ネットショップ担当者フォーラム

AIが接客&提案、BOPISが浸透――米国・ロサンゼルス視察から見る、アメリカの小売りと日本の違いとは?

2 years 11ヶ月 ago
「STAFF START」を提供するバニッシュ・スタンダードの代表取締役 小野里寧晃氏がロサンゼルス視察から感じたアメリカの小売りの実態、日本の接客サービスとの違いを語る

AmazonやWalmartといった革新性の高いリテールテックの聖地であるアメリカ。筆者は2022年10月、そんなアメリカ・ロサンゼルスに1週間ほど滞在し、最新のリテールテックを体験してきました。2004年からアパレルのEC制作に携わり、現在はスタッフDXツール「STAFF START」を提供するバニッシュスタンダードを経営する筆者が経験した、アメリカの最新のリテールテックを紹介します。

EC購入商品のピックアップ文化が当たり前

アメリカのECでは、ECサイトで購入した商品を店舗などで受け取る手法「ピックアップ」がメジャーです。日本でもコンビニ受け取りや指定のロッカーで受け取るという方法がありますが、利用したことがある人はあまり多くはないのではないでしょうか。筆者もその1人です。

アメリカでは、「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store:ボピス=ECサイトで購入した商品を店舗で受け取る仕組み)」「クリック&コレクト(ECで購入した商品を、宅配ロッカーやドライブスルーで受け取る仕組み)」の文化が浸透しているように感じました。

また、AmazonやWalmartなどでは、「品物をカゴに入れるだけで支払いまで完了する」という自動決済を採用しています。他にもあらかじめ注文した商品を受け取りに行く「BOPIS」「カーブサイドピックアップ(ECサイトで購入した商品を、店舗の駐車場で受け取る仕組み)」の利用が盛んです。

Walmartが展開する自動決済アプリ「スキャン&ゴー」

アメリカのオンラインショップ利用に関するとある調査では、回答者の半数以上が「過去12か月の間に食品・飲料、日用雑貨をピックアップで購入した」という結果が出ています。

※2022年6月2日までの12か月間に、オンラインで商品を購入した13歳以上の米国人回答者920人(2022年6月2日調査)を対象とした調査(出典:Coresight Research)。

配送のきめ細やかさ、配送料の高さが日本と異なる

さらに、型番商品の多い日用品店だけではなく、スニーカーブランド「NIKE」でもピックアップが多く利用されていることにはとても驚きました。

米国・ロサンゼルス NIKEのピックアップ用エリア
NIKEのピックアップ用エリア

日本人の買い物の感覚の多くは「ECサイトで購入=自宅への配送」でしょう。わざわざ店舗に赴くのであれば「接客を受けて実際に商品を見て試着をして吟味したい」「スタッフとコミュニケーションを取って、買い物を楽しみたい」と思う消費者に対して、店舗側は実店舗でその対応をしているという側面が強いのではないでしょうか。

一方、アメリカの小売店舗は日本と異なり、店舗の役割は倉庫の側面が強くなっています。ピックアップは増加傾向にあるようなので、今後は店の作り方もさらに変化していくと予測しています。

なぜ日本と異なりピックアップが流行っているのか? それは配送のきめ細やかさの違いが大きく影響しているのではないかと考えています。

日本の物流は「世界一のクオリティ」とも言われています。日にちだけでなく時間も細かく指定でき、再配達も可能。荷物は丁寧に扱われます。

一方、アメリカでは誤配送や指定日への遅れが頻繁に発生し、配送料も高額。「せっかく買った商品を確実に早く受け取りたい」という気持ちは、日本も米国も変わりませんが、その手段がアメリカの場合は「自ら店頭に受け取りに行く」ということのようです。

「Amazon Style」では接客・提案はAI、単純作業は人

Amazonのアパレルショップ「Amazon Style」を訪れました。「Amazon Style」は、2022年5月にロサンゼルスにオープンしたばかり。Amazon初となるファッションの実店舗です。

広い店内には、アパレル、シューズ、雑貨が置いてあり、品ぞろえはとても充実していました。

商品についている二次元バーコードのタグを手持ちのスマホアプリで読み込むと、試着または購入を選択できます。ただし、陳列されている商品はすべて見本品のため、購入はできません。購入する場合はアプリ上で商品購入を選択し、受け取り専用カウンターで商品を受け取るというピックアップ形式を採用しています。

「Amazon Style」のイメージ動画

筆者は試着を選択しました。試着を選ぶと、画面上で試着室の予約が行われます。試着室の準備が完了すると、プッシュ通知でお知らせが届きます。指示された試着室に行くと、頼んだ商品だけでなくレコメンドされた商品が置かれていました。

さらに試着室にはタッチパネルが設置されており、試着中もデバイスにレコメンドが次々に表示され、追加で試着するかどうかを選べるようになっています。

米国・ロサンゼルス視察 Amazon Style 試着室のようす
「Amazon Style」店内の試着室

日本のアパレルショップではスタッフが行う一連の流れが、すべてデバイス上で実施されているのです。追加で試着商品を選んだ場合は、スタッフが商品を運んでくれます。ここでやっと人の登場です。

接客提案はAIが行うのに対し、商品を試着室に届けるという単純作業は人が行うという構図に衝撃を受けました。

一見とても効率的で、最先端技術が詰まった店舗に聞こえるかもしれませんが、まだまだ不便な面もあり、肝心の買い物の体験価値はそこまで高くないと感じました。

最初にレコメンドされた商品は自分の好みに合わず、タッチパネルに表示される商品は数が多すぎて、好みのものを見つけるには根気が必要そう。「スタッフと話をした方が早いなぁ」と感じました。

日米のアパレル店舗スタッフの違いとは?

アメリカの小売スタッフの生の声も聞きたいと思い、日本の「イオンモール」や「ルミネ」のようなカジュアルブランドが並ぶ商業施設にも足を運びました。

ハイブランドではなくカジュアルなブランドのスタッフは、自ら話しかけてくることはありません。椅子に座ってスマホを触っている光景をよく見かけます。

もちろん話しかけたら商品の在庫を確認したり、最低限の提案をしたりしてもらえますが、日本のアパレルスタッフのように、自ら来店客に挨拶をしたり、声をかけて接客したりすることはありません

自分のペースで商品を見たい人、話しかけられることが苦手な人にとっては嬉しい対応かもしれませんが、初めてこの光景を見たら驚くのではないでしょうか。

一見「アメリカの接客は悪い」と感じるかもしれませんが、どちらかというと海外ではこの光景がスタンダード。日本の接客が素晴らしすぎるのだと実感しました。

米国・ロサンゼルス視察 アメリカの商業施設のようす
アメリカの商業施設のようす

インセンティブの有無が接客内容につながっている

では、なぜそうなるのでしょうか。理由はシンプルで、丁寧な接客をしてもチップやインセンティブなどプラスの給与が一切つかず、「それならできるだけ省エネで働きたい」と思っているからのようです。

しかし、「チップやインセンティブがつかないとしても、このブランドが好きだから、ここで働いている」と言います。

そこで、スタッフによるオンライン接客が行えるサービス「STAFF START」について説明し、興味があるかを聞いてみました。

筆者が話したスタッフは、そもそもスタッフがブランドの公式サイトに載るということ自体にとても驚いていて、「私たちなんかが公式サイトに出ていいと思えない。会社がOKする気がしない」と言っていました。

「『STAFF START』は店舗スタッフのECへの貢献度も可視化することができる。実際に導入企業の7割が結果を元に給与アップなどの評価・報酬で還元をしているから、導入できればあなたの報酬も上がるかもしれない」とも伝えました。

すると、またとても驚きつつも、「もしECに活躍の場を広げられ、報酬が上がるのであればやってみたい気持ちはある」と話してくれました。

今回の視察で、アメリカではカジュアルブランドのスタッフに「接客」という概念自体が希薄だと感じられたものの、働くスタッフたちに意欲やブランドへの愛はあります。彼らがそれを活かし、活躍できる日が来ることを願っています。

アメリカ視察から見えた、日本のECのあるべき姿

今回の視察で筆者は、日本はこのまま「日本らしいEC」を突き進む形で良いのだろうと感じました。

日本と比べるとアメリカは土地が広大すぎて、まだまだ流通面に不便さが残っており、その解消に取り組んでいる印象を強く感じました。また、そもそもの文化として一部ラグジュアリーブランドを除いた小売に接客は求めていないため、より機械化・効率化をして利便性を突き詰めているように感じます。

一方日本は、再配達の負担など物流を担う企業の課題はあるものの、流通面は一定のシステムが整っています。加えておもてなし文化が根強く、カジュアルブランドであっても接客が重要視されています。そのため、単なる機械化・効率化だけでは顧客のニーズに合いません

サービスは文化の上に成り立っている。そう考えると、日本は日本独自の「おもてなし文化」に基づいたECを追求する「日本らしいEC」を突き進む形で良いのだと考えています。

小野里 寧晃

楽天、バレンタイン特集のショールーミング型ポップアップストアを「北千住マルイ」に期間限定で開設

2 years 11ヶ月 ago

楽天グループは、ショールーミング型のポップアップストア「楽天市場 バレンタイン特集 ご当地&映えスイーツセレクション」を、「北千住マルイ」の2階にオープンする。

バレンタインデーに向けた施策のため、2023年2月1日から14日までの期間限定。

ポップアップストアでは、「横浜チョコレートのバニラビーンズ」や「創作和洋菓子 花えちぜん」など、「楽天市場」出店店舗18店舗が取り扱うバレンタインデー向けの商品約35点を展示する。

楽天グループは、ショールーミング型のポップアップストア「楽天市場 バレンタイン特集 ご当地&映えスイーツセレクション」を、「北千住マルイ」の2階にオープン
「楽天市場」内でもポップアップストアを宣伝している(画像は編集部がキャプチャ)

顧客は店頭で商品を試食したり、比較・検討して展示する二次元バーコードをスマートフォンで読み取ることで、「楽天市場」の各商品ページに移動、商品を購入することができる。

「楽天市場」は1月4日に「楽天市場 バレンタイン特集2023」を公開。チョコレートやスイーツを中心に、約5万点のバレンタインデー向け商品を紹介している。オンラインでバレンタインデーのギフトを購入するユーザーが拡大傾向にあり、「楽天市場」におけるバレンタインデー関連商品の流通額は、2020年から2022年の2年間で約1.9倍に拡大している。

石居 岳

なぜユーザーはリピート購入するのか? Googleの調査から見えた継続購入の深層心理 「カギは肯定度」

2 years 11ヶ月 ago
Googleが発表した商品選択に対する自信の度合いを示す「肯定度」の関係性を示す分析結果から学ぶ、リピート購入の重要なカギとは

Googleは2022年、ユーザーが触れる情報と、商品選択に対する自信の度合いを示す「肯定度」の関係性を示す分析結果を発表した。調査結果によると、「肯定度」は将来の継続購入につながる深層心理であり、リピート購入の重要なカギとなりそうだ。Googleは、ユーザーの情報探索の特徴から「肯定度」を予測し、マーケティングのプランニングに生かすことができると指摘している。「Think with Google」で公表した分析結果をまとめた(図表は「Think with Google」から引用)。

調査概要

商品やブランドに強い愛着を持って継続購入する一方、「何となく購入し続けている」という人も多い。こうした習慣的な継続購入は、これまで顧客ロイヤリティによって説明されてきたが、実際には既存の概念だけでは説明が難しい継続購入も多くあるとし、Googleはそのメカニズムを調査した。

調査には8人の参加者が協力。参加者は、買ったモノの詳細と気持ちを日記形式で記録した。その後の2回のインタビューを通して、記録をたどりながらそれぞれの初購入・再購入に至った過程と気持ちをヒアリングした。

定性調査から浮かび上がってきた買い物行動に関する仮説は、消費財から耐久財まで10個の商材の購入経験者1人に対して定量調査を行うことで、どのくらい一般的なものなのかを確認している。

Google 肯定度 調査概要
調査概要

多くの商品が事前に情報を把握できる「探索財」化

Googleはこれまで実施した調査によって明らかになった生活者の買い物行動について、3つの特徴をあげている。これらは今回の一連の調査を通じても再確認できたという。

多くの商品は「経験財」から「探索財」へ

多くの商品・サービスが、直接経験しなくても事前の情報探索を通して把握できる「探索財」へと変わっているということ。従来は「経験財」(実際に購入して経験する前までは価値を知ることができない商品)だと言われていたマッサージや飲食などの商品・サービスも、他の人の口コミや評点などを見て、ある程度その技術や味を予測できるようになった。さらに、利用者による動画投稿や、ARやVRなどの最新技術を活用することで、商品・サービスに関する情報はよりリアルになりつつある。

Google 肯定度調査 買いたいと思ったものについて事前に調査するか
買いたいと思ったものについて事前に情報を調べてから購入するか

2.購入判断に自信を持ちたい

調査結果によると、「情報探索を通じて自分の直感に自信を持ちたい」「頼れる商品やブランドを探したい」という心理が強いことが判明。定性調査でも「信頼できる情報が自然と入ってくるように情報源を整理する」「全体像を把握して自分の判断軸を確立する」といった行動が見えたとしている。

Google 肯定度調査 選択に自身があった割合
選択に自信があった割合

3.消費者は継続購入で買い物疲れを最適化

ECと流通の充実によって買い物に関する情報と選択肢が増えて便利になった一方で、疲労を感じるようにもなっている。このため、「信じる商品を継続購入する」という心理と行動は、生活者が買い物にかかる負担を最適化した結果であるという。

継続購入のカギは顧客の「肯定度」

直感による買い物が増えている今日。 Googleは初回購入にもかかわらず商品・サービス体験前から強い自信を持って購入している人が一定数存在し差があることに着目すると同時に、直感による選択を「情報を通して肯定する」ことと理解する必要があると指摘。この選択に対する自信の強度を「肯定度」という造語で表現し、この「肯定度」が商品と生活者との長期的な関係性を理解するための手がかりになることがわかったという。

Google 肯定度調査 初回購入・再購入時の選択に自信がある割合
各カテゴリにおける初回購入・再購入時の選択に自信がある人の割合

調査結果によると、「肯定度」が高い買い物では、購入後の商品・サービスの利用体験を向上させることがわかった。これは、選択に対する自信が、実際に商品の満足度に影響を与えているのだ。

Google 肯定度調査 初回購入時の選択に自信がある人の割合
初回購入時の選択に自信がある人の割合

「肯定度」を高めるプロセスは、自分が直感で決めた商品・サービスに関して情報を収集、本当にこれでよいか再確認し自信を強める行動。「肯定度」が高い購入は、そのような体験を通したため、買った後の利用でも満足することが多いという。

Google 肯定度調査 購入前の心理状態
購入前の心理状態(選択への自信の有無と肯定度の関係)

Googleによると近年、行動経済学の研究により事前に接した情報が、その後の行動や態度に強く影響を与えることが証明されているという。あらゆるカテゴリで事前の情報探索が可能になっている今日、このような効果は買い物全体においてより発生しやすくなっているようだ。

リピーター育成の明暗は初回購入前から

Googleが分析を進めたところ、次回購入の意向は、初回購入前の情報接触によって醸成される「肯定度」と関係しているという。

Google 肯定度調査 初回購入後、次回も購入したい割合 肯定度が高いグループと低いグループの比較
初回購入後、次回も購入したいと回答した割合(肯定度が高いグループと低いグループ別)

商品のカテゴリによって差はあるものの、「肯定度」が比較的高い場合、次回購入意向も高まる可能性がある。たとえば、あまり自信のない買い物、衝動買い後の後悔などでは、次に同じ商品を購入するケースは低い。次回購入意向は、購入前の「肯定度」が高いときこそ促進されるとしている。

Google 肯定度調査 肯定度と継続購入の関係
次回購入意向と肯定度の関係について

商品利用は五感を通して感じるため、一種の情報探索の過程として捉えることができる。その体験が満足できるものであれば、商品に対する「肯定度」は高まる。そして、次回購入につながり、肯定度が受け継がれる――。Googleは、継続購入は高い「肯定度」が呼び起こす連鎖反応によって形成されると推測している。

「肯定度」 はLTVの最大化に寄与

情報探索と「肯定度」の視点を持つことで、購買行動やデジタルマーケティングにおけるコンバージョンを、散らばっている無数の点ではなく、つながった線として分析できるようになるという。

情報接触によって選択した商品に対する「肯定度」が変化する視点、また「肯定度」が購入後の心理にも影響を与えているという発見から、購入前後の生活者に対してどのようなコミュニケーションが有効なのかを考えることは、初回購入者からF2・F3転換といったリピート購入者になってもらうための施策にもつながると指摘する。

「肯定度」を高める情報探索は「自ら探し求めにいった情報」

Googleは、情報探索が「肯定度」の醸成にどのように関係しているのかを調べたところ、意図せず触れる情報よりも、自ら探し求めにいった情報から大きく影響を受けていたことがわかった。

特に「自分で検索して見つけた情報」「自分から店舗に見に行った実際の商品」「自分から質問・相談した家族・友人・知人のクチコミ」などにその傾向が強く出ているという。

Google 肯定度調査 肯定度を高めるきっかけになった情報接触
肯定度を高めるきっかけになった情報

「肯定度」を高める情報探索行動の特徴とは

具体的にどのような情報探索が「肯定度」を高めるか理解するため、「肯定度」を高める代表的な情報経路である「自分で検索して見つけた情報」について分析を通じて探った。

今回の調査パートナー企業の1社であるヴァリューズは、事前のアンケート調査を通して、4万人の中からシャンプー、サプリ、自動車を購入した生活者1500人を選定。具体的な情報探索行動を分析した。そのうち20人に対しては、購入前の「肯定度」が高かった生活者、低かった生活者を分類し、購入前の数か月間にわたって情報探索の特徴を分析した。その結果、購入前の「肯定度」が高い・低い購入では、情報探索の仕方にも差があった

具体的な検索キーワードは 「肯定度」が高い

初回購入前の「肯定度」が高い場合は、低い場合よりも検索キーワードが具体的だった。つまり、商品に求める価値が明確で、それを満たしているのかを検索で確かめていることがわかる。こうした検索行動は、特に日用品で目立った。

一方、初回購入前の「肯定度」が低かった場合は検索キーワードが単純で、商品名だけになっていることが多かった。自分にとっての価値がわからなかったり、うまく言語化できないという背景が想像できる。

ネガティブな情報も検索する

選択した商品に関してあえてネガティブな情報を調べるような検索も行っている。ネガティブな検索をしていてもそれを打ち消すような記事に遷移していることもある。

先に不安を解消、あるいは自身で期待値をコントロールしようとしたりする動きと考えられる。

気になるページは何度も閲覧

選択した商品に関連するページは、何度も検索、閲覧する行動があった。情報探索を通していろいろな情報に接するなかで気持ちが揺れた時に、自身が拠り所とする情報を再確認したいという目的があると分析している。

Google 肯定度調査 気になる情報を何度も見る
「肯定度」を高める情報探索行動

また、時間をおいても自分の気持ちが変わらないことを確かめたり、自分の気持ちを後押ししたりするといった意味合いもあるようだ。

「肯定度」の度合いは情報探索量から把握しよう

「肯定度」の状態によって情報収集積極性にも差があることもわかった。「肯定度」が低い状態では積極的に調べ、「肯定度」が高い状態では調べなくなる傾向がある

自社商品に関連する意図的な情報収集がどれくらい行われているかを把握することで、既存顧客と潜在顧客の「肯定度」やブランドスイッチの可能性を予測できるとしている。

Googleは情報を集めると選んだ商品に対する「肯定度」が高まり、購入または再購入につながりやすいと説明。「肯定度」が高いと、自分の選択に自信がある、あるいは行動が正しいと思いたい状態にあるためとしている。

一方、「肯定度」が下がってくると、自信を維持するために第三者の肯定的な情報を収集したり、自信を持てる他の選択肢を探し始めるという。

Google 肯定度調査 肯定度の高さと情報収集の気持ち
肯定度の高さと情報収集の関係について

「肯定度」維持には、飽きさせないアップデートを

ユーザーの「肯定度」は、さまざまな情報からも影響を受けている。40個の商品カテゴリの購入者に関する定量調査で、各カテゴリの初回購入時と継続購入時の「肯定度」を分析したところ、購入スパンが短く購入頻度が高い商品カテゴリでは、初回購入時よりも継続購入時に「肯定度」が高くなっていたという。

逆に、家電など購入スパンが長く、購入頻度が低い一部の商品カテゴリでは、継続購入時の「肯定度」が初回購入の時と大きく変わっていない。

Google 肯定度調査 肯定度×購入スパン
肯定度と購入スパンの関係について

Googleは、選択した商品に関して新しい情報に接することがない状態が続くと、「肯定度」が下がると解釈し、「飽きる」という感覚に近いと分析。家電のように次の商品検討までの期間が長い商品の場合、新たな情報に触れることが少ないため、当初の肯定度は次の購入時までに減衰してしまうとした。

そのため、「肯定度」が高く情報収集に消極的な既存顧客に継続購入を促すには、「肯定度」を維持させるための企業からのコミュニケーションがより重要になってくるとしている。

また、日用品のように購入周期が短いカテゴリでブランドスイッチを狙いたい場合は、そのカテゴリに対して積極的に情報を発信し、生活者の自発的な検索や情報に触れる機会が増えるようにする必要があるという。

一方、購入周期が長いカテゴリでは、「肯定度」をいかに維持させるかが重要だと指摘。車や家電のようにハードウエアの買い替えサイクルが長い商品でも、ソフトウエアの更新による定期的な改善などを通じて、初回購入時の「肯定度」を長く維持させることが可能かもしれないとしている。

石居 岳

「物価高」で道路貨物運送業の倒産が急増、今後は「2024年問題」もネックに

2 years 11ヶ月 ago

東京商工リサーチの調査によると、道路貨物運送業の倒産が増加している。

2022年(1-12月)の倒産件数は248件(前年比46.7%増、前年169件)で、2年連続で前年を上回った。件数が200件台に乗ったのは、2015年の240件以来、7年ぶりという。

2022年の倒産のうち、燃料費高騰など物価高を要因としたものは69件(構成比27.8%)。4分の1を物価高に関する倒産が占めており、外部環境の悪化が道路貨物運送業者を直撃している。

道路貨物運送業の倒産に関する年次推移
道路貨物運送業の倒産に関する年次推移

負債総額は379億1000万円(前年比115.0%増)で、2年ぶりに前年を上回った。2013年以降の10年間では3番目に高い水準で、負債10億円以上の倒産が4件(前年1件)のほか、同5億円以上10億円未満が11件(同6件)とほぼ倍増し、負債総額を押し上げた。

業種分類別倒産状況
業種分類別倒産状況

公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)が開いた賀詞交歓会では、経済産業省の大臣官房審議官(商務・サービス担当)の澤井俊氏が、物流業界の「2024年問題」を踏まえ、現在の物流量の36%が運搬できなくなる可能性があると警鐘を鳴らしている。

働き方改革関連法の施行に伴う「時間外労働時間の上限規制」などが、2024年4月から「自動車運転の業務」にも適用。「2024年問題」は、これによりドライバーの離職や売上減、荷主企業は運賃値上げの可能性などが懸念されている。

運送・物流業界は、燃料費高騰、人件費上昇に伴う荷主への価格転嫁が喫緊の課題となっており、ドライバーの時間外労働時間の上限規制が適用される「2024年問題」(2024年4月1日~)への対応は急務。経営体力の弱体化が目立つ運送業者も目立ち、2023年も倒産の増勢が続く可能性が高まっている。

経産省は2022年9月から、「持続可能な物流の実現に向けた検討会」を実施しており、「いかに輸送効率を上げるか」を継続して模索している。

石居 岳

フューチャーショップ取締役、竹内謙礼氏、坂本悟史氏――ECのプロが語る「2023年本当にやるべきこと」【ネッ担まとめ】 | ネットショップ担当者が 知っておくべきニュースのまとめ

2 years 11ヶ月 ago
ネットショップ担当者が読んでおくべき2023年1月9日~1月15日のニュース

ECのプロの人は長い時間ECに関わっています。ということは、EC業界の流れがわかっていますので将来に対する読みの精度も高いです。しかも、3人の視点から見ることで漏れも少なくなります。参考にしない手はありません。

「情報発信のアップグレード」と「筋肉質な組織」が重要に

EC業界、2022年の振り返りと2023年の展望は?フューチャーショップ取締役に訊く | コマースピック
https://www.commercepick.com/archives/29017

新規でECを利用する消費者数は明らかに減っています。いわゆる「ECサイトを立ち上げたら売れる」時期は既に終わりを迎え、新規獲得コストが上がり続けているのが現状です。

そこでしっかりとリピート対策を行っている事業者様の売上はあまり落ちていないことから、「このブランドだから買い続ける!」といった買う理由の創出・情報発信・CRMがさらに重要になっています。

この連載で何度も書いているように、ECがどんどん伸びるという時期は終わりました。外に出て実店舗に行くようになると、必然的にECに割く時間が減ってきます。つまり、他社の商品に接する機会が増えるということ。そうなったときにCRMが必須になってきます。ここをさぼってしまうと、数か月後にはお客さんが減ってきてしまうので、きちんとやっておきましょう。

【2023年のEC業界を徹底考察】高く売る販売方法、動画、3大モール攻略、ネット通販+GA4など重要ポイントを解説 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/10506

2023年は売り手側と買い手側が密なコミュニケーションを取るライブコマースやTikTokライブを活用した売り方に注目が集まる。ごく一部の人にしか受け入れられないニッチな商品だけど、熱烈なファン客に高く買ってもらう仕掛けが、2023年のネットショップには必要である。

前述のCRMについて、メールやLINEを送るだけではダメです。動画やライブなど手法も変化させていかないといけません。「難しい」「わからない」ではなくて、取り組まないといけないものです。動画を作ったら「YouTube」で公開、短くしてSNSなどにも公開、文字おこしをしてメルマガやブログにも公開。ユーザーによって見ているものが違いますので、可能な限りすべてのチャネルで情報を発信していきましょう。

2023年のEC業界展望。消費マインドは冷え込むけど「賢い消費」訴求がウケるかも! | コマースデザイン
https://www.commerce-design.net/blog/archives/5635

  • 不況を乗り切るために「筋肉質な組織」になろう
  • この機会に、利益や在庫や品揃えの管理を見直してみよう
  • 今後のためにも、リモート勤務に対応し、上手に体制を作ろう
  • 景気は悪いけど、正社員は頑張って育成しよう

実店舗とEC、文章に加えて動画、やることが増えてきていますが、これをやってようやく現状維持といったところでしょう。そうなると「筋肉質な組織」になって効率化されていないと始まりません。売り上げに直結することが気になりますが、2023年上半期は社内整備に充てるなど、この先数年を見た動きをしていきたいですね。

今週の要チェック記事

2023年のShopifyはどう変わる?今おさえておきたい「Checkout Extensibility」とは | CEREAL TALK
https://note.com/cerealtalk/n/n6b87e22db67a

「通常プランでチェックアウト画面周りがカスタマイズできるようになるかも?」という話。実現されたら「Shopify」がますます強力になりますね。

「自社ECはあまくない。でも戦い方を知れば売上を伸ばせる」月商100万円の壁を破るために必要なこと | E-Commerce Magazine by futureshop
https://www.future-shop.jp/magazine/interview-studio-contigo

「ECサイトは自動販売機ではありませんから、商品を登録しただけでは売れません」。ずっと昔から言われていることです。本質は変わりません。

自立しながら尊重しあえる「ネコ的な組織」になるまで。nekozuki太野さん× 川村対談 | コマースデザイン
https://www.commerce-design.net/blog-staff/230110-nekozuki/

ネットショップの場合は、答えよりも相談相手が欲しいということが多いですよね。

ネットショップ作成サービス「カラーミーショップ byGMOペパボ」、『プレミアムプラン』の提供を1/10(火)より開始 | コマースピック
https://www.commercepick.com/archives/29454

月額3万9600円とのこと。「カラーミーショップ」を使い続けるならお得ではありますが…。

野菜のネット販売はかんたん!売り上げを伸ばしやすいおすすめの出店方法をご紹介 | メルカリ Column
https://jp-news.mercari.com/contents/5492

法関連、やってみたら起きることなどが初心者向けにわかりやすく書かれています。

自社発送、物流代行、在庫管理 プロに学ぶ基礎知識と初心者が陥りがちなミスとは | ECzine
https://eczine.jp/article/detail/12215

「結論、まず『自社発送』で基礎知識をつけたうえで、規模に合わせて『物流代行』の活用をお勧めします」これは私も完全に同意です。わからないと依頼もできない。

荷物の36%が運べなくなる!? 経産省が警鐘を鳴らす物流業界の「2024年問題」とは | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/10516

時間外労働時間の上限規制が適用されて、今までのようにドライバーが働けなくなることに起因します。業界の健全化につながればいいのですが。

韓国の越境ECモール徹底解説!【市場規模・参入方法】フジT氏 ×海外Webマーケター徳田 | 世界へボカン
https://www.s-bokan.com/interview/post-35188/

「各モールがそれぞれ大きな力を持っており、その中での変動も大きかったりする」。臨機応変に対応できないと難しそうな韓国。

今週の名言

昭和8年創業の老舗銭湯『小杉湯』に若者が集まるワケは?老若男女に愛され続ける半径500mの場づくり | Marketeer
https://marketeer.jp/kosugiyu_hiramatsu/

「無理をしない」「努力して仲良くなろうとしない」「自立していてマイペースを大切にする」「飾らない」「自分を魅せようとしない」「互いの肩書を押し付けない、否定しない」など様々な人がいるからこそ許容する心が大事です。

自分がこうだと思っていてもショップに来るお客さんは違う価値観をもっていたりします。自分の価値観を示すこと、相手の価値観を否定しないこと。これからの時代はこの感覚が大切です。

筆者出版情報

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この連載の筆者 森野誠之氏の著書が翔泳社から発売されました。小さな会社の“ひとり担当者”が、未経験、低予算、独学でホームページのリニューアルからウェブマーケティングまでを成功させるための指南書です。電子版、オンデマンド印刷版ともにAmazonで発売中です!

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森野 誠之

化粧品ECがユーザーのリアルな声を有効活用する方法とは? 薬機法の課題をクリアするレビュー活用と可能性をDECENCIAとZETAが語る

2 years 11ヶ月 ago
ポーラ・オルビスホールディングスグループで敏感肌向け化粧品を展開するDECENCIAが、レビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」を導入。その理由と期待を取材&ディスカッションで解説
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購買行動の一連の流れにおいて、商品やサービスの購入検討前に口コミやレビューを確認するという消費者行動が一般化しつつある。ロングテール系のECサイトはもちろん、定期購入が売り上げの多数を占める商材でもレビュー活用が進み、さらなる拡大が見込まれるだろう。記事の前半では、敏感肌向け化粧品を展開するDECENCIAのビジネスモデル、薬機法を順守したレビュー運用の裏側などを解説。記事後半では、「自社ECサイトに蓄積されたレビューは人々の購買を後押しするだけでなく、ブランドの認知度拡大やECと実店舗の連携に相乗効果をもたらす」と話すZETA、レビュー活用を積極化するDECENCIAが、自社製品にもたらすECサイトのレビューの有益性や今後の可能性などについてディスカッションした記事を紹介する。

経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏 ブランド推進事業部 CX統括グループ 星野葵氏 ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏 マーケティングG. マネージャー 村上あすか氏

敏感肌向け化粧品市場で成長を続けるDECENCIAがレビュー機能を導入

ポーラ・オルビスホールディングスグループで、敏感肌向け化粧品を販売するDECENCIA。アトピー性皮膚炎に悩む家族を持つポーラの研究員が、敏感肌への切実な悩みを解決したいという思いで始めた研究がブランド誕生の発端になったという。

2007年の会社設立以降、一貫して肌の美しさの本質を根幹に据えて、敏感肌向けのブランドでありながらエイジングケアや、ホワイトニングケアにもアプローチする製品を展開している。2022年10月には、エイジングケアの「アヤナスシリーズ」を「DECENCIAシリーズ」へとリブランディングした。販路はECを主軸としつつ、伊勢丹新宿店にも実店舗を出店している。

ポーラ・オルビスホールディングスグループで、敏感肌向け化粧品を販売するDECENCIA
アヤナスシリーズを刷新し「DECENCIA シリーズ」へとリブランディングした

敏感肌向け化粧品の市場に新規参入する企業が続々と増えるなかで、DECENCIAの売上高が数十億円規模にまで成長を続けてきた理由は、商品力と的確な訴求力が大きいと考えられる。

肌に悩みがあるとき、自分に合う化粧品を何とか探そうとネットで検索する人は多く、そのような悩みを持つユーザーに対して、求めている情報をユーザーの元へしっかりと届けられるようにECでの情報提供を常に心がけているという。

しかし、自社の力だけで情報発信するコンテンツを迅速に制作するには、ある程度の限界があると感じていた。さらに、肌の悩みを感じているユーザーがターゲットであるからこそ、サイトを訪れる人々は企業が発信する製品情報だけでなく、他のユーザーからのリアルな声、すなわちレビューや口コミでの評価が購入を検討する上で重要な要素になると考えていた

このような背景から、DECENCIAは公式ECサイトにZETAが提供するレビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」を導入し、商品詳細ページなどでユーザーが提供するレビューを掲載するようにした。

DECENCIAは「ZETA VOICE」導入で商品詳細ページにユーザーの評価も掲載できるようになった
「ZETA VOICE」導入で商品詳細ページにユーザーの評価も掲載できるようになった

「ZETA VOICE」は機能が随時アップデートされるほか、導入各社のさまざまな要望に合わせた拡張機能にも対応できるため、自社でレビュー機能を開発するよりも柔軟性や負担軽減の面でメリットが大きい。UGC(ユーザーが生成するコンテンツ)が他のユーザーの購買に多大な影響を与えるようになった今、商材や業態を問わず、幅広い業界で「ZETA VOICE」の導入が進んでいるようだ。

「ZETA VOICE」の3つの特徴
「ZETA VOICE」の3つの特徴

化粧品通販の場合、注意しなければならないのは薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)や景品表示法に抵触しない表現に配慮することだ。しかしながら、ユーザーからは「肌荒れが治った」など、素直かつ企業にとってポジティブな感想が投稿されることも少なくない。

せっかく投稿してもらったレビューが、ユーザーの意図せぬ形で法律に触れてしまうことは防がなければならない。一方で、他のユーザーが参考になる情報の充実化と、商品の透明性を向上することを考えると、レビューを削除したり未掲載にしたりという判断も企業として避けたいところだ。

そのため、DECENCIAでは自社でレビューを編集できる機能を利用し、懸念される表現が含まれたレビューはユーザーの感想を忠実に捉えつつ、薬機法に触れない表現に編集している。

また、サイトの閲覧者にはDECENCIAの編集が加わったレビューだとわかる形式で掲載し、多くのユーザーの声を掲載できるよう工夫を凝らしている。蓄積されたユーザーの声を無駄にすることなく他のユーザーにしっかりと情報を届けていく上で、レビューを編集できる機能は有効に作用しているようだ。

「ZETA VOICE」を活用したECサイトの商品詳細ページでのレビュー内容

法の順守は当然のことながら、顧客の肌に寄りそうブランドとして成長し続けるDECENCIAにとって、レビュー活用で実現したい世界観はますます広がるばかりだ。自社ECサイトのレビューがもたらす効果と、ブランド発展への貢献についてDECENCIAとZETAによるディスカッションを見てみよう。

DECENCIAが「ZETA VOICE」を選んだ理由とレビュー活用の将来性

自社ECサイトにレビュー機能を導入するにあたり、「ZETA VOICE」を選ぶ企業はどういった理由や期待を持っているのか。レビューを運用する上での課題を解決し、効果を最大化するために「ZETA VOICE」ができることとは何か。そこで、レビュー機能を提供するZETAとDECENCIAの両社によるディスカッションを実施。今後期待する機能、そしてレビュー活用の将来性などについて語ってもらった。

ディスカッションメンバー

DECENCIA 経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏 DECENCIA 経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏

DECENCIA ブランド推進事業部 CX統括グループ 星野葵氏 DECENCIA ブランド推進事業部 CX統括グループ 星野葵氏

ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏 ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏

ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏 ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏

ZETA マーケティングG. マネージャー 村上あすか氏 ZETA マーケティングG. マネージャー 村上あすか氏

購入前にネットで深く調査する傾向が強まり、レビューが重要な判断材料になった

ZETA マーケティングG. マネージャー 村上あすか氏 ZETA 村上氏(以下、村上):一消費者の視点として、コロナ禍になった当初は、アイブロウやアイメイクなどを気にする人が多くいましたが、長引くマスク生活が肌の負担になっていることもあり、昨今はスキンケアに力を入れる傾向が強まっているように思います。そうした動きはDECENCIAさんでも感じるところはありますか?

DECENCIA 経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏 DECENCIA加田氏(以下、加田):DECENCIAにもマスクによる肌悩みがきっかけで、商品を購入いただいたお客さまがたくさんいます。コロナ禍ではリップなどのメイクアップ商品は売り上げが厳しかったと聞きますが、DECENCIAはスキンケア商品が主軸なので、コロナの影響をほとんど受けず、むしろ需要が増加しネットで検索される機会が多くなったように思います

DECENCIAの経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏
DECENCIAの経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏

ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏 ZETA 出張氏(以下、出張):ZETA製品の導入企業からは、コロナ禍前後でユーザーの行動が変化したとよく聞きます。実店舗でのお客さまの滞在時間が減少し、それに代わって事前にネットで深く調査する傾向が強まっているそうです。たとえばアパレルでは、「Instagramで⾒たこの服がこの店にあると思うのですが、試着できますか?」と商品を指定し、⽤事が終わればすぐ店を出るといった具合に、消費者は事前調査により時間をかけるようになっているようです。

店舗に行きづらい時期が1年以上も続いているうちに試着しないとサイズや質感など自分に合っているのか、詳細がわからなかった服をどうすれば試着せずに知れるかという考えからレビューの活用が活発化しています。化粧品も同じように、YouTuberやインフルエンサーの感想だけでなく、ECサイトのレビュー情報も積極的に活用して、購買の判断材料として使うようになったのだろうと思っています

ZETAの執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏

自社ECサイトだからこそ、信頼性のある質の高いレビューが収集できる

――DECENCIAの自社ECサイトにはどういった課題があり、「ZETA VOICE」の導入に至ったのでしょうか。

DECENCIA 経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏 加田:DECENCIAは実店舗が少ないため、お客さまとコミュニケーションを取る場所がほぼECだけに限られてしまうことが1つの課題でした。ECでもより多くの情報を伝えていく上で、ほかのお客さまの声も伝えられれば、私たちが語る以上の情報が提供できるのではないかと考え、自社ECサイト内にレビュー機能を導入しました

DECENCIA ブランド推進事業部 CX統括グループ 星野葵氏 DECENCIA 星野氏(以下、星野):レビューはまさに、お客さまとのコミュニケーションとファン化促進のための施策です。ツールの選定では、導入のしやすさ、薬機法の改正など化粧品通販を取り巻く環境の変化に合わせて細かな対応をしていただけることを重視しました。その結果、「ZETA VOICE」の導入に至りました

DECENCIAのブランド推進事業部 CX統括グループ 星野葵氏
DECENCIAのブランド推進事業部 CX統括グループ 星野葵氏

ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏 ZETA 市川氏(以下、市川):DECENCIAさんは導入前の打ち合わせで、「ファンは多いけど、見える化ができていない」とおっしゃっていました。そこで、 まずはお客さまにレビューを投稿してもらい、ブランドと同じ発信側になっていただくことで情報の発信サイクルを発⽣させることをめざしました。ゆくゆくはレビューをフォローするような機能やコロナ禍での非接触対策として実店舗でのレビュー活用が接客に寄与するような世界観を作りたいといった構想も膨らみ、そういった将来性も含めて共感いただいたので、「ZETA VOICE」を選んでいただけたと思っています。

化粧品では従来はポータルサイトのレビューを参考にする消費者が多かったようですが、そういったサイトは商品を複数回、使用していないユーザーのレビューも多いため、質があまり高いとは言えないようです。そのため、ブランド各社からはロイヤルカスタマーのレビューを自社でしっかり集めて情報発信したいという声がZETAにも多く寄せられています。モールやポータルサイトがあっても、自社でレビューを収集する価値はとても高いですよね。

ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏 出張:モールやポータルサイトだと他社商品の情報も目に入ってしまいますし、価格比較ができるサイトであれば安価な商品に流れてしまう可能性もあります。自社ECサイト内のレビューであれば、自社商品だけと向き合ってもらえますし、レビューやQ&Aが掲載されることで、ほかのお客さまの購買を後押しするようにもなっていきます。また、多くの導入企業からは「もっとこうしてほしい」など、商品の開発・改良につながる意見も寄せられるようになったと伺っています。

DECENCIA 経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏 加田:確かに、DECENCIAもレビューを商品やサービスに生かすことはよくあります。改良点を気付かせてくださるお客さまの声は、とても貴重ですね。

ZETA マーケティングG. マネージャー 村上あすか氏 村上:DECENCIAさんのECサイトを見ると、数百件のレビューが1つの商品に対して投稿されているものもあり、さらには購入履歴が複数回あるようなロイヤルカスタマーのレビューが多く投稿されているので、ファン化が進んでいる様子が目に見えます。

ZETAのマーケティングG. マネージャー 村上あすか氏
ZETAのマーケティングG. マネージャー 村上あすか氏

DECENCIA 経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏 加田:売上高の多くを定期購入のお客さまが占めていて、DECENCIAはまさにロイヤルカスタマーの方々に支えられているブランドだと実感しています。やはり、スキンケアは「これが肌に合う」と一度決めたら、ほかの製品を冒険しにくいものです。一方でリブランディングによって商品もリニューアルしたので、新しいシリーズももっと知っていただいて、よりファンになっていただき新しいファンを獲得できるように努めていきたいです。

ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏 市川:DECENCIAさんは従来からキャンペーンなどでロイヤルカスタマーからのレビュー収集を積極的に行われていたと聞いていますが、その理由や効果があればお聞かせいただけますか?

ZETAの執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏
ZETAの執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏

DECENCIA 経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏 加田商品をよく知っているロイヤルカスタマーであれば、内容の信憑性など質の高いレビューを投稿していただけると考えたからです。また、レビューが1つも付いていない商品に対して、お客さまがレビューを書くことはハードルが高いと思うのでロイヤルカスタマーの皆さまから徐々にレビューが集まっていけば、多くのお客さまにとって投稿しやすい状況が醸成できるだろうと期待しました。リブランディングが完了したので、今後はまたレビュー収集に力を入れて、レビューを活用した面白い取り組みができればと考えています。

薬機法改正で全レビューを再度見直し。時代の変化に適応できる機能が求められた

――2021年施行の改正薬機法(改正薬機法は、医薬品や医薬部外品、化粧品の「虚偽・誇大広告」の抑止を図るため新たに課徴金制度を導入した)で、レビューにも何か影響があったでしょうか?

DECENCIA 経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏 加田商品詳細ページにレビューを掲載しているため、たとえお客さまが投稿したものだとしても表現に配慮しなければならず全てのレビューを見直す必要がありました。見直しが終わるまでは公開済みのレビューもクローズ状態にし、なかには少し手を入れたレビューもありました。

DECENCIA ブランド推進事業部 CX統括グループ 星野葵氏 星野規約には「一部修正することがある」と記載しており、それを了承いただいた上でレビューを投稿する仕組みにしています。しかし、せっかく投稿したお客さまの心情を察すると修正されるのは複雑な気持ちになるのではと思います。また投稿いただいたレビューは毎回チェックしてから公開しているので、時間を要してしまうのも、もどかしい気持ちになりました。社内でもレビューの中に法律への抵触が懸念される部分を判断できるAI(人工知能)があれば、と話していたほどです。

ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏 出張公開までのタイムラグと作業負担削減のために、レビューの編集前後の差分を取り出してどう編集したかを「ZETA VOICE」が学習機能として備えていれば、レビューの原文で懸念される文言や修正案が提示できるようになるのではないかと考えています。今後追加していく機能にも、ぜひ期待してほしいと考えています。

DECENCIA 経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏 加田:化粧品はどうしても薬機法の課題があるため、お客さまの声をそのまま紹介できない場合があります。悩ましくもありますが、それでもレビュー機能を導入したことでお客さまの安心感や信頼感、商品の透明性は向上しています。加えて、ツール側でも法改正など要望に合わせて細かく変化に対応していただけることは私たち事業者にとって非常にありがたいことです。

SEO対策や実店舗との連携など、レビュー活用が役立つシーンは広がる

――DECENCIAの今後の展望と、それに対する今後のZETAのサポートについてお聞かせください。

DECENCIA ブランド推進事業部 CX統括グループ 星野葵氏 星野:リブランディング前に販売していたシリーズの「アヤナス」はすでに認知度が高かったため、今は「DECENCIAシリーズ」の知名度向上に力を入れていきたいと思っています。そのためには充実したコンテンツがお客さまにとって有効に働くと思うので、今まで以上にレビューの収集が重要になってくると考えています

ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏 出張:ユーザーに知ってもらう1つの手段としてSEO対策があげられますが、実のところレビューはSEO対策にも役立つコンテンツとなります。Googleなどで検索するときは「肌荒れ 化粧品」のように、悩みを軸に単語で入力することが多いと思いますが、レビューを集めればそうしたワードが蓄積され、ユーザーと共に作り上げたコンテンツをサイト内で実現できると考えられます「ZETA VOICE」ではレビューとSEOを掛け合わせた新たな施策も計画しているので、認知度を拡大させるためのUGC活用という観点でも、今後ますます貢献していきたいです。

DECENCIA 経営企画部 マーケティングテクノロジー開発グループ 加田恵子氏 加田:あとは、お客さまが自発的に投稿してくださる環境をいかに整えるかですね。定期購入されているお客さまは商品詳細ページまで辿り着かずに購入されることが多いので、レビューを書くきっかけに工夫が必要だと考えているところです。

ZETA 執行役員副社長 博士(情報科学) 出張純也氏 出張:ロイヤルカスタマーの声を集める施策はもちろん、1人のお客さまの中でも使用回数を重ねるごとに感想が変化していくことは十分考えられます。「ZETA VOICE」でもその変化を他のユーザーにお伝えできるようにレビューを投稿した人がリピートしている商品など、特性に合わせたレビューの収集方法や表示方法をシステム上で実現できるよう、試行錯誤していきます。

ZETA マーケティングG. マネージャー 村上あすか氏 村上:ECだけではなく実店舗でも、よりレビューを役立てていくことができたら良い効果が生まれると思います。DECENCIAさんの実店舗に足を運んだのですが、肌測定の「Potential Finder」を用いたカウンセリングへ多くの方が訪れている様子を目にしました。自分に合うスキンケアを知りたいと主体的に動くお客さまはたくさんいらっしゃると思うのでレビューから肌測定に誘導したり、製品を探したりできる施策にも取り組んでいきたいですね。

ZETA 執行役員 営業部 ジェネラルマネージャー 市川敬貴氏 市川:そのほか、実店舗はお客さまの悩みがたくさん集まるという強みを持つ場所ですのでカウンセラーとお客さまのやり取りを資産化できるとより面白そうだとも考えています。ZETA製品を導入しているアパレル店舗ではスタッフレビューが多く活用されていて、たとえば「このワンピースをマタニティーのお客さまが購入されました」など、ほかのお客さまの参考になるような情報が投稿されています。このように、お客さまとDECENCIAさんの双⽅にとって有益なレビューの仕組みを今後も開発・提案していく予定です。

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朝比美帆
吉田 浩章

ライブコマース特化のファッションECモール「1899mall」、全商品を20%割引にする"サブスク"導入

2 years 11ヶ月 ago

Sホールディングスは、ライブコマース特化のファッションECモール「1899mall」に月額1899円(税込)でさまざまな特典やサービスを利用できる会員制の「サブスクリプション」を導入した。

全商品を20%割引で販売

月額1899円の会費を支払う利用者は「プレミアム会員」となり、「1899mall」で取り扱うアパレル商品、スキンケア商品、美容家電などを全て20%割引で購入できる。。

ライブコマース機能が付いているファッションECモールの「1899mall」(画像は「1899mall」トップページを編集部がキャプチャ)
ライブコマース機能が付いているファッションECモールの「1899mall」(画像は「1899mall」トップページを編集部がキャプチャ)

“解約しやすい”から“試しやすい”

このほか、“お試し感覚”で「プレミアム会員」向けサービスを利用できる仕組み、イベント開催時の割引率向上など、各種特典を付与する。「プレミアム会員」の特徴は次の3点。

  • モール内の全商品が20%割引
    「プレミアム会員」登録後はサイト内の全商品を、20%割引の価格で購入できる。たとえば2万円の商品でも、40万円の商品でも全て20%割引の価格で購入できるという。

  • 解約手続きが簡単
    解約手続きの簡単さも特徴だという。「プレミアム会員」は、登録後にマイページで「自動更新」のチェックを外すだけで解約手続きが完了する。これにより、消費者はまずは1か月のみの"お試し感覚"で「プレミアム会員」のサービスを利用できる。

  • イベント開催時は割引率がさらにアップ
    「1899mall」で随時開催している新春セールなどのイベント時、イベント中に割引された商品価格から、「プレミアム会員」はさらに20%割引で購入できる。

「1899mall」は、今後も「プレミアム会員」限定の特典を拡充していく方針だ。

高野 真維

⻄日本新聞社、CCCグループと協業強化。商品化された製品のマーケ支援などでクラウドファンディング事業を拡大

2 years 11ヶ月 ago

西日本新聞社は、クラウドファンディング事業を強化し、自社運営のECモールなどを通じた製品販売支援を拡大する。

CCCグループでクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」を運営するワンモアとの提携を深め、需要が増している新製品開発といったプロジェクト連携の案件獲得を強化する。

クラウドファンディングで商品化された製品で、新聞顧客と親和性が高く、地域での需要が見込める製品は、西日本新聞グループの機能を活用した販売支援を行う。

法人も出品できるECサイト「西日本新聞セレクトモール」(2022年10月にオープン)での販促や新聞・チラシ、コールセンターを活用した通販展開など、グループ全体の経営資源を生かして、福岡・九州エリアでのマーケティング活動を支援するという。

西日本新聞社が運営するECサイト「西日本新聞セレクトモール」
西日本新聞社が運営するECサイト「西日本新聞セレクトモール」

新聞社ならではのライティング機能、自社スタジオを生かした動画コンテンツやライブコマース、イベントや店舗といったリアルの場でのプロモーションなど、多面的な販路構築をめざすとしている。

クラウドファンディング事業強化にあたり、西日本新聞社は「GREEN FUNDING」の持つCCCグループの強み、九州圏の「蔦屋書店」「TSUTAYA BOOK STORE」などでのリアル体験、西日本新聞社関連メディアによる情報発信によって、新たな顧客層の獲得や商品需要の掘り起こしを後押しするスキームを構築していく考え。

クラウドファンディングは大手企業や老舗メーカーにとって資金調達だけではなく、新商品のローンチやマーケティング施策の場として注目が高まっている。

西日本新聞社は「GREEN FUNDING」と連携を強化し、寄付要素の強い地域貢献プロジェクトに加えて、企業の新商品開発案件を拡充する方針だ。

「西日本新聞 WE START」としてクラファン事業を強化

西日本新聞社は2016年から「LINK START」という名称で新聞社発のクラウドファンディングサイトを運営。名称を含めて刷新し、2023年1月から「西日本新聞 WE START」として運営している。

クラウドファンディングサイト「西日本新聞 WE START」を通じてクラウドファンディング事業を強化する
クラウドファンディングサイト「西日本新聞 WE START」を通じてクラウドファンディング事業を強化する

「西日本新聞 WE START」第1弾の取り組みとして、NTTソノリティが手掛けるワイヤレスイヤホンの取り扱いを決定。

NTTソノリティが手掛けるワイヤレスイヤホンの着用イメージ。「西日本新聞 WE START」で取り扱う
NTTソノリティが手掛けるワイヤレスイヤホンの着用イメージ。「西日本新聞 WE START」で取り扱う

第2弾として、FILLTUNEが手掛けるフルワイヤレス聴覚サポートデバイス「FILLTUNE CLEAR」の販売を計画しているという。

高野 真維

「物価が上がった」との回答は94%、商品やサービスを選ぶ際に重視するのは「価格が安い」約6割

2 years 11ヶ月 ago

日本銀行が全国の満20歳以上の個人を対象に実施している「生活意識に関するアンケート調査」(2022年12月調査)によると、現在の物価に対する実感(1年前対比)は、「上がった」と回答した人の割合が94.3%に達した。

現在の物価を1年前と比べると、2022年6月は「かなり上がった」が30.6%、2022年9月は「かなり上がった」が46.4%、2022年12月は52.7%が「かなり上がった」と回答している。

日本銀行が全国の満20歳以上の個人を対象に実施している「生活意識に関するアンケート調査」 現在の物価に対する実感
現在の物価に対する実感

1年前に比べ物価は何%程度変化したか具体的な数値の回答を求めたところ、平均値は+12.1%(前回調査は10.3%)、中央値は+10.0%(前回調査は10.0%)。

1年後の物価については、「上がる」と回答した人の割合は85%。1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うか具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+9.7%(前回調査は+8.5%)、中央値は+10.0%(前回調査は+5.0%)となった。

日本銀行が全国の満20歳以上の個人を対象に実施している「生活意識に関するアンケート調査」 1年後の物価について
1年後の物価について

収入について、1年前と比べて「減った」と回答した割合は減少したものの、「増えた」も減少したことから、現在の収入D.Iはマイナス幅が拡大。先行き(1年後)については、「増える」が減少、「減る」と答えた割合が増加したことから、1年後の収入D.Iはマイナス幅が広がっている。

日本銀行が全国の満20歳以上の個人を対象に実施している「生活意識に関するアンケート調査」 収入について

今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視することは、「今後の物価の動向」との回答が最も多い。「収入の増減」「余暇・休暇の増減」といった回答が続いた。

日本銀行が全国の満20歳以上の個人を対象に実施している「生活意識に関するアンケート調査」 今後1年間の支出で重視すること
今後1年間の支出で重視すること

商品やサービスを選ぶ際に特に重視することは、「価格が安い」との回答が最多。次いで「長く使える」「安全性が高い」「信頼性が高い」「機能が良い」といった回答が上位に並んだ。

日本銀行が全国の満20歳以上の個人を対象に実施している「生活意識に関するアンケート調査」 商品やサービスを選ぶ際に特に重視すること
商品やサービスを選ぶ際に特に重視すること

調査概要

  • 調査実施期間:2022年11月4日~12月1日
  • 調査対象:全国の満20歳以上の個人
  • 標本数:4000人(有効回答者数2108人)
  • 抽出方法:層化二段無作為抽出法
  • 調査方法:郵送調査法(回答方式は、郵送回答またはインターネット回答の選択式)
石居 岳

値上げしても「行きたい」「買いたい」と消費者が思う店舗の条件とは? | 店舗ビジネスに役立つ『口コミラボ』特選コラム

2 years 11ヶ月 ago
MS& Consultingが実施した「値上げに対する消費者の意識調査の結果」より、「値上げしても行きたいと思う店」の特徴を紹介

原材料価格や輸送費コストの高騰などの報道が増えている昨今。店舗事業者の方なども同様に値上げをせざるを得ない状況である一方、「お客さんが離れてしまうのでは…」という不安もあるかと思います。

今回は顧客満足度・従業員満足度の向上のためのリサーチや経営コンサルティングなどを手がける MS & Consultingが実施した「値上げに対する消費者の意識調査の結果」より、「値上げしても行きたいと思う店」の特徴をご紹介します。

「仕方がない」と感じる値上げの理由とは?

「原材料費や輸送費の高騰、為替の変動などの各項目を理由とした値上げは仕方ないと思うか」と聞いたところ、「仕方がない」「どちらかといえば仕方がない」と答えた割合について、原材料費の高騰・輸送費の高騰による値上げが約7割、為替の変動・水道光熱費の高騰による値上げが約6割、品質の改善・人件費の増加による値上げが約5割、採用コスト増加による値上げが約4割という結果になりました。

▲〇〇を理由とした値上げは仕方ないと思いますか?:MS& Consulting
▲〇〇を理由とした値上げは仕方ないと思いますか?:MS& Consulting

また、社員アルバイトの待遇改善による人件費の増加にともなう値上げについては、「仕方がない」「どちらかといえば仕方ない」と答えた割合は【20代 - 58%】【30代 - 53%】【40代 - 47%】【50代 - 42%】となっており、比較的20-30代の若い年代の方が「仕方ないと思う」と多く回答されていました。

▲待遇改善による人件費の増加を理由とした値上げ:MA&Consulting
▲待遇改善による人件費の増加を理由とした値上げ:MA&Consulting

「値上げがあっても利用を続けているお店がある」82%

「1年前と比較した現在、値上げがあったが利用を続けているお店はありますか?」と消費者に聞いたところ、82%の人が「値上げがあっても利用を続けているお店がある」と回答されたことが調査で明らかになりました。

「値上げがあっても利用を続けているお店がある」と回答した人に、その理由を聞いたところ

  • そのお店にしかない商品やサービスがあるから
  • お気に入りのお店は値上げがあっても応援したいから
  • 家族や同伴者など、自分以外の人も気に入っているお店だから
  • 行きつけの店だから
  • 自宅や職場から近く立地が良いから
  • 値上げの説明に納得できたから
  • クーポンやポイント還元があるから
  • 駐車場無料や宅配などの便利なサービスがあるから

というようなコメントが寄せられていました。

一方で、「利用を続けているお店はない」と回答した18%の人に「値上げがあったお店に○○があったら利用を続けていたというものがあれば教えてください」と聞いたところ、

  • そのお店ならではの商品やサービス
  • 値上げに見合う品質やサービス向上
  • 子連れへの配慮など利用のしやすさ
  • クーポンやポイント還元などの施策
  • といったコメントが寄せられていました。

同社は値上げを考える際、これらの項目をチェックすることを提案しています。

この記事を書いた「口コミラボ」さんについて

「口コミラボ」は、様々な地図アプリ・口コミサイトの監視、運用、分析を一括管理できる店舗向けDXソリューション「口コミコム」が運営する店舗ビジネス向け総合メディアです。近年、企業の評判管理が重要視されるなか、特に注視すべきGoogleマイビジネスを活用したローカルSEO(MEO)や口コミマーケティング、それらを活用した集客事例から、マーケティング全般、店舗経営のハウツー、業界動向データにいたるまで幅広い情報を紹介します。

口コミラボ

EC・小売事業者が知っておくべきインボイス制度とは? 公認会計士が適格請求書保存方式の概要から対応方法を解説

2 years 11ヶ月 ago
インボイス制度への対応は請求書発行・受領双方の業務フローを見直すことが、業務上ではもっとも重要。必要に応じてシステムの導入を検討し、社内への周知徹底や運用を軌道に乗せる時間も考慮しておく必要があるでしょう

2023年10月1日からインボイス制度が導入される。制度の導入で、請求書の発行・受領フローが複雑化し、現場の業務量が増えるだけでなく、場合によっては支払う税金が増えてしまう可能性がある。そのため、正しく理解し、対応を進めていく必要がある。

導入までの期限は1年を切った。公認会計士である筆者の柴野亮(Sansanプロダクトマネージャー)が、制度の概要から、事業者が取るべき対策までを解説する。

インボイス制度とは

インボイス制度の概要

「インボイス制度」の正式名称は「適格請求書等保存方式」。事業者が納める消費税に適用される仕入税額控除に関わる制度のことである。

仕入税額控除は、事業者が顧客から預かった消費税額から、仕入れにかかった消費税額を差し引いて消費税を納めることができる仕組み。インボイス制度の理解に欠かせない仕組みのため、まずはこの仕入税額控除を押さえておきたい。

EC・小売事業者が知っておくべきインボイス制度とは? 公認会計士が適格請求書保存方式の概要から対応方法を解説 仕入税額控除の仕組み
仕入税額控除の仕組み

インボイス制度が導入される2023年10月1日以降、事業者がこの仕入税額控除の適用を受けるには、所定の請求書が必須になる。それは、税務署に登録した適格請求書発行事業者から、取引内容や消費税率、消費税額などの記載要件を満たした「適格請求書」だ。

言いかえると、適格請求書でなければ仕入税額控除が原則適用されず、税金を多く支払うことになる。そのため事業者は内容を正しく理解し、対応を進めることが必要な制度なのだ。

EC・小売事業者が知っておくべきインボイス制度とは? 公認会計士が適格請求書保存方式の概要から対応方法を解説 「適格請求書」のイメージ
「適格請求書」のイメージ

インボイス制度導入の目的とは

インボイス制度の目的は、事業者が納めるべき消費税額を正しく把握し、適切に仕入税額控除の適用を受けられるようにすること

仕入税額控除の適用を受けるためには、個々の取引での正確な消費税額の把握が必要。だが、2019年10月実施の軽減税率制度により、取引内容の科目によって異なる税率が混在する場合があるため、正確な消費税額がわかりにくくなっていることが課題とされてきた。

また、年間売上1000万円以下の免税事業者は消費税を納める義務が免除されているため、納めるべき消費税が免税事業者の利益になっている問題(益税の発生)も指摘されてきた。

これらの課題を解決し、取引の透明性を高めながら正確な税額を把握するために導入されるのがインボイス制度である。インボイス制度は、請求書の発行側にも受領側にも関係する制度。それぞれ必要な対応の理解が求められる。

小売業界が関係する特例措置

小売業界のように、不特定多数の者に対して販売などを行う場合、記載内容が簡略化された適格簡易請求書を交付することができる

EC・小売事業者が知っておくべきインボイス制度とは? 公認会計士が適格請求書保存方式の概要から対応方法を解説 「適格請求書」と「適格簡易請求書」の記載例
「適格請求書」と「適格簡易請求書」の記載例(出典:国税庁の公表資料)

適格簡易請求書の特徴は、①書類の交付を受ける事業者の氏名または名称(取引先名)の記載が不要②税率ごとの消費税額または適用税率のどちらかを記載すれば良い――という2点。

小売業界はインボイス制度導入後、従来の領収書の項目に適格請求書発行事業者の登録番号、税率ごとの消費税額または適用税率のどちらかを追加記載すれば対応できる事業者が多いと思われる

インボイス制度導入に向けて事業者が取り組むべきこと~発行側~

適格請求書発行事業者への登録

事業者が対応すべき第一歩は、適格請求書を発行できる適格請求書発行事業者になることだ。課税売上1000万円を超える課税事業者であれば、税務署へ登録申請書を提出することで登録できる

EC・小売事業者が知っておくべきインボイス制度とは? 公認会計士が適格請求書保存方式の概要から対応方法を解説 適格請求書発行事業者になるための申請方法
適格請求書発行事業者になるための申請方法

申請の受け付けはすでに始まっている。制度開始時から適格請求書発行事業者となるためには、原則として2023年3月31日までに申請しなければならないので注意が必要。2022年11月末で170万社を超える事業者が登録しており、今後さらに多くの事業者が登録すると思われる。

また、課税売上1000万円以下のような免税事業者は消費税を納める義務が免除されているので、そのままでは請求書に「適格請求書発行事業者登録番号」(適格請求書発行事業者に付与される登録番号)を記載できない。そのため、取引先に出す請求書が「適格請求書」として認められないのだ。

つまり、取引先が仕入税額控除の適用を受けることができなくなり、相手先に負担を与えてしまうことになるのだ。請求書を発行する事業者は登録申請して適格請求書発行事業者になるか否か、早めに検討することが必要と思われる

適格請求書を発行できる仕組みを整える

適格請求書発行事業者として登録を済ませたら、次は適格請求書を発行できる仕組みを整えなければならない。

適格請求書は従来の請求書に加え、新たに定められた複数の必要項目を記載しなければならないので、既存のフォーマットが使えなくなる。「適格請求書発行事業者登録番号」の交付を受けたら適格請求書を発行できるように新たなフォーマットを準備しておく必要があるだろう。

EC・小売事業者が知っておくべきインボイス制度とは? 公認会計士が適格請求書保存方式の概要から対応方法を解説 新たに「適格請求書発行事業者登録番号」、適用税率、税率ごとに区分した消費税額などを記載しなければならない
新たに「適格請求書発行事業者登録番号」、適用税率、税率ごとに区分した消費税額などを記載しなければならない(画像は財務省公表の資料からキャプチャ)

発行した適格請求書の保存

発行した適格請求書は、紙もしくは電子での控えの保存が必要となる。発行した適格請求書の控えを電子保存する場合は「電子帳簿保存法(電帳法)」の要件を満たして保存する必要がある点にも注意が必要だ。

EC・小売事業者が知っておくべきインボイス制度とは? 公認会計士が適格請求書保存方式の概要から対応方法を解説 「電子帳簿保存法(電帳法)」と「インボイス制度」に関するタイムライン
「電子帳簿保存法(電帳法)」と「インボイス制度」に関するタイムライン

電帳法は2022年1月に改正された、会社法や法人税法など、各税法で原則紙での保存が義務づけられている帳簿書類について、電子データによる保存を認め、保存するルールなどを定めた法律。

電子データで書類を受領した場合は原則、電子保存のみと定められたほか、紙で受領した場合に、申請なく電子保存することが認められている。

適格請求書の控えを電子保存する場合は、2つの要件を満たす必要がある。その要件とは、改ざんされていないデータであることを証明する「真実性の確保」と、誰でも読めて、探したい項目で検索できる「可視性の確保」である。

それぞれ具体的に説明をすると「真実性の確保」とは改ざんや複製がされていないユニークなデータである証明が必要で、以下のような対応が求められる。

  • 請求書をタイムスタンプ付きでもらうか、自社でタイムスタンプを付与する
  • 社内規程を備え付ける
  • 訂正・削除の履歴が残るといった一定の要件を満たすクラウドサービスを利用する

また、「可視性の確保」への対応は、電帳法で定められた要件を満たした機器を備え付け、請求書を読める状態で保存することが必要。さらに「日付」「取引先名称」「取引金額」の3項目ですぐに検索できることも求められる

EC・小売事業者が知っておくべきインボイス制度とは? 公認会計士が適格請求書保存方式の概要から対応方法を解説 インボイスなど電帳法に準じた方法による保存について
インボイスなど電帳法に準じた方法による保存について(国税庁の公表資料からキャプチャ)

インボイス制度導入に向けて事業者が取組むべきこと~受領側~

取引先が適格請求書発行事業者かどうかの確認

請求書を受領側がまず行うべきことは、取引先が適格請求書発行事業者かどうかを確認することである。

すべての取引先が適格請求書発行事業者となるわけではないことは留意しよう。年間売上1000万円以下の個人事業主などの免税事業者が取引先の場合は、適格請求書が発行されない。今後、適格請求書と適格請求書ではない請求書が混在して届く可能性が高く、注意が必要だ。

登録番号は正しいかどうかの確認

適格請求書発行事業者から送られてきた適格請求書であっても安心してはいけない。国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で照会し、正しい登録番号であることを確認する必要がある

また消費税の計算については、税区分ごとに応じた計算となるため、ここも確認ポイントとなるだろう。

受領した適格請求書の保存

受領した適格請求書を電子保存する場合は、発行する場合と同じく、電帳法の要件に従い保存しておかなければならない

EC・小売事業者が知っておくべきインボイス制度とは? 公認会計士が適格請求書保存方式の概要から対応方法を解説 電帳法上の区分イメージ
電帳法上の区分イメージ(画像は国税庁公表の資料より)

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、請求書を電子データ形式で受け取る機会は増えたものの、請求書の管理は紙で行っている事業者が多いのが現状である。つまり、ほとんどの事業者は、インボイス制度の対応と併せて、電子帳簿保存法に順じた請求書受領の体制を構築しなければならない

EC・小売事業者が知っておくべきインボイス制度とは? 公認会計士が適格請求書保存方式の概要から対応方法を解説

まとめ

インボイス制度への対応は請求書発行・受領双方の業務フローを見直すことが、業務上ではもっとも重要である

自社に合った運用を定着させることは一朝一夕にはできないため、必要に応じてシステムの導入を検討し、社内への周知徹底や運用を軌道に乗せる時間も考慮しておく必要があるだろう。

今後、確実に請求書に関する業務工数は増え、オペレーションも複雑になる。そのため、早めに運用をシミュレーションし、対策することをお勧めしたい。

その対策の1つがツールの導入。筆者が所属するSansanでもさまざまな方法・形式で届く請求書をオンラインで一括受領できるツールを提供している。さまざまなツールが市場にはリリースされているので、自社の運用にあった適したツールを選んでほしい。

柴野亮

利用している平均アプリ数は19.3個。18.4%が「キャッシュレス決済でのトラブル経験あり」

2 years 11ヶ月 ago

MMDLaboが運営するMMD研究所は、「2022年版:スマートフォン利用者実態調査 第2弾」でアプリや利用中のサービス、セキュリティなどについてアンケート調査を行った。調査の結果、キャッシュレス決済でのトラブル経験は18.4%で、その内「クレカ不正利用」が最多だった。

調査対象はスマートフォンを所有する15歳~59歳の男女2231人。期間は2022年12月9日~12月10日。

インストールしている平均アプリ数は19.3個

調査対象者に利用しているスマートフォンにインストールしているアプリの数を聞いたところ、最多は「16~20個」(14.3%)で、次いで「6~10個」(13.4%)「11~15個」(13.2%)だった。

MMD研究所 スマートフォン利用者実態調査 インストールしているアプリの数
スマートフォンにインストールしているアプリの数(プリインストールアプリは除外)
(n=2231、出典:MMD研究所)

インストールしているアプリの種類について聞いたところ、「QRコード決済アプリ」が55.9%で最も多く、次いで「動画」が55.4%、「天気」が51.6%だった。

MMD研究所 スマートフォン利用者実態調査 インストールしているアプリの種類
インストールしているアプリの種類(プリインストールアプリを含む)
(n=2231/複数回答可、出典:MMD研究所)

キャッシュレス決済のトラブル経験は18.4%

調査対象者にキャッシュレス決済でトラブルに遭った経験を聞いたところ、「トラブルに遭ったことがある」と回答した人は18.4%だった。

MMD研究所 スマートフォン利用者実態調査 キャッシュレス決済でトラブルに遭ったことがあるか
キャッシュレス決済でトラブルに遭った経験(n=2231、出典:MMD研究所)

「キャッシュレス決済でトラブルに遭ったことがある」と回答した人に、トラブルに遭った内容を聞いたところ、最多は「クレジットカードの不正利用」(26.0%)で、次いで「フィッシング詐欺」(14.4%)「なりすまし」(13.6%)だった。

MMD研究所 スマートフォン利用者実態調査 トラブルに遭った内容
キャッシュレス決済でトラブルに遭ったこと(n=441/複数回答可、出典:MMD研究所)

調査対象者にキャッシュレス決済で不正利用被害に遭わないために行っていることを聞いたところ、「利用明細をこまめに確認するようにした」が24.8%で最も多く、次いで「利用通知がメール、アプリで届くようにした」が16.8%、「定期的に銀行口座の入出金と残高の確認」が14.8%だった。一方、「特にこれと行って対策を講じていない」と回答した人は51.0%だった。

MMD研究所 スマートフォン利用者実態調査 キャッシュレス決済で不正利用被害に遭わないために行っていること
キャッシュレス決済で不正利用被害に遭わないためにしていること
(n=2231/複数回答可、出典:MMD研究所)

利用が増えたサービス上位は「動画配信サービス」「ネットショッピング」「ゲーム」

調査対象者に2021年と比べて利用が増えたサービスを聞いたところ、トップは「動画配信サービス」(17.1%)で、2位は「ネットショッピング」(13.2%)、3位は「ゲーム」(9.4%)だった。

MMD研究所 スマートフォン利用者実態調査 昨年より利用が増えたサービス
昨年と比べて利用が増えたサービス(n=2231/複数回答可、出典:MMD研究所)

サブスクリプション、音楽配信は「Spotify」、動画配信は「Amazon Prime Video」がトップ

「音楽アプリをインストールしている」と回答した人に、現在利用している音楽アプリを聞いたところ、最多は「Spotify」(28.0%)で、次いで「Apple Music」(21.5%)「Amazon Music Prime」(18.6%)だった。

MMD研究所 スマートフォン利用者実態調査 利用している音楽アプリ
現在利用している音楽アプリ(n=706/複数回答可、出典:MMD研究所)

「コミュニケーション、動画、SNSのアプリをインストールしている」と回答した人に、利用している動画コンテンツ(無料)を視聴するプラットフォームを聞いたところ、トップは「YouTube」(81.5%)で、次いで「LINE」(39.9%)「Instagram」(35.5%)だった。

MMD研究所 スマートフォン利用者実態調査 利用している動画コンテンツ視聴プラットフォーム
現在利用している動画コンテンツ(無料)視聴プラットフォーム
(n=1618/複数回答可、出典:MMD研究所)

「動画アプリをインストールしている」と回答した人に、現在月額料金を払って利用している定額制動画配信サービスを聞いたところ、「Amazon Prime Video」が28.5%で最も多く、次いで「Netflix」が11.6%、「U-NEXT」が3.9%だった。

MMD研究所 スマートフォン利用者実態調査 利用している定額制動画配信サービス
現在月額利用料を支払って利用している定額制動画配信サービス
(n=1235/複数回答可、出典:MMD研究所)
調査実施概要
藤田遥

物流業界の「2024年問題」とは/ECサイト売上高TOP300サイトの表示スピードを計測【ネッ担アクセスランキング】 | 週間人気記事ランキング

2 years 11ヶ月 ago
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    2023/1/11
     
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    2023/1/12
     
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    消費者庁審議官の真渕博氏は、電話受注の際に行う通販の「アップセル」「クロスセル」の販売手法を規制する改正特商法について「改正する方向で進めている」と話した

    2023/1/11
     
  9. ねじ専門商社のトルク、ねじ卸業者向けのBtoB-ECサイト「ねじネット」を開設

    「ねじネット」は10万点に及ぶ取り扱いアイテムの在庫状況や販売価格が24時間いつでも確認できるため、問い合わせする手間を省くことができる

    2023/1/6
     
  10. クレカの不正利用被害は3社に1社、被害額13%増の最新実態とEC事業者の対策

    かっこはEC事業者の不正対策に関する実態調査を実施、その結果を公表した。クレジットカード不正被害にあったことがあるEC事業者は3社に1社の36.4%にのぼる

    2023/1/6
     

※期間内のPV数によるランキングです。一部のまとめ記事や殿堂入り記事はランキング集計から除外されています。

藤田遥

ブックオフが食品のネット通販に参入、賞味期限間近の加工食品を売る「FOOD ReCO(フードレコ)」を楽天市場内に開設

2 years 11ヶ月 ago

ブックオフグループホールディングスの子会社で、リユースショップ「BOOKOFF」などを運営するブックオフコーポレーションは、賞味期限が迫った加工食品を販売するECサイト「FOOD ReCO」を「楽天市場」に出店した。

ブックオフグループホールディングスの子会社で、リユースショップ「BOOKOFF」などを運営するブックオフコーポレーションは、賞味期限が迫った加工食品を販売するECサイト「FOOD ReCO」を「楽天市場」に出店
「楽天市場」内に開設した「FOOD ReCO」

「FOOD ReCO」では、まだ食べることができるものの賞味期限の3分の1を超えた加工食品などを手頃な価格で販売する。取り扱うのは、菓子、飲料(酒類は除く)、カップ麺、調味料、缶詰、未開封の食玩など。

箱買いでまとめて購入できるため、食品値上げに対する生活防衛や家計の節約対策としても利用できるようにする。

こうした食品は、賞味期限が迫っていたり、パッケージが破損した商品、モデルチェンジによる旧パッケージ品、突然の発注キャンセル品などを法人から買い取っている。

ブックオフは2021年、一部店舗(24店舗)でフードロス食品の販売をスタート。商習慣によって行き場を失った加工食品を手頃な価格で販売する一方、法人からの買い取りを行うことで、過剰在庫や処分に困った事業者を支援。食品ロスの削減に取り組んできた。

ブックオフは2021年、一部店舗(24店舗)でフードロス食品の販売をスタート
ブックオフの実店舗で展開するフードロス食品

新たに立ち上げた「FOOD ReCO」は、Repro(再生)、Resend(再送)、Reuse(再利用)の「Re」と、環境保全を意味する「ECO」を掛け合わせた造語。

石居 岳

5割がSNSをきっかけにお取り寄せを経験! 調査結果に見る2023年“お取り寄せ通販”のトレンド

2 years 11ヶ月 ago

「おとりよせネット」を運営するアイランドは、ユーザーを対象に2022年の食品通販に関するアンケート調査を実施し、その調査結果を発表した。調査結果によると、SNSをきっかけに取り寄せ通販をしたことがある人は5割にのぼった。また、約6割がInstagramをきっかけにお取り寄せを経験したことがあることがわかった。

5割が“SNSをきっかけにお取り寄せ”経験

アンケート回答者のうち、SNSをきっかけにしてお取り寄せをしたことのある人は5割にのぼった。

SNSをきっかけにしてお取り寄せ通販をした人は半数にのぼった
SNSをきっかけにしてお取り寄せ通販をした人は半数にのぼった

InstagramやTwitterが“入り口”に

SNSをきっかけとした人の中で多かったのは「Instagram(58%)」「Twitter(54%)」だった。アイランドは「食品通販のマーケティングやプロモーションにおいてもより重要となってくる」と予想している。

InstagramやTwitterがお取り寄せ通販の“入り口”になっているケースが多い
InstagramやTwitterがお取り寄せ通販の“入り口”になっているケースが多い

利用拡大が期待されるお取り寄せは「ふるさと納税」?

今後活用してみたい食品通販は「ふるさと納税」が最も多く、61%にのぼった。

「ふるさと納税」を選ぶ人が最も多く、さらなる利用拡大が期待される
「ふるさと納税」を選ぶ人が最も多く、さらなる利用拡大が期待される

「ふるさと納税」、サスティナブルな商品、定期便など、食品通販のジャンルも多種多様な広がりがある。年々寄附者が高まっている「ふるさと納税」は、その中でも最多の支持を集めた。

食品通販では「訳あり商品」「お試しできる商品」が人気1位

2022年の食品通販の購買傾向は、「訳あり・お試しができる商品」が約4割にのぼった。

訳あり商品やお試しができる商品を好んで購入する人が最も多かった
訳あり商品やお試しができる商品を好んで購入する人が最も多かった

次いで「簡単調理系の商品」「解凍するだけの商品」も約3割となった。アイランドは「行動制限が緩和されたなかでも手軽に『お得にいろいろ試せる、ワクワク感やお楽しみ感もある』点が支持されているのではないか」と分析している。

購入目的は6割が「普段の食卓」

2022年の食品通販の購入目的は「普段の食卓」が最も多く、6割となった。行動制限が緩和されたなかでも在宅時間を楽しんだり、毎日の食事の手助けとして食品通販を活用している様子が伺える。

普段の食卓用(必需品)としてお取り寄せ通販を利用する人が多いことがわかった
普段の食卓用(必需品)としてお取り寄せ通販を利用する人が多いことがわかった

一方で「ご褒美」に関しては前回調査から16ポイント減になったという。アイランドは「巣ごもりニーズで特別感やご褒美系の商品は伸長していたが、人々の動きは活動的になって対面交流が増えてきたことが影響しているのではないか」と見ている。

調査概要

  • 調査方法:「おとりよせネット」にてアンケートを実施
  • 回答者詳細:【性別】男性26%/女性73%/回答しない1%。【年代】~20代:4%/30代:18%/40代:31%/50代:28%/60代以上:19%
  • 有効回答数:493人※設問により回答数は異なる
  • 実施期間:2022年10月7日~11月7日
高野 真維

ファーストリテイリンググループが従業員の年収を最大4割アップの報酬改定。「世界水準での競争力と成長力を強化するため」

2 years 11ヶ月 ago

ファーストリテイリンググループは2023年3月から報酬制度を改定し、人材への投資を大幅に強化する。

職種・階層別に求められる能力や要件を定義し、各従業員に付与している「グレード」の報酬水準を数%~約40%アップ。これを機に、役職手当などは取りやめ、それぞれの報酬は基本給と各期の業績成果によって決まる賞与などによって構成する。

人材への投資を決めたのは、企業としての世界水準での競争力と成長力を強化するため。「店舗で世界に通用する水準の仕事に取り組む人材にもしっかり報い、従業員1人ひとりの成長が、企業としての成長、さらには世界での競争力強化につながり、その結果として、さらに従業員に報いることができる企業経営をめざしていく」としている。

ファーストリテイリンググループは2023年3月から報酬制度を改定し、人材への投資を大幅に強化
人材投資のリリース(ファーストリテイリングのHPから編集部がキャプチャ)

従業員1人ひとりの新たな報酬は、仕事の実績・成果、組織に貢献する能力、成長意欲・成長性などの視点からグローバル共通の「グレードの基準」を明確化。上司による評価、経営層や人事部が1人ひとりの評価に関わり、フェアな評価を実現する。

ファーストリテイリンググループは現在、報酬改定を世界各地で進めている。今回は特に、海外に比べて報酬水準が低位にとどまっている日本の報酬テーブルを大幅にアップすることを決めた。

報酬改定に先駆け、国内店舗の準社員(パート)・アルバイトの時給を2022年9月に改定した。販売員への期待、職責、能力に応じてふさわしい報酬を支払うためとしている。

通販業界ではジャパネットホールディングスが2022年12月、グループ企業で勤務する正社員の平均年収を2年間で10%、非正規社員(契約社員・パート社員)は平均月収を4%引き上げると発表している。

2023年4月にジャパネットホールディングスを含む全グループ会社で給与改定を実施。正社員は同年4月から2年間で平均年収を10%アップ。非正規社員は2023年10月から平均月収を4%引き上げる。今回の給与改定は定期昇給とは異なる給与の引き上げで、定期昇給は例年通り4月に実施する。

石居 岳

買い物の参考にする人のトップは「家族・友人」。約7割がインフルエンサーより身近な人を参考にしている

2 years 11ヶ月 ago

スタッフDXツール「STAFF START」を提供するバニッシュ・スタンダードが実施した「買い物に迷ったとき」の行動に関するアンケート調査によると、商品購入時に参考にする情報のトップは「店頭で実際の商品を見る」だった。調査対象は全国の20歳~49歳の男女200サンプル、期間は2022年12月13日~12月14日。

商品購入時の参考情報「店頭で実際に商品を見る」がトップ

調査対象者に商品の購入で迷っている際、参考にする情報について聞いたところ、トップは「店頭で実際に商品を見て」(27.3%)、次いで「ネット上の口コミ」(18.7%)「公式HPの商品詳細ページ」(14.5%)だった。

バニッシュ・スタンダード 買い物に迷ったときの行動に関する調査 最も参考にする情報源
商品の購入を迷っている際に、最も参考にする情報源(複数回答可、出典:バニッシュ・スタンダード)

最も参考にする人は「家族・友人」

商品の購入を迷っている際に参考にする人を聞いたところ、「家族や友人」が41.0%で最多、次いで「お店の販売員」が28.5%、「専門テーマを持つマイクロインフルエンサー」が13.0%だった。

バニッシュ・スタンダード 買い物に迷ったときの行動に関する調査 最も参考にする人
商品の購入を迷っている際に、最も参考にする人(出典:バニッシュ・スタンダード)

「家族・友人」へのイメージは「信頼感」、「販売員」へは「自分に合った提案をしてくれる」

参考にする人へのイメージについて聞いたところ、「家族・友人」のトップは「信頼できる」(31.5%)で、次いで「身近に感じる」(26.5%)で2項目で過半数を超えた。

「お店の販売員」へのイメージは、「自分にあった提案をしてくれる」(34.2%)が最も高く、消費者はより信頼度が高く、自分に合った提案を求めていることが推測される。

バニッシュ・スタンダード 買い物に迷ったときの行動に関する調査 参考にする人へのイメージ
参考にする人へのイメージ(出典:バニッシュ・スタンダード)

一方、インフルエンサーや有名人へのイメージは「憧れる」「最新のトレンドを教えてくれる」「真似したいと思う」への回答が多かった。この結果から、消費者が「憧れる人」から買う時代から「信頼できる身近な人」から買う時代に移り変わっていることが見て取れるという。

約3割が「インフルエンサーを参考にした買い物に不満」

参考にする人からのオススメを購入した際に不満を感じるか聞いたところ、芸能人やメガインフルエンサーを参考に買い物をした人の約3割が「不満を感じる」と回答した。

一方、「家族・友人」では6.1%、「お店の販売員」では7.1%となり、身近な人のオススメを参考にした時の方が不満を感じる割合は低かった。

バニッシュ・スタンダード 買い物に迷ったときの行動に関する調査 オススメを購入した際に不満を感じる割合
オススメを購入した際に不満を感じる割合(出典:バニッシュ・スタンダード)

商品購入の理由トップは「使うシーンが想像できる」

商品購入の決め手になった理由を聞いたところ、トップは「使うシーンが想像できた」(28.5%)で、次いで「商品の紹介や説明に納得できる」(26.9%)「お得だから」(23.5%)で、自分自身の納得感を大事にする人が多いことがわかる。一方、「オススメされた」「みんなが買っている」など、外部要因に購入の理由を求める人も約1割いた。

バニッシュ・スタンダード 買い物に迷ったときの行動に関する調査 商品購入時の理由
商品の購入をする際に、よくある理由(複数回答可、出典:バニッシュ・スタンダード)
調査実施概要
  • 調査方法:インターネット調査(クロス・マーケティング セルフ型アンケートツール「QiQUMO」使用)
  • 調査期間:2022年12月13日~14日
  • 調査対象:全国47都道府県の20歳~49歳の男女
  • 有効回答:200サンプル
    ※調査結果は、端数処理のため構成比が100%にならない場合がある
藤田遥

逆風の2023年。米国市場に見るECマーケット予測とネット通販企業が厳しい競争に打ち勝つ方法とは | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

2 years 11ヶ月 ago
米国ではこの1年でオンライン通販企業の株価が、株式市場全体の下落を上回る勢いで急落。投資家は、投資先に売上高の伸びだけではなく、利益も追求しています

過去10年間で最も成功したいくつかのオンライン通販企業は、ここ数年の間に株式を公開したものの、株価は2022年、大きな打撃を受けました。売上高は伸びているにもかかわらず、利益が伸びない企業に対して、投資家は警戒心を強めているようです。この傾向が、すでに上場している企業だけでなく、スタートアップのオンライン通販事業者にも影響を及ぼしています。

記事のポイント
  • この1年、オンライン通販企業の株価は、株式市場全体の下落を上回る勢いで急落
  • 投資家は、売上高の伸びだけではなく、利益を追求
  • スタートアップのオンライン通販事業者にとって、上場している同業他社の業績が悪いと、ベンチャーキャピタルが新たなECビジネスに投資する可能性が低くなるという影響がある

私(『Digital Commerce 360』編集長)は、大企業をめざすオンライン小売事業者の将来の財務面は、楽観視できないと感じています。そして、そう感じているのは、私1人ではないようです。

コロナ禍後、消費が正常に戻るにつれ、オンラインのみで事業を展開する小売事業者は厳しい逆風にさらされていると見るアナリストもいます。消費者は実店舗に戻り、オンライン小売の成長は鈍化。資本の価値はさらに上がり、Amazonの影響で無料かつ迅速な配送を提供しなければいけないというプレッシャーも後退していません。

安定的に利益を伸ばしているオンライン小売事業者はたくさんあります。その多くは比較的狭いニッチな分野にこだわり、新規顧客獲得に多くの費用をかけず、ロイヤルカスタマーからリピート収入を得るというスタイルです。

急成長して株式を公開したオンライン通販専業企業は、安定的に利益を稼ぐのに苦労しており、投資家達は見通しが明るくないと考えています。

この傾向は、スタートアップのオンライン通販事業者だけでなく、すでに上場している企業にも影響を与えています。ベンチャーキャピタルは多くの場合、投資先のIPOによって大きなキャピタルゲインを得ることを期待していますが、上場したオンライン通販事業者が不振に陥れば、同業他社のIPOの見通しも悪くなり、投資家は同じような会社に出資するのをためらうようになるでしょう。

オンライン通販事業者の株価がコロナ禍のピークから急落

オンライン通販事業で資金調達をめざす起業家にとって残念なことは、過去10年間に株式公開した大手オンライン通販事業4社の2022年における株式市場でのパフォーマンスが、芳しくなかったことです。

その4社とは、ペット用品関連のEC企業「Chewy」、パーソナルスタイリングサービスの「Stitch Fix」、高級ブランド品のリセールを手がける「The RealReal」、家具や家庭用品などを販売するEC企業「Wayfair」です。これらの企業はいずれも、インターネット上でのリーチを革新的な方法で活用し、成功を収めてきたことが大きな特徴です。

ペット用品関連のEC企業「Chewy」
ペット用品関連のEC企業「Chewy」

「Chewy」はペット用品、「Wayfair」は家具などの商品を効果的にオンラインで販売できることを証明。「Stitch Fix」は、消費者が地元のブティックに期待するようなパーソナライズされたファッションアドバイスを提供し、それをオンラインで実現しました。「The RealReal」は、ローカルな委託販売店を大規模なオンラインビジネスに変貌させました。

パーソナルスタイリングサービスの「Stitch Fix」
パーソナルスタイリングサービスの「Stitch Fix」

4社のうち3社はコロナ禍でオンラインショッピングが急増し、業績は好調でした。例外は「The RealReal」。健康への懸念から消費者が古着の購入に慎重になったため、業績を落としています。

高級ブランド品のリセールを手がける「The RealReal」
高級ブランド品のリセールを手がける「The RealReal」

コロナ禍のロックダウン中に「Chewy」「Stitch Fix」「Wayfair」は成長し、2021年初頭の株価は、コロナ禍前の水準をはるかに上回りました。しかし、2022年に入ると一転。大手オンライン小売企業4社の株価は、2021年のピークの13%以下になっています

家具や家庭用品などを販売するEC企業「Wayfair」
家具や家庭用品などを販売するEC企業「Wayfair」

コロナ禍の恩恵を受けたテクノロジー企業にとって、2022年の株式市場は悪い1年となりました。幅広い市場を対象とした指数であるS&P500は、2022年12月下旬に2021年のピークの75.2%、ハイテク企業の多いNASDAQは64.3%に。Amazonでさえ、2021年の最高値の44.4%まで株価が下落しましたが、上記4社の下落幅はもっと大きく、2021年の最高値の平均12.6%にまで落ち込んでいます。

S&P500、NASDAQ、Amazon、オンライン通販4社(Chewy、Stitch Fix、The RealReal、Wayfair)の株価のピーク(2021年)と比較した2022年12月下旬時点の株価水準(出典:『Digital Commerce 360』の「2021年のピーク時と比較したChewy、Stitch Fix、The RealReal、Wayfairの平均株価」)

資本コストの上昇がオンライン通販に影響

コロナ禍で急騰した企業の株価が、株式市場の下落局面で大きく急落するのはしかたのないことでしょう。このような株価の急落は、上場して数年が経過した大手オンライン小売企業が、まだ利益を上げていないことに対する投資家達の懸念も反映しているのです。それは、年度末に現金を支出する必要のない経費も含めて算出した純利益ベースでは、利益が計上されていないからです。

インフラをスピーディーに構築し、新規顧客を獲得するために多額の資金を調達するスタートアップ企業は、減価償却やストックオプションの付与など、現金支出を伴わない項目の影響を除外することが多いのが特徴です。

しかし、それらは現実には支出です。投資した設備も将来的には交換しなければならないので、減価償却費が発生します。会社の株価が上がればストックオプションが行使され、その株式を発行した会社の価値は希薄化していきます。

経済が好調なとき、投資家達は売上高の伸びに注目し、いずれ利益が出ると考える傾向があります。しかし、経済の見通しが暗くなると、その状況は変わってきます。

消費財などのM&Aに力を入れる中堅投資銀行Mirus Capital Advisorsのパートナーであるスチュワート・ローズ氏は、ビジネスの環境が大きく変わってきていると指摘。数十年にわたって小売企業のM&Aに携わってきたローズ氏は、こう言います。

投資家達は、投資により慎重になっています。過去数十年、成長が収益につながると考えていましたが、今の投資家達は収益性を求めているのです。

オンライン販売で利益を上げるのが難しい要因の1つはAmazonとの競争です。「数千万人のプライム会員への無料高速配送に対抗しようとする販売事業者は利益を上げにくい」とローズ氏は指摘します。

Amazonが提供するサービスは、収益性の高いクラウドコンピューティング事業である「Amazon Web Services」が主な資金源。無料または低コストの配送を提供しようとするライバルの利益率は侵食されていくのです。

Amazonはほぼ独力で現在のオンライン小売環境を構築し、収益性の高い消費者直販型のビジネスモデルを事実上破壊してしまいました。低価格、無料配送、2日または1日以内配送サービスは、すべて彼らの資金調達能力または他の事業の利益によって賄われています。彼らは何百もの中小企業のビジネスを破壊したのです。(ローズ氏)

金利コストの上昇によりオンライン小売業の成長が制限される

プライベート・エクイティ会社 MidOcean Partners のエリック・ロス氏(消費者部門マネージング・ディレクター)はこう言います。

Amazonとの競争以外にも、投資家達が多くのオンライン小売事業者が今後数年間で急成長するのは難しいと考える要因がいくつかあります

上場している一部の大手オンライン通販事業者は、コロナ禍時に低金利と急増するオンライン需要の組み合わせを利用して、新規顧客の獲得や技術・物流基盤の構築のための資金を、低コストで借り入れたそうです。しかし、金利が大幅に上昇した現在、資金調達のコストがかなり高くなっているとロス氏は言います。

さらに、限られた商品しか取り扱っていないオンライン小売事業者やDtoCブランドにとっても成長するのが難しい環境になっています

靴やパンツやシャツを、どれくらいのバリエーションで作れるでしょう。企業のなかには、新しいアイデアを使い果たしたところもあるのです。(ロス氏)

オンライン通販事業者が競争に勝つには?

オンライン小売業に未来がないわけではないとロス氏やローズ氏などの専門家は言います。オンライン小売事業者は常に革新的で、消費者の関心を引くような新商品を発表し続けなければならないとロス氏は指摘。常にライバルを凌駕してきたブランドの一例としてNikeをあげていますが、Nikeのような研究開発リソースを持つオンライン小売事業者は少ないのが実情です。

また、店舗を開くことも成長するための方法の1つであるとロス氏は説明します。Forrester Research社のアナリストも同意見で、オンラインがスタートのDtoCブランドは「実店舗を開く」「店舗型小売店に卸す」しか生き残る道はないというのがロス氏の考えです。

ファッションD2Cブランド「Bonobos」のようなネット発のブランドは、在庫リスクをあまり負わないショールーム店舗を展開。消費者は店舗で服を見て試着し、選んだ服は倉庫から自宅まで配送するといったモデルで、成長してきたとロス氏は指摘しています。

消費者は店頭で実際に商品を見て、掘り出し物を見つけることができますが、商品自体は倉庫から出荷しているため、多くの在庫を抱える必要のないモデルです。店頭では、自分のサイズや欲しい機能を探すことができますし、実際に今でも多くの人が店頭で商品をチェックすることを望んでいるのです。

オンライン小売事業者が成功するもう1つの道は、コロナ禍に獲得した顧客に対してより多くの販売を行うことでしょう。しかし、オンライン小売事業者で、それに成功している企業はまだ少ないようです。「少なくとも、市場は彼らを評価していません」(ロス氏)

また、ローズ氏はオンライン小売事業者は赤字部分を切り捨て、小さなビジネスを展開すべきだと主張します。

全体的にビジネスが赤字でも、儲かっている部分があります。苦境に立たされているオンライン小売事業者は、利益の出ている部分を見つけ、それ以外の部分を切り捨てた方が良いでしょう。そうすれば、より小さく、より健全なビジネスができるはずです。(ローズ氏)

中堅オンラインショップは専門性とサービスで勝負

長く小売市場で存続しているオンライン小売事業者の多くの共通点は、収益性の高いニッチな分野に特化し、そのなかで成長しようとしてきたことです。

中堅オンライン小売事業者の多くは、ユニークな商品とその分野における真の専門知識を提供することで生き残っています。たとえば、教育用遊具を扱う「Fat Brain Toys」、南米のアパレル輸入業者「Peruvian Connection」、裁縫用品小売の「Lion Brand Yarn」などが良い事例と言えます。

また、優れたサービスを毎年提供し、販売価格が最安値でなくとも、リピート購入を続ける顧客を獲得している企業もあります。

その代表的な例が、未公開企業のCrutchfield社で、1974年にカーステレオのカタログ販売から始まり、現在はあらゆる家電商品を扱っています。

家電商品を扱う「Crutchfield」
家電商品を扱う「Crutchfield」

私の友人であるブライアンは、Crutchfield社の本社&実店舗を運営しているバージニア州シャーロッツビルに住んでいます。その彼の最近の経験を聞くと、顧客生涯価値(LTV)を伸ばすビジネスを手がけていることがわかりました。

新しいテレビとそれに合うサウンドシステムを探していたブライアン。最初に立ち寄ったCrutchfieldの店舗において、知識豊富な店員からさまざまな商品を見せてもらい、質問に対応してもらいました。2件目に足を運んだのはBest Buy。しかし、テレビ売り場にて接客をする店員はいなかったため、すぐに店を出ました。

その後、コストコのECサイト「Costco.com」でCrutchfieldよりも安い値段のテレビを発見、加えて互換性のあるサウンドシステムが50%オフで販売されていることを知りました。そこで、Crutchfieldに戻り、以前に対応した担当者にその旨を伝えると、テレビの価格はCostcoとほぼ同額まで下がりました。そこで、Costcoの音響機器の値段を伝えたところ、その店員は「ブライアンさん、Costcoで買ってください」と言ってきたのです。

ブライアンは心配になり、ステレオ機器を他の店で購入しても、テレビとサウンドシステムの両方をCrutchfieldに取り付けてもらえるだろうか?と店員に聞きました。店員は「はい、問題ありません」と答え、150ドルですべてを取り付けてくれたのでした。

ブライアンは新しいテレビのセットアップに感激。Crutchfieldの顧客になると同時に、Crutchfieldは彼が電子機器を探すときに最初に立ち寄る場所になりました。

こうしたケースは一例です。ただ、このようなサービスを提供することで、小売事業者は金利や株式市場の変動に関係なく、消費者の信頼を獲得し、ビジネスを継続することができるのです。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

Digital Commerce 360

オレオレ詐欺の被害額を超えるクレカの不正利用、経産省「2023年は400億円超のおそれ」

2 years 11ヶ月 ago

公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)が1月6日に実施した新年賀詞交歓会に経済産業省大臣官房審議官(商務・サービス担当)の澤井俊氏が登壇、2023年はクレジットカード不正利用被害が400億円を超える可能性があると指摘した。

経済産業省大臣官房審議官(商務・サービス担当) 澤井俊氏
経済産業省大臣官房審議官(商務・サービス担当) 澤井俊氏

不正利用額は「オレオレ詐欺」を大幅超え

一般社団法人日本クレジット協会が発表によると、2021年のクレジットカード不正利用被害額は330億円超。2022年1~9月期の不正利用被害額は309億円超となっており、前年を上回るペースで推移した。

2021年のクレジットカード不正利用被害は330億円超だった(画像は一般社団法人日本クレジット協会の公表資料から編集部がキャプチャ)
2021年のクレジットカード不正利用被害は330億円超(画像は一般社団法人日本クレジット協会の公表資料から編集部がキャプチャ)

澤井氏によると、クレジットカード不正利用額は「オレオレ詐欺」などの被害総額よりもはるかに大きくなっているという。警察庁の公表資料によると、「オレオレ詐欺」を含む2021年度における特殊詐欺全体の被害額は280億円超だった。

このような実態を踏まえて、澤井氏は「2023年はこれまでよりもさらに不正利用額の増加が予想される」とし、400億円を超える可能性に言及した。

経産省はこうした不正利用を防止し、セキュリティーを強化するため、2022年8月から「クレジットカード決済システムのセキュリティ対策強化検討会」を実施している。

澤井氏は「年度末にかけて具体的な方策を検討していく」と述べ、賀詞交歓会の参加者に協力を呼び掛けた。

高野 真維

【2023年のEC業界を徹底考察】高く売る販売方法、動画、3大モール攻略、ネット通販+GA4など重要ポイントを解説 | 竹内謙礼の一筆啓上

2 years 11ヶ月 ago
楽天やAmazonの最新情報、SNSやSEOの最新トレンドなど、Eコマース業界の2023年を考察。次年度の消費トレンドをまとめた「予測カレンダー」から抜粋(連載第24回)

次年度の消費トレンドをまとめた「予測カレンダー」を作り続けて16年目。毎年、ビジネスに役立つ予測情報に加えて、楽天やAmazonの最新情報、SNSやSEOの最新トレンドなどを100ページ以上のレジュメにまとめて販売している。今回は、その予測トレンドの一部を抜粋し、Eコマース業界の2023年を考察してみる。

インフレ進む1年に。カギは「高く売る」販売方法

2023年のネットショップ運営で最も大きな変化は、消費がデフレからインフレへとシフトすることである。企業物価指数と消費者物価指数にはまだまだ開きがあり、物価上昇トレンドは2023年も続く。特にネットショップは人件費や送料の高騰に大きな影響を受けるため、これからのEコマースの事業者は「モノを高く売る」という販売方法を習得していかなければ、生き残りが厳しくなる

安さの追求か、ブランド力か、二者択一?

Eコマースが登場した2000年頃から現在まで、日本はモノが安く買えるデフレの時代が続いていた。

ネットショップはセールやポイントを駆使して、「安く売る」という販売方法を得意としてきたが、「高く売る」という売り方には、ほとんどの人が慣れていない。2023年以降は生半可な価格競争とポイント付与では商品を売ることが難しくなり、「徹底的に安く売る」か「高くても買いたい商品を売る」か、二者択一を迫られることになる。

しかし、現状は前者の「徹底的に安く売る」という戦略は、資本力の乏しい多くのネットショップで実践することは難しい。利益を確保するためには、「高くても買いたい商品を売る」という販売方法しか生き残る道はない。そして、そのような付加価値を伝えて高く売る最も有効的な手段が、動画やSNSなどのコミュニケーションツールを活用した売り方になる。

勝ち抜くのは「モノを高く売れる」事業者

動画やSNSで商品の付加価値を高めることがネットショップ運営の戦略において重要となり、商品ページはただの“ポイントが付与される決済機能付きカート”という役割にしかならない。高いお金を払ってでも「この商品が欲しい」と思ってもらえるためには、写真と文章だけの商品ページだけでは役不足である。

2023年からは今まで以上にSNSや動画を駆使しなければ、適正な利益を確保できるネットショップ運営は難しくなると思ったほうがいいだろう。

このように2023年のEコマース業界は、お客に高く買ってもらう売り方を実践したネットショップが勝ち抜けていくと予想する。

巣ごもりの反動、旅行や外食に消費戻り

もう1つの予測は、巣ごもり消費の反動である。コロナが収束に向かうことで、お金が“モノ”から“コト”に動き始める。実際、コロナが一足早く収束したアメリカでは、2022年のAmazonのオンラインストアの売り上げが前年同期比で第一四半期がマイナス3.3%、第二四半期もマイナス4.3%と厳しい数字となった。

日本の場合、アメリカほど極端に数字が落ち込むことはないものの、ネットショップで買い物をしていたお金が、旅行や外食に流れてしまう可能性は十分にあると言える。

特に巣ごもり消費で好調だった、家具や寝具、家電などのネット販売は厳しくなると予想する。成長率が年平均3~4%と好調に推移してきた業界だが、世帯数のピークが2023年から減少トレンドに入るため、今までのような急成長は難しいと思われる。

また、実店舗を持つアパレル企業やホームセンターなどの異業種からの参入も増えていることから、今までネットショップで購入してきた消費者が、実店舗にスライドすることも予想される。

服飾品や化粧品は需要回復に期待

一方、外出が増えることで、衣料品やアクセサリー、化粧品などのネットショップは売り上げが急伸すると思われる。これらの商品のほとんどがコロナ前に購入したもので、トレンドとしては“型遅れ”になってしまう。

コロナの収束を機に、所有している衣料品や化粧品を総入れ替えする人がいたり、コロナ前では買わなかった高価格帯のブランドにチャレンジする人がいたり、2023年は新規顧客を獲得する機会が増えると予想する。

3年ぶりの買い物になるため、何を買っていいのか分からない人も多い。消費者の不安を打ち消すために、売り手側は来店前にオンライン接客やチャットで購入アドバイスすることが、新規顧客の獲得につながっていく

コロナ禍で顧客を満足させるポイントが“購入時”ではなく“購入前”にズレはじめていることから、オンラインによるコミュニケーションの技術力の高いネットショップが2023年は強さを発揮すると思われる。

動画がネット販売の中心に!?

3つ目の予想は、 Eコマースで動画の重要性が高まることである。2020年頃からYouTubeなどの“動画コマース”が注目されていたが、その流れが2023年からは「動画がなければモノが売れない」というほど、動画がネット販売の中心になっていくことが予想される。

「そんな大げさな」と思われるかもしれないが、コロナ禍に起きたさまざまな事象を検証すると、動画を使わずにネットでモノを売ること自体が難しくなることが伺える。以下、動画の重要性のポイントをまとめてみた。

【動画の重要性のポイント3点】 

  • Amazonでは動画の広告枠が増えており、動画広告の出稿を推奨している動きが出始めている。楽天やYahoo!ショッピングにも動画広告のトレンドが来るのは時間の問題であり、動画が作れないと、集客そのものが鈍化することになる。
  • InstagramやTwitterのアルゴリズムがエンゲージメント率を重視するようになった。それに伴い動画はシェアや保存がされやすいことから、「エンゲージメント率を高めるコンテンツ」として、SNSの戦略に必要不可欠になった。
  • 静止画よりも動画のほうが商品の付加価値が伝えやすく、商品のコンセプトやストーリーも理解してもらいやすい。デフレ時代にモノを安く売るのであれば、従来の写真と文章だけの商品ページで十分だったが、インフレ時に「モノを高く売る」のであれば、動画を駆使して「高い理由」を伝えなければ、利益を確保した価格で商品を売ることが難しくなる

熱烈なファンに高く買ってもらう仕掛けが必須

「どうしてもこの商品が欲しい」という購入心理に持ち込まなければ、高いお金を出してモノを買ってもらうことはできない

従来の差別化やオンリーワンの戦略では弱く、もっと強烈な個性で売り込む、“スーパーニッチ”な販売方法を展開していかなければ、消費者の心を揺さぶるエンゲージメント率の高い売り方を実践することはできない。

2023年は売り手側と買い手側が密なコミュニケーションを取るライブコマースやTikTokライブを活用した売り方に注目が集まる。ごく一部の人にしか受け入れられないニッチな商品だけど、熱烈なファン客に高く買ってもらう仕掛けが、2023年のネットショップには必要である。

TikTokなど売り手側と買い手側が密なコミュニケーションを取る売り方はますます活用が進むとみる
TikTokなど売り手側と買い手側が密なコミュニケーションを取る売り方はますます活用が進むとみる

3大モールの攻略、楽天の売り方は“Amazon寄り”に?

3大モールの2023年の攻略方法も考察しておきたい。

楽天市場では、2023年からSKU(Stock keeping Unit)プロジェクトがスタートする。1ページごとに複数のカートがつけられるようになり、売り方はAmazonに近くなる

従来の売り方や商品構成が大きく変わる店舗も出てくる可能性もあり、早い段階でSKU対策を講じておいた方がいいだろう。特に利益率の低い商品や原材料費がかかる商品に関しては、これを機に商品ラインナップから外してしまうのも一手である。

Amazonはマーケティング能力が問われる市場に

Amazonでは、クローラーの脆弱(ぜいじゃく)性を突いてAmazon内SEOで上位を狙う売り方が難しくなった。2023年からは、いわゆる“裏技”を駆使して売り上げを作ることが困難になる。

一方、広告戦略で売り上げを伸ばす事例が増えており、今後は高いマーケティングの能力を持ち合わせていなければ、Amazonで売り上げを伸ばすことが難しくなると予想する。

Yahoo!ショッピングはポイント還元策の影響を注視

Yahoo!ショッピングに関しては、2022年10月にPayPayモールと合併したことが大きな変化といえる。2つに分かれていたモールを1つにまとめたことで、広告戦略や販促企画を一本化したことは、Yahoo!ショッピングにおいてプラスに働く可能性が高い。

ただし、ポイント還元策を「日曜日」から「毎日」に切り替えたことによる売り上げへの影響は注視した方がいいだろう。

お祭りムードで週末のセール販売を盛り上げるほうが売れるのか、それとも、エブリデイ・ロー・プライス的な毎日ポイント還元のほうが売れるのか、今までの売り方が大きく変わる可能性がある。Yahoo!ショッピングの販促手法はマメに情報収集することをお勧めする

Yahoo!ショッピングを攻略するために役立つ書籍を紹介したい。コンサルタントの佐藤英介が執筆し、1月10日に発売された『Yahoo!ショッピング完全攻略ガイド~すぐに試せて伸び続けるネットショップ運営術』(技術評論社・刊)はぜひ目を通すことをお勧めする。

「GA4」は“慣れ”が必須

自社サイトのネットショップの運営者にとって気になるのは、2023年7月から導入される新しいWeb測定ツール「GA4」だろう。従来のUA(ユニバーサルアナリティクス)とは使い勝手がまったく異なるため、苦戦を強いられるネットショップが増えると予想する。

測定方法が「ページ単位」から「ユーザーの行動」での計測に変わるだけでなく、使用する言葉やデータの管理方法も大きく異なる。早い段階で「GA4」を導入し、運営に対する方向性を社内で決めておく必要がある

今までUAを積極的に活用していたネットショップは、少しずつ「GA4」に触れる時間を増やしていけば、時間の問題で慣れていくと思われる。

また、UAに慣れている人になればなるほど、「GA4」が使いづらくなるという声も出ており、少し荒治療になるが、データ解析の初心者にいきなり「GA4」を使わせて、マスターさせるのも一手である。

無理をしない選択もアリ?

一方、今までたまにしかUAを見てこなかったネットショップは、無理をして「GA4」を使いこなさなくてもいいだろう。

「たまにしか見ていない」ということは、データを戦略にフィードバックしたり、数字をもとに改善策や目標を立てたりすることができていないネットショップなので、そもそもデータを検証する意味がないといえる。

従来通りデータを無視して、勘に頼った売り方を展開していくしか方法はないので、「GA4」の導入は見送ったほうがいいだろう。

EC運営の「プロ」と「素人」の分岐点になる可能性も

今後は「GA4」を使いこなせるネットショップと、そうでないネットショップの二極化が加速していくと思われる。当然、データを使いこなせるネットショップのほうがきめ細やかな運営ができるので、売り上げを効率よく伸ばしていくことが可能になる。

一方、データを検証できないネットショップは時間とともに淘汰(とうた)されていく流れになる。

そういう視点でいえば、「GA4」の導入がネットショップ運営の「プロ」と「素人」の分岐点になっていく可能性は高いといえる。

2023年のEC業界は“向かい風”

2023年のEコマース業界は例年になく厳しくなることが予想される。ネットショップはインフレに弱く、行動制限によってモノの消費が鈍化することから、新たな施策を打ち立てなければ、厳しい競争の中で生き残ることが難しくなる。

私が毎年、Eコマース業界の予測トレンドのレポートを制作するのは、先が読みにくい時代だからこそ、“先を読む”ための備えがネットショップには必要だと思うからである。

防災グッズ、猛暑対策グッズ――予測を踏まえた“仕込み”で商機を

たとえば、2023年9月の防災月間は、関東大震災から100年目という節目となり、多くのメディアで防災グッズが取り上げられる可能性が高い。そのような予測が事前に分かれば、今から防災グッズの仕入れや商品開発を行っていれば、ネット販売でチャンスを手繰り寄せることができる

関東大震災から100年目となる節目には防災グッズの需要加速が期待される
関東大震災から100年目となる節目には防災グッズの需要加速が期待される

また、毎年、6月下旬に気象庁から猛暑予報が発表されて、この時期を境に猛暑対策グッズが売れ始める情報を事前に察知しておけば、ネット広告を仕込んで売り上げを伸ばすことも可能になる。

特に2023年は外出制限が緩和される可能性が高いことから、屋外の熱中症対策の商品が売れると思われる。

猛暑予報などを参考にしてニーズを予測すれば、関連商品のヒットにつながりやすい
猛暑予報などを参考にしてニーズを予測すれば、関連商品のヒットにつながりやすい

このように「予測」は商品の販売チャンスにつながり、SNSや動画でエンゲージメント率を高めるコンテンツとして優位性が高まる。不確実で読みにくい2023年だからこそ、先を読む力が例年以上に求められる。

【筆者からのお知らせ】

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竹内 謙礼
確認済み
24 分 37 秒 ago
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