BtoB-ECにより業務課題を解決したいという需要が高まっている。そんな環境下でBtoB-ECを立ち上げ、本格運用する上で押さえておきたいポイントが、課題の内容やビジネススタイルによってBtoB-EC構築の考え方や戦略は変わってくることだ。法人間取引における課題に合わせたBtoB-EC構築の事例から、課題や解決方法、考え方、成果などについて、EC構築を手掛けるecbeingの斉藤淳氏(マーケティング営業本部 上席執行役員)が解説する。
BtoB-ECが解決する5つの業務課題
まず斉藤氏は、BtoB-ECで解決できる課題は大きく以下の5つに整理できると指摘する。
- FAXや電話などアナログな受注業務の負荷を軽減したい
- 新規顧客を開拓し、売り上げを拡大したい
- 営業の業務負荷を軽減し、大型案件に集中したい
- Webカタログを活用し、問い合わせ業務の負荷を軽減したい
- 商流に販売店などを仲介し、三社間取引を実現したい
BtoB-ECで解決できる5つの課題
実際にecbeingでも上述の課題解決に関する相談は多いという。
紙や口頭ベースの受注業務の効率化を求める企業は特に多い。顧客開拓の観点からのBtoB-EC導入については「業務効率化により大型案件へ割くリソースを確保したい」「ECによってリーチできていなかった層にアプローチしたい」という声も多い。
また、問い合わせ対応の負荷を軽減する意味でWebカタログ活用のニーズも高い。顧客に求められる情報をWebで公開することによって、問い合わせの数そのものが低減し、リソースを確保できる。そして「BtoBtoB」や「BtoBtoC」のように、商流に販売代理店を介する三社間取引をECで実現したいというニーズもある。(斉藤氏)
ecbeing マーケティング営業本部 上席執行役員 斉藤 淳氏
BtoB-ECの目的別構造パターン
ecbeingではBtoB-ECの構造について、以下の3つに整理している。
①「クローズ型」BtoB-ECサイト
②「オープン型」BtoB-ECサイト
③「BtoBtoB/BtoBtoC型」BtoB-ECサイト
ecbeingではBtoB-ECサイトの構造を目的別に3つに分類
①の「クローズ型」BtoB-ECサイトは、「一般的にイメージされるBtoB-ECサイトの形に近い」(斉藤氏)とし、すでに取引のある既存顧客を対象に、受注処理業務の省力化を目的とするもの。サイトの閲覧は可能とするが、購入には申請と承認が必要となる「半クローズドサイト」という形式もある。
②の「オープン型」BtoB-ECサイトは、法人を対象とするが営業がリーチできていないロングテール層の顧客や新規顧客を広く開拓し、新規顧客からの売上増加を目的とするもの。
③の「BtoBtoB/BtoBtoC型」BtoB-ECサイトは、商流の間に販売店や代理店などの卸売業を仲介し、卸売業にメリットを付与するというものだ。
「クローズ型」BtoB-ECの事例
アナログ業務のDX化など、業務の効率化に成功した2社の「クローズ型」BtoB-EC実事例を紹介する。
・AGCグラスプロダクツ
AGCグラスプロダクツはAGCのグループ企業で、建築用ガラス製品を取り扱う。2006年から既存顧客をターゲットとしたBtoB-ECを運営していたが、カタログとサンプルを発注するだけのECサイトになっており、オフライン受注の管理や在庫管理に課題があったという。
電話やFAXなどの注文内容を、購入者に代わり企業側が代理で入力し、受注データを登録することができる「代理注文」機能の実現、倉庫側の業務負荷軽減、陳腐化したシステムの改善とセキュリティ面の対策強化を目的に、ecbeingの法人向けECプラットフォーム「ecbeing BtoB」でリニューアルした。
リニューアルにより、オフライン注文は自社社員が代理でECに入力して発注をかける方法に一本化。在庫をリアルタイムで連携できるようにした。それにより工数削減や発送対応の効率化を実現。在庫が正確に管理できるようになり、過剰な受注の抑制にもつながったという。
自社の課題が何なのか、それはBtoB-ECの仕組みで解決できるのか、はたまた別の仕組みでの解決が最適なのか、課題に対してプラットフォームが適合できるかをしっかり見定めていくことが非常に重要。AGCプロダクツさまの事例はこうした部分もクリアし、課題解決ができた好事例。(斉藤氏)
・ネグロス電工
ネグロス電工はケーブルラックといった電気・空調衛生設備資材を取り扱う企業。工事現場で実際に商品を使用する人をターゲットに、2022年春ごろにBtoB-ECを立ち上げた。社内業務負荷の軽減と、営業時間外の在庫確認や問い合わせ受付を可能にすることが目的だった。
もともと同社では電話やFAXで注文を受け付けていた。また注文以外の在庫や製品に関する問い合わせも多く、負荷がかかっていたという。BtoB-ECを導入し、顧客が品番だけで簡単に商品を注文できるようにすると、顧客側の利便性も向上した。営業所によっては1日約200件をシステムで自動対応できるようになり、電話やFAXによる注文や問い合わせを削減。社内業務の効率化を実現した。
顧客側の社内ルールなどの都合で、BtoB-ECでの注文ができないというケースもあるため、顧客に合わせて必要な機能だけをBtoB-ECで使用できるように制御したが、在庫確認など一部の機能を活用してもらうだけでもメリットを生み出せているという。
BtoB-ECと基幹システムを連携し、企業ごとに利用できる機能を制御
「オープン型」BtoB-ECの事例
続いて、新規顧客獲得や売上拡大を実現した4社の「オープン型」BtoB-EC実事例を紹介する。
・コニカミノルタジャパン
複合機やオフィス機器、インクや用紙などを扱うコニカミノルタジャパンでは、営業マンが対面で対応していた消耗品の販売における業務の効率化を実現した。同社ではコピー用紙やインクトナーなどの消耗品を訪問販売型で対応しており、営業マンの負担が大きく効率も悪かったという。BtoB-ECの導入により、これまで手作業だった発注を電子化。業務の効率化と売上拡大につながったという。
また顧客の声や市場ニーズをもとに取り扱いアイテム数を拡充。カタログを作り配布することで認知拡大も図った。ECで売れている商品の情報は営業マンの対面での販売でも活用し、顧客サービスの向上も実現した。
・ヤギ
綿・合繊糸など繊維原料を扱う繊維商社のヤギは、電話やFAXなどアナログで対応していた問い合わせや受注業務のDX化を目指し、BtoB-ECの導入を進めた。
BtoB-EC導入により、在庫確認や顧客への在庫状況の提示など、受注に関する業務の自動化を実現。また生産工場と連携し、本発注前に仮発注ができる「取り置き機能」や「サンプルオーダー」も実装した。FAXや電話による受注や在庫確認の回答待ち時間などが解消し、顧客サービスの向上と業務工数の削減につながった。そのほか、BtoB-ECをプラットフォーム化し、サプライヤー商品も掲載し、商品の拡充を実現。英語表示や海外決済導入などで海外対応も行った。
「BtoBtoB/BtoBtoC型」BtoB-ECサイトの事例
・ミルボン
ヘアサロン向けにヘアカラー剤やシャンプーなどを販売するミルボンは、オープン型でBtoBtoCの三社間取引BtoB-ECを構築した。ミルボン側で受発注を処理しエンドユーザーへ配送、卸先となるサロンに売り上げを還元するという商流の実現を目的に、BtoBtoCのECを構築した。
ミルボンでは「ミルボンID」という1つのIDでエンドユーザーとサロン、ミルボンをつなぐ
流れとしてはサロンに来店しカウンセリングを受けたエンドユーザーに、リーフレット(会員コード)を渡しECサイトで登録してもらう。「ミルボンID」という1つのIDでエンドユーザーとサロン、ミルボンをつなぐ。商流やブランド価値を変えない形でのECサイト構築を実現した。
4年で会員数は約70万人超となったという。ミルボンではCRMツールのオプションも導入。300を超えるシナリオを作成し、エンドユーザーのアフタードローのCRM施策にも力を入れ、売上向上につなげているという。
今後のBtoB-ECに重要な「デジタルマーケティング」
ecbeingが開発・提供する「ecbeing BtoB」は、本記事で解説したBtoB-ECによる5つの課題解決はもちろんのこと、3つの構造パターンのいずれも構築可能だ。
ecbeingでは仕入れ先ごとへの発注業務を自動化する「サプライヤーオプション」や営業がBtoB-EC上のデータを活用して得意先へのサポートに活用できる「Webセールスオフィスー営業支援サービス」などオプションも充実させている。また外部ツールとの連携により、法人間取引におけるさまざまな接点のデータ情報を集約、分析も可能だ。
ecbeingは複雑なBtoB-EC構築はもちろんデジタルマーケティング施策を成功させるためのオプションも豊富にそろえている
BtoB-ECにおいてもデジタルマーケティングは重要。今後成功していくためには、単にBtoB-ECサイトを作るだけではなく、データを分析し、いろいろなMA・CRMを実現していくことが非常に重要なポイントだと思う。(斉藤氏)
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オリジナル記事:事例から学ぶBtoB-ECサイト構築。業務効率化、売上拡大を実現した5社の成功ポイントとは
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