note #等身大の企業広報レポート

カインズとキリンが語る「オウンドメディアにルールなし! 成功の秘訣とは?」 #等身大の企業広報

オウンドメディアに求められる役割とは何なのか。カインズの清水氏とキリンの平山氏に聞いた。

コーポレートサイトやSNS、プレスリリースなど、企業が情報発信をする場所はさまざまあります。そんななか、オウンドメディアに求められる役割とは何なのでしょうか。どうすればうまく運営しつづけられるのでしょうか。

今回の「等身大の企業広報」では、注目を集めるオウンドメディアを運営されているカインズの清水俊隆さんとキリンホールディングスの平山高敏さんをお招きし、運営のこだわりや試行錯誤の過程をお伺いしました。オウンドメディアの運営に悩んでいる方にとってヒントになれば幸いです。

noteの許諾を得て、Web担で掲載しています。オリジナル記事はこちら →https://note.com/notemag_business/n/n4cc2770564b6

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合言葉は「メシの横にムシ」。カオスもOKの方針で

━━カインズさんのオウンドメディア『となりのカインズさん』は、2020年6月の創刊から半年で月間100万PV、1年以内に月間400万PVを達成しました。立ち上げの背景をお聞かせください。

清水さん 当初の目的はデジタルマーケティングのみでしたが、立ち上げたころはオウンドメディアに対する社内の理解も得られないような雰囲気でした。ですので、デジタルマーケティングに加えて全社改革も目指すことにしました。まずは社内の意識改革をして、デジタルシフトを推進する方向に持っていかなければいけないと考えました。

株式会社カインズ メディア統括部 部長 清水俊隆さん

カインズは商品カテゴリーがとても多いこともあり、オウンドメディアのコンセプトを立てるのが非常に難しかったため、「メシの横にムシ」という合言葉を掲げました。料理グッズの隣りに防虫剤がある、というようなカオスもOKにする方針です。その一方でカオスでもぶれないように「記事投稿者もお客さんである」「記事もDIYである(失敗上等)」などの軸を決めました。

 

何を伝えていきたいのかというメディアの世界観を大切にする

━━キリンさんは2019年4月にnoteのアカウントを立ち上げました。2021年からは『KIRINto』というオウンドメディアも展開されています。

平山さん 以前は企業を主語にしたコンテンツが世の中に多く流通していたと思います。でも2019年にトヨタ自動車がオウンドメディア『トヨタイムズ』をはじめたり、ユニクロが雑誌『LifeWear magazine』を創刊したことに象徴されるように、企業にも社会の一員としてのメッセージが求められるようになってきました。そうした世の中の流れもあり、社会や個人を起点とした発信をしたいと考え、noteをはじめました。

キリンホールディングス株式会社 コーポレートコミュニケーション部 平山高敏さん

noteはいま力を入れてコンテンツも増やしていますが、プラットフォーム上のコンテンツですので、やはり一丁目一番地である「kirin.co.jp」に社会主語のメディアを立ち上げるべきだと考え『KIRINto』をはじめました。

 

企業主語の部分と読者の関心を引くことをあわせてコンテンツを考えるのが一般的ですが、そこにそのメディアが何を伝えていきたいのかという世界観を入れることが大事だと思います。オウンドメディアを続けるためには、そのメディアがほかでは伝えられない場所になっているかどうかということを、都度確認しながらやっていくことが必要です。

 

「失敗上等」のDIY感覚で、新しいことをやっていく

━━『となりのカインズさん』は当初顔出しNGだったけれど、顔を出す方向に切り替えたら反響があったそうですね。

モデレーター:noteプロデューサー 徳力基彦さん

清水さん はい。『カインズの知られざるハンガーの世界』という記事で初めて社員が顔を出しました。カインズの社員が登場するようになると、「このお店に行ってみたい」とか「この商品はどこにありますか?」といったお問い合わせをいただくようになりました。

その後、『大震災とホームセンターの関係、「地域インフラ」としての役割』という記事のなかでカインズのスタンスなどを示した際に、社内で「泣いた」とか「カインズで働いていることを誇りに思った」という声が出てきました。

カインズ社員が自腹で買った名作10選「おすすめ掃除道具」』では、編集部員が社内の主婦層におすすめ商品を聞き、実際に自腹で買ってレポートしています。カインズは社員割引がないので、社員自身がめちゃくちゃシビアにカインズで買い物をしているんです。

また、カインズはザスパクサツ群馬(Jリーグ)のスポンサーをやらせていただいているんですが、ザスパのファンだからカインズに入ったという社員がいて。『ザスパ愛が強すぎてカインズに入社。Jリーグに魅了されたガチサポ店員の話』という記事で自らザスパ愛を告白し、その後、その社員による選手や監督へのインタビューが実現しました。

これらの事例から、社内のことをきちんと外に出していくのが大事だと社内啓蒙していきました。なかには、プロの編集者目線で見たら記事としてあまり成立していないレベルのコンテンツもあるかもしれません。でも、遊びの感覚というか、「失敗上等」のDIY感覚を大切にしています。オウンドメディアをやるからには、既成概念にとらわれずにどんどん新しいことをやっていきたいと考えています。

また、『となりのカインズさん』にはカインズ以外の企業様の記事も掲載しているので、さらにカオスが生まれています。カオスの縁まで行くけれど、その縁から落ちないようにということは意識しています。

 

コンテンツよりもコミュニケーションを考えるほうがおもしろくなる

━━キリンさんの事例についても教えてください。

平山さん noteはプロセスとパーソナルのメディアだと思っています。「これが答えです」ではなく、「こういうふうに悩み続けています」というプロセスを個人の言葉で伝えていくことができる。

わたしとキリン』という社員へのインタビュー企画では、上司やお客様との関わりのなかで自分が大切にしている価値観について聞いています。それを表に出すことで、キリンの人格というものがなんとなくぼんやりと見えてきたらいいなという思いではじめました。取材対象者からの反応は、当初は「こんな話おもしろいの?」というものが多かったです。でもこういう場を設けることで、自分がなぜキリンで働いているのかを振り返る機会にもなるのではないかと思いました。企業で働いているとどうしても「どんな成果が出るのか」というコミュニケーションになりがちですが、それよりも「なぜそれをやりたいのか」を大事にしていきたいなと思っています。

noteをやりながらプラットフォーム上の読者の声を丹念に拾っていくうち、「点ではなく線」だと実感するようになりました。『今日はキリンラガーを』というマガジンでは、「キリンラガーは伝統的なブランドで歴史がある」というブランドの価値を一方的に伝える点の感触ではなく、「歴史があるからこそのお客様との関係性」という線の感触を出しています。社員自らがラガーへの愛着を語るという記事を発信したら、Twitter上で「私も好きです」という反応がありました。

オウンドメディアをつくる際はどうしてもコンテンツを考えてしまうけれど、それよりもそのコンテンツを起点にしてどんなコミュニケーションが生まれるのかを考えるほうがおもしろくなるのではないかと思いますし、SNS上のシェアなどによる拡散にもつながると思っています。

自分の「B面」を外に出していく

━━効果測定についてもお聞きしたいと思います。カインズさんではどのような指標を見ていますか?

清水さん 主に「閲覧数」「送客数」「売上数」を見ています。カインズは店舗が広いので、商品の売り場がどこにあるのかを検索できるアプリがあるんです。『となりのカインズさん』で特定の商品の記事を出したあとにアプリの検索数が増えたことでも記事の効果がわかります。また、記事を公開したあとにいかに売上が増加しているかもわかるため、マーケティングの仮説検証も可能です。こういったデータを分析し、コンテンツの良し悪しの振り返りにもつなげています。

 

効果測定は目的によってほかにも見るポイントがいろいろあります。オウンドメディアの意義は、マーケティングだけではなく組織のマインドと戦略を束ねるという側面もありますし、コンテンツをつくるだけではなくマーケティングや経営知識もあったほうがよいと思っています。1つの領域に完結しないで、総合格闘技のように、全部わかった上で運営できる社員が一人でも増えていけばいいなと思っています。

カインズには、趣味がすごいった社員も多いので、そういう「B面」を社外に向かって表現していくこともカインズにとってプラスになってきています。今後は、いかに全社総力戦に持ち込むかということが大事になってくると思います。

 

1つのコンテンツをどれだけほかに展開させられるか

━━おもしろいひとが社内にたくさんいて、そういうひとたちが集まっているからこそおもしろい商品が生まれるというストーリーがあるということですね。キリンさんはいかがでしょうか?

平山さん  noteとTwitterは相性がいいので、Twitterでシェアされたコンテンツのリーチ数は見ていますね。キリンはメーカーなので実際の売上の数字はなかなか追いかけられませんが、メディアにとってのヘルシーな状態というところを重要視しながらKPIの設計をしています。ヘルシーな状態というのは、5年後10年後もそのコンテンツがつかえ、いろいろな方に読み続けてもらえるということ。長く読み続けてもらうコンテンツをつくることが1つの価値になります。

清水さんは「総合格闘技」とおっしゃいましたが、僕は「縦と横の面積」という言い方をしています。一度つくったコンテンツは、採用コンテンツにもつかえたり、商品のリリースの裏側を伝えるものになったり、営業ツールになったりもする。このように、1つのコンテンツをどれだけほかに展開させられるかというのは、我々のような数字だけでは判断しづらいメディアにとっては大事な観点です。そうすると社内からも「出してください」という声が上がるし、社会からも関心を持たれ、期待されることにもつながります。このように、社内・社会両方に求められる状態を目指しています。

 

オウンドメディアがあることは、働くことをよりたのしくしていくこと

━━ありがとうございます。では最後に視聴者の方に向けて、明日から実践できる取り組みについてアドバイスをいただけますでしょうか。

清水さん オウンドメディアにはルールはないと思うし、なんでも詰め込める使い勝手のいい媒体なので、あまりとらわれずに自由な発想でいろいろ試してみるといいと思います。だれかに言われてやるのではなく、自分がやりたいからやるんだという姿勢が大事です。担当者や記事を書くライターさんがたのしむことが一番だと思います。でも、きちんと会社の役に立っていることが前提です。どのように事業貢献するのか多角的な視点で運営していくのがいいのではないかと思います。

 

平山さん オウンドメディアの運営は、経営、マーケティング、執筆、コピーライティングなど、働く上で大事な要素がいろいろ詰まっているエキサイティングな仕事。オウンドメディアがあることは、働くことをよりたのしくしていくことでもあると個人的には思っているので、いかに自分がそこに目を向けられているか、その上で自分に何ができるのかを考えるところからやってみるといいと思います。まずは個人でnoteを書いてみるのもいいかもしれません。そこで反響があった喜びというものの延長線上に企業のメディアもあると思うので、個人でどれだけメディアをつかいこなせるかを試すというのは、すごく大事な入口かなと思います。

 

━━おふたりとも、 本日は貴重なお話をありがとうございました!

登壇者プロフィール

 

株式会社カインズ メディア統括部 部長
清水 俊隆さん

早稲田大学卒業後、建設業界に特化した求人サイトやメディアの立ち上げ等を経て、2020年にカインズ入社。黎明期のデジタル戦略本部にて、ホームセンターをDXするオウンドメディア『となりのカインズさん』を創刊。現在はコンテンツマーケティングを軸とした経営課題の解決のほか、複数事業のグロースを担う。

 
 

キリンホールディングス株式会社 コーポレートコミュニケーション部
平山 高敏さん

広告会社を経て、2012年より昭文社にて『ことりっぷweb』のプロデューサーとしてコンテンツ企画、SNS戦略、コミュニティ戦略など全般を担う。2018年キリンホールディングス入社。2019年「キリンビール公式note(現KIRIN公式note)」を立ち上げ、オウンドメディアを軸にした企業コミュニケーションの戦略を担う。

 

text by 渡邊敏恵

 
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