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カゴ落ち・検索の前に勝負が決まる――購買ファネルの早期化に対応せよ。大手ブランドがシフトする「節約ツール×AI」投資の今

4 日 14 時間 ago

ノースウェスタン大学のRetail Analytics Councilと、AIショッピングアシスタントを手掛けるMintyが共同で実施した最新調査(2026年9月公表)によると、キャッシュバックアプリやセール情報プラットフォーム、AIを活用したショッピングツールが、従来型広告よりも消費者の購入判断に大きな影響を与えるようになっています。これに伴い、多くの小売企業がマーケティング予算の投資先を根本から見直し始めています。

AI経由の購入拡大で激変するマーケティング予算

AIプラットフォームは、消費者がオンライン上のどこで、どのように買い物をするかに、ますます大きな影響を及ぼしています。それに伴い、小売企業もマーケティングや広告への予算の使い方を変えつつあります。

こうした傾向は、ノースウェスタン大学のRetail Analytics Councilと、AIを活用したショッピングアシスタントを提供するMintyが発表した新たな調査で明らかになりました。キャッシュバックアプリ、セール情報を提供するプラットフォーム、価格比較ツールが、従来型広告やロイヤルティプログラム、リテールメディア、クリエイターマーケティングと比べ、消費者にとって「最も役立つ」チャネルになっていると分析しています。

この調査は、小売企業・ブランドメーカー・オンラインマーケットプレイスのEC意思決定者150人を対象に実施。年間売上高1億ドルを超える企業が98%を占めています。

2027年、主要な集客チャネルは「従来型検索」から「AI」へ

調査結果によると、回答者の79%が「2027年には自社の主要な顧客層が日常的にAIツールを利用するようになる」と予測。また、消費者の購入判断に最も役立つマーケティング手段として、81%がキャッシュバックや節約につながるツールをあげました。ノースウェスタン大学のアソシエイトディレクターであるフランク・ダドリー氏はこう指摘します。

これは単にマーケティング担当者が予算の細かな項目を微調整しているレベルの話ではありません。商品が発見され、顧客に選ばれるプロセスそのものが根本から変化しており、企業はその地殻変動に対応しているのです。

実際、米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』と調査会社Bizrate Insightsが実施した2026年の消費者調査でも、消費者がAIツールを利用する最大の理由は「よりお得な条件やセール情報(お得な商品)を探すこと」であることが判明しています。

ダドリー氏はさらにこう付け加えます。

消費者が価格比較、選択肢の評価、費用対効果の最大化のためにAIを活用するようになり、ブランド側もそれらの意思決定に直接影響を与えるチャネルや機能へ予算を再配分しています。

購買ファネルの早期化に対応する「プロアクティブコマース」の登場

今回の調査では、マーケターの3分の2(約67%)が「2027年にはAIが顧客へリーチするための最も主要な手段になる」と回答しました。その結果、半数以上の企業がキャッシュバックなどの節約施策とAIを組み合わせた運用を始めています。

特筆すべきは、回答企業の50%が「AIエージェントを直接対象としたマーケティング活動」を行っている点です。一方で、「2027年も従来型の検索エンジンが顧客リーチの主要手段であり続ける」と答えた割合は18%にとどまり、ソーシャルメディア(SNS)に期待する割合も13%に低迷しています。

Mintyでは、消費者がAIエージェントを活用して商品を探し始める購買プロセスのごく初期段階からアプローチする手法を「プロアクティブコマース(proactive commerce)」と定義しています。

Mintyの最高マーケティング責任者(CMO)であるロドニー・メイソン氏は、次のように説明します。

「購買における意思決定のタイミングは、ECの購入ファネルにおけるより早い段階へと移動しています。顧客が検索窓で検索したり、クリックしたり、あるいはカゴ落ち(離脱)を起こしたりする前に、消費者本人とその購買を代行するAIエージェントの両方に対して商品の総合的な価値を伝える「プロアクティブコマース」は、すでに市場のトップ企業によって実践されています。今回の回答者の過半数も、2027年までに導入する意向を示しています。

すでにAIプラットフォーム上で初期調査を行う消費者をターゲットにしているマーケターのうち、61%が全体のマーケティング予算を増額する、または既存予算をキャッシュバックや節約アプリへ振り向けていると回答しました。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん、白川久美さん、中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

この記事の筆者

[ 転載元 ] Digital Commerce 360

世界最大級のネット通販業界の専門誌『Digital Commerce 360』(旧『Internet Retailer』)は、雑誌のほか、Web媒体、メールマガジンなどを運営。Vertical Web Media社が運営を手がけている。

Eコマースの戦略に関し、デイリーニュース、解説記事、研究記事、電子商取引におけるグローバルリーダーをランク付けする分析レポートなどを発行している。

matsumura

クラウドECプラットフォーム「メルカート」、かっこの不正検知サービス「O-PLUX Payment Protection」と標準連携

4 日 14 時間 ago
クラウドECプラットフォーム「メルカート」、かっこの不正検知サービス「O-PLUX Payment Protection」と標準連携
メルカートは、かっこが提供する不正検知サービス「O-PLUX Payment Protection」と標準連携を開始。個別開発なしでカード不正利用対策を導入しやすくし、注文時のリアルタイム自動チェックによる業務負荷の軽減にもつなげる。
furukawa2026年10月1日

クラウドECプラットフォーム「メルカート」を提供するメルカートは9月30日、かっこが提供する不正検知サービス「O-PLUX Payment Protection」と「メルカート」がAPI連携による標準連携を開始したと発表した。

「メルカート」を利用するEC事業者は、個別開発なしでカード不正利用対策を導入しやすくなり、注文時のリアルタイム自動チェックによる業務負荷の軽減にもつなげられる。

クラウドECプラットフォーム「メルカート」、かっこの不正検知サービス「O-PLUX Payment Protection」と標準連携
クラウドECプラットフォーム「メルカート」と不正検知サービス「O-PLUX Payment Protection」が標準連携

近年、クレジットカードの不正利用被害額は500億円を超える水準で推移しており、EC事業者にとってセキュリティ対策の重要性が高まっている。ECサイト構築プラットフォームにも、加盟店におけるカード不正利用や悪質転売、なりすましなどへの対応強化が求められているという。

今回の連携により、「メルカート」導入事業者は「O-PLUX Payment Protection」を短期間かつ低コストで導入できるようになる。注文時にAPI経由で不正対策を実施し、リアルタイムで自動チェックする。これにより、従来は担当者が目視で行っていた確認業務の負荷軽減や、運用コストの削減につなげる。

「O-PLUX」は、ECで発生する不正ログインや不正注文をリアルタイムで検知するクラウド型の不正検知サービス。個人情報漏えいやクレジットカードの不正利用、悪質転売などの防止に加え、審査業務の自動化にも対応する。

「O-PLUX」は、多数のECサイトへの導入実績があり、共有ネガティブデータや特許取得の名寄せ技術、ローカライズした審査ロジックなどを活用して高精度な不正検知に対応する。専任コンサルタントとAIを組み合わせることで、新たな不正手口にも柔軟に対応。さまざまなECシステムとの標準連携に加え、CSVアップロードによる簡易導入も可能としている。月額3万円から利用でき、事前にトライアルを実施して効果検証や運用方法の確認も行える。

クラウドECプラットフォーム「メルカート」、かっこの不正検知サービス「O-PLUX Payment Protection」と標準連携
「O-PLUX」のサービスの特徴

連携開始に合わせ、10月1日から12月31日まで、「メルカート」導入事業者を対象としたキャンペーンを実施する。期間中は、「O-PLUX Payment Protection」の導入初期費用を特別価格で提供する。

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この記事の筆者

[ 執筆 ] 鳥栖 剛

フリーライター
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鳥栖 剛

不二家洋菓子店、WEB会員サービス「PEKO SMILE CLUB(ペコちゃん スマイル クラブ)」を開始

4 日 15 時間 ago
不二家洋菓子店、WEB会員サービス「PEKO SMILE CLUB(ペコちゃん スマイル クラブ)」を開始
不二家は不二家洋菓子店のWEB会員サービス「PEKO SMILE CLUB」を開始した。会員向けクーポンの配布に加え、対象5店舗でモバイルオーダーを導入し、今後はLINE連携やポイント制度、独自アプリの展開も進める。
furukawa2026年10月1日

不二家は9月29日、不二家洋菓子店の新たなWEB会員サービス「PEKO SMILE CLUB(ペコちゃん スマイル クラブ)」の運用を始めた。会員向けクーポンの提供に加え、10月1日から対象5店舗でモバイルオーダーを開始する。

今後はLINEミニアプリとの連動や対象店舗の拡大、ポイント制度の導入など、会員向けサービスを段階的に拡充する。

不二家洋菓子店、WEB会員サービス「PEKO SMILE CLUB(ペコちゃん スマイル クラブ)」を開始
不二家洋菓子店のWEB会員サービスではモバイルオーダー機能やクーポン配布を提供

「PEKO SMILE CLUB」は、不二家洋菓子店での買い物をより便利に、楽しくすることを目的とした会員サービス。モバイルサイトをプラットフォームとし、会員登録すると全国の不二家洋菓子店で利用できる限定クーポンなどを受け取れる。

新規登録者向けには、購入金額に応じたクーポンや「不二家のバウムクーヘン」1個のプレゼントを用意する。

不二家洋菓子店、WEB会員サービス「PEKO SMILE CLUB(ペコちゃん スマイル クラブ)」を開始
「PEKO SMILE CLUB」のサイト画面

モバイルオーダーは10月1日に開始する。対象店舗は、都内の「不二家 数寄屋橋店」「Peko chan House サンシャインシティアルタ店」「FUJIYA CONFECTIONERY/milky70 since1951 ららぽーと立川立飛店」「FUJIYA Heart Collection 吉祥寺」と兵庫の「FUJIYA CONFECTIONERY 日生中央サピエ店」の計5店舗。

会員登録後にスマートフォンから事前注文することで、店頭で待たずに商品を受け取れるようにする。

また、対象5店舗ではモバイルオーダーを通じてクリスマスケーキのWEB予約にも対応する。対象商品の予約者にはクーポンを付与する。

今後は会員サービスの機能を順次拡充する。10月下旬ごろからLINEミニアプリとの連動を開始する予定。2027年1月上旬から中旬以降にはモバイルオーダーの対象店舗を順次拡大する。

さらに2027年7月上旬以降には、ポイント制度など会員向けサービスを拡充するとともに、オリジナルアプリの提供開始も計画している。

不二家洋菓子店での購買を起点に、デジタルでの接点やモバイルオーダーなどを組み合わせながら、会員との継続的な接点を構築する。

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[ 執筆 ] 鳥栖 剛

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鳥栖 剛

アスクルは何を変えるのか? ランサムウェア被害を経て成松新社長が進める「意思決定」「AI」「物流」改革​​

4 日 15 時間 ago

アスクルが次の成長ステージに向けて経営体制を刷新、2026年8月6日付で成松岳志氏を代表取締役社長CEOに選任した。成松社長は2007年にアスクルへ入社。BtoBマーケティング、LOHACO、データ活用、デジタルマーケティング、ロジスティクス、事業戦略といった責任者を務め、EC事業のバリューチェーンを幅広く経験してきた人物だ。2025年に発生したランサムウェア攻撃からの復旧を進める一方、中長期ビジョン「Beyond Retail―小売を超えて、働くを革新する―」の実現に向け、新規事業、AI、物流などへの投資を進めているアスクル。成松新社長に、経営体制刷新の狙い、ランサムウェア被害から得た教訓、AI活用、物流戦略、そしてアスクルがめざす次の成長について聞いた。

経営体制を刷新、意思決定の大胆さと速度を高める

2026年5月期の連結業績は、売上高が前期比16.8%減の4001億9900万円、当期純損失は221億5000万円(前期は90億6800万円の黒字)。ランサムウェア攻撃の影響に加え、物流効率の低下、物流拠点の再編、基幹システム関連費用などが響いた。

一方、2027年5月期は売上高4900億円、当期純利益40億円を計画。売上高は前期比22.4%増を見込んでおり、事業の正常化と成長再加速をめざす。

連結業績の推移と見込み(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)
連結業績の推移と見込み(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

こうしたタイミングで実施したのが経営体制の刷新だ。

成松社長は、新社長就任や取締役会の再編について、単なる世代交代ではなく、中期経営計画を実行するための意思決定力を高める狙いがあると説明する。

これから先、今の中期経営計画を実現していくうえで重要なのは、既存ビジネスの延長線上での成長だけではありません。新しい事業への進出も含めて、変革の多いプロジェクトをどう実現するかが問われています。そのためには、意思決定の大胆さと速度を上げることが必要です。今回の経営体制の見直しも、その実行力を高めるためのものです。

取締役会をスリム化したのも、単に人数を減らすことが目的ではなく、変革と成長に向けて、より速く、より本質的な判断ができる状態を作るためです。

アスクルはこれまでガバナンスを強く意識して体制を整えてきました。今後はその土台の上で、成長に向けた意思決定の機動力をより高めていく段階に入ったと考えています。(成松社長)

アスクルの代表取締役社長CEOに就任した成松岳志氏
アスクルの代表取締役社長CEOに就任した成松岳志氏

取締役会は13人から10人にスリム化

今回の経営体制刷新では、取締役会を13人から10人にスリム化した。独立役員が過半を占めるガバナンス体制を維持しながら、変化への対応力と意思決定の速度を高める。

背景にあるのが、2050ビジョンの実現に向けた2035年までのマイルストーン「Beyond Retail~小売を超えて、働くを革新する~」の実行である。

「Beyond Retail」が示すのは、多角化ではなく顧客課題の再定義

アスクルが掲げる「Beyond Retail」は、既存のECや物販事業の周辺領域へ単純に事業を広げる構想ではない。成松社長は「どの顧客の、どのような課題を解決する企業になるのか」を改めて定義する考え方だと説明する。

「Beyond Retail」は、単に物販を超えて何か別のことをやる、という意味ではありません。私たちがこれから、どのようなお客さまに対して、どんな課題を解決していくのか。その大きな方向性を示すメッセージです。

いまアスクルができていることは、必要な商品を購入いただいて、明日届けるという領域です。もちろんこれはアスクルの大きな強みですが、お客さまが将来直面する課題はそこにとどまりません。特に企業のお客さまにとっては、労働力不足がこれからの重要な課題になる。だからこそ、小売を超えて、働くことそのものをどう支えられるかを考えなければならない。

それは人材派遣を行う、転職サービスを始めるといった単純な話ではありません。足りない労働力をどう補うか、今いる人の生産性をどう上げるか、辞めずに働き続けられる環境をどう支えるか。そうした課題に対して、新しい市場を創造することが私たちの挑戦です。(成松社長)

新事業は既存事業であるリテールの「圧倒的な顧客基盤」「売り場から配達までのビッグデータ」「商品力・物流力・営業力」といったアセットを活用し推進していくという(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)
新事業は既存事業であるリテールの「圧倒的な顧客基盤」「売り場から配達までのビッグデータ」「商品力・物流力・営業力」といったアセットを活用し推進していくという(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

中長期ビジョンでは2035年にEBITDAの半分を新規事業領域が占める構想

アスクルが2025年7月に公表した中長期ビジョンでは、2035年にEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の半分を新規事業領域が占める構想を掲げている。2029年5月期までに最大1000億円を投資し、新規事業で売上高200億円、営業利益20億円をめざす。

中期ビジョンについて(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)
中期ビジョンについて(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

既存の物販事業で築いてきた顧客基盤や物流網、データなどを活用しながら、顧客企業が抱える業務や働き方の課題を解決するソリューション領域へ事業を広げる構想だ。

ランサムウェア被害で見えた「技術」と「組織」の課題

アスクルにとって大きな転機となったのが、2025年10月に発生したランサムウェア攻撃だった。事業や物流に大きな影響が及び、復旧には時間を要した。一方で、この危機対応を通じて、サイバーセキュリティだけでなく、組織横断の意思決定や情報共有にも課題が見えたという。

成松社長は復旧の責任者として、商品、ECサイト、調達、物流、受注、コールセンターなどの責任者を毎日集め、復旧状況を確認しながら意思決定を進めた。

今回の件では、お客さまをはじめ多くの方にご迷惑をおかけしました。その反省は大前提としてあります。そのうえで、何が足りなかったのかを直視すると、技術面と組織面の両方に課題がありました。

技術面では、監視のレベル感、そして復旧のためのバックアップ体制がサイバーセキュリティに十分適したものだったかという点です。EDRの刷新や監視体制の強化、バックアップの見直しなど、短期的な技術対応はほぼ完了しています。ただ、攻撃は常に進化するので、守る側のアップデート速度をどう担保するかが次のテーマです。

一方で、もっと本質的だったのは、誰が意思決定のボールを持つのかが曖昧になる領域があったことです。システムの問題でありながら物流でもあり、サービスでもある。そういうテーマに対して、部門横断でどう決めるか。この課題は、危機時だけでなく平時の経営にも通じています。(成松社長)

アスクルが取り組む再発防止策(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)
アスクルが取り組む再発防止策(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

アスクルは2026年3月、全社の情報セキュリティを統括するCISO(チーフ・インフォメーション・セキュリティ・オフィサー)をCEO直下に設置した。セキュリティを個別の執行部門の機能としてではなく、全社のルールやポリシーを横断的に管理する体制へ見直した。

新体制について(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)
新体制について(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

危機対応の中で構築した組織横断の意思決定プロセスを、平時の経営にも定着

ただ、成松社長が重視するのはセキュリティ体制だけではない。危機対応のなかで構築した組織横断の意思決定プロセスを、平時の経営にも定着させようとしている。

復旧の現場では、毎日40人前後のキーマンが集まりました。1週間後にどのセンターでどこまで状況が戻るのか、出荷能力が何%まで回復するのか、その限られた余力をどのお客さまにどう振り分けるのか。全員が同じ情報を持ち、その場で決めなければ間に合わなかったのです。その時に痛感したのは、この意思決定の速度こそが本来必要な速度だったということ。

ランサムウェア攻撃対応のための臨時運営ではなく、平時の経営にもこのサイクルを実装しなければいけない。今も週3回、全ファンクションが集まり、その場で決める運営を続けています。アスクルはバリューチェーンが長い会社です。だからこそ、縦割りの間に落ちるテーマをなくし、全体最適で動ける状態を日常化することが重要だと考えています。(成松社長)

危機対応で構築した情報共有と意思決定の仕組みを、通常の事業運営にも取り入れる。ランサムウェア被害を経て、アスクルは組織運営そのものの見直しを進めている。

AIは「部分的な活用」から事業の中核へ

成松社長は、アスクルで長くデータ活用やデジタルマーケティングを担当してきた。2014年にはEC店舗運営&ビッグデータ統括部長に就任。その後もデジタルマーケティングやアナリティクス領域を率いてきた。

現在、アスクルが進めるAI活用については、個別業務の効率化から、事業の重要なプロセスを変える段階へ進んでいると見る。

部分的にAIツールを試す段階は、もう越えたと思っています。事業の本丸に入ってきたのは、基幹のコアデータとつながり、重要な業務プロセスをAIベースに置き換えられると社員が実感し始めた瞬間からです。

分析、計画、検証といった工程は、これまでアナリストが時間をかけて行っていたことを、もっと大きな分量で、もっと速く回せるようになります。さらに大きいのは、人間が担ってきた実行プロセスの設計にもAIが入ってきたことです。いま特に急いでいるのは、セールスとマーケティングのAI駆動化です。

お客さまごとに、なぜこの提案をするのか、何を提案するのか、その計画自体をAIが瞬時に作る。提案書の生成まで含めて、お客さま接点の一部をAI駆動ベースに置き換えていく。これは単なる効率化ではなく、顧客価値の作り方そのものを変えるテーマです。(成松社長)

2027年5月期の業績計画では、AI関連投資も織り込む。

営業利益改善では、売上高の回復、粗利率改善、物流費削減などを見込む一方、セキュリティ対策やAI関連投資によるコスト増も計画している。

AI活用について、成松社長が重視するのはECサイト上の自動化だけではない。営業担当者による提案、電話や紙媒体を通じた顧客接点など、デジタル以外も含めたセールス・マーケティングプロセス全体をAIで再設計する考えだ。

BtoB事業では、顧客ごとに異なる購買履歴や事業特性、ニーズを踏まえた提案が求められる。アスクルが保有する購買データや顧客データとAIを組み合わせることで、提案内容の設計から営業活動までのプロセスを変えていく構想がある。

画像はIR資料から編集部がキャプチャ
画像はIR資料から編集部がキャプチャ

物流で重視するのは「最速」ではなく「確実性」

成松社長は2023年にロジスティクス本部長に就任し、ASKUL LOGISTの取締役も務めた。

EC物流では配送スピードが競争力として注目されやすいが、成松社長は特にBtoBにおいては「確実に届くこと」が重要だと考えている。ランサムウェア攻撃後の事業復旧や顧客の利用状況を分析するなかで、その価値を改めて認識したという。

復旧の過程で一番学んだのは、お客さまにとって物流の価値は、単に一番速いことではなかったということです。とくにBtoBでは、最短で今日届くことよりも、「明日必ず届く」と約束できることの方が重要でした。仕事の現場では、「早ければ今日、でも遅ければ明後日」では困るのです。明日絶対に来る。だから明後日の業務に確実に使える。このコミットメントこそが価値だった。

さらにBtoBでは、どこに、どう届けるかという納品品質も非常に重要です。館内ルールや設置場所の制約もある。だから、物流の進化は単にマテハンを入れて効率化するとか、ドライバーを標準化するといったテクノロジーの話だけではありません。その先に、何をお客さまとの約束として設計するのかがまず大事です。

アスクルは「明日来る」を社名に持つ会社として、そのコミットメントに徹底的にこだわり続けたいと思っています。(成松社長)

物流の効率化や自動化を進めながらも、その目的はコスト削減だけではない。

BtoBでは、顧客企業の業務を止めないことが物流サービスの重要な役割になる。指定された日に必要な商品が届くことや、オフィス・施設ごとの納品条件に対応することなど、配送品質そのものが顧客価値につながる。

アスクルは物流を、単なるECのバックエンド機能ではなく、「働く現場」を支えるインフラとして位置付けている。

データ、AI、物流を基盤に「働く」を支える企業へ

アスクルは2027年5月期を、売上回復と構造改革を進め、成長再加速につなげる重要な1年と位置付けている。ランサムウェア攻撃による影響は大きかった。一方で、その復旧過程では、セキュリティだけでなく、組織横断の意思決定、情報共有、物流品質など、今後の経営に必要な課題も明らかになった。

新体制では、既存のEC・物販事業の回復に加え、DX、ウェルビーイング、BPOなどの新規事業領域へ投資する。

AIについては、業務効率化にとどまらず、営業やマーケティング、顧客提案のプロセスそのものを変える可能性を見込む。物流では、配送スピードだけでなく、BtoBの業務を支える納品品質や確実性を競争力として高めていく。

「Beyond Retail」は、こうした取り組みを個別に進める構想ではない。EC、データ、AI、物流という既存事業で培ってきた基盤を活用しながら、顧客企業やそこで働く人が抱える課題へ事業領域を広げる。

アスクルが「Beyond Retail~小売を超えて、働くを革新する~」というマイルストーンをどこまで具体的な事業として形にできるのか。新社長のもとで始まった経営体制の刷新と新規事業への投資が、今後の成長を左右することになりそうだ。

この記事の筆者

[ 執筆 ] 鳥栖 剛

フリーライター
matsumura

米Amazonが始めた出品・コンプライアンス・物流の一元管理で「初日からの世界進出」を支援する取り組みとは?

4 日 16 時間 ago
米Amazonが始めた出品・コンプライアンス・物流の一元管理で「初日からの世界進出」を支援する取り組みとは?
米Amazonは、出品、コンプライアンス対応、物流を一元管理し、販売事業者の海外展開を支援する新たな取り組みを発表した。各国ごとに必要だった商品登録や法令対応、在庫管理の負担を減らし、「初日から世界で売る」体制づくりを後押しする。
furukawa2026年10月1日

米Amazonは9月24日、出品、コンプライアンス対応、物流を一元的に管理し、販売事業者の海外展開を後押しする新たな取り組みを発表した。国ごとに商品登録や法令対応、在庫配分を個別に進める必要があった従来の越境販売の負担を減らし、「初日から世界で売る」体制づくりを支援する。

同日から一部機能の提供を開始し、今後数週間から数か月かけて各機能を順次導入する。2027年には、さらに多くの機能をリリースする計画だ。

米Amazonが始めた出品・コンプライアンス・物流の一元管理で「初日からの世界進出」を支援する取り組みとは?
Amazonは「初日から世界で売る」体制づくりを支援

Amazonによると、複数国で販売している出品者の売上高は、1か国のみで販売する出品者と比べて平均70%高い。一方、現在複数国で出品している販売事業者は全体の30%にとどまる。Amazonはその背景として、各国で在庫、法規制対応、商品登録、物流などを個別に管理しなければならず、海外展開に伴う業務が煩雑になっていることをあげている。

各国の販売機会や採算性を1つの画面で確認

こうした課題に対応するため、Amazonは各国の販売機会を一覧で確認できる統合ダッシュボードの提供を拡充する。

対象はまず米国、欧州、日本。年内にさらに対象国を広げる予定で、販売事業者は、どの国で自社商品の需要が見込めるのか、採算性はどうか、販売開始までに何が必要なのかを1か所で確認できるようになる。

商品情報の登録についても、国ごとに繰り返すのではなく、1回の登録をベースに各国へ展開しやすくする構想を打ち出している。

Amazonのシステムが出品時点で販売先候補の国に照らして商品を評価し、商品説明の翻訳、通貨や単位の現地化、国ごとに必要な法令対応の洗い出しなどを自動で進める。要件を満たした商品は、各国向けにローカライズされた状態で展開できるようにする。

米Amazonが始めた出品・コンプライアンス・物流の一元管理で「初日からの世界進出」を支援する取り組みとは?
各国の販売機会を一覧で確認できる統合ダッシュボードのイメージ

AIアシスタント「Seller Assistant」も機能強化

さらに、AIアシスタント「Seller Assistant」の機能も強化する。まずは長期在庫や納品計画に関する支援機能を追加。今後はパーソナライズされたアドバイザーへと発展させる考えで、必要な対応を提案するだけでなく、その理由や各推奨事項の根拠となるデータも示すという。

コンプライアンス対応を「1回の申請」に集約

海外展開における大きな障壁の1つが、国ごとに異なるコンプライアンスへの対応だ。包装や表示、安全試験、成分規制などの要件は国によって異なり、これまでは製造後に販売国ごとに個別対応する必要があった。

Amazonは今回、コンプライアンス対応について、玩具カテゴリーから新たな仕組みを導入した。各国で別々に試験や認証を取得するのではなく、複数国の要件をまとめた単一の仕様書に沿って、1回の申請で複数国の認証要件を満たせるようにする。既存の認証も活用し、すでに証明済みの内容について再試験や再提出を不要にすることで、手続きの重複を減らす。

Amazonによると、試験の一括申請を先行導入した事業者では、コンプライアンスコストが最大60%削減されたという。

この単一申請型の対応は、まず安全性試験が複雑な玩具から開始し、年内に家電やベビー用品にも広げる予定。2027年にはさらに対象カテゴリーを拡大するほか、商品を製造する前の段階で、国ごとの規制要件や対応コストを把握できるようにする方針も示している。

カナダの収納用品メーカーの事例では、各国のコンプライアンス要件の確認と物流をAmazonの仕組みで一元的に進められたことで、複数国への展開に伴う業務の複雑さが減り、中小規模の事業者でも海外展開を進めやすくなったという。

コンプライアンス試験の一括申請のイメージ

物流は「1か所に納品」して複数国へ展開

物流面では、グローバル倉庫・配送の「Global Warehousing and Distribution(GWD)」を軸に、1回の製造ロットを1か所のAmazon運営倉庫に送ることで、複数国への販売に対応しやすくする体制を整える。

これまでは販売国ごとに在庫を分けて送り込む必要があったが、今後は製造地に近いAmazon拠点にまとめて納品し、需要が発生した国へ在庫を振り分けられるようにする。

在庫は各国別ではなく1つの在庫プールとして管理し、実際の需要が生じた時点で必要な国へ移動させる。到着後は各国のFBA拠点に流し込み、現地顧客への配送につなげる。

GWDは現在、米国向けに接続しており、年内には英国、日本、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、カナダを加えた計8か国体制に広げる予定だ。

Amazonによると、GWDを活用した場合、米国内の倉庫・配送サービス「Amazon Warehousing and Distribution(AWD)」と比べて保管コストを最大45%抑えられ、「Fulfillment by Amazon(FBA)」への補充も最大5日短縮できるという。

なおAWDについても、米国以外に欧州、英国、オーストラリアへ展開を広げており、低コストでの一括保管と自動補充の選択肢を拡大している。

Amazonは、販売機会の発見から商品登録、コンプライアンス、在庫・物流まで、これまで国ごとに分かれていた海外販売に伴う業務を一元化することで、事業者がより早く複数国で販売を始められる環境を整える。

「初日から世界で売る」という海外展開のハードルを下げることで、特に複数国への進出に人員やノウハウを割きにくい中小規模の販売事業者にも、グローバル販売の選択肢を広げる狙いだ。

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この記事の筆者

[ 執筆 ] 鳥栖 剛

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鳥栖 剛

突然の退店リスクを回避! 楽天の「違反点数制度」改善と警告メールへの正しい対処法+検索順位・広告アルゴリズム公開の限界と「主要要因」の捉え方

4 日 16 時間 ago

ECを実施している事業者にとって最も身近なECモールであり、売り上げの主軸としているネットショップも多いと考えられる「楽天市場」。運営面において、累積点数によって違約金や契約解除が課される「違反点数制度(ペナルティ制度)」は、一歩間違えればショップの存続に関わる死活問題へと発展するリスクをはらんでいます。ブラックボックス化されがちな「検索アルゴリズム」や「広告運用」に対して、国はどこまでの情報開示を求めているのでしょうか? また、競合店による商品画像やキャッチコピーの「無断転用」が発生した場合、泣き寝入りせずに楽天を動かすための「4ステップの防衛策」とは何か? 国の評価報告書から読み解く「楽天市場」のルール変更の本質と、出店者が備えるべき法務的思考を分かりやすく解説します。

聞き手・執筆:竹内謙礼(経営コンサルタント)

有限会社いろは 代表取締役。大学卒業後、出版社に勤めた後に観光牧場に転職。企画広報担当を経て2004年に経営コンサルタントとして独立。「楽天市場」「ビッダーズ」などで多くのネットビジネスの受賞履歴あり。また、「千葉文学賞」などの小説、エッセイでも数々の受賞暦を持つ。

話し手・椋木エラン氏(メリットパートナーズ法律事務所 弁護士/元経済産業省官僚)

メリットパートナーズ法律事務所で、EC事業者・EC支援事業者の支援に注力。特許や商標、意匠などの出願から紛争まで取り扱っている知的財産関係を専門としている。2022年に内閣官房へ出向、「スマホソフトウェア競争促進法(いわゆるスマホ新法)」の企画・立案に関与。その後、経済産業省に移り、「透明化法」の主にECモール分野における執行・運用に携わった。現在はメリットパートナーズ法律事務所に戻り、EC分野の法務支援に力を入れている。

突然の退店リスクを回避! 楽天の「違反点数制度」改善と警告メールへの正しい対処法

竹内氏竹内

「楽天市場」の出店者にとって、違反点数が積み重なっていく「ペナルティ制度」のリスクは、一番の関心事だと言えます。

椋木椋木

「楽天市場」は違反点数の基準を公開しているので、出店者がリスクを可視化できる点は大いに評価すべきポイントです。注目すべきは、点数に応じて違約金が発生する点。契約解除事由に該当する場合や、累積100点といったラインに達してしまうと退店措置が講じられる可能性があるため、出店者にとっては死活問題になります。

竹内氏竹内

過去には、ある日突然、何の前触れもなく利用停止になってしまうことが問題視されている時期もありました。

椋木椋木

国がまとめている最新の評価報告書でも、楽天側が「点数がたまったらいきなり退店させる」というこれまでの仕組みを見直し、手続きを改善していることが明記されています。たとえば、いきなり違反と認定するのではなく、出店者の主張やガイドラインの適用についての言い分を確認することになっています。さらに、アカウント停止といった重い措置を行う際も、イチ担当者の独断で決めるのではなく、関係各部署による合議体において、公正かつ慎重に検討する審査体制が敷かれています。

竹内氏竹内

一方的にバッサリ切られるリスクは減っているんですね。では、実際に楽天から「警告メール」が届いた場合、出店者はどのように対応すればいいのでしょうか。

椋木椋木

まずはパニックにならないことです。店舗には違反認定の前に、事実を説明する機会が実質的に保障されています。ここで一番やってはいけないのは、「申し訳ありませんでした」と感情的な謝罪文だけで物事を済ませてしまうことです。そうではなく、違反の事実があるのであれば速やかに改善対応の検討をすることや、違反に対して反論を行う場合には、メーカーの正規の証明書や取引先とのメール履歴、あるいは商品の成分表など、手元にある客観的な証拠をすべて添付し、理路整然とした「論理的な回答書」を提出することが重要です。客観的な事実に沿って、論理的な弁明を行えば、不当なペナルティは十分に回避することができます。警告メールや警告の通知書に異議申立て先や、送付元が記載されているので、これらの窓口から異議申立てが可能なはずです。

経済産業省が行ったEC事業者向けのアンケート調査によると、「楽天市場」において出品の停止・削除を受けた経験者は6割以上も存在している(2025年度 オンラインモール分野 デジタルプラットフォーム利用事業者 アンケート調査結果より)
経済産業省が行ったEC事業者向けのアンケート調査によると、「楽天市場」において出品の停止・削除を受けた経験者は6割以上も存在している(2025年度 オンラインモール分野 デジタルプラットフォーム利用事業者 アンケート調査結果より)

なぜ全開示されない? 検索順位・広告アルゴリズム公開の限界と「主要要因」の捉え方

竹内氏竹内

“透明化”という観点で言えば、プラットフォームの検索順位や広告枠の優先ロジックが不透明なところがあります。商品の検索順位をどのように決めて、広告の露出頻度をどのような条件で変えているのか、出店者はプラットフォームに対して、その仕組みやアルゴリズムの公開を求めることができるのでしょうか。

椋木椋木

透明化法の義務として公開が定められています。実際、プラットフォームは検索や広告のアルゴリズムの概要については、既に出店者に対して公開しています。ただ、透明化法では、ソースコードや「売上が〇%、レビューが〇%」といった詳細な配分(ウエイト)まで具体的に開示するところまでは、現在のところ明示的に求めていません。

竹内氏竹内

出店者が一番知りたいところですよね。なぜ、詳細なアルゴリズムの開示までは求めないのでしょうか?

椋木椋木

仕組みやアルゴリズムをすべて公開してしまうと、悪意のある業者が検索スパムを行う危険性があるからです。システムをハックするような行為が横行すると、最終的に一般消費者や出店者自身が不利益を被ることになります。そのため、透明化法がプラットフォームに対して強く求めているのは、あくまで販売実績、レビュー点数、配送の早さ、商品ページの充実度といった「主要な決定要因」を明記することに留めています。

竹内氏竹内

これは難しい問題ですね。プラットフォームに「何でも公開しろ」と強く要求してしまうと、巡り巡って自分たちの首を絞めることになりますからね。

椋木椋木

だからこそ、プラットフォームと出店者でコミュニケーションを取りながら、お互いにとって良い落としどころを見つけていくことが大事なのです。

経済産業省が行ったEC事業者向けのアンケート調査によると、商品の順位付けに問題を感じた経験がある割合は「楽天市場」と「Yahoo!ショッピング」で45%を超える。特に「基準が不透明」「他の出品者の商品が合理的な理由なく優位な順位や位置に表示されている」という回答をした人が多いのが目立つ(2025年度 オンラインモール分野 デジタルプラットフォーム利用事業者 アンケート調査結果より)
経済産業省が行ったEC事業者向けのアンケート調査によると、商品の順位付けに問題を感じた経験がある割合は「楽天市場」と「Yahoo!ショッピング」で45%を超える。特に「基準が不透明」「他の出品者の商品が合理的な理由なく優位な順位や位置に表示されている」という回答をした人が多いのが目立つ(2025年度 オンラインモール分野 デジタルプラットフォーム利用事業者 アンケート調査結果より)

泣き寝入りは不要! 画像・ページの無断転用を撃退する「4ステップの防衛策」

竹内氏竹内

ショップ形式をとっている「楽天市場」ならではの問題と言えば、競合店に商品ページの写真やキャッチコピーを模倣されるケースです。このようなトラブルにも透明化法で対処できるものなのでしょうか。

椋木椋木

透明化法のモニタリング会合などの資料では、楽天は競合店による商品画像等の無断転用に関して、通報などの情報を参考にしながら、モニタリングを行い、対処していることが明記されています。

竹内氏竹内

プラットフォームが出店者を保護する観点で言えば、透明化法に則った対処法といえますね。ちなみに、自社の商品ページの画像が競合店に真似された場合、どのようなステップで対応すればいいのでしょうか。

椋木椋木

まず第1ステップとして、「楽天市場」の「店舗運営Navi」などに案内されている「権利者侵害通知窓口」から通報します。第2ステップで、その申告の裏付けとなる客観的な証拠を準備します。単に「真似された」と口頭で主張するだけではなく、同窓口のフォーマットに沿って、オリジナル画像の元データを提出することなどで権利関係の証明を行います。また、追加で対応が必要になった場合に備えて、そのデータの作成日時がわかるPSDファイルや自社が先に公開していた日付の証拠などを保管しておくことも有効です。

「楽天市場」の権利者侵害通知窓口
「楽天市場」の権利者侵害通知窓口

竹内氏竹内

ここでも感情論ではなく、客観的なデータが必要なんですね。証拠が揃ったら、楽天はどのように動いてくれるのでしょうか。

椋木椋木

次の第3ステップとして、楽天の担当部署が模倣したとされる相手方の店舗に対して「出店者から権利侵害の申告があったので、使用権原などの正当な権利を提出してください」と「警告」を行います。そして最後の第4ステップとして、相手方が正当な権利を証明できなかった場合、楽天の判断で該当商品ページを非表示にする措置をとったり、違反点数制度に基づいて厳正にペナルティ点数を加算したりして対処します。

竹内氏竹内

当事者同士で直接対決をしなくても、証拠さえそろっていれば楽天が間に入って強制措置をとってくれるんですね。

椋木椋木

「楽天市場」は証拠に基づいた申告さえ行えば、介入して厳正な措置を講じるフローが確立されています。競合店にページを真似されても泣き寝入りせず、しっかりと証拠を整えて、プラットフォームの公式窓口に通報することをおすすめします。

「自社優遇」のモヤモヤにどう挑む? 公正な競争環境を取り戻すためのデータ収集法

竹内氏竹内

出品者がモヤモヤした気持ちになるのは、プラットフォームが直接販売している商品の検索順位や広告などの優遇措置です。楽天も「楽天ファッション」のような直営店が、一般の出店者が販売する店舗よりも露出が優遇されているように感じる時が多々あります。これらに関しては、たとえば直営店がどのくらいの広告費を使って、検索順位がどのように動いているかなど、プラットフォームの直売や直営店のデータの開示を出店者が求めることができるのでしょうか。

椋木椋木

直営店の優遇に関しては各社スタンスが違います。たとえば楽天とAmazonは明確に「自社優遇はしていません」と明言していますが、LINEヤフーは「当社が認定した優良店および当社のグループ企業ストアに対しては、より多くのお客様にご利用いただけるよう、他の出店者様と異なる提供条件を適用する場合があります」とレポート等で公表しています」

竹内氏竹内

LINEヤフーは潔いですね(笑)

椋木椋木

自社優遇をしていないと明言しているプラットフォームにおいては、本当に自社優遇がないのかということに注視する必要があります。ただ、自社優遇に関しては、具体的にどのように事実を証明すればいいのかが難しいところがあります。たとえば、あるプラットフォームの自社商品が広告枠の上位6枠のうち5枠を占めていることが、直ちに不公正な競争による結果であるのかどうか、また、出店者においても、どのくらいの広告費を使って、どの程度の露出があったのか、さまざまなデータを集める必要があります。

竹内氏竹内

ハードルの高い証明になってきますね。

椋木椋木

構造的な問題を抽象的に訴えても、空想話や被害妄想のような話で終わってしまいます。しかし、きちんと証拠を揃えて訴えることができれば、透明化法に基づいてプラットフォームの透明性の向上を図ることは不可能ではないと思います。たとえば、具体的に自社の広告費を明示し、直営店と自社の広告枠への露出を定期的にチェックして、明確に出店者が公正な競争ができていないとの証拠を集めることができれば、経産省も問題として取り上げる可能性は十分にあるでしょう。証明するハードルは高いと思いますが、そこを正すのが透明化法の使命なので、そういう疑念を持たれる出品者の方は、行動に移す価値はあるでしょう。

経済産業省が行ったEC事業者向けのアンケート調査によると、6~8割の出店者は自社優遇を感じている。3大モールのなかでは、特にAmazonの「データの使用に関する条件などへのアクセス・分析結果の利用」に不満を感じている割合が多い(2025年度 オンラインモール分野 デジタルプラットフォーム利用事業者 アンケート調査結果より)
経済産業省が行ったEC事業者向けのアンケート調査によると、6~8割の出店者は自社優遇を感じている。3大モールのなかでは、特にAmazonの「データの使用に関する条件などへのアクセス・分析結果の利用」に不満を感じている割合が多い(2025年度 オンラインモール分野 デジタルプラットフォーム利用事業者 アンケート調査結果より)

この記事の筆者

[ 執筆 ] 竹内 謙礼

有限会社いろは 代表取締役

竹内 謙礼(たけうち・けんれい)

1970年生まれ。大学卒業後、出版社に勤めた後に観光牧場に転職。企画広報担当を経て2004年に経営コンサルタントとして独立。楽天市場、ビッダーズ等で多くのネットビジネスの受賞履歴あり。また、千葉文学賞等の小説、エッセイでも数々の受賞暦を持つ。

大企業、中小企業のコンサルティングはもちろん、サイドビジネスや起業に対しての販促、営業、人材教育のアドバイスを行い、特に実店舗のキャッチコピー制作とネットビジネスへのコンサルティングには定評がある。また、低価格の会員制コンサルティング「タケウチ商売繁盛研究会」の主宰として、180社近いコンサルティング指導を日々行っている。

販促、企画、会計、投資の書籍執筆の他、新聞や雑誌等でも連載を持っており、ラジオのパーソナリティとしても活躍。商工会議所や企業での講演、企業での人材教育等、経営コンサルタントとして精力的に活動している。NPO法人ドロップシッピング・コモンズ理事長。著書多数(詳しくはこちら)

matsumura

ネッ担 編集後記2026年9月

5 日 8 時間 ago
ネッ担 編集後記2026年9月
ネットショップ担当者フォーラム編集部員の編集後記のページです。大体月末に更新します。
uchiya-m2026年9月30日

毎月、最終営業日に更新する予定のネッ担編集部の編集後記です。こんなメンバーでゆるゆるとネッ担を運営しています。

ネッ担は2026年7月で創刊12周年を迎えました! みなさんご協力ありがとうございます!!

2026年9月の編集後記

瀧川
瀧川

(執筆中)

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藤田
藤田

「鬼武者 Way of the Sword」が気になっています。

画像はCAPCOM「鬼武者 Way of the Sword」のサイトからキャプチャ
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キャラクターデザインがとても好きなので気になりつつ、こういう系のゲームをほとんど遊んだことがないので、最後までやりきれるか……?と思い、一旦体験版を簡単な難易度で少しだけプレイ。今のところ技が決まると爽快感があって面白い! あとムービーが綺麗で迫力があるし、キャラクターのモーションも格好良い。

まだ体験版を最後まで遊んでいませんが、次に欲しいゲームの発売日が来年なので、購入すると思います。

ゲームが好きなので、EC業界の人でゲーム好きな人とゆる~っと遊べる会をやりたいなーと考えています。「興味ある!」という方はご一報いただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

高野
高野

(長期休暇中)

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朝比美帆
朝比美帆

9月上旬に、まだまだ真夏日が続くホットな名古屋へ出張に行ってきました。現地まではジャケットを脱いで半袖で向かい、オフィスに入る前に「暑い、暑い…」と思いながらジャケットを羽織ったのですが、部屋に入ると「あれ?全然涼しくない…というか、暑い!」。

取材の場所がご高齢の顧問が使われている部屋で、ほぼ窓からのそよ風と扇風機で涼をとっていたのです。部屋の中の温度計に目をやると、なんと31℃。外とあまり変わりません。最初は汗が止まらなかったのですが、扇風機のおかげか汗が出切ったのか、1時間ほど経つ頃にはあまり暑さを感じない体質になっていました。ちょっと危険だったかもしれませんが…。

帰りの名古屋駅で少し時間があったので、自分の優れた嗅覚で迷うことなく好みの居酒屋を探し当て、ハッピーな乾杯セットを注文。キンキンのビールがしびれるほど五臓六腑に染みわたり、もずく酢で暑さによる疲れが一気に吹き飛びました。さすがホットな名古屋、暑さにやられた吞兵衛の気持ちをよく分かってくださるセットに感銘を受けました。

えびふりゃー、もずく酢、枝豆、刺身、生ビールという最高に満足でお得な乾杯セット
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鳥栖 剛
鳥栖 剛

9月から編集後記も担当することになりました、ライターの鳥栖です。これまでEC・通販業界で取材や執筆の仕事をしてきました。初回なので、まずはごあいさつまで。これからよろしくお願いします。

今月は「おいしすぎる」とネットでバズった大阪の「マクドナルド庄内店」に行ってみました。同店は、ラジオパーソナリティのジェーン・スーさんが2022年に絶賛したことで一部で話題に。昨年ごろから再び注目を集め、実食検証の記事なども多くアップされてバズりました。

「気になる!」とずっと思ってはいたものの、東京在住で最近は大阪出張もあまりなく、なかなか行く機会に恵まれず……。今回、私用で関西に行った際、時間があったので行ってみました。

お店は梅田から阪急電車に揺られること約10分。豊中市の庄内駅東口を出てちょっと歩いて角を曲がるとあります。ネットでは小型店ということもあって、混雑しているという情報も見かけましたが、実際に行ってみた平日の夕方は空いていました。

「マクドナルド庄内店」の外観。庄内駅から徒歩2分くらいでした。

「揚げ物が特においしい!」と評判だったので、フィレオフィッシュのセットとナゲットを注文。実際に食べてみると、ポテトとナゲットが確かにサックサク・・・!いつも食べているマクドナルドとは違う気がしました。・・・ただ、私の貧相な舌ではフィレオフィッシュは違いがイマイチわからず……(バンズはフワッフワだったような気はしました)。

ポテトはSサイズに。最近はMサイズを食べきれなくなってしまいました…

一度は食べてみる価値はあるかなと思いました!関西圏の方など、まだ食べたことがない方は、ぜひ食べ比べてみてください~。

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安田
安田

夏の暑いタイミングで、おいしいフルーツパフェを食べにいってきました。お店は「観音山フルーツパーラー銀座店」さん。和歌山県の果実農家の観音山フルーツガーデンさんがやってるお店です。

いただいたのは、桃のパフェと、

スイカのパフェ。

どちらも超絶品でした。本家を訪れるために和歌山に行きたくなったぐらいです。

ステキな果物とパフェは人を幸せにしてくれますね。

今月のお猫さまは、手を伸ばしてゆったりの茶柱さん。

Web担当者Forumの編集後記もみる

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ネットショップ担当者フォーラム編集部

しまむらと「ドラゴンクエスト」がコラボ。全国の実店舗で販売

5 日 13 時間 ago
しまむらと「ドラゴンクエスト」がコラボ。全国の実店舗で販売
税込5000円以上購入するごとにオリジナルショッパーを進呈する。巨大な「スライム」などの店舗限定オブジェや大阪でのPOP UP STOREも展開する
ohshima2026年9月30日

しまむらは10月7日から、全国の「ファッションセンターしまむら」店舗で「ドラゴンクエスト」とのコラボレーション商品を販売すると発表した。

商品販売に加え、ノベルティプレゼントやSNSキャンペーン、POP UP STORE(ポップアップストア)の実施など、さまざまな企画を予定している。

 しまむらは「ドラゴンクエスト」とのコラボレーション商品を販売
しまむらは「ドラゴンクエスト」とのコラボレーション商品を販売する

コラボレーション商品は、人気モンスターや象徴的なアイコンをあしらった衣料品からインテリア雑貨まで展開する。商品カテゴリは、メンズ・レディース、キッズ、雑貨、寝具・インテリア。販売時には整理券を配布し、番号順に案内する。実施する各種キャンペーンは次の通り。

  • 店舗購入者キャンペーン:しまむら店舗で「ドラゴンクエスト」コラボ商品を含む税込5000円以上を購入するごとに、オリジナルショッパー(全2種)を1枚進呈。1会計につき最大2枚までで、なくなり次第終了する。
  • アプリ会員キャンペーン:しまむら公式アプリ「しまむらパーク」では、「会員特典応募券」で交換できる「ドラゴンクエスト」オリジナル壁紙全3種を用意する。詳細は公式アプリで順次告知する。
  • SNSキャンペーン:しまむら公式Xアカウントでは、抽選で40人に景品が当たるプレゼントキャンペーンを実施する。詳細は公式Xアカウントで順次告知する。

一部店舗では、幅約2mの巨大な「スライム」や「ロトのつるぎ」などのオブジェを設置する。「さいたま新都心店」には、「はぐれメタル」や「ドラキー」などのモンスターのオブジェも登場する。設置期間は10月7日~11月1日。

また、今回のコラボレーションを記念し、期間限定の「POP UP STORE」でも「ドラゴンクエスト」コラボ商品を販売する。開催期間は10月7日~13日。開催場所は大阪市阿倍野区の「and(アンド)」3階で、営業時間は10時~20時。クレジットカードやバーコード決済などのキャッシュレス決済に対応し、現金決済はできない。詳細はInstagramのしまむら公式アカウントで随時配信する。

「ドラゴンクエスト」について

「ドラゴンクエスト」シリーズは、プレイヤー自身が主人公となるロールプレイングゲーム(RPG)。1986年発売の「ドラゴンクエスト」から2017年発売の「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」まで本編11作品を展開する。「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズなどを含め、100を超えるタイトルを生み出し、全世界でシリーズ累計9700万本以上の出荷・ダウンロード販売を達成している。

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この記事の筆者

[ 執筆 ] 大嶋 喜子

フリーライター

岐阜、富山、石川、福井、神奈川、LosAngels、山形を経て東京にたどり着き、現在は日本とアメリカの二拠点生活を営む生粋の“根無し草”。またの名を“ちいさなMADE IN JAPAN”。

新卒入社のEC運営会社にてレディースアパレル・宝飾バイヤーとして月商1億を突破。その後、同社内でクリエイティブ部門コピーライターに転身し、プランナー・ディレクターを経て独立。

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大嶋 喜子

ecbeing、早稲田大学、中川政七商店がAIによる「仮想ユーザープログラム」の産学共同研究

5 日 14 時間 ago
ecbeing、早稲田大学、中川政七商店がAIによる「仮想ユーザープログラム」の産学共同研究
ecbeingは早稲田大学、中川政七商店と、AIを活用した「仮想ユーザープログラム」の産学共同研究を開始する。顧客データをもとに構築した仮想ユーザーで施策効果を事前にシミュレーションし、次世代のEC・小売マーケティングの実用化をめざす。
furukawa2026年9月30日

ecbeingは9月29日、早稲田大学、中川政七商店とAIを活用した「仮想ユーザープログラム」の実用研究開発に関する産学共同研究を開始すると発表した。

顧客の行動・購買データを基に、実際の顧客の特長や行動傾向を再現した「仮想ユーザー」を構築し、マーケティング施策やコンテンツに対する反応を事前にシミュレーションする仕組みの研究を進める。

顧客データをもとに構築した仮想ユーザーで施策効果を事前にシミュレーションする

EC・小売業界では、オンライン、店舗、アプリなど顧客接点の多様化に伴い、取得できるデータ量が増えている。一方で、データを蓄積・分析しても、「この顧客に何を提案すべきか」「どの施策やコンテンツが効果的か」といった具体的な判断につなげるのは容易ではない。

共同研究では、AI上に実在顧客の特徴を反映した仮想ユーザーを構築し、施策を実行する前に仮想空間で反応をシミュレーションするアプローチを検証する。

実在顧客の特徴や反応傾向をAI上に再現

研究ではまず、顧客の購買履歴や行動データを基に、実在顧客の特長や反応傾向をモデル化した仮想ユーザーを構築する。

従来の定性的なペルソナにとどまらず、実際の顧客データとの比較を通じて、仮想ユーザーが現実の顧客の特長や反応をどの程度再現できるかを検証する。

その上で、構築した仮想ユーザーに複数のマーケティング施策を仮想的に実施し、「誰に、何を、いつ提案することが効果的か」をシミュレーションする。

単に購入確率の高い顧客を予測するのではなく、施策や訴求内容によって顧客の反応がどのように変化するのかまで捉え、マーケティング施策の意思決定に活用できるかを検証する。

商品訴求やコンテンツのパーソナライズも研究

さらに、仮想ユーザーの特長やシミュレーション結果を基に、顧客1人ひとりに適した商品訴求やコンテンツ、接客内容を生成する仕組みも研究する。

メール、Webサイト、アプリなど複数の顧客接点で、興味・関心や購買状況に応じてパーソナライズしたコミュニケーションを実現することをめざす。

仮想空間での予測を実際の顧客反応と比較

研究成果は、実際の顧客反応と比較して検証する。仮想空間で高い効果が見込まれた施策と、実際に展開した施策の結果を照らし合わせることで、仮想ユーザーによる予測が現場のマーケティングにどこまで活用できるかを検証。実用化に向けた可能性と課題を明らかにする。

共同研究は約半年間を予定している。

ecbeingは、これまでの「データを分析して施策を考える」マーケティングから、AI上の仮想ユーザーを活用して「施策を実施する前に試す」マーケティングへの進化をめざすとしている。

将来的には、「顧客データ→仮想ユーザーによる顧客理解→施策シミュレーション→パーソナライズコンテンツ生成→実際の顧客反応による検証」という一連のサイクルを構築し、マーケティング担当者の意思決定をAIが支援する環境の実現を視野に入れる。

3者がそれぞれの知見を持ち寄り

今回の共同研究では、3者がそれぞれの知見を生かして役割を担う。

早稲田大学はデータ科学センターが中心となり、データサイエンスやAIに関する学術的知見をもとに、仮想ユーザーや予測モデルの研究開発、アルゴリズム設計、学術的観点からの評価を担当する。

中川政七商店は、ECサイト上の行動・購買データに加え、店舗での購買データも提供する。顧客や商品に関する知見を生かしたモデル評価や、ECサイト上での施策実行・検証を担う。

ecbeingは、EC・デジタルマーケティングの知見を生かし、プロジェクトマネジメント、統合DWH/CDPなどのデータ基盤構築、システム実装・連携、研究成果のEC業界への還元を担当する。

AIとデータサイエンスに加え、中川政七商店が持つ小売業としての知見や顧客に対する理解を組み合わせることで、単なる業務効率化ではなく、顧客1人ひとりに合わせた次世代のEC・小売マーケティングの実現可能性を探る。

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この記事の筆者

[ 執筆 ] 鳥栖 剛

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鳥栖 剛

イーマーケッターが30周年

5 日 14 時間 ago

イーマーケッターが30周年。このブログでも200件以上の記事で引用している。

EMARKETER
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Kenji

大手楽器専門店の池部楽器店がECをリプレイス。会員制サブスク「イケベプライム」を構築、EC・サブスク・中古買取をシングルIDで統合

5 日 14 時間 ago
大手楽器専門店の池部楽器店がECをリプレイス。会員制サブスク「イケベプライム」を構築、EC・サブスク・中古買取をシングルIDで統合
池部楽器店はECサイトをリプレイスし、会員制サブスク「イケベプライム」を構築した。EC、サブスク、中古買取の顧客データを単一IDで統合し、「買う・楽しむ・売る・また買う」という顧客循環を支える基盤を整えた。
furukawa2026年9月30日

大手楽器専門店の池部楽器店はこのほど、ECサイトをリプレイスし、会員制サブスクリプションサービス「イケベプライム」を構築した。あわせて、EC、サブスク、中古買取サービス「イケベリユース」の顧客データを単一IDに統合。「買う・楽しむ・売る・また買う」という顧客循環を設計できる基盤を整えた。

大手楽器専門店の池部楽器店がECをリプレイス。会員制サブスク「イケベプライム」を構築、EC・サブスク・中古買取をシングルIDで統合
池部楽器店はECサイトのリプレイスとサブスクサービス「イケベプライム」を構築した

池部楽器店は1975年創業の楽器専門店。渋谷の旗艦店をはじめ、池袋、秋葉原、大阪など全国の都心部に約30店舗を展開する。

バンド楽器市場で商品のコモディティ化が進むなか、商品を並べて販売するだけでは、顧客に選ばれ続けることが難しくなっていたという。こうした環境変化を受け、池部楽器店は一度の販売で終わらない継続的な顧客関係の構築を模索してきた。

単発の物販に依存せず、顧客との継続的な接点をつくるため会員制サブスクサービスを構想したものの、従来のシステムでは仕様が固定されており、実装が難しかったという。また、中古買取サービス「イケベリユース」はメールを中心に査定依頼を受け付けており、ECサイトと顧客データが分断されていた。

そこで今回、ECサイトのリプレイスとサブスクサービスの構築を実施。音楽を楽しむ体験や情報提供を通じて顧客との接点を維持し、LTV向上につなげることをめざした。

ECサイトのリプレイスにあわせ、メディア化も進めた。楽器はテキストや写真だけでは音のニュアンスや演奏感を伝えにくい商材であることから、ECサイト内に動画やライブ、レッスン情報などのコンテンツを組み込み、楽器選びを支援する構成とした。スタッフが商品の魅力を紹介する記事から商品購入につなげる導線も整備した。

大手楽器専門店の池部楽器店がECをリプレイス。会員制サブスク「イケベプライム」を構築、EC・サブスク・中古買取をシングルIDで統合
リプレイスしたECサイトには動画やライブ、レッスン情報などのコンテンツを組み込んだ

「イケベプライム」では、会員限定動画の視聴権限管理や、会員ステータスに応じた特典の自動適用などを実装した。従来のシステムでは難しかった自社独自の会員サービスを実現した。

大手楽器専門店の池部楽器店がECをリプレイス。会員制サブスク「イケベプライム」を構築、EC・サブスク・中古買取をシングルIDで統合
「イケベプライム」では、会員限定動画の視聴権限管理や、会員ステータスに応じた特典の自動適用などを実装

中古買取の導線も見直した。従来、「イケベリユース」はメールを中心に査定依頼を受け付けていたため、ECサイトとのデータ連携が分断されていた。新たな仕組みでは、マイページから写真や商品情報をアップロードして査定を依頼できるようにし、ECサイト内で手続きを完結できるフローへ刷新した。これにより申し込みの負担を軽減。現在では数千件規模の相談が寄せられているという。

また池部楽器店は、EC、「イケベプライム」、中古買取サービス「イケベリユース」の顧客行動を1つの基盤に統合した。ECで購入した顧客、サブスク会員、中古買取の利用者に共通IDを付与し、同一顧客として把握できるようにした。

大手楽器専門店の池部楽器店がECをリプレイス。会員制サブスク「イケベプライム」を構築、EC・サブスク・中古買取をシングルIDで統合
EC、サブスク、中古買取サービスの顧客データを単一IDに統合

これにより、どのコンテンツを見た人がどの商品を購入したのか、買取利用後にどのような商品に関心を示したのかといった行動を横断して分析できるようになった。「買う・楽しむ・売る・また買う」という顧客の行動を一連のものとして捉え、継続的な顧客接点の構築につなげる。

大手楽器専門店の池部楽器店がECをリプレイス。会員制サブスク「イケベプライム」を構築、EC・サブスク・中古買取をシングルIDで統合
「買う・楽しむ・売る・また買う」の循環の実現をめざす

お客さまと単発の関係から抜け出し、LTVを最大化する視点が必要だった。会員限定動画の視聴権限の管理や、会員ステータスと特典をひもづけて自動適用する仕組みなど、自社のビジネス要件に合わせて柔軟に構築できる環境が不可欠だった。今回、めざしていた会員制サブスクサービスを形にすることができた。楽器を買うことがゴールではなく、そこから音楽のある暮らしが始まり、使わなくなった楽器は売って、また新しい一本と出会う。「買う・売る・楽しむ」がシームレスにつながったことで、スタッフの熱量や専門知識をお客さまへ届ける土台が整った。(池部楽器店 担当者)

池部楽器店の基盤整備を支えたのが、W2のコマースプラットフォーム「W2 Commerce」だ。池部楽器店は同基盤を採用し、EC、サブスク、中古買取を横断する顧客体験を再設計した。

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この記事の筆者

[ 執筆 ] 鳥栖 剛

フリーライター
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鳥栖 剛

ECマーケットプレイス構築のSaaSプラットフォームのMirakl、AIで商品登録を自動化する「Catalog Transformer」の日本語対応をスタート

5 日 15 時間 ago
ECマーケットプレイス構築のSaaSプラットフォームのMirakl、AIで商品登録を自動化する「Catalog Transformer」の日本語対応をスタート
MiraklのAIを活用した「Catalog Transformer(カタログトランスフォーマー)」の日本語カタログ対応機能は、セルフサービス型の登録フローや複数セラーへのルール適用により、カタログ管理の人員体制を大幅に増員せず、商品データの取り込みを支援する。
ohshima2026年9月30日

ECマーケットプレイス構築のSaaSプラットフォームを提供するMiraklは9月29日より、AIを活用した「Catalog Transformer(カタログトランスフォーマー)」の日本語カタログ対応機能の提供を正式に開始した。

MiraklのAIを活用した「Catalog Transformer(カタログトランスフォーマー)」の日本語カタログ対応機能
MiraklはAIを活用した「Catalog Transformer」の日本語カタログ対応機能の提供を開始した

「Catalog Transformer」は、ECマーケットプレイス構築SaaSプラットフォーム「Mirakl」の有料プランに含まれる機能。商品登録やデータ整備をAIが自動化し、商品データの品質やガバナンスを維持しながら、商品ラインナップの拡大や市場投入までの時間短縮、セラーのオンボーディング、商品データの構造化、越境展開を支援する。特長は次の通り。

商品登録フローに組み込んだ自動化機能

「Catalog Transformer」は、セラーの商品登録フローに直接組み込んでいる。セラーが商品カタログを「Mirakl」にインポートすると、各オペレーターの定めた商品カテゴリーや属性の定義に沿って、カテゴリー分類、属性情報の抽出、商品タイトルと説明文のリライト、必要に応じた日本語への翻訳までを自動的に行う。

変換・翻訳されたデータは、オペレーターが設定した受け入れルールや検証ワークフローに組み込み、最終的な商品承認までのプロセスに接続できる。手作業によるデータ整備や外部翻訳サービスへの依存を減らし、商品登録・レビューにかかる負荷を軽減する。

運用負荷を抑えながらセラーや商品ラインナップを拡大

商品登録・データ整備をAIで自動化することで、オペレーターの運用負荷を抑えながら、セラーや商品ラインナップの拡大を支援する。セルフサービス型の登録フローを提供することで、カタログ管理の人員体制を大幅に増員することなく、より多くの商品データを取り込むことができる。

オペレーターのルールを複数のセラーに一貫して適用

オペレーターは、商品カテゴリーや属性の定義、運用ルール、ガバナンス要件を設定できる。「Catalog Transformer」は、それらを複数のセラーに一貫して適用し、日常的な作業の自動化を支援する。これにより、確認が必要なケースにレビューを集中しやすくなる。

ルールに沿って商品データを自動で整備

「Mirakl」のAIエンジンは、商品タイトルや説明文のリライト、商品のカテゴリー分類、テキストや商品画像からの商品情報の抽出を支援する。また、文字数制限や使用制限語など、オペレーターが設定したルールに沿って商品情報を処理し、商品データの品質維持を支援する。

商品登録にかかる時間を短縮

商品データを各マーケットプレイスの登録形式に合わせる作業や翻訳を承認フロー内で自動化し、手作業による確認や修正の繰り返しを減らす。新しい商品をより効率的に登録し、市場投入までの時間短縮を支援する。

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この記事の筆者

[ 執筆 ] 大嶋 喜子

フリーライター

岐阜、富山、石川、福井、神奈川、LosAngels、山形を経て東京にたどり着き、現在は日本とアメリカの二拠点生活を営む生粋の“根無し草”。またの名を“ちいさなMADE IN JAPAN”。

新卒入社のEC運営会社にてレディースアパレル・宝飾バイヤーとして月商1億を突破。その後、同社内でクリエイティブ部門コピーライターに転身し、プランナー・ディレクターを経て独立。

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大嶋 喜子

“現金化”できるキャッシュバックで世界的ヒット。シンガポール発「ショップバッグ」に聞く「AIショッピングの最前線」

5 日 15 時間 ago

シンガポールで誕生したキャッシュバックサービス「ShopBack(ショップバック)」が、日本市場に熱視線を送っている。APACを中心に13市場で展開し、会員数は約7000万人。膨大な行動データと最先端のAIをかけ合わせ、顧客の「時間」と「お金」を節約する買い物体験を提供する。買い物を通じて貯めたポイントは、現金化も可能だ。

現状、日本におけるBtoCでの展開予定はないが、日本企業の出店は歓迎している。「ショップバック」を運営するEcommerce Enablers Pte. Ltd.(イーコマースイネイブラーズ、シンガポール)の共同創業者兼CEOのヘンリー・チャン氏は、「『ショップバック』を通じて、日本企業の海外進出を支援したい」と語る。2026年夏に来日したチャン氏に、「世界におけるAIショッピングの最前線」を取材した。

会員7000万人、なぜAPAC市場でシェア1位を獲得できた?

2014年にシンガポールで生まれた「ショップバック」は、“現金化”できるポイントが貯まるキャッシュバックサービスだ。加盟店数は、Amazon、ナイキ、ユニクロ、トリップドットコムといったグローバル企業を含む2万店以上にのぼり、オンライン・オフライン両方の店舗が対象となる。顧客が「ショップバック」を通じて加盟店で買い物をすると、ポイントが貯まる。そのポイントを現金として受け取ることも可能だ。

貯めたポイントは現金化できる。また、AIの検索機能を使うほどアルゴリズムが最適化されていく(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)
貯めたポイントは現金化できる。また、AIの検索機能を使うほどアルゴリズムが最適化されていく(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)
買い物以外に、ゲームやアンケートなどでもポイントが貯まる(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)
買い物以外に、ゲームやアンケートなどでもポイントが貯まる(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)

現在、APACを中心に13市場で展開し、チャン氏によれば多くの市場でシェア1位を獲得しているという。全世界の会員数は約7000万人で、アクティブ会員数は約2000万人となる。男女比は女性が62%と過半を超え、年齢では26~35歳が40%と最も多い。

顧客が決済を完了した場合にのみ加盟店に利用料を請求する成果報酬型で、クリックによる課金やスポンサー枠の販売も行わない。チャン氏によれば、売上獲得コストはSNSの有料広告と比べて12分の1に抑えられるという。「なぜ多くの市場で支持を広げられているのか」とたずねると、チャン氏は3つの要素をあげた。

1つ目は、高品質なテクノロジーです。最先端のAIを活用し、ユーザーが時間とお金を節約できる買い物体験を重視しています。2つ目は、ユーザーファーストの仕様です。「ショップバック」経由で各店のECサイトに訪問して、いつも通り買い物をするとポイントが還元されます。ポイントは現金としても受け取れます。そして、3つ目は、現地企業とのコネクションです。各地にチームを持ち、現地企業とのつながりを強固なものにしています。(チャン氏)

「ユーザー、加盟店、『ショップバック』の三者に明確なメリットがある」とチャン氏は強調した(筆者撮影)
「ユーザー、加盟店、『ショップバック』の三者に明確なメリットがある」とチャン氏は強調した(筆者撮影)

では、サービスの肝となる「AI」には、どんな優位性があるのか。

「ショップバック」では、設計段階から「モデル・アグノスティック(特定のAIモデルに依存しない構造)」を採用しています。特定のAIモデルに縛られず、オープン及びクローズドソースの両方から多様な手法やモデルを活用し、各タスクにおいて最もパフォーマンスの高いものを選択しています。この柔軟性が技術的な優位性です。AIモデル自体が進化すれば、システムを一から構築し直すことなく、当社の機能も一緒に進化していきます。(チャン氏)

さらに、13市場、約7000万人の会員と約2万の加盟店による取引・行動のデータも、「ショップバック」の技術優位性を高める要素となる。ユーザーの同意の上で、これらのデータを活用することで、AIのコンテキスト(文脈)理解が深まり、精度の高い提案が可能になるという。

「AIショッピング」が利用増、なかでも「画像検索」が好評

「ショップバック」では、過去1年間にわたり、「レコメンデーション」「画像検索」「チャット形式のショッピングアシスタント」「旅行プランナー」など、AIを活用した機能を複数市場で順次ローンチしているという。

レコメンデーションは、一般的なECサイトと同様で、顧客の属性や過去の検索・購入履歴を元におすすめが表示される。ただし、「ショップバック」では取得できるデータや提案できる領域が圧倒的に広く、この点は他社と比較した強みとなっている。

旅行、食品、アパレルなど幅広い領域を横断したレコメンドができるのは「ショップバック」の強みだ(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)
旅行、食品、アパレルなど幅広い領域を横断したレコメンドができるのは「ショップバック」の強みだ(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)

また、「画像検索」では、ユーザーが画像をアップロードすると、50以上の提携店舗からおすすめを表示する。取材中、チャン氏が実際にイスやシャツを撮影して検索したところ、同一と思われる商品のほか、類似商品も多く示された。さらに、該当商品が最もお得に買える選択肢も提供された。Googleの画像検索と異なり、同機能は買い物に特化していることが優位性だとチャン氏は強調した。

画像検索は、類似商品を多数示せるほか、最もお得に買える選択肢も提示する(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)
画像検索は、類似商品を多数示せるほか、最もお得に買える選択肢も提示する(画像提供:Ecommerce Enablers Pte. Ltd)

チャット形式のショッピングアシスタントは、いわゆる「ChatGPT」のようなもの。ユーザーの質問に対して、AIが買い物に特化した回答を返す。これらの機能はローンチから間もないが、改善を継続していることもあり、利用者が増加傾向だ。最も定着している機能では、すでに数十万人が活用しているそうだ。

現状は初期段階ですが、現在の成長傾向からも、今後さらに利用率が向上すると確信しています。なぜなら、これらの機能が「ユーザーにとって真に価値のある体験」を提供できているためです。(チャン氏)

チャン氏が言う「真に価値のある体験」とは、「時間とお金を節約できる賢い買い物体験」を指す。「ショップバック」がサービスを展開するAPAC市場では、特に視覚的な検索が好まれているという。

その理由は、ショッピングの本質が「視覚的(ビジュアル)」であるためです。人々は多くの選択肢を目で見て確認し、並べて比較しながら探索したいと考えています。一方で、チャット形式では基本的に1度に1つの回答しか提示できないため、商品の発見・比較には非効率なインターフェースなのです。(チャン氏)

その一方、「チャット型AIそのものは非常に有用であり、今後も拡大していくでしょう」とチャン氏は付け加えた。

現状はカスタマーサービスを中心に活用されていますが、商品に関する質問に答える手段としても利用が増えています。買い物体験そのものを「代替するもの」ではなく、「補完するもの」として位置づけられるべきだと考えており、「ショップバック」でも今後さらに有益な活用方法を模索していきます。(チャン氏)

Amazonでは、「AI経由の購入率」が非AIを40%上回る

Amazonによると、2025年にAIショッピングアシスタント「Rufus」を利用した人は3億人を越えたという。月間平均ユーザー数は前年比149%増、インタラクション数は210%増となり、Rufus経由では購入に至る可能性が60%以上高くなっていた。

Amazonでは、AIショッピングアシスタント「Rufus」経由の場合、購入に至る可能性が60%以上高くなっている(出典:米Amazonのニュースリリース)
Amazonでは、AIショッピングアシスタント「Rufus」経由の場合、購入に至る可能性が60%以上高くなっている(出典:米Amazonのニュースリリース)

また、アドビが発表した調査でも、AIを起点に買い物を開始した消費者は、購入に至る可能性が高くなることが判明した(参考:アドビ「Summer is the new holiday season: Prime Day drives a record $26.4 billion.」)。調査は2026年6月23~26日のAmazon「プライムデー」を対象に実施。その結果、「プライムデー」期間中、AIチャットボット経由でAmazonに訪問した消費者の購買率は、AI以外のチャネル(有料検索、メール、SNSなど)よりも40%高かった。2025年の「プライムデー」では、AI経由の購買率がAI以外よりも23%低かったため、1年間で著しく向上したことになる。

また、財経新聞によれば、Amazonでは「プライムデー」期間中に「ChatGPT」内の有料広告枠で、セールをプロモーションしていたことも確認されているという(参考:財経新聞「【アマゾン】ChatGPT広告に参入、プライムデーで「AI経由の購入率」が検索を40%上回る驚きの結果に」)。

アドビの調査では、2026年1~5月において、AmazonへのAI経由の訪問(リンクをクリックした買い物客数で測定)が、前年同期比で235%増加したこともわかっている。この傾向は「プライムデー」期間中も続き、同期間は89%の増加を記録した。

「AIによる自動購入」は加速していくのか

このように世界中で「AI経由の買い物」が増加している事実に対し、チャン氏は「AI機能の利用者増は心強い兆候だが、真に取り組むべき課題は、日々ユーザーの信頼を獲得し続けることだ」と話した。

「信頼」は前提として与えられるものではなく、勝ち取るものです。AIが信頼性と透明性を備え、最終的なコントロール権をユーザー自身が握っていると実感できることで信頼は生まれます。そして、結局のところ最も重要なのは、「AIがどれだけ人々の役に立っているか」です。信頼の根源はそこにあります。

「ショップバック」にとって重要な問いは、「AIをいかに活用して、ユーザーに真の価値とインパクトをもたらすか」。当社のミッションは一貫して「人々の時間とお金を節約すること」であり、AIはそのミッションをより強力に実現するための手段です。AIがスマートな買い物をサポートすればするほど、AIや当社に対する信頼が深まっていくと考えています。(チャン氏)

「日々ユーザーの信頼を獲得し続けることが最重要課題だ」とチャン氏(筆者撮影)
「日々ユーザーの信頼を獲得し続けることが最重要課題だ」とチャン氏(筆者撮影)

AIによる自動購入の導入について、「ショップバック」では「現状は不可」との回答だった。

AIの自動購入を阻む理由は、主に2つです。1つ目は「信頼」の問題です。「AIが常に正しく処理できると確信できるか」「問題が発生した場合、責任を負うのは人間かAIか」という点が解決されていません。2つ目は「規制が市場(国・地域)ごとに異なること」です。

決済に至るステップをAIがより迅速にする流れは加速しますが、「決済の瞬間」において人間を完全に代替することは、少なくとも大規模なレベルや近い将来には実現しないと考えています。(チャン氏)

ただし、「将来的に責任の所在と信頼の問題が正しく解決されれば、決済をサポートすることも可能になるでしょう」とチャン氏は付け加えた。

私は、決済に至るあらゆるステップにおける摩擦(ストレス)をAIが取り除き続けるべきだと考えています。将来的には自動決済を導入する可能性はありますが、それでも「最終決定権は常に人間が保持すべき」というのが、「ショップバック」のデザインにおける根本的な原則です。(チャン氏)

Amazonでは「自動購入プログラム」を加速させている(出典:米Amazonのニュースリリース)
Amazonでは「自動購入プログラム」を加速させている(出典:米Amazonのニュースリリース)

Amazonでは、すでに「自動購入プログラム」の提供を開始。2026年5月に米Amazonが発表した新たなAIアシスタント「Alexa for Shopping」では、「Rufus」およびAIを基盤とした音声アシスタント「Alexa+」を組み合わせ、より個別最適化された買い物体験を提供している。

同サービスでは、「この日焼け止めが10ドルに値下がりし、過去2か月以内に購入していない場合はカートに追加する」といった条件付き購入にも対応。AIが商品選定や価格監視、ユーザーへの通知やカート追加まで自動で行う。

また、他社ECサイトでの商品購入を支援する「Shop Direct」を通じてAmazon外のECサイトの商品を発見、購入することも可能だ。対象商品は「Buy for Me」と呼ばれるエージェント型AI機能が、ユーザーの代わりに購入手続きまで完結する。

「ショップバック」では、日本を含む世界で加盟店を増やすと共に、AIによる買い物アシスト機能を引き続き進化させていくという。「将来的には、AIグラスと『ショップバック』を連携させ、現実世界で見たものをその場で検索・購入できるかもしれない。AIショッピングの未来をつくる一助になりたい」とチャン氏は期待をにじませた。

この記事の筆者

[ 執筆 ] 小林 香織

フリーライター/北欧イノベーション研究家

「自由なライフスタイル」に憧れて、2016年にOLからフリーライターへ。【イノベーション、キャリア、海外文化】などの記事を執筆。2020年に拠点を北欧に移し、デンマークに6か月、フィンランド・ヘルシンキに約1年長期滞在。現地スタートアップやカンファレンスを多数取材する。2022年3月より東京拠点に戻し、北欧イノベーションの研究を継続する。

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米Amazon、セラーセントラルに他サイト販売の一元管理機能を実装へ。eBay、Shopify、TikTok、Walmartなどに対応

5 日 16 時間 ago
米Amazon、セラーセントラルに他サイト販売の一元管理機能を実装へ。eBay、Shopify、TikTok、Walmartなどに対応
米Amazonは、セラーセントラル上でAmazon以外の販売チャネルも一元管理できる新機能群を発表した。eBay、Shopify、TikTok、Walmartと連携し、商品情報や受注、収益性などをまとめて管理できるようにする。
furukawa2026年9月30日

米Amazonは9月24日、セラーセントラル上でAmazon以外の販売チャネルも一元管理できる新機能群を発表した。eBay、Shopify、TikTok、Walmartのアカウントを接続し、商品情報、受注、収益性などをまとめて管理できるようにする。米国ストアの出品者を対象に段階的に提供を始め、今後数か月かけて機能や対応チャネルを順次拡大する。

米Amazon、遂にセラーセントラルが他サイト販売の一元管理機能を実装へ。eBay、Shopify、TikTok、Walmartなどに対応
AmazonのセラーセントラルでeBay、Shopify、TikTok、Walmartなどの商品情報や注文情報を一元管理機能できるように

複数チャネルで販売する事業者は、チャネルごとに管理画面やログイン、運用フローがわかれるため、商品情報の更新や受注処理、販売データの分析などが煩雑になりやすい。Amazonは今回の新機能を通じて、セラーセントラルをAmazon内の販売管理だけでなく、事業者全体の販売業務を管理する拠点へと広げる考えだ。

Amazon出品者の95%以上が複数チャネルで販売

Amazonによると、Amazonで販売する出品者の95%以上が複数チャネルで販売しているという。同じ商品でも、Amazon、自社EC、Shopify、eBay、Walmart、TikTokなどに個別の商品ページが存在し、それぞれ異なる管理画面やルールに対応する必要がある。今回の新機能では、こうした販売チャネル間の分断を減らし、1つの作業環境から複数チャネルの販売業務を扱えるようにする。

セラーセントラルに他チャネルのアカウントを接続し、複数チャネルの売り上げや注文状況をセラーセントラル内でまとめて確認できる。

商品情報は1か所で更新

商品情報の管理では、複数のチャネルに掲載している商品説明の更新作業を1か所で進められるようにする。

従来はチャネルごとにログインし、それぞれのフォーマットや要件に合わせて説明文を調整しながら個別に更新する必要があった。新機能では、「Manage Products」画面で商品情報を更新すると、各チャネルの要件に合わせて反映できるようにする。

さらに、生成AIを活用した出品支援機能も組み合わせ、商品タイトルや説明文などの作成・最適化を効率化する。

米Amazon、遂にセラーセントラルが他サイト販売の一元管理機能を実装へ。eBay、Shopify、TikTok、Walmartなどに対応
「Manage Products」画面のイメージ

複数チャネルの注文をまとめて管理

受注管理では、セラーセントラル内の「Manage Orders」画面から、複数チャネルの未出荷注文をまとめて確認できるようにする。

注文詳細や顧客情報、出荷オプションを1画面で扱えるほか、Amazon以外のチャネルで発生した注文についても、数クリックでAmazonの物流網を使った出荷処理につなげられる。出荷後の追跡情報も接続先のチャネルに自動反映するため、事業者側の手作業を減らせるとしている。

米Amazon、遂にセラーセントラルが他サイト販売の一元管理機能を実装へ。eBay、Shopify、TikTok、Walmartなどに対応
「Manage Orders」画面のイメージ

チャネル別の収益性もリアルタイムで把握

収益性分析も一元化する。これまではチャネルごとにデータを出力し、月末などに手作業で集計するケースもあった。新機能では、商品別・チャネル別の収益性をリアルタイムで把握できるようにする。

広告費、トラフィック、売り上げなどのデータも取り込み、チャネルごとの販売状況を比較しながら、どこに投資すべきか判断しやすくする狙いだ。

米Amazon、遂にセラーセントラルが他サイト販売の一元管理機能を実装へ。eBay、Shopify、TikTok、Walmartなどに対応
収益性分析機能の画面イメージ

物流に加え、商品登録・受注・収益管理まで一元化

Amazonは今回の取り組みを、これまで進めてきたマルチチャネル向け物流支援の延長線上に位置付けている。

すでにAmazonは、外部チャネルの注文にも対応する「Multi-Channel Fulfillment(MCF)」や、在庫を一括保管して複数チャネルに配分できる「Amazon Warehousing and Distribution(AWD)」、自社ECでAmazonのプライム配送を実現できる「Buy with Prime」などを提供してきた。今回の新機能は、物流だけでなく、商品登録、受注管理、収益把握まで含めて一元化する点が特徴となる。

eBay、Shopify、TikTok、Walmartから対応

新機能は米国ストアの出品者を対象に、今後数か月かけて段階的に展開する。現時点では、eBay、Shopify、TikTok、Walmartとのアカウント接続、Amazon外の商品情報の取り込みとひも付け、複数チャネルの売上・注文確認、複数チャネル向けの出荷などから提供を始める。追加料金なしで利用でき、今後さらに対応チャネルや機能を拡大する予定だ。

Amazonはセラーセントラルについて、単なる「Amazon内の出品管理画面」ではなく、独立系事業者が自社の販売事業全体を運営するための中核基盤へと進化させる構想を示している。

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[ 執筆 ] 鳥栖 剛

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鳥栖 剛

AI時代の小売・EC業界を生き抜く道――ecbeing林社長が明かす「エージェンティックコマース」による未来とデータ統合の重要性

5 日 16 時間 ago
AI時代の小売・EC業界を生き抜く道――ecbeing林社長が明かす「エージェンティックコマース」による未来とデータ統合の重要性matsumura2026年9月30日単発記事

AIの急速な進化は、EC業界に30年で最大の変革をもたらしている。従来の「キーワード検索」から「対話・文脈検索」へのシフトが進むなか、EC事業者は単なる見せ方のテクニックではなく、「自社が何のために存在し、どのような価値を提供するのか」という商売の本質をさらに求められるようになる可能性が高い。EC黎明(れいめい)期からECサイト構築パッケージを提供してきたecbeingの林雅也社長に、エージェンティックコマース時代に求められるECビジネスについて聞いた。

ecbeingの林雅也社長
ecbeingの林雅也社長

30年間のEC史で最大のパラダイムシフト――「1年の変化が3か月で起きる」

1997年にインターネット通販をスタート、1999年にECサイト構築パッケージの提供をスタートし、EC黎明期から約30年に渡ってEC業界の第一線を走り続けてきたecbeing。林雅也社長の目には、現在のAI革命が過去のどの技術革新よりも巨大で急速な波として映っている。

これまでもEC業界には大きな変革期が存在した。Windows 95の登場によるインターネット通販の始まり、Googleの普及に伴うWeb 2.0とデジタルマーケティングの広がり、そしてiPhoneの登場によるモバイル化とネット・リアルの融合(オムニチャネル)――。しかし、林社長は現在のAIによる波の質的な違いをこう指摘する。

過去のイノベーションは国民全体に浸透するまでに一定の時間を要しました。しかし、現在の生成AIは開発と動きのスピードが圧倒的です。従来であれば1年かかっていたようなビジネスの変化やシステム開発の動きが、わずか3か月で起きてしまう。それほどの激しさを感じています。

実際に運営側の現場では、カスタマーサポート(CS)の問い合わせ対応、コンテンツ制作、調査・リサーチ業務などにおいて、AIを活用した劇的な業務効率化が浸透中。運営者が作業コスト削減の恩恵を実感する一方で、いよいよ本丸である「生活者の買い方や体験の変化」というビジネスインパクトのフェーズへと移っている。

アマゾンエフェクトの再来か? 「淘汰」ではなく「2極化」するEC市場

AI時代の波に対し、業界内には「AIに飲み込まれ、淘汰される事業者が増えるのではないか」という懸念もある。この問いに対し、林社長は10年前に叫ばれた「アマゾンエフェクト」を振り返る。

当時、「すべての店舗がAmazonに飲み込まれて消滅する」といった極端な議論があった。しかし淘汰されたのは立地や利便性だけに依存し、顧客に選ばれる理由をつくれなかったビジネスモデルであり、独自の体験や専門性を提供する企業は、リアルとネットを掛け合わせ、成長を遂げている。

林社長は、今回のAI革命においても市場は単純に淘汰されるのではなく、明確に「2極化」すると説明する。

Amazonエフェクトの時と同様に、AI時代でも「便利さ」や「自動補充」を追求する世界と、「豊かな顧客体験やエンターテインメント」を享受する世界の2極化が進むでしょう。単にテクニカルなSEOや見せ方の工夫だけで差別化しようとする時代は終わりました。自社が一体何のために存在し、顧客にどんな本質的価値や世界観を提供するのかを問い直さなければ、同質化の罠に陥ってしまいます。

林社長がたとえに出したのが、「よなよなエール」。商品をネットで販売するだけでなく、醸造所でつくり手の想いやビールづくりを体感できる見学ツアーや、ファンが集うイベントなどを通じて、ブランドの世界観そのものを体験にしている。商品の機能や価格だけでは伝えきれない「好きになる理由」を、リアルな体験とデジタル上の発信・購買をつなぐことで育て、強いファンとの関係をつくっている。

自社ECにおいても、こうした独自の「世界観」を提示できるかどうかが生き残りの境界線となるという。

本来のエージェンティックコマースとは――単なる「購買代行」を超えた代理人

現在、EC業界で注目を集める「エージェンティックコマース」だが、林社長はその概念に潜む「誤解」を指摘する。

多くの人が思い描くエージェンティックコマースは、日用品が切れそうになったら勝手に注文してくれるような「お買い物代行(タスク補給)」。しかし、林社長は「エージェントの真の意味」について次のように説明する。

本来、エージェントとはスポーツ選手の交渉人や人材エージェントのように、依頼主自身もまだ気づいていない潜在ニーズや意図を汲み取り、プロとして提案・交渉してくれる「代理人」のこと。休日のお買い物は単なる義務や労働ではなく、楽しむためのエンターテインメントであり「コト消費」です。顧客に寄り添い、対話を通じて新しい発見や価値を届けることこそが、本来めざすべきエージェンティックコマースの姿なのです。

「ChatGPT」や「Gemini」といった外部AIプラットフォームを1つの流入・購買チャネルとして活用し、顧客に便利に買ってもらう施策は必要であろう。それと同時に、自社ECサイト自体を、顧客の好みに寄り添い買い物を楽しくする“プロのエージェント”として機能させることが必要だと林社長は指摘する。

「キーワード検索」の終焉――感性訴求と「文脈(コンテキスト)検索」への進化

では、自社ECサイトでエージェンティックな体験を実現するには何が必要なのか。林社長は「検索行動の構造的変化」をあげる。

従来のECサイトは「Tシャツ」「赤 ニット」といった単一の「キーワード検索」に依存してきた。しかし、実際の店舗で顧客が接客を受ける際、いきなり単語だけを会話をする人はいない。「近々イベントがあるけれど、どんなコーディネートが良いか」「普段着ない色に挑戦したい」といったストーリーや対話から会話が始まる。

生成AIの普及により、生活者は「文脈(コンテキスト)」で相談し、答えを得る便利さに急速に慣れ親しんでいます。自社ECにおいても、単なるキーワードマッチングではなく、顧客の文脈や背景を理解した接客や提案を展開しなければなりません。

さらに、「Instagram」や「TikTok」のように、AIがユーザーの好みに合わせた画像を最適なタイミングで提示し、感性に直接働きかけるUXも定着している。文章によるスペック検索から、感性訴求と「対話・文脈検索」へのシフトに対応することが、AI時代に選ばれるECサイトの必須条件となるという。

AI時代の「一次データ」の重要性とシステム選び

高度な文脈検索やパーソナライズ接客を実現する上で、最大の鍵となるのが「データ」である。しかし、多くの企業では部署ごとの縦割り構造がデータの壁となり、顧客体験を分断させている。

林社長は、商品企画、コーポレート、店舗、コールセンターなど、企業内のあらゆる部門に眠る「一次データ(自社固有のデータ)」を一元的に蓄積・統合することが重要だと訴える。

ネット上の情報を集めただけの二次データでは、どの企業も同じ答えに行き着き、同質化してしまいます。自社の商品開発コンセプト、店舗スタッフが持つ接客のナレッジや暗黙知、コールセンターに寄せられる生の会話データ、レビューなど、自社だけの「一次データ」を集約してAIに学習させなければ、質の高い文脈回答は作れません。

たとえば、店舗スタッフの日報入力も、AIとの音声対話によって現場の負担なく生のナレッジとして回収・蓄積できるようになっている。ecbeingであれば、収集したデータはマーケティング・分析ツール「Sechstant(ゼクスタント)」で活用することが可能。従来、データサイエンティストが時間をかけて作成していた顧客セグメンテーションや仮説検証のレポートが、AIとの対話によってわずか数分で出力できる。単なるデータの集計作業から解放されたマーケターは、ロイヤルカスタマー戦略や施策の意思決定に集中できるようになる。

「Sechstant」のイメージ
「Sechstant」のイメージ

ただ、こうした施策を行うにはシステム基盤も重要になる。ecbeingでは、カスタマイズ自由度の高いパッケージ「ecbeing」を「持ち家(マイホーム)」、迅速導入が可能なSaaS版のECサイト構築パッケージ「メルカート」を「分譲マンション」に例えている。

従来のパッケージ開発は、独自の世界観や高度な差別化を実現できる反面、構築に時間とコストがかかる点が課題でした。しかし、ecbeingが全面的に推進する「AI駆動開発」により、開発スピードとコスト構造が劇的に変化しています。これまでコストの制約で諦めていた独自世界観の構築が、より多くの事業者で実現可能になっています。

大切なのは「システムで何を実現したいのか」という要件定義です。ecbeingグループでは、店舗予約、アプリ、チャットボット、レビュー、データ分析まで一元的にデータを統合できるプラットフォームを擁し、専門スタッフが戦略的パートナーとして伴走します。AI時代の激変期だからこそ、事業者の皆さまと共に本質的な価値を創造してまいります。

ecbeingグループにおけるAI時代の支援イメージ
ecbeingグループにおけるAI時代の支援イメージ

この記事の筆者

[ 執筆 ] ネットショップ担当者フォーラム編集部

「ネットショップ担当者フォーラム」(ネッ担)は、通販・ECにたずさわる方に役立つさまざまな情報をお届けするWebメディアです。

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matsumura

AI時代の購買行動はどう変わった? 宿泊先選びに約42%がAIツールを活用、55.2%がAIの提案先に実際に足を運ぶ

6 日 13 時間 ago
AI時代の購買行動はどう変わった? 宿泊先選びに約42%がAIツールを活用、55.2%がAIの提案先に実際に足を運ぶ
movの調査によると、直近1年以内に宿泊を伴う国内旅行を経験した20〜50代の男女415人のうち、41.9%が宿泊先を探す際にAIツールを利用し、55.2%がAIの提案先に実際に足を運んでいた。AIを活用した宿泊先選びが広がる一方、口コミや検索で最終確認する行動も定着しつつある。
furukawa2026年9月29日

店舗向け集客一元化プラットフォーム「口コミコム」やインバウンドビジネスメディア「訪日ラボ」を展開するmovは9月17日、AI時代の宿泊先選びに関する調査結果を発表した。これによると41.9%が宿泊先を探す際にAIツールを利用していた。さらに、AIツールから提案された宿泊先に実際に足を運んだ人は55.2%にのぼった。AIツールが宿泊先の候補探しだけでなく、実際の来訪にもつながっていることがうかがえる。

宿泊先選びでAIツールの利用率は41.9%

宿泊先を決める際に利用する情報媒体・ツールを聞いたところ、「AIツール」は41.9%で、「Googleマップ」の41.2%とほぼ同水準だった。「SNS」は29.6%、「比較サイト」は27.7%となった。AIツールが宿泊先選びの有力な情報源として存在感を高めていることがうかがえる。

AI時代の購買行動はどう変わった? 宿泊先選びに約42%がAIツールを活用、55.2%がAIの提案先に実際に足を運ぶ
AIツールが宿泊先選びの有力な情報源に

AIを使う理由は「検索の時間や手間を省ける」

AIツールを利用する理由では、「検索の時間や手間を大幅に省くことができるから」が64.9%で最も多かった。次いで「自分の好みや条件に合わせた提案をしてくれるから」が56.3%となった。

AI時代の購買行動はどう変わった? 宿泊先選びに約42%がAIツールを活用、55.2%がAIの提案先に実際に足を運ぶ
AIを使う理由は「検索の時間や手間を省ける」

「比較検討」の段階でもAIを活用

AIツールを利用するタイミングでは、「行き先が決まり、条件に合う施設を探し始めるとき」が69.0%で最多となった。「複数の施設を比較検討しているとき」も51.1%に達した。

AI時代の購買行動はどう変わった? 宿泊先選びに約42%がAIツールを活用、55.2%がAIの提案先に実際に足を運ぶ
「比較検討」の段階でもAIを活用

AIツールは初期の探索段階だけでなく、比較検討のプロセスでも使われている。AIが、旅行先選びの一連の意思決定に組み込まれつつある状況が見て取れる。

また、AIツールに提案された宿泊先に実際に足を運んだ人は55.2%にのぼった。AIによる情報収集が、実際の来訪行動につながるケースも一定数あることが分かる。

AI時代の購買行動はどう変わった? 宿泊先選びに約42%がAIツールを活用、55.2%がAIの提案先に実際に足を運ぶ
AIツールに提案された宿泊先に実際に足を運んだ人は55.2%

AIの提案後、検索や口コミで情報を確認

一方、AIの提案だけで宿泊先の意思決定が完結しているわけではない。

AIツールで気になる宿泊施設を見つけた後の行動としては、60.9%がGoogle検索を行うなど、AIツールの情報だけで意思決定を行っていない。

AI時代の購買行動はどう変わった? 宿泊先選びに約42%がAIツールを活用、55.2%がAIの提案先に実際に足を運ぶ
AIの提案後、検索や口コミで情報を確認

AIが候補の発見や絞り込みを担う一方で、最終的な判断に向けて検索や口コミを使い、情報を確認する行動が取られている。再検索を行う理由としては「AIではわからない『リアルな口コミ』や『最新の評価』を確認したい」「AIの情報が本当に正しいか事実確認をしたいから」といった回答が上位となった。

AI時代の購買行動はどう変わった? 宿泊先選びに約42%がAIツールを活用、55.2%がAIの提案先に実際に足を運ぶ

新たなユーザージャーニー「AICRAS」を提唱

movは調査結果を踏まえ、AI時代の店舗選びにおける新たなユーザージャーニーとして「AICRAS(アイクラズ)」も提唱した。「AICRAS」は、ユーザーが店舗や宿泊施設を選ぶまでの意思決定プロセスを6つの段階で整理したもの。各プロセスの頭文字を取って名称とした。

「AICRAS」は各プロセスの頭文字を取った

従来のユーザージャーニーとの違いとして、「Comparison(比較)」と「Reputation(評価確認)」の2段階を独立して位置付けている。AIツールの普及によって複数の候補を比較・検討する作業が効率化されたことに加え、比較後に「自分に最適か」をAIや口コミで再確認する行動が広がっていることを踏まえたとしている。

従来型の旅行におけるユーザージャーニーの整理
「AICRAS」に沿った旅行におけるユーザージャーニーの整理

調査概要

  • 調査方法:Webアンケートによる定量調査
  • 調査対象:以下条件を満たす20〜50代の男女
    • 直近1年以内に宿泊を伴う国内旅行の経験がある
    • 過去に一度以上AIツールを使用したことがある
  • 有効回答数:415人
  • 調査実施日:2026年8月13〜17日
  • 調査実施機関:マーケティングアプリケーションズ(Surveroid)

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この記事の筆者

[ 執筆 ] 鳥栖 剛

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鳥栖 剛

ギフトECはどう攻略する? 売上とファン獲得につなげる最新ギフトEC戦略【フューチャーショップが10/6オンライン開催】

6 日 13 時間 ago
ギフトECはどう攻略する? 売上とファン獲得につなげる最新ギフトEC戦略【フューチャーショップが10/6オンライン開催】
フューチャーショップは10月6日、EC事業者向けオンラインセミナー「『贈る』だけで終わらせない。売上とファン獲得につなげる 最新ギフトEC戦略」を開催する。eギフトやギフトECのUX設計をテーマに、ギフト需要を売上やファン獲得につなげる実践ノウハウを解説する。
furukawa2026年9月29日

SaaS型ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」を提供するフューチャーショップは10月6日、EC事業者向けオンラインセミナー「『贈る』だけで終わらせない。売上とファン獲得につなげる 最新ギフトEC戦略」を開催する。参加費は無料。Zoomウェビナーでの開催となる。

▼「贈るだけで終わらせない。売上とファン獲得につなげる 最新ギフトEC戦略

ギフトECはどう攻略する? 売上とファン獲得につなげる最新ギフトEC戦略【フューチャーショップが10/6オンライン開催】
ギフト需要を取り込むECの仕組みづくりと、受け取り手の最大40%を自社ファン化する顧客体験設計を事例付きで解説

近年、消費者の購買行動の変化に伴い、ギフトの購入スタイルも変わりつつある。フューチャーショップによると、住所を知らなくても贈れるeギフトへのニーズはミドル世代を含む幅広い層に広がっており、SNS上で完結する手軽なギフト体験への需要も高まっているという。こうした背景を踏まえ、同セミナーでは、住所を知らなくても贈れる購買環境の整備や、迷わず選べるギフト設定のUX設計をテーマに、ギフト需要を売上につなげる実践的なノウハウを紹介する。

セミナーには、eギフトサービス「AnyGift」を展開するAnyReachのBizDevDivision Field Sales Teamの木村江梨花氏と、UX設計やギフト最適化に強みを持つエフカフェのクリエイティブDiv. ゼネラルマネージャーの宮川綾子氏が登壇する。

ギフト需要を逃さないEC上の仕組みづくりに加え、ギフトを受け取った人の最大40%を自社ファンへ転換させる顧客体験設計について、事例を交えて解説する。

第1部では、「『贈る』を勝ち筋に変える!eギフト×店舗施策×カタログ機能で実現する売上&ファン獲得ノウハウ」と題して、ギフトECの最新戦略を紹介する。

eギフトやソーシャルギフトの最新動向をはじめ、「AnyGift」を活用した購入ハードルの下げ方、カード型ギフトや体験型チケットを活用したECと店舗の連動施策、カタログギフト機能による選択肢の広げ方などを取り上げる。受け取り手を一過性の利用者で終わらせず、次の自社ファンにつなげるための考え方も紹介する。

第2部では、「『選びにくい』を『買いたい』に変える、『安心して選べる・ミスなく届く体験(一時的UX)』を実現する、ギフトECのUX設計を解説」と題し、ギフトECにおけるUX設計をテーマに講演する。

ギフト体験は購入時だけで完結するものではない。贈るきっかけづくりから、商品を選んで指定する過程、受け取った後の印象や体験まで、一連の顧客体験を設計することが重要だとしている。講演では、こうしたギフト体験を考えるうえでの「UXの4分類」をフレームワークとして解説する。

なおフューチャーショップでは、ギフトEC機能として「giftimize for futureshop」を提供している。熨斗や名入れなど、ギフト注文に欠かせない指定項目を商品ごとにステップ形式で分かりやすく入力できるようにすることで、購入時の迷いや入力ミスを減らす。利用者にとって直感的で使いやすい操作性と、EC事業者にとって受注業務を正確に進めやすい設計を両立しているという。

セミナー概要

  • 日時: 2026年10月6日(火)15時〜16時30分
  • 参加費: 無料
  • 開催形式: オンライン(Zoomウェビナー)
  • アーカイブ配信: あり
  • 対象: 自社ECのギフト売上拡大や、ギフト購入時の離脱防止、ファン化施策に関心のあるEC事業者
  • 詳細と申し込み:https://www.future-shop.jp/seminar/20261006seminar.html

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[ 執筆 ] 鳥栖 剛

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鳥栖 剛

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