NPSが高いと売上に影響があるのか? 自動車業界を対象とした調査で、その関係性が明らかに

日経BPコンサルティングとEmotion Techは共同で自動車業界のNPSと収益性などを明らかにする調査を実施。NPSスコア1位はベンツ。

日経BPコンサルティングとEmotion Techは共同で、自動車業界におけるNPSと収益性の関係や、NPSを向上させるためにはどのような要因が重要であるか探索することを主目的とした調査を実施し、その結果を発表した。

トヨタや日産、ホンダなどの国内メーカー・ブランドをはじめ、メルセデス・ベンツやBMWといった外資系メーカー・ブランドを含む合計16社を対象に調査を行い、分析可能なサンプルが集まった12社を分析対象としている。

NPSが第1位「メルセデス・ベンツ」51.6

図1 分析対象12メーカー/ブランドのNPS
トヨタ、アウディ、ホンダ、日産、ダイハツ、スズキ、スバル、三菱、マツダ、フォルクス・ワーゲン、ベンツ、BMW
※今回の調査対象は16メーカー/ブランドであるが、レクサス、BMWMINI、ボルボ、フォードの4メーカー/ブランドは、サンプル数が30件に満たなかったため今回対象外とした。

NPSが1位となったのは、「メルセデス・ベンツ」で、NPSスコア:51.6と、他と比較し突出して高い値であった。

次いで、「BMW」(NPSスコア:13.6)、3位に国内メーカーの「スバル」(NPSスコア:2.0)となった。4位以下のNPSスコアはマイナスと、批判者が推奨者の比率を上回った。

「メルセデス・ベンツ」は日頃より、NPSを意識した顧客対応に取り組んでいる成果が表れた結果ともいえる。国内で1位となった「スバル」は、中高年における根強いリピーター(スバルシンパ)がNPSスコアの底上げに寄与している。

NPSとは、「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略で、顧客ロイヤルティ(企業やブランドに対する愛着・信頼の度合い)を数値化する指標。NPSは「推奨者の正味比率」と訳され、-100%~100%の間の数値で表される。

具体的には、「友人や知人に対する、その企業が提供するサービスや商品を推奨度」を10~0までの11段階で尋ね、「推奨者(9または10との回答)」の割合(%)から、「批判者(6以下の回答)」の割合(%)を引いた結果を指す。

NPSスコアが高い企業 = 事業の成長率が高い

2012年~2016年各社販売台数年平均成長率とNPSの相関
出典:「国内販売台数 年平均成長率」については、マークラインズ社の自動車産業ポータル「情報プラットホーム」のデータを引用

調査対象の12メーカー/ブランドの「販売台数年平均成長率」と「NPS」における相関性について、注目した。

直近5年間(2012年~2016年)の販売台数年平均成長率とNPSとの相関係数を見たところ、0.88と非常に高い相関関係があった。自動車業界においては、顧客ロイヤルティが高いほど、販売台数に直結すると言えるだろう。

一般的に、NPSスコアが上位の企業は、事業成長率が高いと言われるが、本調査でも実証された形だ。

相関の強さの目安としては次の通り。

  • 強い関係がある±0.7~±1
  • やや相関あり±0.4~±0.7
  • 弱い相関あり±0.2~±0.4
  • ほとんど相関なし±0~±0.2

NPS上位と下位のメーカー/ブランドの差異は?

NPS上位と下位のメーカー/ブランドで顧客のNPSとカスタマーエクスペリエンス(CX)の関係性において、どのような差異があるのかについて注目した。分析時のサンプル数を確保するために上位、下位それぞれ3つのメーカー/ブランドの回答者をもとに分析を行ったところ、上位と下位とでは、顧客のNPSとCXの関係性は大きく異なる結果が得られた。

Emotion Tech社がもつ特許技術(統計解析手法)を用いることにより、NPS対する影響を示す「重要度」(グラフ上青線)、NPSをどの程度向上・低下させているかを示す「現状の評価」(グラフ上赤線)を算出した。

NPS上位3メーカー/ブランド

NPS上位3メーカー/ブランドのNPSに対する影響度と現状の満足度

NPS上位3メーカー/ブランドは顧客ロイヤルティ向上には「試乗時の体験」、「購入後運転時の体験」の改善が必要だという結果が出た。

上位3メーカー/ブランドでみると、NPSへ影響を与える要因として重要度が大きいものとして、「試乗時の体験」では、「試乗コースの案内」、次いで、「操作説明」の順となった(表1)。

表1 NPS上位3メーカー/ブランドの「試乗時の体験」におけるNPSへの影響項目

同様に「購入後の乗車時の体験」では、「操作性」が挙がっており、購入後乗車してからの「操作性」が、人に薦める際に大きく影響しているといえる(表2)。

表2 NPS上位3メーカー/ブランドの「購入後の運転時の体験」におけるNPSへの影響項目

下位3メーカー/ブランド

NPS下位3メーカー/ブランドのNPSに対する影響度と現状の満足度

一方、下位3メーカー/ブランドでは、上位とは異なり、「ブランドイメージ」、「販売店に行く前に参考にした情報」、「店舗の環境」の改善が必要だという結果が出た。

特に、「店舗の環境」に関しては、NPSに対する影響力と現状の評価のギャップが最も大きく、その影響項目の中で「居心地の良さ、くつろぎやすさ、落着き」が、突出してNPSへの影響が大きくなっている(表3)。店舗での「居心地の良さ、くつろぎやすさ、落着き」の向上が、NPS向上における大きな要因の1つといえ、下位3メーカー/ブランドが特に改善に注力すべき点といえるだろう。

表3 NPS下位3メーカー/ブランドの「店舗環境」におけるNPSへの影響項目(上位5項目)

「ブランドイメージ」については、「安全性」が最も高く、「安全性」の向上が、ブランドイメージの向上につながるといえる(表4)。

表4 NPS下位3メーカー/ブランドの「自動車のメーカー/ブランドに対するイメージ」におけるNPSへの影響項目(上位5項目)

「販売店に行く前に参考にした情報」においては、「キャンペーン情報(値引き等)」が非常に高く、キャンペーンの実施が、人への推奨を高めているといえる(表5)。

表5 NPS下位3メーカー/ブランドの「販売店に行く前に参考にした情報」におけるNPSへの影響項目(上位5項目)

「マイカーに対するNPS/顧客体験調査」について

  • 調査概要:「マイカーに対するNPS/顧客体験調査」は、自動車所有者1569名を対象に、NPSと購入までの体験、購入後の体験に関して調査を実施。
  • 対象ブランド:トヨタ、アウディ、ホンダ、日産、ダイハツ、スズキ、スバル、三菱、マツダ、フォルクス・ワーゲン、ベンツ、BMW
  • 調査手法:インターネット調査
  • 調査対象:日経BPコンサルティング調査モニター
  • 有効回答数:1544名
  • 調査期間:2017年9月15日~9月22日

※本調査による調査報告書の発売はない。下記リンクから、本調査のより詳細のデータ/分析をダウンロードできる。

https://www.emotion-tech.co.jp/resource/2017/automobile2_part1

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