スマホで“瞳の健康”チェック! AI搭載「スマイル角膜チェッカー」を体験してみた | ライオンのAI活用
ライオンの目薬ブランド「スマイル」から、瞳の状態をスコア化し、目薬選びをサポートするWebコンテンツ「スマイル角膜チェッカー」が3月15日にリリースされた。
コンテンツページにアクセスしてスマートフォンで顔写真を撮影すると、AIが10秒で瞳の状態をスコア化、トータルスコアを5段階で表示する。目の悩みや清涼感の好みなどからユーザーにマッチする目薬の検索もできる。
同コンテンツには、現状多くの人が実践できていない角膜ケアの習慣化を促進したい狙いがあるという。ライオンの朝比奈大輔氏に「スマイル角膜チェッカー」の特徴を聞くと共に、実際に瞳の健康状態をチェックしてみた。
写真から「角膜」と「涙」の状態を5段階でスコア化
スマイル角膜チェッカーには、次の2つの機能がある。
- 瞳のAIチェック
- 目薬検索
「瞳のAIチェック」は、疾病の診断や治療、予防は目的にしておらず、角膜ダメージや瞳のうるおい状態をケアする習慣の啓発を目的に作成されたサポートツールだ。目に関連した4つのスコアを参考に「角膜」と「涙」の状態をチェックし、5段階でトータルスコア化する。4つのスコアとは、次を指す。
- 角膜スコア
- 涙スコア
- 涙のムチン層のスコア
- 涙の油層のスコア
角膜とは黒目の部分を指し、その表面には涙液膜が広がっています。涙は『油層』『水層』『ムチン層』の三層構造になっていて角膜を保護する作用があります。涙液膜は加齢やライフスタイル、コンタクトレンズ装用など、さまざまな影響を受けて崩れやすくなり、そうなると角膜にダメージを受けやすくなります(朝比奈氏)
瞳のAIチェックの利用手順は、次のとおりだ。メガネをかけた状態だと正しく測定されない可能性があるため、裸眼かコンタクトレンズを装着した状態で利用する。
利用方法瞳のAIチェック
- 画面左手の「瞳のAIチェック」をタップ
- 画面に表示される緑色の枠内に顔がなるべく大きく映るようにスマホを顔に近づける
- カメラボタンをタップし、ボタンの位置に目線をキープしながら撮影する(3、2、1とカウントダウンが始まり自動的に撮影)
- 撮影画像からAIが瞳を自動検知し、角膜と涙の状態を5段階でスコア化する
「目薬検索」は、ユーザーの目の症状や清涼感の好みなどにマッチするものを検索するツールだ。利用手順は次のとおりだ。
利用方法目薬検索
- 画面右手の「目薬検索」をタップ
- 画面に表示される質問のうち、該当するものにチェックする
- チェックした条件に該当する「スマイル」ブランドの目薬が表示される
角膜と涙の両方の状態をチェックできるのは、スマイル角膜チェッカーが日本初だという(ライオン調べ)。ちなみに、スマイル角膜チェッカーの類似コンテンツには、参天製薬が開発した「瞳うるるスキャン」があり、これは「瞳のうるおい度」をAIが判定するものだ。
角膜はダメージを受けやすい一方で、少しの傷では自覚症状がなく、日頃から角膜をケアしようという意識がない方が多いんです。目の疲れやかすみ、充血・かゆみなどの共通原因のひとつが角膜ダメージと言われており、日々のケアが大切です(朝比奈氏)
こういった背景から、角膜ケアの習慣を促す目的でスマイル角膜チェッカーを開発。コンタクト利用者よりも眼科に行く機会が少ないと予想される裸眼の人をメインターゲットにしているという。
東京電機大学と共同開発、数年がかりで実用化へ
スマイル角膜チェッカーの開発は、2019年から始まった。その背景には、現代人の目の疲れが悪化しているにもかかわらず、多くの人がケアをしていない現状があった。
特にコロナ禍になってからは、リモート会議が増えたり、自宅にこもってゲームをする時間が増えたり、一段と画面を見る時間が増えた人が多いようでした。当社がコロナ禍に実施した“目の疲れ・不調”の実態調査※では、43%の人が『もっとも疲れや不調が増えた身体部位は目だ』と回答しました(朝比奈氏)
また多くの人が目の不調を感じているにもかかわらず、不調があっても47.6%の人は特に目のケアをしていないこともわかったそうだ。
開発にあたっては、東京電機大学 長谷川誠教授(工学部情報通信工学科 画像処理研究室)と協業した。同研究室が持つAI画像解析技術のノウハウと、ライオンが以前から取り組んできた角膜研究の成果を活用し、数年がかりでリリースにこぎつけたという。
同コンテンツは、AIに数千枚の目の画像を学習させて角膜スコアを判別できるようにしています。数千枚の目の状態を複数カテゴリーに分け、利用者の目の状態がどこに当てはまるかを判断しているのですが、10秒で高い精度のスコアを出すことは非常に苦労しました(朝比奈氏)
「スマイル角膜チェッカー」を体験してみた
実際に、筆者がスマイル角膜チェッカーを体験してみることに。ソフトコンタクトレンズを装着した状態で顔を撮影すると、10秒足らずでスコアが表示された。さらに、現在の角膜や涙の状態に応じたアドバイスや注意も閲覧できる。
ちなみに、角膜や涙の状態は、目の疲れ具合や目薬等でケアする前後で変わってくるという。後日、再びチェックしてみると角膜スコアが「平均より低め」となり、トータルスコアは「星3つ」だった。
瞳のケアを習慣化するには、数日に1回ほどのペースで同じぐらいの時間にチェックして、瞳の健康状態を把握するのが推奨される。アドバイスに沿って目を休ませたり、角膜ダメージを修復する目薬を使用したりするなどして瞳をケアするのが効果的だ。
文書作成や知識伝承にも「AI」を積極活用
ライオンでは、スマイル角膜チェッカーの開発と同時期の2019年から、AIの積極活用が始まったという。2023年5月には、日本マイクロソフトが提供する最新デジタル技術 Azure OpenAI Service を活用して自社開発した対話型生成AI「LION AI Chat」を国内従業員約5000人に向けて導入している。
対話型生成AIは、適切にプロンプトを入力しないと望む回答が得られません。そこで生成AIに不慣れな人でも使いやすいよう、目的別のテンプレートを用意しました。たとえば、『メール作成』なら件名や宛名、伝えたいこと、文字量、自身の肩書きなどを入力すると、それに沿った文章が生成されます(広報担当者)
それでも何度かやり取りしないと望むような文章が生成されないこともあるが、業務効率化や文章表現の幅を広げるなどに役立っているそうだ。
さらに、2023年12月には、社内の知見を有効活用するための「知識伝承のAI化」ツールも発表している。これは、自社のデータベースと検索システムに生成AIを搭載し、ほしい情報が素早く入手できるようにしたもの。およそ1年間かけて開発し、2024年6月頃から試験運用を開始する予定だという。
属人化が課題だった研究データをスピーディーに検索できる状態を目指しています。プロンプトを入力すると膨大なデータから要約が出力され、誰がその研究に関与しているかの情報も抽出できます(広報担当者)
単なる業務効率化にとどまらず、過去の情報と自身が持つ知見をかけ合わせることで、イノベーション促進が期待されている。AIの導入が加速しているライオン。今後のアップデートにも注目したい。
ソーシャルもやってます!