日無停止で運用されることが必要ですが、管理組織によっては、DNS運用の障害などでウェブサイトにアクセスできなくなったり、メールが届かなくなったりするトラブルが発生することもあるようです。
さらに最近、スパム業者がフィルター回避の手段として小さな島国などのTLDを多用している、ということも耳にします。スパムフィルターメーカーなどが調査を進めているようですが、これらのTLDを利用する場合は、インターネット上での評判やフィルター設定に関する動向に注意したほうがよいでしょう。
自分の大切なサイトを支えるドメイン名ですから、サービスの品質や評判についてもTLD選択の1つの基準にしたいものです。
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※この記事は、レンタルサーバー完全ガイドの発行する雑誌『レンタルサーバー完全ガイドVol.7』(2006年11月30日発売)に掲載されたものを再編集して掲載しているものです。
コメント
大間違いデータ
グラフ1 登録ドメイン名のTLDの情報はどこで、どうやって取ったか分かりませんが、大間違いです。
本当の現状:
.com日本ホスト数:960,937
.jp登録件数:679,274
co.jp登録件数は:325,828
.net日本ホスト数: 295,159
.info日本ホスト数:56,771
.org日本ホスト数48,836
.biz日本ホスト数:44,166
com/net/org/biz/infoの正確の登録件数情報はありませんが、ホスト数というやり方で数えたら(実際はの登録件数はおそらくホスト数の1.5倍)この結果となります。日本人の多くは海外にあるネームサーバを使うから実際の登録件数はもっと多いはずです。
成長率というやり方でよく調べたら.jp系のドメインは大幅海外comなどに負けています。co.jpの成長率は安定してて、大体0ですが、ascii.jpと日本語.jpは何と-(マイナス)成長率。
グラフをexcelで作って、自分で調べてみればすぐ分かります:http://jpinfo.jp/stats/domains.html
インプレスの2006白書のやり方に基づいたと書いてあるけど、どいういうやり方か分かりませんが、どう見ても.jpはcomより多いはずがありません。このデータはおかしいです。
Re: 大間違いデータ
編集部の安田です。コメントありがとうございます。
いただいたコメントに対して、筆者の宇井さんからは早々にご意見をいただいていたのですが、
私のほうがコメント返信を投稿するのに手間取ってしまいました。
お返事が大変遅くなってしまい、失礼いたしました。
記事中のグラフはインターネット白書からのものですが、これは調査対象が日本の企業なので、.comよりも.jpが多くなっています。個人まで含めた全登録数で比較すると、ご指摘いただいたような数字になります。
ただ、この記事は、ビジネスでは.comよりも.jpとかco.jpを使おうよ(そのほうが日本の企業だということがわかりやすいので)という内容なので、日本の企業を対象とした調査データを掲載しています。インターネット全体でドメイン名の登録数がどうかという話題とは少し視点違うのですが、そういった意図が記事内に明示されていなかったため、わかりづらかったかもしれません。申し訳ありません。
あくまでも、日本の企業のネット利用という観点からの記事であることをご理解いただければ幸いです。
改めて、コメントでのご指摘へのお返事が遅くなってしまったことをお詫びいたします。