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~ IP Geolocation技術がインターネット上に境界をひく ~
インターネット上での動画配信はここ数年で急速に発達し、映画やテレビドラマなど様々なコンテンツを動画ポータルサイトから見ることが可能になりました。これに伴い、テレビ放送ではなくインターネットで動画を視聴する割合が年々増加傾向にあります。
インターネット上の動画コンテンツにもデジタル著作権という権利があり、再配布や、配信権利のある地域以外への配信を禁止しています。動画コンテンツの再配布防止のためには、種々の技術やハードウェアが開発されています。ところが、もう一方の配信地域の制限は、ボーダーレスなインターネットでは難しい課題でした。
オリンピックの放映権の管理は特に厳しいことが知られていますが、テレビ放送でも同様に放映権の中で放映地域が定められています。このため日本の放送は海外では見ることができませんし、海外の番組を日本で自由に視聴することもできません。映画でもライセンス権の中で上映できる地域が定められています。
では、世界中から接続ができるインターネット上の放送は、どうやって管理されているのでしょう?実はここで動いているのが、IPアドレスの位置情報であるIP Geolocation*なのです。
*IP Geolocationとは、IPアドレスとその利用地域やネットワーク接続環境などを関連付けたIPアドレスデータベースです。(http://www.arearesearch.co.jp/ip/)
IP Geolocationデータは、インターネットのユーザビリティ向上やマーケティングを目的としたコンテンツ/広告の地域配信、コンプライアンスを目的とした配信地域制限、不正防止を目的とした不正アクセスブロックや不正検出など、多様な分野で利用されています。
1.IP Geolocationの始まり
ウェブコンテンツの地域配信は、アメリカが先駆けです。1999年あたりから登場したIP Geolocationが知られるようになったきっかけの一つに、フランスの反人種差別グループがYahoo!に対して起こした裁判がありました。
フランス国内ではナチスドイツ関連のオークションサイトが違法なため、同様の英語サイトへのフランスからのアクセス拒否を求めたのです。Yahoo!は境界のないインターネット上でフランスユーザーを区別するのは技術的に不可能だ、と反論しました。そこで検証に呼ばれたのがIP GeolocationプロバイダInfoSplit社(2004年にQuova社が買収)でした。当時のIP Geolocation技術でフランスユーザーの90%が判別できることが実証され、Yahoo!が敗訴しました。
インターネット上に地理情報を持ち込むことを知らしめたIP Geolocation技術はその後、オンライン不正防止・デジタル著作権管理・広告/コンテンツ地域配信などの分野でなくてはならない技術になっていきました。
2.動画配信分野でのIP Geolocation利用のきっかけとなったオリンピック
動画配信での地域制限は、オリンピックやワールドカップを初めとする世界的なスポーツイベントに端を発しているといえます。
2000年シドニーのパラリンピックでは、史上初のネット放映権を米国メディアが取得しました。一方のシドニーオリンピックは、IOC(国際オリンピック委員会)が、ネット放送は配信地域の管理ができないためテレビ放送の放映権を侵害するとして、ネット放送を全面的に禁止していました。
しかし2002年のソルトレークオリンピックでは、ブロードバンドの普及に伴うネット放送を求める声の高まりと、ユーザーの位置を判別してネット配信の地域を制限できるIP Geolocation技術の精度の向上を視野に入れ、試験的なネット放送が行われました。そして、この技術によってインターネット上でも配信地域の管理が可能であると判断された2004年のアテネオリンピックでは、多数のサイトからストリーミング配信されました。2006年のトリノオリンピックでもインターネット放送が行われ、今年夏の北京オリンピックではさらに広範囲で配信されることでしょう。
また、アメリカでのメジャーリーグの生中継も2002年秋からIP Geolocationによって可能になりました。メジャーリーグのテレビ放送には、数兆円単位の放映権が支払われています。MLB.comでのインターネット放送は、テレビ放送の契約を侵害しないよう、動画配信地域を厳密に管理する必要がありました。例えば、NYヤンキースの生中継はマンハッタンでオンライン配信してはいけないなど、細かい地域制限があり、IP Geolocationによるユーザーの位置情報なくしては厳密な制限が不可能でした。
インターネット放送は、IOCやメジャーリーグに思わぬ利益を与えました。その後、サッカーワールドカップやツール・ド・フランスなど、厳格に放送地域を管理する必要のある世界的なスポーツイベントが次々に参入しました。この技術が、映画・ドラマ・国内のスポーツイベントなど、やはり配信地域に制限のあるインターネット放送を可能にしています。
3.デジタル著作権管理に欠かせないIP Geolocation
動画配信技術は既にある程度普及しました。これからの動画配信に求められるのは質やサービスの向上になることが予想されます。アメリカのあるオンライン動画配信サイトは、当初はスポーツ中継などを有料で提供していましたが、視聴者が増えるにつれて広告主も集まるようになり、現在は無料でサービスを提供しています。また、Googleも有料配信サービスを廃止し、無料サービスを提供しています。
今後のインターネット放送では、カメラの位置を自分の好みで選択できるなど、オンラインならではの様々な機能が増えていくかもしれません。高品質化という面では、2007年に入ってからコンテンツのハイビジョン配信が始まっており、AkamaiやLimelight Networksなどが次々にサービスを開始しています。
これまでは画質の悪さもあって黙認されていたデジタル著作権ですが、配信動画の高品質化を受けて、管理が厳格化されてゆく傾向にあります。実際、フランスでは2007年11月に違法コンテンツをダウンロードした個人にISPへの接続停止などの罰を科す法律が発表されたばかりです。またイギリス政府も、違法なファイルシェアリングを取り締まる法律の施行を考えていることを明らかにしています。
このようなオンライン動画配信の高機能化に伴う、デジタル著作権管理の厳格化の流れの中、配信地域を管理して著作権管理を行うIP Geolocationは、必要不可欠な存在です。
現在、日本国内でIP Geolocationデータを作成しているのは、サイバーエリアリサーチのみです。IP Geolocationデータの精度は契約のコンプライアンスには非常に重要です。国内唯一のIP Geolocationプロバイダであるサイバーエリアリサーチでは、専任の調査員が日々データ精度向上に努めています。
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