新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界中で小売店が大打撃を受けている。特に被害が深刻な米国で、企業はビジネスを継続するためにどんな工夫をしているのか。この不定期連載では米国の小売り・EC事業者の中から興味深い取り組みを行っている事例を紹介していく。第1弾は、「世界一面白いお店」を自称し注目を集めるニューヨーク発の「SHOWFIELDS」を取り上げる。
D2Cブランドをキュレーション
世界各国から小売り関係者が視察に訪れる注目店
筆者は数年前までアメリカ・ニューヨークで暮らし、現在も年に数回渡米している。フリーライターとして活動していた当時から米国の小売りやEC事業に興味を持ち、日本のさまざまなメディアに取材記事やサービス紹介記事を寄稿してきた。
また個人的な活動して、日本企業とともにニューヨーク市内の小売店舗を回る視察ツアーも行い、これまでに十数社をさまざまな店舗に案内した。
その中で必ず訪れていた場所がある。2018年12月にニューヨークにオープンした4階建ての商業施設「SHOWFIELDS」だ。“世界で一番面白いお店”を自称し、主に新興のD2Cブランド商品を集め展示販売を行うスタイルをとっている。
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米ニューヨークの「SHOWFIELDS」入り口(撮影:公文紫都)
年始にニューヨークで行われた世界最大級の小売りイベント「NRF 2020: Retail's Big Show & Expo」前日に店舗を訪れた際には、店内は視察に来た各国の小売り関係者で溢れかえり注目の高さが伺えた。
また「NRF 2020: Retail's Big Show & Expo」には、「SHOWFIELDS」の創業者タル・ズヴィ・ナサネルCEOが登壇。「D2Cブランドが顧客と接点を持てるように、リアルの場(=「SHOWFIELDS」)を作った」「顧客の平均滞在時間は33分」など興味深いエピソードを次々に披露したCEOの話に、多くの聴講者が耳を傾けた。
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「SHOWFIELDS」の創業者タル・ズヴィ・ナサネルCEO(撮影:公文紫都)
店内で扱うのは、主にD2Cブランド商品だ。
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2階には、1階より小さく区切られたスペースにブランド商品を展示(撮影:公文紫都)
メインフロアの1階はブランドごとに展示エリアが区切られているだけでなく、世界観を表現した個別の装飾を施すなど、その独特な演出が最大の特徴だ。
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メインの1階はブランドごとにデザインが大きく異なる。窓に面したスペースは窓の外にブランド名を掲示するなどの施策も(撮影:公文紫都)
出店料は2019年8月時点で、月額6,000ドル(約65万円)~1万2,000ドル(約130万円)。数ヶ月単位でブランドにスペースの短期貸しをしている。この出店料のなかに、店舗設計・デザイン、在庫管理のほか、店舗オペレーション費(各ブランドの商品やサービス知識を習得した「SHOWFIELDS」スタッフが接客・販売代行)が含まれる。
また店内での来店客の動きや、どんな商品に興味を持ったかなどをデジタル活用によって取得しており、そうした一連のデータは出店ブランドに提供される。売り上げに応じた手数料はかからない。
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各スペースに用意されたタブレット。「SHOWFIELDS」専用フォーマットを用意し、来店客自ら商品詳細の閲覧、メルマガ登録、注文などを行えるようにしている。(撮影:公文紫都)
また「HOUSE OF SHOWFIELDS」と呼ばれる、現役の俳優らが演技を交えてブランド商品を紹介するユニークな取り組みも行ってきた。
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演技を交えて商品の紹介をする現役俳優(撮影:公文紫都)
どの手法も独自性があることから、ニューヨークを中心に増加傾向にある「D2Cブランドのキュレーション型店舗」および「体験型店舗」の先駆けとして今後の展開が期待されていた。しかし、年内に2号店(マイアミ店)のオープンが明らかになったタイミングで、新型コロナウイルスの被害に直面した。
EC強化ヘ。注力するライブコマース
テーマごとにインフルエンサーが商品を紹介
実店舗の一時閉鎖を行っている今、「SHOWFIELDS」が力を入れるのがライブコマースだ。ライブコマースプラットフォームを用意し、「夏が来る」「マジック」などさまざまなテーマに合わせて、インフルエンサーが商品を紹介。その場でスムーズに商品ページへの遷移や、購入できる仕組みを整える。
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トップページでは占い師とコラボしたライブコマース情報を紹介(画像は「SHOWFIELDS」のサイトから編集部がキャプチャ)
ライブ配信後でもアーカイブから視聴できる。
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スムーズに視聴から商品ページへの遷移や購入ができる設計になっている(画像は「SHOWFIELDS」のサイトから編集部がキャプチャ)
以前はサイトトップページのメインビジュアルは実店舗を想起させるものだったが、現在はその趣をガラリと変更。ライブコマースや「母の日特集」など、リアル店舗からキュレーションECサイトへ大きく舵を切っている。
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メルマガでも積極的にライブコマースをアピールする(画像は「SHOWFIELDS」のメルマガから編集部がキャプチャ)
またライブ視聴者が一人増えるごとに、飢餓で戦う人々にさまざまな機関を通じて食事を提供する非営利組織「Feeding America」に1ドルを寄付する取り組みを行っている。
メルマガでは、自社の紹介を「世界一面白いお店」から下の写真のようにEC起点の内容に変えた。米国企業のこうした柔軟な姿勢やたくましさ、そして機転を利かせた発想力には、学ぶ点が多い。
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「SHOWFIELDS」から届いたメルマガ。「STORE」の部分をあえて空白にしたことで、顧客自身いろいろな想像を膨らませられそうだ(画像は「SHOWFIELDS」のメルマガから編集部がキャプチャ)
Facebookが“Shops”を始動
5月19日には、ついにFacebookとInstagram両方で利用できる“Shops”というショッピング機能が公開された。非常にシンプルな工程で出品、販売が可能となっている。
既存のECサイトやメッセージアプリとの連携、またライブコマース機能などさまざまな機能が提供されていく予定だ。EC市場に大きな衝撃を与えそうな“Shops”の提供により、ライブコマースは今後ますますEC事業者にとって欠かせない存在になっていくだろう。
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オリジナル記事:新型コロナで実店舗の一時閉鎖→ライブコマース強化。自称“世界一面白いお店”「SHOWFIELDS」のEC事例 | 米国のEC事例から学ぶビジネスのヒント
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