企業ホームページ運営の心得

商売力。セリングパワーを上げるリニューアルのために

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の八十四

リニューアルに取り組む前に

お盆となると思い出したようにリニューアルに取り組む企業があります。「街角のホームページ屋さん」にはお盆や年末年始に相談が多く寄せられます。

「お盆休み返上で社運をかけたリニューアル!」

といった狙いなのでしょうが、蓋を開けてみるとアクセス数は伸びずに肩を落とします。「客もお盆休み」なのですから当然で、個人ターゲットのサイトと異なり、商売用のアクセス数は落ち込むものです。

リニューアルが成功していれば休み明けに客は戻ってきますので気にする必要はありませんが、客のお盆休みを想像できないことのほうが深刻で「商売力」に疑いありです。「商売力」とはBtoB、BtoC、通販、実店舗への誘導と目的ごとに異なる「商売用ホームページに必要な力」を説明するための造語です。

商売力を上げる「コンテンツ」の取り組み方と作り方にはコツがあります。リニューアルに取り組む前にお読みください。

“使えばわかる”という怠慢

正論に見える怠慢と出会うことがあります。「状況による」「やってみないとわからない」などがそれです。脳みそをフル回転して未来を予見するのも「商売力」です。やってみれば小学生でもわかります。

「使ってもらえば(良さが)わかる」も怠慢です。これが本当なら「試供品」のプレゼントで売上が立つでしょうし、街頭の実演販売で体験させれば即日完売、またはその道のオーソリティに「使って」もらえば賞賛を得て成功は約束されます。しかし多くの場合、説明への努力不足を棚上げした売り手の怠慢です。

ブラウザの「Firefox」すすめるケースを例に挙げます。「使えばわかる」でブラウザを変える人は少数派です。メールとネットとワードを少々というWindows XPユーザーに「マルチプラットフォーム」の利便性を熱く語っても必要性を感じません。セキュリティなら「ウイルスバスターを入れているから」と断られてしまいます。

自作自演で対話してみる

説明は論理的である必要はありません。ならば「世界記録のブラウザ」でどうでしょう? 24時間以内に最もダウンロードされたソフトウェアだという売り文句です。ダウンロード記録はブラウザの優劣を表すものではありませんが、客の興味を惹くことが商売の始まりで「商売力」が試されます。

興味を惹くコンテンツのために自作自演をします。椅子を対面に並べて、客と店を1人で演じて「対話」をします。「エンプティーチェア」という心理カウンセリングの手法です。また同僚数人で、客と店に別れてそれぞれの立場を演じる「ロールプレイング」でも良いでしょう。客側に立ち発言することがポイントです。店側にとって「当たり前」と思いこんでいた不便や説明不足を見つけることができます。社内事情に詳しくない同僚以外、友人の友人など実際のお客となる人でも試せると最適です。

ある店の実話です。携帯サイトへ誘導する為のQRコードが、雑誌広告掲載時に縮小されて潰れてしまい「読み込めない」ことがわかったのは書店に並んだ後でした。客の立場で「利用(チェック)」していれば防げた広告費の無駄遣いです。

客の声は作り出す

商売力の低い(儲けのでない)サイトは説明不足です。客の側に立ち不足を発見します。そして補うために「説明文」を書こうと身構えると、白紙の原稿用紙の前でフリーズしてしまいます。そこで「インタビュー」をします。自作自演やロールプレイングで浮かんできた「客との対話」をインタビューとしてまとめるのです。

聞き手と語り手を明確に分ける

ミヤワキ「ところで弊社をお知りになった理由は?」

お客様 「御著書を拝読しました」

といった表現なら「台詞」だけで簡単です。ただし、これだけでは「ドキュメント」としては成立しても商売力に欠けています。そこでちょっとしたテクニックでパワーアップさせます。

「SEO」を題材とするならこう進めます。

同意は究極のテクニック

続きです。

ミヤワキ「ありがとうございます。それでは今回のご相談は」

お客様 「検索エンジン対策について伺いたいのですが」

ミヤワキ「いわゆるSEOでしょうか」

お客様 「はい、SEO。それです」

ミヤワキ「なるほど、SEOについては拙著でも……」

会話を正確に再現する必要はなく、実際の客に取材した「インタビュー」でも整理します。そのなかでいくつかの表現があり、他の客がどちらの言葉を使っているかわからないときはすべて提示するようにします。文例の「検索エンジン対策」と「SEO」を併記させているのがそれです。

組み立てとして「それでは」を導入に使い「なるほど」と同意してから、重要ポイントを強調するのがテクニックです。また、偽造や捏造のレベルは論外ですが、わかりやすく伝えるために話の前後を入れ替えるのは「読者(客)」を思えば当然です。

報道はセールスの教材

客の声はセリングパワー(販売力)をもつコンテンツで、これの充実が商売力を押し上げます。がしかし、文章を「書ける」客は多くありません。そこでインタビューの出番です。インタビューはさまざまな応用ができる「商売力」を上げる「技術」です。是非、お試しください。ちなみインタビューと書いて「雑談」と読むのもコツだったりします。

最後に余談を。

すべてとはいいませんが、テレビ局や新聞社は「結論」のために取材をすることがあります。某ライブドア社の株式を持っていたことからテレビ局の取材を受けました。インタビューの中で「株式投資は自己責任」と繰り返したのですが、株価暴落と上場廃止に対して繰り返し「悔しいですか」と問われたので、仕方なく「悔しくないと言ったら嘘になる」と答えた部分だけ使われていました。ベクトルは「踊らされた庶民」といったところでしょう。以来、テレビ報道をみるにつけ「勉強になるなぁ」と呟いています。都合の良い証言とデータをつなぎ合わせる編集能力は、演出か捏造か想像かのグレーゾーンで通販番組のそれと重なります。報道番組は最高のセールス教材です。イヤミを込めて。

♪今回のポイント

使ってもらえばわかるは傲慢。

説明力を磨けばサイトの商売力が上がる。

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