ネットショップ担当者フォーラム

かっこ、後払い決済の導入コストと工数を削減するパッケージ「SaaS型BNPLシステム」を提供開始

2 years 10ヶ月 ago

かっこは、EC事業者向けの後払い決済パッケージ「SaaS型BNPLシステム」の提供を開始した。

従来の後払い決済システムの構築と比べて、導入期間と運用コストを大幅に短縮・削減。収益性の改善、購買・決済データを蓄積できるといったメリットもあるという。

「SaaS型BNPLシステム」とは

複数の後払い決済事業構築で培った仕組みと経験をもとに、後払い決済に必要な仕組みをパッケージ化。従来の後払い決済システムの構築は膨大な期間とコストが必要だったが、「SaaS型BNPLシステム」を利用することで導入期間とコストを大幅に短縮できるという。

かっこは後払い決済パッケージ「SaaS型BNPLシステム」を提供開始
かっこは後払い決済パッケージ「SaaS型BNPLシステム」を提供開始

「SaaS型BNPLシステム」で期待される導入効果・メリットは次の通り。

  • 初期投資リスク/運用コストを最小限に抑えた事業展開
    従来はゼロから後払い決済システムを構築すると1億円以上コストがかかっていたが、システム初期費用を200万円に削減する。
  • 収益性の改善
    後払い決済事業者への手数料以上の収益率を確保。収益最大化に貢献する。
  • 独自ニーズへの対応
    要望に応じたカスマイズが可能(払込票印刷対応、ショップ向け画面提供など)。後払い決済事業の経験が豊富なコンサルタントが、導入企業にとって最適な方法の相談に応じることもできる。
  • 購買/決済データの蓄積
    後払い決済事業者を利用していた場合、これまで取得できなかった後払い決済の購買・決済データの取得により、顧客情報の適切な現状把握に貢献。さらに今後のマーケティング戦略や新規事業検討における有用なデータとして活用ができる。
「SaaS型BNPLシステム」がもつ機能のイメージ図。購入者への請求や未入金者への催促は自動化する。入金後はリアルタイムで自動処理する
「SaaS型BNPLシステム」がもつ機能のイメージ図。購入者への請求や未入金者への催促は自動化する。入金後はリアルタイムで自動処理する

収益最大化につながる新サービスとして提供

国内の後払い決済市場は前年比約30%増で成長し、今後も成長が期待されている分野。一方、これまでEC事業者が後払い決済を導入するには、システム開発など数億円のコストや未払い対応などの運用ノウハウの蓄積などハードルがあった。

債権ごと引き取る後払い決済事業者を利用する場合は膨大な導入コストや運用ノウハウは不要だが、一定の手数料と「支払履歴が追えないため顧客状況の把握が正確にできない」といった課題があったという。

こうした背景を踏まえて、導入コストと運用のハードルをなくし、収益最大化と顧客状況の把握が可能となる業界初の「SaaS型BNPLシステム」をかっこが提供開始した。

導入企業として、SBI FinTech Solutionsが利用を予定している。

高野 真維

KOMEHYOオークションがWebサイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を導入

2 years 10ヶ月 ago

BtoBの中古品ブランドオークション事業を手がけるKOMEHYOオークションは、入札サイトとコーポレートサイトに、Wovn TechnologiesのWebサイト多言語化ソリューション「WOVN.io(ウォーブン・ドットアイオー)」を導入する。

海外入札を本格的に開始、流通量の拡大をめざす

国内リユース市場はSDGs、循環型社会の浸透、物価高などの影響で拡大、2025年には3.5兆円を超える規模に成長すると推測されている。

2020年の新型コロナウイルス感染拡大を受けて、BtoBオークション市場では、出品から入札までオンラインで完結するデジタル化が進んだ。

オンラインはどこからでも入札できることから参加者が増やしやすいほか、会場や運営スタッフが必要ないため、以前より実施が容易になった。そのため、新たにオークションをスタートする企業が増え、警察庁への古物競り斡旋業者の届出も増加している。

新規参入企業が増え競争が激しくなる一方で、海外からの入札に対応している企業は少なく、KOMEHYOオークションに「海外の企業から入札に参加したい」という要望が寄せられていたという。

こうした要望に対応するため、「WOVN.io」による自動翻訳を導入、海外からの入札を開始する。導入により、参加者増加や入札の活性化による流通拡大をめざす。

KOMEHYOオークション WOVN.io BtoBオークション市場
KOMEHYOオークションが「WOVN.io」を導入

北米でのリユース市場が拡大

北米の中古衣料品市場は、2025年には2021年の2.3倍に成長すると予測されている。

また、日本のリユース品のニーズが高まっている理由の1つは、海外において1980~1990年代のシャネルのバックを中心にヴィンテージ商品の人気が高いことだ。

その年代のブランド品の消費の中心が日本だったことから、ヴィンテージ品が多く眠っているといわれており、昨今の物価高の影響や相場高騰を聞きつけて、ヴィンテージ品の買い取りが増加している。

海外の入札を開始することで、日本のリユース市場に集まったヴィンテージ品が、北米を中心としたさらにモノの価値が高まる地域に配送できるようになる。

KOMEHYOオークション WOVN.io BtoBオークション市場 出品されるブランドのバッグや衣類のイメージ
KOMEHYOオークション WOVN.io BtoBオークション市場 出品されるブランドのバッグや衣類のイメージ
KOMEHYOオークションに出品されるブランドバックやブランド衣類のイメージ
藤田遥

松竹が「Froovie/フルービー」「松竹歌舞伎屋本舗」を統合したECサイト「松竹ストア」を開設

2 years 10ヶ月 ago

松竹は、映画・アニメの公式グッズを取り扱う「Froovie/フルービー」、歌舞伎・演劇関連の公式グッズの「松竹歌舞伎屋本舗」の2つのECサイトを統合し、「松竹ストア」としてオープンした。

ブランド強化、システム・会員の一元化による業務効率化が目的。「松竹ストア」内で「Froovie/フルービー」と「松竹歌舞伎屋本舗」を提供する構成で構築しており、将来的に新しいサイトを増やすことも想定している。

「松竹ストア」の基盤には、ecbeingのECサイト構築パッケージ「ecbeing」を導入した。

松竹は、映画・アニメの公式グッズを取り扱う「Froovie/フルービー」、歌舞伎・演劇関連の公式グッズの「松竹歌舞伎屋本舗」の2つのECサイトを統合し、「松竹ストア」としてオープン
統合したECサイト「松竹ストア」

サイト統合に向けて、両サイトの会員に対しどちらの会員情報で名寄せを行うべきかのアンケートをメールで送付。収集したデータを元に名寄せを実施することで、システムを使ったアプローチよりもコストを抑えた会員統合を実現したという。

歌舞伎公演のブロマイドは販売枚数が多いため、効率的に閲覧できるよう商品詳細ページ内に「次の商品へ」と「前の商品へ」の導線を設置した。簡易的な操作手順でブロマイドを確認し、スムーズに買い物をできる環境を実現したとしている。

瀧川 正実

世界の消費者はどこで買い物する?成長鈍化のAmazonとアリババ。存在感を高めるSheinとZalando【越境EC利用状況まとめ】 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

2 years 10ヶ月 ago
越境ECを利用している消費者の27%が「最後に利用した海外の小売事業者はAmazon」と回答し、17%が「AliExpress」と回答。越境ECの利用状況をまとめて紹介します

世界中で越境ECを利用している消費者の27%が「最後に利用した海外の小売事業者はAmazonである」と回答し、次いで17%が「Alibaba(アリババ)のマーケットプレイス『AliExpress(アリエクスプレス)』で購入した」と答えています。

コロナ禍で、ブランドや小売事業者によるEコマースの強化が進み、海外の通販サイトを利用する消費者が増加しました。消費者の購買傾向や、さらなる伸長が期待される商品カテゴリーについて解説します。

記事のポイント
  • 「Amazon」「Shein」「Zalando」はコロナ禍以降も成長。一方、「eBay」、米国発のファッションEC「Wish(ウィッシュ)」、「AliExpress」は減速
  • 米国の小売事業者が越境EC購入に占める割合は、2016年の15%に対し、10%まで減少
  • 海外の小売サイトで最もよく購入されるカテゴリーは「アパレルとフットウェア」、次いで「家電商品」、「パーソナルケア」

Amazonとアリババは他国にシェアを奪われている?

米国を拠点とするAmazonと中国のアリババグループは、依然として越境ECの世界的リーダーです。しかし、各国の郵便事業で構成するコンソーシアムInternational Post Corporation(IPC)が行った最新の越境ECに関する調査によると、米国と中国は近年、他国にシェアを奪われているようです。

「自国以外の小売サイトで最後に購入したのはどのサイトか」という質問に対して、27%がAmazonと答え、17%はアリババのマーケットプレイス「AliExpress」(編注:主に中国メーカーの安価な商品を提供)をあげました。

この調査は2022年10月に、過去3か月間に少なくとも1回、国境を越えたオンラインショッピングを行った39カ国の消費者3万3009人を対象に実施しています。

今回調査で27%だったAmazonのシェアは、IPCがコロナ禍前の最後の年である2019年に実施した同様の調査結果の25%から2ポイント上昇。17%だった「AliExpress」は2019年調査の20%から3ポイント減りました。

「最後に利用した越境ECサイトはどこか」に対する回答。出典:International Post Corporation/2022年39か国3万3000人の消費者を対象にした調査
「最後に利用した越境ECサイトはどこか」に対する回答(出典:International Post Corporation/2022年39か国3万3000人の消費者を対象にした調査)

「eBay」は2019年の14%から、2022年の調査では9%に低下。中国など他国の低価格商品中心に取り扱う米国発のマーケットプレイス「Wish」は11%から5%に低下しました。

一方、2019年のIPCレポートでは言及されていなかった2つの小売事業者が、最新の調査でリーダー的存在となりました。1社目が、中国のファストファッション小売企業「Shein」で、6%を占めています。もう1社は、ドイツのEC事業者が運営するマーケットプレイス「Zalando」で3%を占めました。

Amazonは、マーケットプレイスを総販売額(商品総額)でランク付けした『Digital Commerce 360』発行「グローバル オンライン マーケットプレイス データベース 2022年版」で第3位。「eBay」は5位、「AliExpress」は15位、「Wish」は16位、「Zalando」は24位。アジアを拠点とする小売事業者をオンライン売上高でランク付けした「アジア データベース 2022年版」では、「Shein」は36位にランクインしています。

なぜ、米国の越境ECに占める割合は縮小したのか?

Amazonは好調ですが、米国の小売事業者全体が越境ECで負けている状況です。

2022年に実施した調査では、「2022年の最後に利用した越境EC」に米国が占める割合はわずか10%。IPCによると、米国の割合は2019年調査で11%、2016年調査は15%で、シェアの低下が続いています。

「最後に利用した越境ECはどこの国の企業か」に対する回答。※四捨五入しているため、合計は100%にならない    出典:International Post Corporation/2022年39か国3万3000人の消費者を対象にした調査
「最後に利用した越境ECはどこの国の企業か」に対する回答 ※四捨五入しているため合計は100%にならない(出典:International Post Corporation/2022年39か国3万3000人の消費者を対象にした調査)

小売事業者向けのコンサルティング会社McMillanDoolittleのデジタル関連部署のトップで、国際的なオンライン販売を行う小売事業者やブランドを集めた 「Global Ecommerce Leaders Forum」の共同設立者のジム・オカムラ氏は、次のように述べています。

コロナ禍で、生き残りをかけたブランドや小売事業者がEコマースを迅速に展開したことで、国内の選択肢が大幅に広がり、消費者が特定の商品を求めて国外に行く必要性が低くなったのです。(オカムラ氏)

第1位は中国で、消費者が最後に利用した越境ECの30%を占めました。これは、2019年調査の36%から減少しましたが、2016年調査の26%からは増加しています。

ドイツはコロナ禍の間に地盤を固め、消費者の最後の越境EC購入の14%まで増加。2019年調査の12%から上昇しています。

英国は逆で、2019年調査の13%から2022年調査では10%に落ち込みました。これらの変化は、EU加盟国の消費者が、ドイツなどEU加盟国の小売事業者であれば免除される関税を支払うのを嫌い、Brexit(編注:英国のEC離脱)後に英国からの購入が減ったことを反映していると思われます。

消費者のオンラインショッピングは増加するものの、米国ECサイトの伸びは鈍化

「今後、国内通販サイトでの購入が増える」と答えた人は74%で、そのうち24%は「かなり増える」と答えています。一方、「購入が減少する(2%が大幅に減少)」と回答したのは6%にとどまりました。

しかし、米国の小売サイトではそれほど伸びず、米国のオンライン通販事業者での買い物が増えると予想する人は39%にとどまり(8%が大幅に増加と回答)、35%が米国のサイトでの買い物が減少すると答えました(16%が大幅に減少と回答)。

最も多いのは、「隣国からの購入が増える」という消費者です。58%が「隣国の小売サイトからより多く購入する」と答え、うち 10% が「非常に多く購入する」と回答。「少なく購入する」と答えたのは、11%(3%が非常に少ないと回答)でした。

オカムラ氏は、「Eコマースの発達していない国では、十分な品ぞろえや販売者間の競争がないため、消費者は“青く見える隣の芝生”で買い物をすることに魅力を感じています」と言います。

海外のサイトでアパレルや靴を買う消費者が増加

越境ECで最も購入頻度が高いのは「衣料・服飾」で、36%が直近の越境EC利用で購入した商品として挙げています。次いで、「家電製品およびアクセサリー」(20%)、「パーソナルケアおよび美容」(16%)でした。

「直近の越境EC利用で購入したカテゴリー」に対する回答。※直近の購入品には複数のカテゴリーの商品が含まれる可能性があるため、合計は100%にならない。出典:International Post Corporation/2022年39か国3万3000人の消費者を対象にした調査 
「直近の越境EC利用で購入したカテゴリー」に対する回答。※直近の購入品には複数のカテゴリーの商品が含まれる可能性があるため、合計は100%にならない(出典:International Post Corporation/2022年39か国3万3000人の消費者を対象にした調査)

コンサルティング会社The Research Trustの代表で、「Global Ecommerce Leaders Forum」の共同設立者であるケント・アレン氏は、次のように話しています。

注目すべきカテゴリーはパーソナルケアとビューティーです。ソーシャルコンテンツが爆発的に増えているカテゴリーでもあり、有害な化学物質を含まない“クリーンビューティー”をうたうブランドや、ウェルネスブランドなど、新しいDtoCブランドが従来を上回る成長をけん引するはずです。(アレン氏)

米国の消費者は、衣料品や靴を他国の小売サイトから購入する傾向が最も強いとされています。一方、「南米の消費者は家電商品を越境して購入することが多く、アジアの消費者はパーソナルケア商品を購入している」とIPC は述べています。

安価な商品が多い越境EC。買い物は“55ドル以下”が半数

IPCの調査結果には、他にも以下のようなものが含まれています。

  • 購入金額の50%は50ユーロ(55ドル)以下。100ユーロ以上の購入はわずか6%。
  • 最後に購入した越境ECが「5日以内に届いた」と回答した人は37%。「10日以上かかった」と回答した人は38%
  • 越境EC利用者の79%が、通関手数料について購入時に知った。50%はオンライン購入時に、30%は配送中に、16%は配送時に通関手数料の支払いをした。
  • 回答者のうち、10%が直近の越境購入品の全部または一部を返品した。越境EC事業者のうち、返品率が高かったのは中国(25%)で、次いでニュージーランドとスイス(ともに22%)、その次が米国(21%)だった。越境EC事業者は75%が「返品は無料」と回答。無料返品の割合が最も高かったのは、「Zalando」「Amazon」「Shein」だった
  • 73%の消費者が、「配送による環境負荷を減らすため、荷物の到着を数日長く待つ」と回答し、そのうち30%はその意見に強く同意。しかし、72%の消費者は、「持続可能な配送のコストを負担するのは、消費者ではなくオンライン小売事業者の責任」だと考えている(29%が強く同意)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

Digital Commerce 360

世田谷自然食品がAmazonに出店、「転売対策」「利便性向上」が目的

2 years 10ヶ月 ago

世田谷自然食品は2月8日、Amazonでの商品取り扱いを開始した。「顧客の利便性」と「転売による安全性への懸念」を検討し、Amazonへの出店を決めた。

世田谷自然食品はAmazonに出店。「顧客の利便性」と「転売による安全性への懸念」を検討し、Amazonへの出店を決めた
Amazon内に開設した公式ショップ

世田谷自然食品によると、卸販売を行っていないが、ECモール系サイトやフリマ系アプリなどで販売元が世田谷自然食品ではない商品が出品されている。それらの商品はすべて、一度消費者の手に渡ったいわゆる「転売品」になっているという。

そのような商品はAmazonでは新品として出品できるため、世田谷自然食品が公式に販売していると勘違いしてしまう顧客が一定数存在。実際に、世田谷自然食品以外で購入した顧客からの問い合わせも寄せられているという。

世田谷自然食品が取り扱う商品は食品・サプリメント・化粧品。安全性が損なわれれば重大な健康被害が予想される。第三者の手に渡った管理状態の不透明なモノが届くことを防ぐために、Amazonへの公式出店が必要だと判断した。

Amazonで販売するのは、フリーズみそ汁のほか、乳酸菌の入った青汁やグルコサミン&コンドロイチン、化粧品など。今後の目標としてAmazonでの商品ラインナップ拡充をめざす。

ネオマーケティングの調査によると、「メーカー・ブランド直販サイト」を利用したことがあるユーザーは約40%。一方、Amazonを含む「ショッピングモール系サイト」の利用者は94.2%に達している。

石居 岳

I-neが日本一優秀なマーケターの育成に挑む! 育成メカニズムを責任者が全解剖【連載第2回】 | 「ボタニスト」のI-neが挑む、D2C人材育成戦略の全ぼう

2 years 10ヶ月 ago
「ボタニスト」などの著名なブランドをECでも展開するI-ne。D2C経営人材の育成戦略について取り組みを聞く連載企画の第2回は、人材育成のメカニズムを解説します

「ボタニスト」「サロニア」などのブランドを手がけるI-neの執行役員・ダイレクトマーケティング本部本部長の伊藤翔哉氏と、I-neのマーケティング人材育成をサポートするグロースXの津下本耕太郎社長が対談。I-neがめざす「日本一優秀なダイレクトマーケティング人材を育てる仕組み」のメカニズムを語り合った。

  1. 「ボタニスト」のI-neが挑むD2C人材育成。責任者が語る「育成戦略」と「脱属人化」【連載第1回】
  2. I-neが日本一優秀なマーケターの育成に挑む! 育成メカニズムを責任者が全解剖【連載第2回】

※本連載の第2回・第3回では、伊藤氏とグロースXの担当者の対談を配信。次回の第3回は、I-neならでのマーケティングの強みや、組織内の人材育成において企業が陥りやすい“落とし穴”などを2人が語り尽くします。

「BOTANIST」などの数々のヒット商品を展開するI-neが挑むD2C経営人材育成の取り組みをひもとく
「BOTANIST」などの数々のヒット商品を展開するI-neが挑むD2C経営人材育成の取り組みをひもとく

人材アセスメントをベースとした育成プログラム

――I-ne・ダイレクトマーケティング本部の人材育成プログラムは、グロースXが提供する人材育成プログラム「マーケティングスキルトラッカー」をベースとしています。「マーケティングスキルトラッカー」の詳細や特徴を教えてください。

津下本氏:マーケターに必要な50以上の重要スキルや、独自の方法による測定の仕組みを用いて、受講者がもつスキルや実力を可視化するプログラムです。データを基に、効果的な活用方法のアドバイスも提供します。

「マーケティングスキルトラッカー」をベースとしたI-ne・ダイレクトマーケティング本部の人材育成プログラムは、受講者それぞれの実力を可視化して知見を深める。項目は顧客理解からビジネスの収益構造まで多岐にわたる
「マーケティングスキルトラッカー」をベースとしたI-ne・ダイレクトマーケティング本部の人材育成プログラムは、受講者それぞれの実力を可視化して知見を深める。項目は顧客理解からビジネスの収益構造まで多岐にわたる

津下本氏:たとえばCRMなど「いま学んでいない領域の力量を図る」ということや、スキルや実力を“見える化”して、本質的な「人材アセスメント(個人の能力や性格に合った役割を与えるために前もって人材を評価すること)」の枠組みを作ることに力を注いでいます。そのようにして作り上げたものが「マーケティングスキルトラッカー」です。

グロースX 代表取締役社長 津下本耕太郎氏
グロースX 代表取締役社長 津下本耕太郎氏

伊藤氏:上席は、現在アサインしている部下の業務については実力を把握できています。しかし、「現在の業務とは直接関係がないが、実はダイレクトマーケティング運営の経験がある」「実は、デザイナーとしての知識や経験を持っている」といった、現在の業務からは見えづらい部下のスキルは把握することが難しいことがほとんどです。

人材育成もできるし、1人ひとりの適正を生かした業務のアサインメントにも役立つ「マーケティングスキルトラッカー」は、「D2Cブランドの経営人材を育成する」という目的以上の成果が期待できています。

I-ne 執行役員 ダイレクトマーケティング本部本部長 伊藤翔哉氏
I-ne 執行役員 ダイレクトマーケティング本部本部長 伊藤翔哉氏

津下本氏:人材育成をする側ではなく、「される側」の視点に立つと、実力を「見える化」されるだけでは不安が残ってしまいます。その先のアセットを伸ばし、実務につなげるまでが導入企業に対する支援だと思っています。

――「マーケティングスキルトラッカー」をベースにI-neが自社開発した人材育成プログラム「M.D.M」では、どのような手法で教育を進めているのですか。

伊藤氏:「M.D.M」受講者には日々、自主的な学習を促しています。グロースXのマーケティング学習アプリ「グロースX」を取り入れ、マーケティングの基礎知識を習得するようにしています。これに加え、定期的な実力の可視化および、上席との1on1の機会を設けています。

1人ひとりに“明るいキャリアプラン”を描き、一緒に見せてあげる

――1on1ではどのようなことを受講者と話し合っているのですか。

伊藤氏:受講者にとっての現在の得意、不得意を認識してもらう場とするほか、キャリアプランの設計を話し合う機会も多く設けています。

津下本氏:「上席がきちんと自分のことを考えてくれている」という意識が生まれることはとても大切です。モチベーションのアップにつながりますし、何よりも、自分のキャリアが明るく見えるようになります。

多くの企業において、業務の主力メンバーが突如として辞職してしまう場合の動機は「いまの環境ではこれ以上成長できない気がする」「この先の自分のキャリアが想像できない」といったものです。

定性的な領域は“I-neにおけるベストの形”を構築

――D2Cブランドのブランディングや顧客とのコミュニケーション設計のアイデアなど、教育が難しいマーケティング領域もあります。I-neのダイレクトマーケティング本部ではどのように育成しているのですか。

伊藤氏:ダイレクトマーケティング本部におけるブランディング、デザイン、お客さまとのコミュニケーション設計は、各部署と話し合って“I-neにおけるベストの形”を構築しました。これを「M.D.M」受講者に伝えています。デザインの解釈やコミュニケーションは、何が正解かを数字で表しにくい領域です。そこで、“I-neとしてはどのようなことに重きをおくか”を言語化しました。

津下本氏:D2Cでモノを売る企業は、数字をもとに理論的に仮説検証を繰り返すようなサイエンス的なサイドと、世界感やクリエイティブなど定性的な部分を追求していく、アート的なサイドに2極化しがちです。このとき、両サイドがそれぞれの考え方や主張を理解しきれず、または尊重しきれないままでは、事業はなかなかうまくいかないことが多いです。

I-neは各部署の横断的な連携や理解が十分にとれており、それぞれの信頼関係が構築できているように見えます。だからこそ“I-neにおけるベストの形”が構築できたのだと。

津下本氏(左)は企業の“サイエンス”サイドと“アート”サイドの相互理解が大切だと説明
津下本氏(左)は企業の“サイエンス”サイドと“アート”サイドの相互理解が大切だと説明

伊藤氏:アイデアがどんなに優れていたとしても、たとえば「発案者が嫌いだからその人のアイデアは採用したくない」という考え方をする人が生まれてしまっては、せっかくの良いアイデアが生かせません。

I-neは創業当時から、創業メンバーが連日ディスカッションを重ねて、業務に落とし込んでいくスタイルでした。組織の規模感が大きくなるにつれて、密なディスカッションや意思疎通は難しくなる場面も増えましたが、いまでは各部署のリーダーを筆頭に組織横断的なコミュニケーションができています。

数値データから顧客心理を想像できるマーケターを育てるために

――マーケティングに強い会社が大切にしている考え方とはどのようなものでしょうか。

津下本氏:顧客起点の考え方に尽きるでしょう。事業規模が大きくなればなるほど、顧客に商品が届くまでのフローが長くなるため、顧客との心理的な距離が開いてしまいやすいという課題があります。これが悪化すると、リピーターの離脱や獲得困難、ニーズに合った商品開発が難しくなるなど、どうなってしまうかはご想像の通りです。

津下本氏は、真に顧客に寄り添うことができる企業こそがマーケティングに強いと指摘
津下本氏は、真に顧客に寄り添うことができる企業こそがマーケティングに強いと指摘

近年、D2C市場に参入する企業が顕著に増加しているのは、この課題を解消しやすいという利点があるからでないでしょうか。商品の作り手たるメーカーが顧客との距離感を縮めることができるからです。

伊藤氏:I-neでも、お客さまを“見失わない”ことは第一です。お客さまの増減率や売り上げ推移など、業務上で目にするのはデータ上の数値です。しかし、数値を単なる数値のままで捉えるのではなく、数値にお客さまの心が映し出されていると捉えています。マーケターの仕事は、数値を人の心で解釈することをやり続けることだと考えています

――“数値を人の心で読み解く”といったメソッドは、どのように後進に教育しているのですか。

伊藤氏は、顧客データの分析は顧客の心を読み解くことだと話す
伊藤氏は、顧客データの分析は顧客の心を読み解くことだと話す

伊藤氏:受講者にユニット・エコノミクス(事業の経済性を測定する経営手法の1つ。ユニット・エコノミクスが適正であれば事業は健全な状態とされる)を見せながら、「なぜこうなるのか」というように数字の背景を振り返ったり、他社のIR情報を読み解くといった機会を設けています。数値を読み解くメソッドは、何がベストな手法なのかはわからない。だからこそ、さまざまな方法を模索し続けています。

※第3回につづく

高野 真維

【2023年の通販市場予測】半数超が市場は「拡大する」。足元の消費動向は「下がっている」が約6割 | 通販新聞ダイジェスト

2 years 10ヶ月 ago
通販新聞社が実施した調査では、通販の市場予測で「拡大する」と回答した企業の割合が半数超を占めた。アンケートの調査結果を踏まえて、今後の市場について各社から寄せられた声をみていく

通販新聞社は通販実施企業を対象に、今年の通販市場の予想および景況感についてアンケート調査を行った。その結果、市場予測について「拡大する」と回答した企業の割合は53%で2022年7月に実施した前回調査より13ポイント上昇した。コロナ禍による通販利用の定着化を理由にあげる声が多かった。

一方、足元の消費動向は「下がっている」が約6割を占めた。今後の市場はどうなっていくのか、各社から寄せられた声をみていく。

【今後の予想】通販利用の定着化による「拡大」が5割超

通販新聞は、主な通販実施企業約600社を対象に実施した“通販通教売上高調査”に合わせてアンケートを実施した。まず、「2023年以降の通販市場について、どう予想していますか」と質問し、「拡大する」「横ばい」「縮小する」から選んでもらった。その結果、有効回答数のうち、「拡大する」と回答した企業は53%を占めた。「横ばい」は37%で「縮小する」は7%だった。

これからの通販市場は「拡大する」と予測する通販企業が大半を占めている
これからの通販市場は「拡大する」と予測する通販企業が大半を占めている

「拡大する」と回答した企業の意見で目立ったのは、コロナ禍で通販利用が増加・定着し、今後もその傾向が継続するという見解だ。主な回答は次の通り。

  • コロナによって通信販売の利便性、安全性が評価され、今後も一定は定着すると想定される(ジュピターショップチャンネル)
  • コロナ禍で通販市場の存在感が拡大し、消費者の生活にも定着してきた(新日本製薬)
  • コロナ禍で通販利用者が増加した際の新規顧客が継続利用するため(白鳩)
  • ここ数年のコロナの影響による店頭販売の急減、通信販売の急伸といった急激な変化は生じないと捉えている。一方で、コロナ以前からのデジタル化の波は続いており、通販市場の拡大が続くと想定(ファンケル)
  • 共働き世帯の増加による時短ニーズの増加、通販での購入体験増加による普及の進化など(mighty)

消費者の傾向を加味した視点としては、次のような声があがった。

  • 一般消費者の出費の傾向は旅行・観光分野が増えると思われ、自己需要品の購入は前年度、前々年度と比べて落ちるとは予測するが、日本のEC市場の伸びはまだ頭打ちの状況にはないと考える(田中貴金属ジュエリー)
  • 消費活動が実店舗に戻りつつはあるが、店舗とECの融合の進化は継続する為、持続的な成長は維持(マガシーク)
  • 世の中が活気づいてくる時期に入った(テレビショッピング研究所)

このほか、「化粧品の通信販売は今後も成長が期待される業界であり、競争の激化も起こりえる」(アプロス)、「異業種による新規参入が多いから」(世田谷自然食品)など、業界ごとの展望を交えた意見も見られた。

「横ばい」と予測の企業は約4割。先行きへの不安が表れた結果に

「横ばい」と回答した企業の回答では、通販市場の伸長は実感しているものの、昨今の物価高や円安の影響を懸念する声が目立った。「横ばい」と回答した企業の主な回答は次の通り。

  • 需要低下はないと思うが、今般の物価高により、消費の低迷も見込まれるため(GSTV)
  • 通販市場の伸びは引き続きあると思うが、原価高騰による値上げなどの影響で日本国内の消費は冷え込むのではないか(ヤマサキ)
  • 販売チャネルとして定着してきたが、一方で景気悪化の影響も看過できない(ニッピコラーゲン化粧品)
  • 円安やコスト高騰など不安要素は引き続き残るが、消費マインドの回復は期待できる(ロッピングライフ)

このほか、次のような意見もみられた。

  • 外出意欲の高まりもあり店舗での購入を楽しむ消費者も増える一方、新型コロナの先行きは不透明なことに加え、コロナ渦で今までECを利用していなかった人も通販を利用するようになり、客層が増えると考えるため(全日空商事)
  • 外出時間が増え、店舗での購入は増加すると予測されるが、ECは伸びていることから通販市場としては横ばいと予測(ヒラキ)
  • 20年は新型コロナ拡大に伴う巣ごもり消費の影響で大幅に通販市場規模は拡大したが、21~22年の伸び率は鈍化しており、その傾向が今後も続くのではないか(アイム)

また、「その他」として「長く続いたコロナによる外出自粛からの解放、実店舗回帰が活発化する一方、ECのデジタル接客、UI、UXの進化によるECサイトの進化も進んでおり、正しい予想ができない」(ユナイテッドアローズ)などの率直な声も寄せられた。

【消費動向】物価上昇が足かせに? 約6割が「下降」

アンケートでは次に「現状の消費の動向をどう捉えていますか」と質問し、各社に「上向いている」「下がっている」「横ばい」の3択で回答してもらった。その結果、「下がっている」が57%と最も多く、「横ばい」は30%、「上向いている」が13%となった。

現状の消費動向は「下がっている」と感じる企業が多い結果になった
現状の消費動向は「下がっている」と感じる企業が多い結果になった

物価高による消費意欲の低迷を指摘する企業多数

「下がっている」と回答した企業の回答では、物価高による消費意欲の低迷をあげる声が圧倒的多数を占めた。主な回答は次の通り。

  • 物価上昇により消費動向が下降傾向にあるため(タキイ種苗)
  • 物価の高騰(ディーエムジェイ)
  • 物価が高騰しているため(山田養蜂場)
  • 原材料費や燃料費高騰による値上げが影響するため(白鳩)
  • 円安による物価の上昇・値上げにより、消費動向が下がっている(アイム)
  • 物価高騰により、消費意欲が減退している(ニッピコラーゲン化粧品)
  • 近頃の物価上昇に対する警戒で、旅行以外の消費には消極的になっている(ちゅら花)
  • 物価高による消費の低下(GSTV)
  • 国際紛争による消費マインドの低下と、コロナ特需の反動は影響が大きかった(ロッピングライフ)

また、「物価高騰と先行きの社会保障含めた経済に対する不安から全体的に縮小。より良い物への選別が厳しくなる。人口減少は国内的には更に進んでいく」(mighty)、「各種生活関連商品や光熱費等、生活に直結するものの値上げが続いており、節約志向が高まっている」(ヒラキ)などの不安材料をあげる声もあった。

“自粛”の雰囲気継続を理由に「横ばい」とみる意見も

次いで多かった「横ばい」では、次のような意見があがった。

  • 日用品などの値上げを実感するものは抑制する傾向にあるものの、コロナ感染者数の増加、減少の傾向に応じて、旅行などの消費は上向いていることから全体としては横ばいとみている(ジュピターショップチャンネル)
  • 20年からのコロナ影響による急伸に比べると横ばい傾向にあると捉えている。ただし、デジタル化の進展による社会変化、通販市場の拡大基調は続いており、当面は微増傾向にある。期待は薄いものの、急激にコロナ感染が落ち着いた場合、“外出が増える=メイク消費の拡大”などは考えられる(ファンケル)
  • 物価高騰により生活主体の買い物中心になり、必需品以外の買い物に慎重になっている(テレビショッピング研究所)
  • 全体の消費マインドは上がっているが、アパレルについてはコロナ禍収束に伴う「リベンジ消費」はほぼ無く、社会全体の半強制的な自粛の雰囲気が継続、コロナ禍以前の生活に完全には戻らないことから良くて横ばいと想定(マガシーク)

一方で、「上向き」とした企業の回答の中では良好な景況感をあげる声も多く、業界による状況の違いがうかがえる結果となった。主な回答は次の通り。

  • 最近の物価高によって生活必需品の消費に逆風が吹いているが、高付加価値商品は好調(インペリアル・エンタープライズ)
  • 外出意欲が高まっていることで、今まで抑えていた消費意欲が増幅すると考えられる(全日空商事)
  • コロナ禍の抑制から解放され、反動が大きく出ていると感じる(田中貴金属ジュエリー)
  • 衣料品の消費傾向としては、外出機会の増加により上向いている(ユナイテッドアローズ)

コロナ禍3年間、通販各社は「巣ごもり反動減」に苦戦

新型コロナウイルス影響下における3年間の状況について各社はどのように総括しているのか。アンケートでは「コロナ禍1年目の20年度および21年度と比較して、22年度の市場動向や消費者の購買動向などに相違点はありましたか」と質問した。各社の回答は次の通り。

消費者の節約志向強まる。各社は冷え込みを懸念

各社からの回答で多かったのは、巣ごもり需要の反動減や物価高による消費者マインドの冷え込みを危惧(きぐ)する声だ。主な回答では、次のような意見がみられた。

  • 20年度、21年度の巣ごもり需要拡大から、コロナ対策規制緩和により明らかに内向きから外向きに購買動向が変化し、その上物価高による値上げの影響で買い控え傾向による向かい風が収まらない状況(タキイ種苗)
  • コロナ禍1年目は健康食品通販にとっては追い風もあったが、2年目は新規参入も増えて競争が激しくなった。さらに22年は物価高での購買欲の減少に加えて小売業者も値上げせざるを得ず、売価の上昇により購入を控える客もいる(ちゅら花)
  • コロナ禍1~2年目は巣ごもり需要があり衣類や雑貨類の需要が伸びた。3年目は巣ごもり需要も落ち着き、生活用品の値上げも相まり購買意欲は高まっていない(ヒラキ)
  • 20年をピークに新規獲得効率が下がっている。20年はネットでの新規獲得が好調だったが年々競争が激化し、獲得が不安定になっている。その分、既存顧客の安定化(定期誘導)により売り上げを維持している(ヤマサキ)
  • 衝動買いがなくなり、考え、比較しながらの購買傾向になった(テレビショッピング研究所)
  • 物価高により選別志向、節約志向が強まっている(mighty)

売れ筋商品に変化も? 消費者ニーズの変化を感じる企業が多数

購買行動では、売れ筋の変化を指摘する意見も目立った。

  • オンラインショッピングやテレワークなどの需要は継続しているが売れ筋商品に若干の変化が見られる。インドア、機能重視、自己投資などの傾向は変わらないが、新しい商品、満足度の高いチョイス、便利な決済方法など一定のこだわりが感じられる(ロッピングライフ)
  • 外出制限やイベント中止などにより支出を抑えていた人々がようやくお金を使いだしてきた感じがする(インペリアル・エンタープライズ)
  • ウィズコロナが定着し、コロナ感染者数の増加、減少に応じた消費を行っている(ジュピターショップチャンネル)
  • コロナ禍ではレジャー産業が低迷した反面、高級車や宝飾品など高価な嗜好(しこう)品への需要が明らかに増えた。コロナは収束していないが対策緩和によりレジャー産業が息を吹き返したと同時に当社の売り上げ低下の傾向は表れていると感じている(GSTV)

このほか、次のような意見も寄せられた。

  • 21年度まではECへのシフトが明確にあったが、22年度は実店舗への来店が大きく回復し、ECサイトで商品チェック後に来店して購入するという流れが増加した(田中貴金属ジュエリー)
  • 1年目は「巣ごもり」需要で増加、2年目は通販利用における電子決済などの普及とプロモーションによる増加(白鳩)
  • 化粧品に関する動向は大きな変化はない。しかし、生活様式も変化しており、実態にあわせた購買環境があげられる(アプロス)
  • 外出、旅行などの機会増加により衣料品の消費は上向いている(ユナイテッドアローズ)
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通販新聞

ヤフーとLINE、ZHDの合併で、eコマースは「ポイント・販促中心」から「成長と収益性のバランスを両立」にシフトへ

2 years 10ヶ月 ago

Zホールディングス(ZHD)は2023年2月2日開催の取締役会で、ZHD、完全子会社であるLINEとヤフーを中心とした3社の合併方針を決議した。

2023年度中をめどに、ZHD、LINE、ヤフーを合併。グループ経営の意思決定のさらなる迅速化を図り、重複機能やサービスの統廃合と併せてコストをコントロールする。

Zホールディングス(ZHD)は2023年2月2日開催の取締役会で、ZHD、完全子会社であるLINEとヤフーを中心とした3社の合併方針を決議
合併の対象会社(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

経営目標も変更。「2020年代前半に国内物販EC取扱高No.1」と設定していたeコマース取扱高について、従来の「ポイント・販促中心」から、「グループアセットを最大限活用することに注力し、成長と収益性のバランスを両立」に変える。

理由はネット広告市場を取り巻く環境が2022年度後半に入り、急速に悪化しているため。業績を牽引してきた広告の収益が急激に減退。広告商品としての競争力の低下も一因となりつつあるとしている。

「2023年度に調整後EBITDA3900億円」としていた目標も、「2023年度の調整後EBITDA プラス10%程度の増益」をめざすとした。

Zホールディングス(ZHD)は2023年2月2日開催の取締役会で、ZHD、完全子会社であるLINEとヤフーを中心とした3社の合併方針を決議
経営目標の変更(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

 

石居 岳

国内EC市場活性化に向けた“4つのシナリオパターン”とは? 日本のBtoC-EC市場「2024年にはEC化率が10%に到達する」

2 years 10ヶ月 ago

オンラインマーケットプレイスの構築・運用支援サービスのMirakl(ミラクル)は、レポート「国内BtoC-EC市場の近未来予想と活性化への期待」を公開した。

レポートは経営者層、新規事業開発者、DX推進者、新規事業開発者、EC責任者向けの内容で、デジタルコマース総合研究所の協力の下、国内EC市場活性化に向けた4つのシナリオパターンなどを提示している。

“国内EC化率10%”の未来が間近に

Miraklが実施した記者発表会には、ゲストとしてデジタルコマース総合研究所代表取締役の本谷知彦氏が登壇。「国内BtoC-EC市場の近未来予想と活性化への期待」を踏まえながら、EC市場の概観、国内EC市場の見直し、国内EC市場活性化のシナリオパターンなどを解説した。

物販系のBtoC-EC市場について、本谷氏は「コロナによるEC市場規模の押し上げ効果は1兆3676億円」(※デジタルコマース総合研究所推計)と説明。「このままのペースだと2024年にはEC化率が10%に到達する」(本谷氏)と分析している。

国内EC化率は10%に向かって着々と成長し続けている(画像はMiraklが開催した記者発表会の配布資料から編集部が抜粋。以下同)
国内EC化率は10%に向かって着々と成長し続けている(画像はMiraklが開催した記者発表会の配布資料から編集部が抜粋。以下同)

また、EC化率はカテゴリーごとに偏りが大きいことを指摘。事前探索で製品の特性が理解できる家電などの「探索材」はネットとの親和性が高く、EC化率が高いようだ。

生活家電やAV機器といった「探索材」のEC化率は突出して高い
生活家電やAV機器といった「探索材」のEC化率は突出して高い

プラットフォーマーへの依存度は依然高く

国内EC市場の特性については、主要ECプラットフォームが市場規模全体に占める比率は7割に達すると説明。EC売上高の上位500社であっても、プラットフォーマーへの依存度が高いことを指摘した。

カテゴリーの種別は三大プラットフォームが関わるものが多い
カテゴリーの種別は三大プラットフォームが関わるものが多い
EC事業者の多くは三大プラットフォームに依存する傾向が大きい
EC事業者の多くは三大プラットフォームに依存する傾向が大きい

やがてくるピークアウトをいかに乗り切るか?

本谷氏は、ECはコンビニより参入障壁が低いことから「コンビニ市場よりも早くピークを迎える」と想定。EC市場は成熟期へと変化しているとし、「市場に大きな変革が生じなければ2030年前後に20兆円で第1次ピークアウトが到来する」と予想している。

それを踏まえ、「これまでの延長線上ではない新たなステージへ切り替えるために、より大胆な施策が重要な時代になった」(本谷氏)と提唱している。

これまで右肩上がりに推移してきた国内EC市場。本谷氏は2030年ごろにはピークアウトが懸念されると予想
これまで右肩上がりに推移してきた国内EC市場。本谷氏は2030年ごろにはピークアウトが懸念されると予想

市場活性化に向けた4つのシナリオとは?

本谷氏が予想する国内EC市場活性化のシナリオパターンは次の4つ。

  • シナリオ1:既存大手ECプラットフォームのさらなる流通総額拡大による市場規模拡大
  • シナリオ2:新たな大型プラットフォームの出現による市場規模拡大
  • シナリオ3:DtoC-ECの隆盛による市場規模拡大
  • シナリオ4:ミディアムサイズプラットフォームの台頭による市場規模拡大

シナリオ1は大手プラットフォームの存在感が今後も継続するイメージ。「楽天市場」、Amazon、「Yahoo!ショッピング」などの既存大手プラットフォームの流通総額がさらに拡大し、EC市場全体が活性化する想定だ。

大手プラットフォームの存在感が続くシナリオは現実味が強いように思われる
大手プラットフォームの存在感が続くシナリオは現実味が強いように思われる

シナリオ2は、大手プラットフォームを超えるような新たな大手プラットフォームが出現し、大型ECプラットフォーム同士の競争が激化するイメージ。既存のECプラットフォームが大型化し、新たな巨大勢力として台頭する場合もこのシナリオに含まれる。

既存の大型プラットフォームを上回るプラットフォームの台頭をイメージしている
既存の大型プラットフォームを上回るプラットフォームの台頭をイメージしている

シナリオ3は、大手を含むECプラットフォームへの出店・出品から、DtoCによる独自路線へ切り替えるメーカーが続出するイメージ。このシナリオの背景には、スマートフォンやSNSの普及によって、メーカー自身が消費者と直接的につながることができるようになってきたことがある。

DtoC-ECの傾向はコロナ禍で加速しており、さらなる市場規模の拡大が期待される
DtoC-ECの傾向はコロナ禍で加速しており、さらなる市場規模の拡大が期待される

シナリオ4は、従来にない商材を新たに加えることで、プラットフォーム化を推進し、販売力を向上するイメージ。“目利き”の力が重要になることや、全体的なブランディングをどのように構築するかが課題要素としてあげられる。

シナリオ4ではマーチャンダイジング(MD)の目利き力が試される
シナリオ4ではマーチャンダイジング(MD)の目利き力が試される

本谷氏は、シナリオ1とシナリオ4について実現性が高いと指摘。特に、「ミディアムサイズプラットフォームの台頭は商材の提供側、販売側双方にとってメリットがあると想定され、仕組みやソリューションが整備されれば現実的な選択肢になり得る可能性が高い」(本谷氏)と話している。

高野 真維

転売屋などの不正利用から自社を守る方法とは? D2C(ネット通販)事業者が取るべき対策を解説

2 years 10ヶ月 ago
年々巧妙化する不正利用の影響と取るべき対策を、売れるネット広告社の加藤公一レオ氏が解説!

近年、転売目的の購入といった「不正注文」が大きな問題となっているD2C(ネット通販)業界。“転売屋”や“初回ピッカー”の手口も年々組織化・巧妙化してきており、不正注文による被害がD2C(ネット通販)企業の利益を圧迫している。D2C(ネット通販)を手がける企業はどんな対策を採用すればいいのか? 不正注文の実態に触れながら、不正注文への対策を解説する。

D2C(ネット通販)をターゲットにした不正注文の実態

D2C(ネット通販)業界では、定期コース(サブスク)を主体としたビジネスモデルを設計している企業も多い。そのため、初回申し込みのハードルを下げ、まずは1度試してもらうために、新規顧客に「初回特別価格」をオファーするのが慣例になっている。「初回70%OFF、2回目以降10%OFF」のように、初回価格と2回目以降の価格に大きく差をつけているのが特徴だ。

D2C ネット通販 不正利用対策 初回申し込みと2回目以降の価格差を付ける

一時期は、規定の回数に満たないタイミングで解約するとペナルティを科す、いわゆる“定期縛り”を設けるD2C(ネット通販)企業が多かったが、詐欺的な定期購入商法の社会問題化による法整備などで、“定期縛り”を設ける企業は少なくなってきている。

つまり、最近のD2C(ネット通販)商材の多くは、初回と2回目以降の価格差が大きく、かつ初回で解約してもペナルティがない。そのため、この価格差を利用して利益を得ようとする不正注文のターゲットになってしまうのだ。

初回価格が極端に安い商材の場合、販売手数料などを差し引いても利益が出るため、フリマアプリなどへの出品を前提に商品を購入する“転売屋”に狙われる。さらに「初回特別価格」目当てで商品を購入し、すぐに解約する“初回ピッカー”にも狙われてしまう。

“初回ピッカー”は転売屋ほど悪質ではないと思われがちだが、個人情報の一部を変えるなどして何度も「初回特別価格」で申込もうとする手口も存在し、詐欺に近いものもある。

こうした“転売屋”や悪質な“初回ピッカー”による不正注文は、D2C(ネット通販)企業の悩みの種になっており、不正注文による利益圧迫やブランド価値の棄損は、D2C(ネット通販)業界にとって、決して無視できないものになっている。

これが“転売屋”の手口だ!

D2C(ネット通販)商材の転売が問題になり始めた頃は、個人があちこちのD2C(ネット通販)商材を購入し、「初回特別価格」と2回目以降の価格差を利用して小遣い稼ぎをするというレベルだった。しかし最近では転売の手口も組織化・巧妙化し、D2C(ネット通販)企業が被る被害も拡大している。

こうした転売の実態を明らかにするため、売れるネット広告社は、実際に使われている「転売マニュアル」を極秘ルートで入手した。

この“転売屋”は、大勢のアルバイトを使って組織的に商品購入と転売を行っている。「転売マニュアル」には、ターゲットとなる商品名や購入URLはもちろん、フリマアプリでの販売価格、仕入額、利益率、解約のタイミングまで記載されている。これを見れば、転売が個人の小遣い稼ぎというレベルではないことがわかるだろう。

D2C ネット通販 不正利用対策 転売屋のリスト

このような“転売屋”の場合、手元に在庫がない状態でフリマアプリに出品し、フリマアプリで商品が購入されると購入者の個人情報を使って、D2C(ネット通販)企業のサイトで商品申し込みを行い、直接購入者の元に届くようにしていることもある。そして、“転売屋”はフリマアプリの購入者に商品が届いたことが確認できた時点で定期購入(サブスク)を解約する。

こうした転売をはじめとする不正注文を放置すると、D2C(ネット通販)企業の利益が圧迫されるだけでなく、フリマアプリに安く大量に出品されてしまうことによって、ブランドイメージの低下にもつながってしまう。当然、これまで自社サイトで購入していた顧客が、より安く買えるフリマアプリに流れてしまうというケースもあるだろう。

規模の大小を問わず、不正注文対策はあらゆるD2C(ネット通販)企業にとって、喫緊の課題になっているのである。

どのような不正注文の対策があるか?

不正注文に頭を悩ませ「なんとか撲滅したい」と考えているD2C(ネット通販)関係者は多いはずだ。そこで、具体的な不正注文対策を紹介していく。

対策①:半永久的に〇%OFF

最も効果的な不正注文対策の1つが、「半永久的に〇%OFF」だ。つまり、「初回も2回目以降もずっと、半永久的に20%OFF」のように、定期コース(サブスク)の割引率を固定してしまうことである。

D2C(ネット通販)の定期商品が“転売屋”や“初回ピッカー”に狙われるのは、「初回特別価格」と2回目以降の価格差が大きいからだ。そこで、この価格差をなくして、初回も2回目以降もずっと同じ価格にすれば、“転売屋”や“初回ピッカー”にとってうまみがなくなるので、不正注文が激減するだろう。

初回と2回目以降の価格差をなくすと、結果的に初回申し込みのハードルが上がるため、コンバージョン率が下がる。しかし、不正注文が排除できる上、本気度の高い人しか申込まなくなるため、LTVが最大1.54倍アップしたケースもある。

対策②:ツーステップマーケティング

不正注文の被害が多いのは、新規獲得用のランディングページでいきなり本商品の定期コース(サブスク)をオファーする「ワンステップマーケティング」を採用しているD2C(ネット通販)企業である。

誰もが目にするランディングページでいきなり「初回70%OFF!」など、破格のオファーを見せているため、不正注文のターゲットになりやすい。

D2C ネット通販 不正利用対策 ワンステップマーケティングとツーステップマーケティングの違い

一方、まずは「500円モニター」のような低価格/無料のモニター商品をフックに見込み客を集め、その後本商品の定期コース(サブスク)にアップセルさせる/引上げる「ツーステップマーケティング」は不正注文のターゲットになりにくい

なぜなら、「初回特別価格」を設定している場合でも、誰もが目にするランディングページにはその情報を記載していないからである。ランディングページに記載されているのは、あくまでも本商品の定期コース(サブスク)に誘導する前段階となる、モニター商品の価格だけだ。

D2C ネット通販 不正利用対策 低価格・無料のモニター商品施策

「ツーステップマーケティング」で「初回特別価格」を記載するのは、アップセルを狙う「申込確認画面」や、モニター申し込み者が後日目にする「引き上げメール」「引き上げ専用ランディングページ」などである。

D2C ネット通販 不正利用対策 初回特別価格の記載ページ

モニター商品を申込むつもりで申し込みフォームに入力した人にしか「初回特別価格」を見せないことから、“転売屋”や“初回ピッカー”の目にふれにくいため、転売被害に遭いにくくなるのだ。

対策③:申し込みフォーム手前にチェックボックスを追加

申し込みフォームの手前に、回答必須のチェックボックスを追加することも不正注文の削減に効果がある。

具体的には、モニター商品の申込フォームの手前に、以下のようなチェックボックスを設け、これらにチェックを入れないと商品申し込みができないようにするのである。

D2C ネット通販 不正利用対策 申し込みフォーム手前にチェックボックスを追加

□ 本気でシミをケアして“潤う美白”肌を手に入れたい方
□ もし半永久的に20%OFFであれば、美白美容液の本商品(税込4000円)を定期便で申込んでもいいという方
□ 定期便で、最低でも1年以上は続けたいと思っている方

こうしたチェックボックスを設けることで、申し込み意向の高いユーザーが集まるようになる。モニター商品から本商品の定期コース(サブスク)へのアップセル率が最大2.02倍アップした事例もある。

対策④:申込確認画面に転売対策の文言

商品申し込みが完了する一歩手前の「申込確認画面」に、転売やポイント目的の購入を禁止する文言を追加するのも効果的だ。

D2C ネット通販 不正利用対策 申し込み確認画面に転載対策の文言を掲載

具体的には次のような文言を記載する。

  • 副業としての申し込みが発覚した場合、警察に届出します
  • 転売目的での申し込みが発覚した場合、警察に届出します
  • ポイント目的で申し込みして即解約した場合、ポイントを無効とします

こうした文言を追加することで、不正注文の抑止力となり、アップセル率が最大1.46倍上がったケースもある。

対策⑤:検知ツールの導入

不正注文を排除するには、「O-PLUX(オープラックス)」「Spider AF(スパイダーエーエフ)」などの不正検知ツールの導入も効果的だ。

不正検知ツールにもそれぞれ強みがあるが、「初回特別価格」を悪用した転売目的の不正注文対策に特に効果的だといわれているのが、Spider Labs(スパイダーラボズ)の「Spider AF」という不正検知ツールだ。

2022年10月に「不正コンバージョンブロッカー」をリリースしており、リダイレクタや不正判定APを活用することで、不正なユーザーや申し込みなどをリアルタイムに検知、ブロックすることができるようになっている。

D2C ネット通販 不正利用対策 不正検知ツール Spider AF
画像は「Spider AF」のサイトから編集部がキャプチャ
◇◇◇

D2C(ネット通販)企業を悩ませる不正注文は、年々手口が組織化・巧妙化してきている。また、それに対抗する策もオファー設計の変更からシステム的な対応まで多数存在する。

不正注文の撲滅には、今回紹介した5つのうち2つ以上の対策を併用すると効果的だ。現時点ではそれほど大きな被害が出ていない企業でも、1度目を付けられるとあっという間に被害が拡大することもある。

不正注文対策が十分でないD2C(ネット通販)企業は、“転売屋”と“初回ピッカー”から大切なブランドを守るためにも、早急に不正注文対策に取り組んでほしい。

加藤 公一 レオ

アマゾン日本事業の売上高は約3.2兆円、ドルベースは243億ドル(前期比5.7%増)【Amazonの2022年実績まとめ】 | 大手ECモールの業績&取り組み&戦略まとめ

2 years 10ヶ月 ago
アマゾン日本事業の2022年(2022年1~12月)売上高は円ベースで3兆1958億7600万円。ドルベースでは243億9600万ドルで前期比5.7%増

アマゾン日本事業の2022年(2022年1~12月)売上高は円ベースで3兆1958億7600万円だった(2022年の平均為替レートを1ドル=131円で換算)。米Amazonが公表した「年次報告書」などから、2022年のAmazon日本事業、米Amazonの状況をまとめた。

アマゾン日本事業について

日本事業のドルベースでの売上高は243億9600万ドルで前期比5.7%増(2021年の日本事業売上高は230億7100万ドルで前期比12.8%増)。2016年から続いていた2ケタ増収から、2022年は1ケタ増収に鈍化した。全売上高に占める日本事業の割合は4.7%。

アマゾン日本事業の売上高推移
アマゾン日本事業の売上高推移(ドルベース)

日本銀行が参考計数として公表している「東京外為市場における取引状況(2022年中)の2022年平均レート「1ドル=131.57」を参考に、1ドル=131円で換算した場合、日本円ベースによる日本事業の売上高は3兆1958億7600万円となる。

2022年は円安・ドル高が急伸したため、日本円ベースの売上高は大幅に増えた。なお、1ドル=110円で換算した2021年の日本円ベースによる日本事業の売上高は2兆5378億1000万円。

アマゾン日本事業の日本円ベースの売上高推移(年間平均為替レートで円換算)。平均為替レートは、2010年が87円、2011年は79円、2012年は79円、2013年は97円、2014年は105円、2015年は120円、2016年は108円、2017年は112円で換算、2018年は111円で換算、2019年は109円で換算、2020年は107円で換算、2021年は110円、2022年は131円で換算)
アマゾン日本事業の日本円ベースの売上高推移(年間平均為替レートで円換算)。平均為替レートは、2010年が87円、2011年は79円、2012年は79円、2013年は97円、2014年は105円、2015年は120円、2016年は108円、2017年は112円で換算、2018年は111円で換算、2019年は109円で換算、2020年は107円で換算、2021年は110円、2022年は131円で換算)

アマゾン日本事業の売上高は直販ビジネスのほか、第三者による販売(マーチャント売り上げ)の手数料収入、定期購入サービス、AWS(Amazon Web Service)などが含まれる。

米Amazon、アマゾンジャパンともに流通総額は公表していないが、「Amazon」グローバル流通総額に占める販売事業者経由の割合は6割程度に達しており、日本も同様の流れにあると見られる。

全体の流通総額のうち第三者による販売は6割程度、手数料収入は平均して第三者販売額の約10%という推定を前提に、円ベースの売上高から「Amazon.co.jp」の流通総額を算出すると6兆円程度に達していると推測される。

グローバルの販売状況

2022年(2022年1-12月)決算によると、売上高は前期比9.4%増の5139億8300万ドルだった。なお、為替レートの前年比変動のマイナス影響を除いた場合の伸び率は13%増という。

売上高の内訳は次の通り。

  • 仕入れ商品などによる製品売上(直販売上、デジタルメディアコンテンツなど含む)
    → 2200億400万ドル(前期比前0.1%減)
  • 第三者販売サービス売上など(第三者が販売するサービスに関する手数料売上など)
    → 1177億1600万ドル(同13.9%増)
  • 定期購入売上(サブスクリプションサービス売上)など(「Amazon プライム」の会員費など)
    → 352億1800万ドル(同10.9%増)
  • AWS(Amazon Web Service)
    → 6800億9600万ドル(同28.8%増)
  • 実店舗売上(主にホールフーズの売り上げ)
    → 189億6300万ドル(同11.1%増)
  • 広告サービス
    → 377億3900万ドル(同21.1%増)
  • その他(クレジットカード契約などの売上高)
    → 42億4700万ドル
Amazonの売上高の内訳(2022年)仕入れ商品などによる製品売上(直販売上、デジタルメディアコンテンツなど含む) → 2200億400万ドル(前期比前0.1%減) 第三者販売サービス売上など(第三者が販売するサービスに関する手数料売上など) → 1177億1600万ドル(同13.9%増) 定期購入売上(サブスクリプションサービス売上)など(「Amazon プライム」の会員費など) → 352億1800万ドル(同10.9%増) AWS(Amazon Web Service) → 6800億9600万ドル(同28.8%増) 実店舗売上(主にホールフーズの売り上げ) → 189億6300万ドル(同11.1%増) 広告サービス → 377億3900万ドル(同21.1%増) その他(クレジットカード契約などの売上高) → 42億4700万ドル
Amazonの売上高の内訳(2022年)。カッコ内の数値は全体売上高に占める割合

地域別の売上高は次の通り。Amazon全体の売上高に対して日本事業が占める割合は4.7%。2021年比で0.2ポイント減った。

  • アメリカ → 3561億1300万ドル(前期比13.4%増)
  • ドイツ → 335億9800万ドル(同10.0%減)
  • イギリス → 300億7400万ドル(同7.7%増)
  • 日本 → 243億9600万ドル(同5.7%増)
  • その他 → 698億200万ドル(同9.9%増)
Amazonの地域別売上高 アメリカ → 3561億1300万ドル(前期比13.4%増) ドイツ → 335億9800万ドル(同10.0%減) イギリス → 300億7400万ドル(同7.7%増) 日本 → 243億9600万ドル(同5.7%増) その他 → 698億200万ドル(同9.9%増)
Amazonの地域別売上高(2022年)。カッコ内の数値は全体売上高に占める割合
瀧川 正実

成長しているサイトは何をしているのか? BEAMS(ビームス)、ヤッホーブルーイングが選んだツールと戦略のポイント

2 years 10ヶ月 ago
EC構築プラットフォーム、パーソナライゼーション、メディアコマース、SNS活用、オムニチャネル、顧客分析・CRMなど多彩なソリューションを提供するecbeingが、導入事例を紹介
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ECサイト構築パッケージ「ecbeing」の提供を1999年に開始したecbeing。現在では1500以上のサイトに導入され、年間流通総額は6000億円を突破するまでに成長している。ecbeingで代表取締役社長を務める林雅也氏によると、これからのECビジネスに必要なのは、①ブランドプロミス ②顧客の価値体験 ③顧客タッチポイント ④データ/システム――という。

ecbeingでは「ecbeing」を中心に、それぞれの分野をサポートするソリューションを提供することで、導入先のビジネスの成長をサポートしている。代表的な2つの事例と、その成長を支えるソリューションについて解説した。

ecbeing 代表取締役社長 林雅也氏
ecbeing 代表取締役社長 林雅也氏

認知からファン化までをトータルにサポート

集客・認知についてはSNSなどと連携する「visumo」、自社をメディア化していくところはCMSルーツ「Site MiraiZ」、購入の段階では「ecbeing」、さらに購入者が他のユーザーに推奨するためのレビューについては「Revico」というように、ecbeingでは認知からファン化までの一連の流れを、同社およびグループ会社が提供する各サービスでカバーしている。

顧客の体験とecbeingのソリューション
顧客の体験とecbeingのソリューション

中心となるのがカスタマイズ可能なECサイト構築パッケージ「ecbeing」。ここを起点にそれぞれの顧客に合わせて作り込んでいく。

ecbeingのソリューションマップ
ecbeingのソリューションマップ

カスタマイズできるプラットフォームとSaaSのサービスをハイブリッドで提供しているのが我々の特色。(林氏)

速いスピードで進化するデジタルマーケティングに対応するため、オプションのサービスをSaaS(Software as a Service)で提供している。

たとえば、マーケティングの戦略を立案するためのプラットフォーム「SechstantCDP」や、MAを担う「SechstantCRM」のほか、検索、アプリ、SNSとの連携、レビューなど、多数のマイクロサービスを用意している。SaaSの特徴として自動的にバージョンアップされるため、ユーザーは常に最新のテクノロジーを利用できる

ecbeingの導入事例 ①BEAMS

ここからは数多くのecbeingの導入先のなかから、代表的なECサイトの取り組みと、それを支えるecbeingのソリューションについて紹介する。

セレクトショップを全国で展開するBEAMSでは、単に商品を買えるだけではなく、魅力的なオウンドメディアとしてECサイトを機能させている。具体的には季節を意識した特集や先行予約、ニュースやスタイリング、ビデオ、ブログ、フォトログといったさまざまなコンテンツが、すべて高いクオリティで提供されている。

BEAMSでは顧客に寄り添う機能の充実も図っている。たとえば検索機能では、色やサイズといった通常の検索項目だけでなく、素材や形状などディテールに関しても検索項目に盛り込んでいる。これは商品マスターのメンテナンスの質が高くないと実現が難しい施策だ。

BEAMSのECサイトにおける「顧客に寄り添う機能」
BEAMSのECサイトにおける「顧客に寄り添う機能」

商品詳細ページでは商品の機能や仕様の説明が充実しており、さまざまなアングルからのスタイリング提案、試着への導線まで用意されている。会員の好みに合わせたタイムライン表示など、パーソナライゼーションも実現できている。

BEAMSではライブ配信も行っており、ecbeingがログイン連携や視聴中のカートインなど、ライブ配信中に使う細かい機能の実装を担当した。ライブ配信には高い技術が必要だが、BEAMSでは2016年からスタッフがECサイトの構築や運営に参画し、コンテンツを提供し続けているため、スタッフのレベルが上っているという。

BEAMSのライブ配信
BEAMSのライブ配信

また、BEAMSが台湾で公式サイトをオープンした際も、ecbeingがサポートを行った。「言語対応も必要だが、台湾で特徴的なのはレシートにクジを実装しなければいけない点」と林氏。国境を越えたオムニチャネル展開は今後のトレンドとなっていくだろう。

ecbeingの導入事例 ②ヤッホーブルーイング

ヤッホーブルーイングのマーケティングの目標は「ファンとの絆を強くしていく」ことだ。ファンを増やすために重要なのは「学び」「交流」「共創」のサイクルを回すことだと林氏は言う。サイトにはクラフトビールの紹介だけではなく、おいしいクラフトビールの飲み方、おいしい食べ物との組み合わせなどさまざまな読み物が用意されている。

コンテンツはecbeingが提供するCMS「SiteMiraiZ」を使って、ヤッホーブルーイングのスタッフが直接更新している。データ連動により商品の価格などが自動で表示されるため、ミスも少ないという。

ヤッホーブルーイングにおける「SiteMiraiZ」の活用
ヤッホーブルーイングの通販サイト「よなよなの里」における「SiteMiraiZ」の活用

ファンを大切にするヤッホーブルーイングが作ったのは定期購入に特化したECサイト。限定ビールの先行販売や醸造所見学イベントの先行予約、ヤッホーが展開するビアレストランの優待や会報誌などを会員限定で提供している。

届く製品についてもユーザーが選べる。定期購入のユーザーしか買えない限定製品を販売するなど、ロイヤルカスタマーに特化したサイトとなっている。

定期会員限定のLINEチャネルを開設し、ステータスに応じたLINEのプッシュ配信や情報配信も行なっている。

ヤッホーブルーイングにおけるLINEアカウント連携
ヤッホーブルーイングにおけるLINEアカウント連携
◇◇◇

ここで紹介した事例以外にも、ecbeingではさまざまなサイトの構築を行っている。これは開発体制500人以上、マーケティング支援体制200人以上といった体制の成果だという。

常にエンジニアが不足していると言われているEC業界において、「エンジニアを増やしていくということも、会社のミッションとして重要だと思っている」と林氏は語る。2022年も50人を越える開発者を採用しているという。

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田口和裕

メタバースECなどバーチャルショップ認知度は3割。認知しているユーザーの約半数は利用経験

2 years 10ヶ月 ago

NTTデータ経営研究所は、20~40代の国内の生活者を対象に「バーチャルショップに関する意識調査」を実施し、その結果を発表した。バーチャルショップは、3Dスキャン・モデリングやVR・ARなどを活用したWeb上の仮想店舗で、アバターを用いて店舗回遊や商品購入をするサービスの総称、と今調査では定義している。

バーチャルショップの認知度・利用率

「知っている」と回答したのは27.4%、「知らない」は72.6%。

NTTデータ経営研究所「バーチャルショップに関する意識調査」 バーチャルショップの認知有無
バーチャルショップの認知有無

ただ、バーチャルショップを認知しているユーザーの44.2%がバーチャルショップを「利用したことがある」と回答している。内訳は「利用し、商品を購入した」が28.4%、「商品の購入をしたことはないが、サービスを利用したことがある」が15.8%。

NTTデータ経営研究所「バーチャルショップに関する意識調査」 バーチャルショップの利用状況
バーチャルショップの利用状況

SNSやメディアなどで情報収集、情報発信行っている頻度別にバーチャルショップの認知度を聞いたところ果、情報収集・情報発信とも「1日に1回以上行っている人」の認知度は64.4%。情報収集・情報発信の「どちらか一方が1日に1回未満の層」の認知度は30.7%。情報収集・情報発信の「どちらも1日に1回未満の層」の認知度は6.7%だった。

NTTデータ経営研究所「バーチャルショップに関する意識調査」情報収集・発信頻度別バーチャルショップの認知有無
情報収集・発信頻度別バーチャルショップの認知有無

バーチャルショップの男女別認知度を見ると、男性は20代43.2%、30代29.9%、40代35.2%。ただ、女性は30~40代で2割程度(30代23.8%、40代23.6%)にとどまっているほか、20代女性は16.7%と全年代で最も低い。

認知層に実施した利用状況調査では、20代女性は購入まで至っている割合が52.9%で、他の性別、世代と比較しても確率が高い。男性は、20代が50%、30代が57.5%、40代が48.2%と、どの世代も約半数まで利用している。

NTTデータ経営研究所「バーチャルショップに関する意識調査」性別・年代別バーチャルショップの認知有無
性別・年代別バーチャルショップの認知有無
NTTデータ経営研究所「バーチャルショップに関する意識調査」性別・年代別バーチャルショップの認知有無
性別・年代別バーチャルショップの利用状況

バーチャルショップ利用者の利用頻度は、モール型(仮想空間内に出店された複数の店舗)が69.0%、他メタバースサービス出店型(メタバースサービスに出店した店舗)が77.4%で、約7割のユーザーが月に1回以上利用している。

NTTデータ経営研究所「バーチャルショップに関する意識調査」サービス分類別バーチャルショップの利用頻度
サービス分類別バーチャルショップの利用頻度

バーチャルショップで購入・購入を検討した商品

「食品・飲料・生活用品」「衣類・ファッション・装飾品」の購入が多い。

バーチャルショップの分類別で見ると、イベント型バーチャルショップ(仮想空間内で開催されているバーチャルイベント)では「家具・インテリア・家電」が33.3%。他メタバースサービス出店型バーチャルショップでは、「衣類・ファッション・装飾品」の他に「ビューティ・コスメ・ヘルスケア」「スポーツ・楽器等の趣味雑貨」の割合が高い。

NTTデータ経営研究所「バーチャルショップに関する意識調査」サービス分類別バーチャルショップで購入・購入検討した商品
サービス分類別バーチャルショップで購入・購入検討した商品

バーチャルショップの利用意向とその理由

どのサービスも利用未経験者の7割以上(モール型74.3%、イベント型72.6%、他メタバースサービス出店型74.5%)が、「利用してみたいとは思わない」という結果に。

理由は「通常のECサービスで十分」「サービスの使い方や利用しているイメージが沸かない」などがトップとなっている。

NTTデータ経営研究所「バーチャルショップに関する意識調査」バーチャルショップの利用意向(利用未経験者)
バーチャルショップの利用意向(利用未経験者)
NTTデータ経営研究所「バーチャルショップに関する意識調査」サービス分類別バーチャルショップを利用したいと思わない理由(利用未経験者)
サービス分類別バーチャルショップを利用したいと思わない理由(利用未経験者)

一方、利用経験者においては、モール型が94.4%、イベント型が95.1%、他メタバースサービス出店型が90.3%。9割以上が「引き続きサービスを利用したい」と回答している。その理由は「VR、ARなどによって商品のイメージが沸きやすい」が上位にあがっている。

また、「多数の商品が陳列されており、ショールーミングを楽しめる」こともメリットのようだ。一方、「商品・サービスが気に入ったため」と回答したユーザーは2割弱にとどまっており、ユーザーは商品・サービスよりもバーチャルショップを利用する体験を求めているようだ。

NTTデータ経営研究所「バーチャルショップに関する意識調査」バーチャルショップの利用意向(利用経験者)
バーチャルショップの利用意向(利用経験者)
NTTデータ経営研究所「バーチャルショップに関する意識調査」サービス分類別バーチャルショップを利用したいと考える理由(利用経験者)
サービス分類別バーチャルショップを利用したいと考える理由(利用経験者)

バーチャルショップの改善点としては、「オンライン接客品質の改善」と回答したユーザーが最多。いかにメタバースへの没世界観を高められるような感情的価値の訴求や、ライフスタイルの提案等を行うことができるかが重要だと考えられる。

NTTデータ経営研究所「バーチャルショップに関する意識調査」サービス分類別バーチャルショップの改善点
サービス分類別バーチャルショップの改善点
石居 岳

ANA Xが公式ECモール「ANA Mall」にEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」を導入

2 years 10ヶ月 ago

ANA Xは、公式ECモール「ANA Mall」のグランドオープンに合わせて、EC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」を導入した。

「もしかして機能」などを導入

「ANA Mall」はANAグループが運営するECモール。直営店に加え国内有数のショップも数多く出店するほか、食品・家電・家具などさまざまな商品を展開している。

「ZETA SEARCH」の「もしかして機能」により、検索時の入力ミスの訂正や近しいキーワード候補の表示、該当商品が見つからない際のサイト離脱防止につなげる。

ANA X ANAグループ ANA Mall ZETA SEARCH もしかして機能
「もしかして機能」でサイト離脱を防止

また、絞り込み件数が表示されていることにより、少ないアクションで目的の商品にたどりつくことができ、UX向上をサポートしている。

ANA X ANAグループ ANA Mall ZETA SEARCH ファセットカウント
「ファセットカウント」により、ユーザーのアクションを軽減する

「ZETA SEARCH」とは

ECサイト内の検索における「絞り込み」「並び替え」の設定の自由度・柔軟性を追求したEC商品検索・サイト内検索エンジン。

キーワード入力時のサジェスト機能や、もしかして検索、ドリルダウン式の絞り込み、事前に検索結果の該当数を表示するファセットカウントなど、多数の検索機能を有している。

JRE MALL ZETA SEARCH サイト内検索 EC商品検索
「ZETA SEARCH」の基本機能(画像は「ZETA CX」サイトからキャプチャ)
藤田遥

「2020年代前半 国内物販EC取扱高No.1」は修正。「Yahoo!ショッピング」はどうなる?【ネッ担まとめ】 | ネットショップ担当者が 知っておくべきニュースのまとめ

2 years 10ヶ月 ago
ネットショップ担当者が読んでおくべき2023年1月30日~2月5日のニュース

ZHDとヤフーLINEの合併が発表されました。「2020年代前半 国内物販EC取扱高No.1」は修正ということで、仕切り直しとなりそうです。ポテンシャルはあるだけに、全体をまとめられるかがポイントになってきそうです。

「Yahoo!ショッピング」で大きな動きがあるかもしれません

ZHDとヤフーLINEが合併へ ー 「2020年代前半 国内物販EC取扱高No.1」の目標は修正 | ST
https://shopping-tribe.com/news/shopping/57374/

Zホールディングスは、同社と完全子会社であるLINE、ヤフーの3社による合併方針を決定したことを発表した。

グループ経営の意思決定の更なる迅速化を図ることを目的に2023年度中を目処に合併を進める方針。また、2023年4月より代表取締役会長に川邊氏、代表取締役社長 CEOに出澤氏、代表取締役 GCPOに慎氏とする新体制へ移行する。

Zホールディングス、LINE、ヤフーの大型合併が進んでいるようです。色々な分野に影響がありそうな合併ですが、EC事業での動きについて取り上げます。

私が社長に就任してから5年間。2020年代前半でのEコマースNo.1を標榜してきた。その上で、まず自社サービスであるYahoo!ショッピングやPayPayモールの品揃えを増やし、使い勝手を良くし、たくさんポイントを付与する施策を行なってきた。また、ZOZOの買収も行なった。これらの策は奏功して、取扱高では5年間で倍になっており、一つの成果だと認識している。(川邊氏)

確かにECの売り上げは伸びました。ZOZOの買収もインパクトが大きい出来事でした。最近では「Yahoo!ショッピング」と「PayPayモール」の統合もありますが、「Amazon」と「楽天市場」も伸びているので、なかなか追いつけない状況です。

これまで強めてきた部分は有効活用しながらも、グループ内アセットを活用した競合に負けないオリジナリティの高いEコマースを提供することで、収益のバランスも意識しながら、新たな我々ならではのEコマースでシェアを伸ばしていきたい。

グループ内のアセットの活用が肝だと思います。決済もモバイルもポイントも持っているのに、それらの連携がいまひとつ。ユーザーからするとバラバラに見えるので力が分散してしまっています。

ZHD、ヤフー・LINEと合併へ 社長に出沢剛氏・会長に川辺氏 | 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0254Q0S3A200C2000000/

ZHDとLINEの統合直後にはLINE側のずさんな個人情報の管理体制が明るみに出て、個人情報管理の改善策を優先。統合の肝となるはずだったヤフー・LINEによるID連携も23年以降にずれ込んでいる。

力が分散してしまったのはこれが原因でしょう。もう一度統合の効果を出すためにも会社をまとめてしまおうということなのかもしれません。いかに早く束ねることができるのかがポイントになってきそうですね。

今週の要チェック記事

【ECモール 2023年の展望】『アマゾン』露木一帆事業本部長「日本の中小企業を支える存在に」 | 日本ネット経済新聞
https://netkeizai.com/articles/detail/7970

【ECモール 2023年の展望】『楽天市場』常務執行役員 松村亮氏「品質向上、グループ連携さらに加速」 | 日本ネット経済新聞
https://netkeizai.com/articles/detail/7973

【ECモール 2023年の展望】『ヤフーショッピング』畑中基執行役員「モール統合を機にさらなる新規顧客獲得へ」 | 日本ネット経済新聞
https://netkeizai.com/articles/detail/7982

3大モールの2023年の展望です。大きな流れは知っておきましょう。

EC運営の円滑化、ブランド成長を手助け 創業10年のBASEが振り返る市場と売りかたの変化 | ECzine
https://eczine.jp/article/detail/12262

Unleash | Mercari’s 10th Anniversary | メルカリ
https://about.mercari.com/unleash/

あっという間にBASEさんとメルカリさんが10年。格安カートとCtoC市場を作ったのはすごい。

佐川急便、送料を値上げへ。「飛脚宅配便(飛脚クール便含む)」「飛脚特定信書便」「飛脚ラージサイズ宅配便」の運賃改定 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/10581

【独自調査】個人配送ドライバーの就労状況実態調査!2024年施行の法改正で業務委託ドライバーへの影響は | コマースピック
https://www.commercepick.com/archives/30329

配送関連の記事を2つ。送料の値上げは他社でも出てきそうですね。無料ラインの見直しにもつながってきそうです。

「3Dセキュア2.0」が抱える課題とは? 導入メリットを最大限生かすために押さえておきたいポイント | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/10538

こちらはセキュリティ。かご落ちが増える可能性がありますが、不正利用されるよりはいいですね。

カスタマーサポートへの問い合わせ、返信は「1時間以内を期待」が過半数【Tayori調べ】 | Web担当者Forum
https://webtan.impress.co.jp/n/2023/02/01/44210

問い合わせ率が3年間で半分になった | thirayu
https://thirayu.net/blog/toiawase-hanbun

素早いレスポンスのためにサービス改善。こういった活動がブランドイメージを良くしていきます。

ANAのマイルが貯まる・使える新たなECモール 「ANA Mall(エイエヌエーモール)」が開店! | コマースピック
https://www.commercepick.com/archives/30358

「貯まったマイルをどうしよう?」となったときに「ANAモール」となれば伸びそうです。

「四角くしただけ」ガムテープがバズった納得の訳 | 東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/646964

ちょっとした工夫で売れるという話。固定概念を打ち破ってみましょう。

今週の名言

前年比20%増の利益で黒字転換を達成したユナイテッドアローズ、好調の背景とは?【CDO 藤原義昭氏インタビュー】 | Agenda note
https://agenda-note.com/brands/detail/id=5385

普段から値下げをしないでお客様に来店してもらうためには、それだけ商品やサービスに付加価値を付けなければいけません

誰もがわかっていますがなかなかできないこと。安易な値下げは楽をしているだけです。商品やサービスの付加価値向上に真正面から取り組みましょう。

筆者出版情報

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この連載の筆者 森野誠之氏の著書が翔泳社から発売されました。小さな会社の“ひとり担当者”が、未経験、低予算、独学でホームページのリニューアルからウェブマーケティングまでを成功させるための指南書です。電子版、オンデマンド印刷版ともにAmazonで発売中です!

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ヤマト運輸「年度ごとに運賃を見直す」。「宅急便」「EAZY」「宅急便コンパクト」「国際宅急便宅急便」は10%値上げへ

2 years 10ヶ月 ago

ヤマト運輸は4月3日(月)から、宅急便、宅急便コンパクト、EAZY、国際宅急便の運賃を値上げする。サイズ、届け先などで値上げ率は異なるが、約10%という。

資源・エネルギー価格や原材料価格の上昇に伴うインフレ傾向、労働力減少による賃金や時給単価の上昇、2024年問題を控えた物流事業者を取り巻く外部環境などの変化・対応のため、値上げに踏み切る。

運賃料金を運輸局に提出する届出運賃などは今後、年度ごとに見直す。外部環境の変化による影響を適時適切に運賃などへ反映させるためという。

物流事業者は、これまでも生産性向上などさまざまな取り組みを進めてきたが、物流に必要なコストを、運賃やサービス料金に適切に反映できていないことに加え、コスト上昇を吸収することが極めて難しくなっている。(ヤマト運輸)

ヤマト運輸は4月3日(月)から、宅急便、宅急便コンパクト、EAZY、国際宅急便の運賃を値上げする
宅急便・宅急便コンパクトの運賃例(関東から関東で現金決済)

ヤマト運輸は4月3日(月)から、宅急便、宅急便コンパクト、EAZY、国際宅急便の運賃を値上げする
宅急便・宅急便コンパクトの運賃例(関東から関西で現金決済)

送料値上げを巡っては、SGホールディングスグループの佐川急便が「飛脚宅配便(飛脚クール便含む)」「飛脚特定信書便」「飛脚ラージサイズ宅配便」の運賃を4月1日に値上げすると発表している。

瀧川 正実

越境ECで1.75億円超えの日本企業は180店舗。ヤーマン、資生堂、任天堂が人気【2022年の中国「独身の日」まとめ】 | 上海で働く駐在員の中国EC市場リポート

2 years 10ヶ月 ago
2022年の「W11(独身の日)」について、天猫(Tmall)での結果をレポートします(vol.40)

2022年11月11日の中国「独身の日(W11)」について、「天猫(Tmall)」の推定取扱高、日本商品の売上ランキング、ライブコマースなどの最新情報をお伝えします(2022年との比較をわかりやすくするため、数字は1元=17.5円で換算。データはエフカフェが試算、監修、予測)。

2022年の取扱高は前年比103%の9.8兆円

2022年から、アリババの公式発表がなくなりました。そのため、数字はエフカフェが「W11」全体の取扱高、物流データなどから予測したものになります。

2022年の取扱高は9.8兆円で、成長率は103%でした。2021年の成長率は108%でしたから、ほぼ横ばいです(中国元での比較)。2020年までの成長率は125%以上だったので、ここ2年間は成長が鈍化しています。

中国 独身の日 W11 天猫 Tmall 越境EC Tmallにおける独身の日の取扱高の推移
天猫(Tmall)における「独身の日」取扱高の推移(2016年~2022年)※1元=17.5円で換算。監修・作成:エフカフェ
  • 2022年…9.8兆円(5604億元)
  • 2021年…9.45兆円(5403億元)
  • 2020年…7.72兆円(4982億元)
  • 2019年…4.16兆円(2684億元)
  • 2018年…3.62兆円(2135億元)
  • 2017年…2.85兆円(1682億元)
  • 2016年…2.05兆円(1207億元)

2020年、2021年と同様、2022年も11月11日だけの取扱高データは「Tmall」から公表されていませんが、エフカフェ調べでは3.7兆円となっています(2022年からイベント期間が変更され、11月10日20時~11月11日24時。2021年までの期間は、11月11日0時~11月11日24時)。

また、2021年と2022年はイベント日数が異なります。

2021年:2回のセール

  • 1回目:予約期間 10月20日~10月31日、セール期間 11月1日~11月3日
  • 2回目:予約期間 11月4日~11月10日、セール期間 11月11日

2022年:1回のセール

  • 1回目のみ:予約期間 10月24日~10月31日、セール期間 11月10日20時~11月11日24時

取扱高の伸び悩みは、コロナやライブコマースによる影響あり

2022年の「W11」の取扱高がなぜ伸び悩んだのか。筆者が思う理由は以下の3つです。

  1. コロナの影響で物流の配送停止地域が多発。注文を受けられない状況になった
  2. ゼロコロナ政策のなか、マンションごとの共同購入が定着。これまでにない新しい購入方法が増えたことで、取扱高が分散した
  3. KOL(キーオピニオンリーダー)のを中心に毎日行われているライブコマースの影響、新興SNS(快手、TikTok)の売り上げが爆増。それにより取扱高が分散した

2021年からの大きな違いとして、物流が停止している問題がここ数か月続いており、売上低下の大きな要因となっています。共同購入は、中国におけるネットでの購入方法の文化を大きく変えたといえます。おそらく、コロナが収束しても、マンション単位での共同購入は続いていくと予想しています。ライブコマースについてはのちほど触れますが、2021年から大きく成長し続けています。

中国 独身の日 W11 天猫 Tmall 越境EC 共同購入

前年比147%UP! 越境ECで1.75億円以上の店舗は180店舗

越境ECプラットフォーム「Tmall Global(天猫国際)」では、取扱高が前年比147%UPしました(エフカフェ調べ)。日本は国別ランキングで6年連続人気1位を獲得しています。

日本企業の商品売上ランキング1位はヤーマン

日本企業の「W11」商品売上ランキング商品ベスト3を見ていきましょう(あくまでWeb検索から判断したエフカフェの予想です。同じ会社の商品は避けています)。

第1位:ヤーマン「Bloom 5(ブルーム ファイブ)」

中国 独身の日 W11 天猫 Tmall 越境EC Tmall Global 天猫国際 日本企業売り上げ1位の商品 ヤーマン
ブランド名:ヤーマン
商品名:ヤーマン Bloom 5(ブルーム ファイブ)
売上:35.6億円

第2位:資生堂「バイタルパーフェクションセット」

中国 独身の日 W11 天猫 Tmall 越境EC Tmall Global 天猫国際 日本企業売り上げ2位の商品 資生堂
ブランド名:SHISEIDO
商品名:資生堂 バイタルパーフェクションセット
売上:17.6億円

第3位:任天堂「Nintendo Switch」

中国 独身の日 W11 天猫 Tmall 越境EC Tmall Global 天猫国際 日本企業売り上げ3位の商品 任天堂
ブランド名:任天堂
商品名:Nintendo Switch
売上:15.3億円

2022年度もユニクロは店舗としての売り上げは大きいですが、商品数が多く分散していたため、エフカフェ調査のベスト3にはランクインしていません。

ライブコマースの各プラットフォームが急成長! 売上ランキングは「TikToK」「diantao」「快手」

上の図は数年前から中国のネット通販に大きな影響を与えているインフルエンサーのライブコマースの表です。

2022度は活動休止から復活した李佳琦氏が5880億円(336.2億元)の売り上げを達成しました。視聴者数は4.56億人、1日で中国人口の約3分の1、日本人口の約4倍が視聴しています。

また、マーケットプレイスごとの売上ランキングでは1位「TikTok(douyin)」、2位「点淘(diantao)」、3位「快手(kuaishou)」でした(エフカフェ調べ)。

2022年は、これまで2強だった「Tmall」「JD」に続き、ライブコマースを中心とした新興SNSが大きく飛躍している一年となりました。

◇◇◇

コロナによる物流の停止や共同購入による新たな購入方法など、状況が変化し続けるなかで2023年1月8日には従来までの隔離がなくなり、物理的な人の移動もスタートしました。これにより、以前のインバウンド需要が間違いなく訪れるでしょう。

その結果、次の越境ECのブームがくると予測しています。2023年は、どのマーケットプレイスを選択し仕掛けていくのか、次の一手が今後に大きく影響する1年になりそうです。

高岡 正人

日本航空がECモール事業に進出。グループの「JALショッピング」は営業終了、通販モールへ完全移転

2 years 10ヶ月 ago

日本航空(JAL)はECモール事業に進出する。約3000万人のJALマイレージバンク(JMB)会員に向けて、物販を手がける出店企業の商品を購入できる“買い物の場”を提供。全店舗でマイルが貯まり、使えるようにする。

2023年初夏頃にECモールを立ち上げる。運営主体は日本航空と子会社で通販事業などを手がけるJALUXと見られる。JALオリジナル商品のほか、グルメ、ワイン、ファッション、生活雑貨、家具・家電など幅広い商品を取りそろえる。

ECモール開設のお知らせ(画像はJALUXのHPから編集部がキャプチャ)

ECモールの立ち上げに合わせて、JALグループの通販サイト「JALショッピング」は、2023年10月をめどに営業を終了。ECモールでの運営に完全移転する。

マイルから「JALショッピングポイント」へ交換できる「特典交換サービス」は5月15日で終了する。

なお、ECモールでは、「JALショッピングポイント」とは異なる新たなポイントプログラムの運用を予定。「JALショッピングポイント」はECモールでは利用できない。

競合の全日空は「ANA Mall」を展開

航空系企業のECモール進出を巡っては1月末、ANAグループがECモール「ANA Mall」を開設。アンファー、九南サービス、ストリーム、成城石井、髙島屋、ツインバード、DINOS CORPORATIN、ドウシシャ、日テレ7、ハースト婦人画報社、リンベル、全日空商事などが出店した。

ANAのマイルが貯まる・使えるECモールとして展開。約3800万人のANAマイレージクラブ会員向けに展開する。ECモールは、ANAグループのグループ会社のANA Xが運営を手がける。

瀧川 正実

食品メーカーの2023年値上げは前年比2倍ペース。月間2000品目超の値上げ、夏まで常態化の可能性

2 years 10ヶ月 ago

帝国データバンクは、上場する食品メーカー主要195社における価格改定動向について調査を行った。

2023年1月31日までに決定した2023年中の飲食料品値上げ品目数は1万2054品目。上場する主要105社で1万482品目、非上場の主要90社で判明した値上げは1572品だった。このうち4月1日までの累計で1万品目を突破する。

帝国データバンクは、上場する食品メーカー主要195社における価格改定動向について調査 値上げ
食品の値上げ動向

2022年の値上げは1万品目到達までに約7か月を要したが、2023年は実施ベースで3か月早く到達する予定。前年と同じ時期(2022年1-4月:5573品目、対象計195社)と比べても倍増ペースで推移する。今後、春から夏頃にかけて1か月当たり2000~3000品目前後の値上げが常態化する可能性がある。

2023年の値上げは加工食品(6657品目)が最多で、チルド麺や缶詰製品のほか、ウィンナー製品の大規模値上げが予定されている。嗜好性の強い菓子(944品目)も、3月には最も多かった2022年9月の水準を上回る規模となる見通し。

クッキーやチョコレートなどが中心で、本体価格の引き上げのほかに内容量の減少による価格維持、つまり「実質値上げ」の傾向が目立つ。ドレッシングや醤油、ポン酢製品を中心とした調味料(2236品目)、焼酎や輸入ワイン・ウイスキーなど酒類を中心とした酒類・飲料(1810品目)が続いている。

品目数別にみると、加工食品が6657件、調味料が2236件、酒類・飲料が1810件、菓子が944件、原材料・パンほか407件となっている。

帝国データバンクは、上場する食品メーカー主要195社における価格改定動向について調査 値上げ 主な食品分野の価格改定動向
主な食品分野の価格改定動向

2023年の値上げ要因は、原材料高が99.5%で最多だった。それに続くのが原油高などのエネルギーが88.0%、プラスチック容器などの包装・資材が71.0%、物流が56.0%。

帝国データバンクは、上場する食品メーカー主要195社における価格改定動向について調査 値上げの原因
値上げの原因

2023年2月の値上げは加工食品を中心に5463品目で、前年同月(1420品目)に比べて3倍規模に達した。2022年以降の単月では最多の2022年10月(7864品目)に次ぐ2番目の多さで、2023年中では最多となる。

今後は、4月に控える輸入小麦の価格改定動向が注目される。小麦の国際相場はピークから下落しているが2021年に比べると高止まりの状態が続いている。改定幅次第では値上げの動きが比較的沈静化しているパンなどの製品価格に波及する可能性がある。

石居 岳

【ステマ規制】消費者庁が公表した運用基準案とは?判断基準は第三者の「自主的な意思」の有無 | 通販新聞ダイジェスト

2 years 10ヶ月 ago
消費者庁は今年1月、ステルスマーケティング規制に対する事業者の予見性確保のため、運用基準案を公表。運用基準は、ステマを「事業者による表示内容への関与」で整理する

年内にもステルスマーケティング規制が始まる。だが、規制をめぐり、事業者の不満が蓄積している。規制は、多様な類型に広く網をかける「包括的規制」。そのために、事業者の予見性確保を目的に示すガイドラインの「問題事例」も抽象的であるためだ。市場にあたえる影響は大きく、本来、慎重な検討が求められるが、導入は行政主導で性急に進む。

「規制ありき」で進む検討

ステマ規制は昨年4月、自民党・消費者問題調査会で、景品表示法に基づく対応を求める提言が示された。9月に「景品表示法検討会」から独立して検討会を設置。ハイペースで計8回の会合を終え、12月28日、報告書をまとめた。告示への指定は来年度を想定していたが、河野太郎大臣が年度内の前倒しを指示。過去の告示は、施行まで3~6カ月。早ければ、今秋にも規制がスタートする

ステルスマーケティング規制 指定告示案
告示の案

そもそも、ステマ規制は当初から一般紙で「指定告示」を念頭に置いた規制であることが報じられ、消費者庁は規制ありきの“決め打ち“を否定したが、結果は告示規制。検討会会期中にパブリックコメントの募集を並行して開始するなど、必要なプロセスを駆け足でさばきつつ、規制ありきで進んだ。

ステルスマーケティング規制導入スケジュール
ステルスマーケティング規制の導入スケジュール

処分のハードル下がる可能性も

ステマ規制は、これまでの景表法規制と大きく性質を異にする。従来、景表法は広告の「優良・有利誤認」、商品の品質や性能、取引条件など“中身”を評価し執行してきた。だが、ステマ規制は、優良・有利性を問わず、広告であることを“隠す行為”それ自体を規制する。その意味で、措置命令のハードルは著しく下がる可能性がある。「調査過程で優良性の評価が難しい事案でも、ステマであれば措置命令できる」(公取OB)からだ。違反の構成要件がシンプルであるだけでなく、制裁効果は強力だ。

影響の大きい規制であるにも関わらず、立法根拠は貧弱だ。検討会で消費者庁が示したのは、ステマをめぐる学術研究と、インフルエンサーの5割が「悪いこと」と認識しているとの印象を示す調査のみ。消費者被害の実態は示されず、規制を急ぐ理由は不明だ。

予見性確保目的に「運用基準」策定

ステマには、事業者自身が第三者を装う「なりすまし」、利益提供を通じて第三者に表示させる「利益提供秘匿型」がある。形態もレビューやSNS投稿、アフィリエイト広告など多様だ。消費者庁は法の隙間を突く新たな手法など後追い型の立法を避けるため、これを広く包含する「包括的規制」を想定する。一方で、事業者の予見性確保を目的に具体的な問題事例を「運用基準」を示すとしていた。

ただ、間口を広くとる抽象的規制であるために、運用基準も抽象的。これに事業者の不満が蓄積している。

運用基準は、ステマを「事業者による表示内容への関与」で整理する

「関与しないもの」は明快だ。判断基準は、第三者の「自主的な意思」の有無。自らのし好に基づき、自主的な意思で行う表示がこれにあたる。アフィリエイトにしろ、SNSやレビュー投稿にしろ、事業者と一切の情報のやり取りなく行われた表示であれば問題ない。当然といえば当然だが、事業者が投稿の謝礼として割引クーポンを配布したり、懸賞の条件としていても、自主的な意思による投稿であればよい。

「関与するもの」ののうち、事業者が第三者を装う「なりすまし型」は明確だ。問題は、事業者が第三者をして行わせる表示事業者による明示的な依頼・指示がなくても、内容を決定できる程度の関係性、第三者の自主的意思と認められない関係性がある場合は「事業者表示」と判断される関係性は、「両者の具体的なやり取り」、「商品の提供理由(宣伝目的の有無など)」、「提供商品の内容」、「関係性(過去から将来に渡る対価の提供、期間など)」から判断する

ステルスマーケティング規制の概要
ステルスマーケティング規制の概要

問題事例「抽象的で分からない」

運用基準は、第三者への「商品提供」を例にこれを説明する。ただ、第三者の自主的な意思と認められないものとして、「商品等の無償提供の結果、事業者の目的に沿う表示を行う」ことを例示する一方、第三者の自主的な意思と認められる例として、「不特定、特定の第三者に試供品配布の結果、自主的な意思に基づき表示を行う場合」を示す

事業者からは、「読みにくく、具体的にどのようなケースが問題か分かりにくい」、「自主的な意思の客観的評価を厳密にできるものなのか。消費者庁の主導、担当者の裁量で、いかようにも判断できてしまう」などの声がある。

例えば、「しっとりした使用感を投稿してね」と、キャンペーンで投稿を呼び掛けたとする。消費者の受け取りようは多様だ。「意図に沿う投稿を」と思う者もいれば、「本当にしっとり」と思う者もいる。何者の影響も受けず、厳密に意思決定をすることは現実的ではない。影響が悪とも言えない。「どの程度のサジェストまで許容されるのか分からない」(事業者)。

一方で、第三者の自主的な意思の判断は、消費者庁の側に握られている。顧客や消費者とのこうしたやり取りも予測不可能な“ステマリスク”に晒されるとすれば、事業者の過度な委縮を招き、本来メリットもある企業と消費者の関係を必要以上に遮断し、希薄なものにするだろう。

ステマ規制は、憲法が保障する「表現の自由」と鋭く対立する規制。過剰規制となれば、「広告」それ自体を悪と捉える規制に発展しかねない。

ステルスマーケティング規制 運用基準
運用基準について
◇◇◇

性急な規制導入は、河野大臣の担当大臣就任の影響もある。民主党政権の野党時代には、当時、消費者庁が入居していた山王パークタワーの高額家賃を問題視。合同庁舎への移転につなげた。15年、消費者庁担当大臣に就任した際には、同庁の徳島移転を推進。そして昨年、再び担当大臣に就任してすぐ取り組んだのが「霊感商法」と「ステマ」だ。

性急な規制導入も、「消費者庁がアグレッシブに施策を進める河野大臣の顔色を窺った結果」とみる関係者もいる。国会決議を経ず、導入できる「指定告示」の選択も、これを念頭に置いたのではないか。

ただ、規制は、事業者への十分な周知と理解が必要なもの。河野大臣も「しっかりどれがステマか分かるようにしないと混乱する」と会見で説明している。提言を行った自民党部会でも丁寧な説明と議論が求められる。

「運用基準」の評価、影響大きく混乱も

消費者庁は今年1月、ステルスマーケティング規制に対する事業者の予見性確保のため、運用基準案を公表した。

ステルスマーケティング規制
消費者庁が公表した運用基準案(※クリックすると消費者庁が用意したページにジャンプします。画像はネッ担編集部が公表資料をキャプチャして追加)

事業者が「表示の決定に関与した」と判断されるもののうち、「なりすまし型」は容易に理解できる。ただ、「事業者が第三者に行わせる表示」が分かりにくい。

運用基準では、(1)商品等の表示をしてもらうことを目的に、商品等を無償提供する結果、第三者が事業者の目的に沿う表示を行うなど、自主的な意思による表示と認められないもの、(2)商品等の表示を行うことが経済上の利益をもたらすことを言外から感じさせたり、言動から推認させたりするなどの結果として表示を行うなど、第三者の自主的な意思による表示と認められないもの――を例示する「第三者の自主的な意思」が可否を分ける

ただ、レビュー投稿などのキャンペーンや懸賞では、事業者と消費者の間に何らかの情報のやり取りや関係性が生じるのが通常だ。そうであっても消費者自身の意思で投稿内容を決定していることはよくある。

どこまでがセーフで、どこからがアウトなのか、運用基準には示されていない。事業者からは「規制範囲が不明確だと、プロモーションに過度な委縮効果が生じる」、「どのレベルをステマと感じるかは、人により認識が異なる。認識を共有できる定義を定めるべき」との声がある。

行政のガイドラインでは、よく同様の問題が生じる。問題とならない事例は示せても、問題事例は解釈の余地を広く残す意図が働く。禁止行為を明確にすると、これを避け、脱法的な手法でプロモーションを行う事業者も現れるためだ。

すでに景表法で示されている二重価格や将来価格のガイドラインなども同様に、セーフティゾーンは明確だが、問題事例は個別事案ごとに判断の余地を残す。そこにこうした規制の難しさはある。ステマ規制が抽象的規制を念頭に置くため、ガイドラインも抽象的にならざるを得ない。

ただ、どのような事例を問題と想定しているか分からなければ事業者の混乱を招く。「もう少しブレークダウンする必要があるのでは」(公取OB)と指摘する関係者もいる。

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