初代編集長ブログ―安田英久

コダックが「ブログ部長」を任命でソーシャルメディアへのコミットを加速

Web担のなかの人

米イーストマン・コダック社は、ジェニファー・シズニーという社員を同社の「ブログ部長」に任命した。実際の肩書きは「Chief Blogger」であり、「ブログ部」という部署があるわけではないのだが、わかりやすく訳すと「ブログ部長」といったところだろう。

a thousand wordsa thousand nerds

同社のリリースによると、彼女の役割は

同社の2つのオフィシャルブログ“A Thousand Words”と“A Thousand Nerds”を日々監督し、クリエイティブ面でのガイドをするとともに、ソーシャルメディアにおけるコダックの存在感を高めること

であり、さらに

コダックの目や耳としてオンラインにおける顧客の声に耳を傾け、製品やサービスに関するアイデアや助言を共有すること

だという。

彼女はすでに10年以上コダックに勤めており、これまでも同社のブログに貢献し、さらに各種のイベントでもコダックの社員として講演していたというから筋金入りだ。サンマイクロシステムズ現CEOのジョナサン・シュワルツは昔からチーフブロガーを名乗っていたし、ロバート・スコーブルもマイクロソフトのチーフブロガーだった。日本にも肩書きが「ブロガー」となっている有名ブロガーが何人かいるが、非IT系の大手企業でここまで思い切っている例は少ないだろう。

コダックの本気度が現れているのは、同社がリリースの中で「ブログ」だけでなく「ソーシャルメディア」に言及していること。単に、ビジネスブログ関連で何かプレスリリースを出してあわよくばニュースにというわけではなく、ブログを中心としたユーザー主導の世界に、会社として本気で取り組むことを表明しているのは素晴らしいことだろう。

何よりも、ブログで「情報を出す」だけでなく、ブログ界に「耳を傾ける」ことの大切さを理解していることが良い。2005年にダノングループのストニーフィールドファーム社が外部のフリーライターをチーフブロガーとして雇ったというニュースがあったが、当時の「ブログは顧客との握手のようなもの」という段階から、コダックはさらに一歩踏み込んでいるようだ。

こういったニュースが出ると、まねをしてブログ部長を任命する会社も出てくることだろう。そして、半年や1年たったころに「売上にどれだけ貢献したのか」「ブログ経由での集客は何人になったのか」といった風向きにもっていってしまいそうなものだが、彼女のブログ部長としての初年度の目標設定などはどんなところなのだろうか。みたところ、既存の業務でいうところの広報とマーケティング双方の役割を果たすべきポジションのようだが、彼女の具体的な職務内容記述も気になるところだ。

そもそも、顧客側からみた企業ブログの魅力とは、ブロガーのパーソナルな部分、つまり個人の考えや個人の熱意に負う部分が多いものだ。おそらく、彼女の役割として、ブログを書いて情報を出すほうは現状維持ベースで、「聞く」ほうに業務としての比重があるのではないだろうか。ソーシャルメディアからフィードバックを得て、それを開発・広報・マーケティング・経営などが活かせる形で伝える、そのための仕組みを作ってうまく回すことが中心なのではないだろうかと想像する。

企業としてソーシャルメディアを通じたコミュニケーションフィードバックの仕組みを作り上げて効果を出すことは、ブロガー個人がブログを通じて作り出す流れとはまた異なるタスクになるだろうから、チャレンジングな仕事になるだろう。

ブロゴスフィアやソーシャルメディアの声に耳を傾け、マーケティングとして本当の「コミュニケーション」を実践することは、多くの企業風土にはこれまでなかったやり方だ。

そこでジェニファーさんのような人が中心になって動くことで、「トクリキー※1」度の高い運営が可能になり、効果が増すのだ。

ビジネスとブロゴスフィアの両方を理解している、企業内ブロガーの価値は高まる一方のように思われる。あとは企業側の理解だろう。

この記事は、メールマガジン「Web担ウィークリー」やINTERNET Watchの「週刊 Web担当者フォーラム通信」に掲載されたコラムをWeb担サイト上に再掲したものです。

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