アタラ Unyoo.jp 特選記事

Bright DataのOrgad氏に聞く「ウェブデータで変わる企業の意思決定」【アタラ Unyoo.jp 特選記事】

価格比較、金融投資データ、マーケットリサーチなどWebデータ収集業界をリードするBright Data。ディレクターのOmri Orgad氏に話を聞いた。

価格比較、金融投資データ、マーケットリサーチなどインターネット上に公開されているあらゆるデータを集約し活用可能にする、Webデータ収集業界をリードするBright Data。
現在、イスラエルおよび米国をビジネス拠点として、グローバルにサービスを展開。
Fortune500にリストアップされる企業を中心に、ブランドセーフティ、デジタルコンテンツの著作権保護などさまざまな場面で活用されている、この世界最大のウェブデータプラットフォーマーに企業の成り立ち、今後の展望をお聞きしました。
話し手:
Bright Data Inc.
北米マネージングディレクター
Omri Orgadさん
聞き手:
アタラ合同会社
CEO 杉原剛

目次

・高まるウェブデータのニーズ
・得られたデータをどう使えばいいのか


高まるウェブデータのニーズ

杉原:はじめに、Omri Orgadさんの経歴とBright Dataにおける役割を教えてください。
Omri:私はBright Dataのほぼ創業時からいる初期メンバーで、入社して7年目になります。現在はBright Dataの北米地域のマネージング・ディレクターを務めています。
当初、私たちのプロダクトは一つしかなく、そのGTM戦略(※GTM=Go To Market。自社の商品やサービスをどのような流れで顧客へ届けるかをまとめた戦略)に携わってきました。私自身、会社と共に成長してきたといっても過言ではありません。その後、事業開発責任者になりました。コロナに見舞われたこの2年間に北米に組織を作り、チーム作りに専念していましたが、非常にチャレンジングな取り組みとなりました。

杉原:北米での事業規模はどのくらいでしょうか。
Omri:現在米国内には30人、また、グローバルでは350人の従業員がいます。大企業向けソフトウェア業界においては規模的に大きな組織とはいえませんが、大企業向けソフトウェア市場にどう販売するか、もしくは中堅企業市場に対してどういう価格設定にして販売するかなど、とても学ぶことが多いですね。米国の中堅企業市場だけみても3,000万社もの企業が存在しますから。
その中堅企業のうち、5%でも10%でも獲得できれば150万社から300万社の顧客になるわけですから、その市場をどう攻略していくべきか考えるということは、どのようにその市場を知るかということに通じます。そうした意味でもこれは手応えのある挑戦であり、大変興味深い仕事だと考えています。
杉原:おっしゃるとおり、GTM戦略は大変興味深い仕事だと思います。では、Bright Dataの概要および事業を簡単にご説明いただけますか。
Omri:Bright Dataは、過去7年間にわたり培ってきた経験をもとにしたオンラインデータ収集市場のマーケットリーダーです。10,000社の顧客を持ち、小売、Eコマース、旅行、セキュリティ、ハイテク、金融サービスなどの主要市場で活動しています。本社はイスラエルにあります。社員数は300人で、現在も成長を続けています。
杉原:ありがとうございます。では、なぜ今ウェブデータのニーズが高まっているのかを教えてください。
Omri:ウェブはこれまでに創造されてきた中で最大のデータ保管庫だといえるでしょう。そして、インターネットの分野でビジネスをしていると、現在の経済界の状況や今何が起きているのかを理解するのに一般公開されているインターネットやオンラインデータからの情報収集が最も適した手法であると理解できます。
例えば価格や在庫に関する情報などのファクトだけではないのです。顧客や消費者の意見もデータベース化されており、商品がどこにあるのか、商品の順位はどうなのか、何が売れるのか、製品や企業について市場がどのように考えているか、そしてユーザーが何を考えているか、市場の反応はどうなのかなど、オンラインの場はリアルタイムで何かを判断するのに最適だといえます。
杉原:そのようなデータは膨大で、集めることは技術的にとても難しいと思いますが、その技術力が御社の競争力の一つであるということでしょうか。
Omri:Bright Dataはこの分野のイノベーターといっても過言ではありません。私たちはこの領域で複数の特許技術を持っています。この技術を自ら形にしていくことには多大な労力が必要ですが、私たちの技術を使うことで、多くの人の仕事を楽にできると考えています。
技術を活用するにあたっては、多くの課題が浮かび上がってきます。それらの課題に共通しているのは、さまざまな視点から多くの情報を得られる技術を使い、最初に何を(どのような情報を)収集すべきか、ということだと思います。
小売や不動産の価格やサプライチェーンマネジメントで起きていることなど、数多くの情報を収集することができますが、それぞれを収集する上で共通する最初のステップは「どこで買えばいいのか?」「何を収集すればいいのか?」「データから得られる効果は何か?」「データからどのようなビジネスの意思決定をすればいいのか?」などの基本的な問いです。これが常に最初のステップとなり、これを正しく理解することで物事をよりシンプルにすることができると考えています。そして、それができることで、課題に取り組むために適した方法を見つけることができるはずです。
杉原:分かりました。では、御社が提供しているソリューションについて教えてください。
Omri:よく例え話をするのですが、1980年代から1990年代は高速道路を走っているようなもの。その道路では皆、同じ標識を見ますね。同じ屋外広告も目にします。広告掲載期間が終わった後に、その広告の周辺地域の販売結果を見て良しあしを判断する。そんな時代でした。
それに比べ、現代のインターネット社会は全く違います。それぞれの人のための高速道路があるようなものです。そして、その高速道路で見る広告やコンテンツも人それぞれに合わせたもの。ですので、現代のインターネットで何が実際に起きているかを理解するには、一人一人の高速道路に乗ってみるしかないのです。
その目的は企業によっては市場・競合の価格を調べたり、広告をモニタリングしたりするなどさまざまですが、とにかく人それぞれの異なる高速道路に乗らないと分かりません。
そして、企業は今、それをどのようにできるかを決め、実行しないといけないのです。弊社では企業が活用できる3層のソリューションを提供しています。まず基本的な1層目はインフラ層です。企業側で担う部分は多いですが、そのための基盤を提供します。プロキシネットワークの提供などがこれにあたります。これらを自前で準備せず、弊社サービスを利用する理由は企業によってさまざまで、それぞれの提供ソリューションが付加価値の高いものになっています。
二つ目の層は、ウェブ上でリクエストを送信するときのアプリケーション層です。ウェブサイトは三つの異なる指標によってあなたを認識します。一つ目はIPアドレス、二つ目はユーザーエージェント、そして三つ目はクッキーや閲覧履歴です。これについては議論の余地がありますが、いずれにしても適切なIPアドレスやユーザーエージェントが必要です。そこで、私たちが正しいユーザーエージェントを選択するための機能を提供します。
3層目はスケジューリングやデータ取得および納品などを含む包括的なサービスを提供する層です。つまり、弊社サービスを利用している企業が欲しいデータを指定すれば、弊社が裏で全てを実行し、顧客が必要な出力項目にマッチするデータセットを納品するというものです。以上がBright Dataが提供する3層のソリューションです。

杉原:分かりやすいご説明ありがとうございます。では、マーケティング担当者はBright Dataを使うことでどのようなメリットを得られるのでしょうか。
Omri:前述の通り、ウェブは最大のデータ保管庫だと思うので、マーケティングに関連するデータ項目は数多くあるかもしれませんが、基本的な考え方は、実在するユーザーが今体験していることはインターネットに反映されているということです。マーケティング担当者が、ユーザーが何を見ているのか、何を検索しているのか、何についてコメントしているのかを理解したいのであれば、ユーザーの体験を反映しているデータが必要です。
次に、ソーシャルメディアで公開されている情報や、これらの情報に影響を与えているEコマースサイトで公開されているパブリック・データを見てみましょう。パブリック・データとは、ユーザーが実際に見ているもの、検索しているもの、価格へのコメントなど、さまざまな理由で閲覧しているものを指します。
マーケティング担当者が、ユーザーが何を体験しているのかを本当に理解したいのであれば、先ほどの高速道路の例えに戻る必要があります。ユーザーが見ている検索結果を知りたい、製品に対するユーザーのレビューを知りたいなど、ユーザーが何を体験しているか、どのようなコメントしているのか、ユーザーそれぞれの高速道路に乗ってそういった情報を入手する必要があるということです。

杉原:データを収集してユーザーを理解したいというニーズは潜在的には多いはずですが、実際にそのニーズが顕在化している状況ですか。
Omri:企業による弊社ソリューションの採用は進んでおり、弊社も成長しているので、それはニーズが顕在化していることの表れの一つと捉えています。また、現在、世の中が企業に対してリアルタイムな意思決定を求めるようになっていることも分かっています。また、この意思決定スピードも、今後、加速していくでしょう。市場が成長し、リアルタイムになっていく中で、多くの決定を下すための活動もどんどん迅速になっています。ということで、弊社では今後需要が拡大していくことを期待していますし、何年もかけてわれわれの領域の市場を成長させていきたいと考えています。私たちが世界中で活動しているのは、こうした動きは米国だけで起きていることではないと思っているからです。
米国は間違いなくイノベーションの宝庫です。私はニューヨークに住んでいますが、ここは文字どおり、歩道さえもが誇らしげにしているような力を持った都市です。そして人々は多忙です。しかし、それはここニューヨークだけではなく、世界中で起こっていることであり、イノベーションに対する需要は増える一方です。例えばAIに対してより多くのデータを投入したいという案件も多いですし、同様に、データを活用してリアルタイムに意思決定を行う他のテクノロジーもさらに出てくるでしょう。雪だるま式に需要は高まっているのです。

得られたデータをどう使えばいいのか

杉原:多くの人や企業はそのようなデータを得る方法を知りませんし、もし御社のようなソリューションに出会ってデータを得ることができても、そのデータで何をすればいいのかが分からないことも多いと思います。御社はデータ収集ソリューションだけでなく、それらのデータをどのように使用するかについてのコンサルティングなども提供しているのでしょうか。
Omri:今後可能性はなくはないと考えていますが、現時点ではコンサルティングサービスの提供はしていません。データ市場はこの7年で本当に進化しましたが、特に過去1年は飛躍的な成長を遂げました。もちろん、今見ている市場の成長はほんの一部に過ぎず常に進化し続けています。
オンラインデータ市場に限っていえば、ウェブ情報の活用、収集、伝達、活用に精通した専門家の間で人々が移動しているのが分かります。実際に、データ企業から銀行やヘッジファンドなどの大企業へ人が移っています。ですから、日本の市場がアメリカと同じような状況になれば、中小企業にいる専門家が大企業に移っていくことになると思います。そして、データの専門家となる人はますます増えていくでしょう。
杉原:イノベーションの創出や企業の意思決定スピードは加速していて、その中核となるデータ活用のニーズは当然あり、それらを支えることができる人やシステムなどのエコシステムが生まれつつあるいうことですね。
Omri:一例としてオルタナティブデータ市場があります。これは投資判断に使用するデータの市場です。主に金融領域で伝統的に使われてきた財務情報や経済統計のようなデータ(Traditional Data)に対し、オルタナティブデータはこれまで利活用の進んでなかったさまざまな外部業界・分野のデータを意味します。そして、統計データによれば、オルタナティブデータ市場は前年比で約50%も成長しているということです。データ上だけでいえば20億ドルの市場です。そして、その領域の専門家がデータ会社などから別の会社へ移っているのです。これは、専門家がある場所から別の場所に移動するのを見るよい例であり、弊社データの専門家でも同じことが起こると思っています。
杉原:偶然にも、先日ある会社のオンライン限定セミナーで、ある金融会社のケーススタディを紹介していたのですが、講演者の方がオルタナティブデータを使ってどのようにデータ分析をしたか、とても分かりやすくプレゼンをしていて、オルタナティブデータによる意思決定について繰り返し語っていました。ちょうどこれがキーワードのようなものだと思っていたところでした。金融業界におけるオルタナティブデータの専門家が増え、業界に広がっていくように、ウェブデータの担い手となる人が増えて、さまざまな企業に拡がっていくと見ているわけですね。興味深いですね。
では、Bright Dataが日本市場へどのように参入しようと計画しているかについても教えてください。

Omri:私がアメリカで経験したことにも関連していますが、日本は明らかに他と異なる市場であると思います。しかし、どのようにして他国の市場に参入するかという一般的な話をすると、まず相手の文化を理解する必要があると考えています。外国企業が他の国の経済圏に参入するためには、まずその国の文化、ビジネスの文化を理解する必要があります。また、物事がどのように動いているかを理解しているアンバサダーやリーダーが必要です。どこもそれぞれ市場が異なるので、市場の動きを尊重することがまず必要です。弊社のように社員が350人いれば異なる文化を持つ人もたくさんいます。しかし、だからといってさまざまな市場に参入できるという意味ではありません。むしろ逆で、本当にその市場について理解する方法を見つけなければなりません。これはアメリカでも、世界の他の国でも必要なことです。尊敬の念を持って入るべきですし、そこが大きな市場であることを理解すべきです。

そして、その市場について分析しなければなりません。例えば、アメリカ市場のスイートスポットとは何でしょうか。先ほど中堅企業市場の規模についてもお話ししました通り、なんといってもアメリカ市場のスイートスポットは小売市場でしょう。オンライン情報市場にいる弊社のようなイスラエル企業にとっては大変魅力的です。だからこそ私たちが日本市場で始めるべきことは、大きな価値を持つスイートスポットを見つけることだと思います。そして、深く市場に精通しているアンバサダーを獲得すること。それがおそらく最良の計画だと思います。
杉原:なるほど。小売市場の話はその通りだと思いますが、中小企業に対しては勝機はあるのでしょうか。
Omri:中小企業と仕事をすることで素晴らしいと感じるのは意思決定が非常に早いことです。200人から最大で1000人程度の会社の場合、CEOが直々に、さまざまなことを統括し、予算を持ち、意思決定をしています。会社のゲートキーパーでもあり最終意思決定者です。一人の人に多くのことが集約されているのでとてもスピーディです。彼ら自身が製品を使っているのですから。そういう人にこそ、意味のある提供価値が必要ですが、彼らに合った提案ができれば、意思決定もアクションも早いので、弊社としては参入しやすいのです。
大企業の世界では、状況は全く違います。意思決定の権限が分散しています。調達もそうですし、活用するテクノロジーもそうです。弊社のような企業としては両方の市場に適切な対応をすることが重要です。
杉原:ありがとうございます。今後、データ市場はどのようになっていくと予測していますか。
Omri:数週間前、数ヶ月前にも私たちは調査を行いました。そして、100の金融機関を対象に調査を行った結果、二つの興味深い回答が得られました。一つは、95%の金融機関がビジネス上の意思決定を行う際に、オンラインデータをその一部として利用しているということ。しかし、それを毎日行っているのは4分の1近くの24%に過ぎません。ここにギャップがあると考えています。
ウェブデータを利用することは価値のあることだと理解されていますが、それが日常の意思決定に採用されることはまだ実現していません。市場があることは分かっていますし、私たちがそれをできることは分かっていても、市場が十分な成長をしていないのです。今日のデータ市場は、ビジネス上の意思決定やそのような分野では正直なところ、まずESG(環境・社会・ガバナンス)に取り組む組織を皮切りに伸びていくと思います。
弊社は、Brightイニシアチブという名の取り組みを積極的に進めています。これは「世の中をウェブデータでよくする」ということを目的に、弊社のデータやその利用に関する専門性を、NPO、NGO、学術機関、政府自治体などにプロボノで提供するものです。重要な研究を行うために弊社のデータを利用する多くの大学と提携しています。
今後の市場予測ですが、一つ目は、データの重要性を理解しているにもかかわらず、それを十分に活用していない企業が多いため、データ市場はまだまだ成長の余地があると考えています。二つ目は、人や企業はデータを通じてよりまとまった理解を追求していくと思います。例えばボトルの清涼飲料水を買う際、消費者は味やカロリーだけでなく、使われたボトルが最終的にどうなるのか、その会社の従業員に対して公正な報酬が支払われているのかなども知りたがっているのです。このように、データ市場の大部分は、経済活動がもたらす影響、あるいは日々の人間の活動の真の影響とは何かを理解するための一部になりつつあると思います。
杉原:ESGの見通しは本当に興味深いですね。特に大企業は積極的に取り組む必要があると思います。ただ、「世界共通の判断基準がない」とも言われている中で、Bright Dataのようなデータを使って進んで判断基準となるような発信をしていくことは意義があるように思います。
そして、企業の日々の意思決定においてデータが必須でありつつも、まだまだそういった意識で取り組んでいる組織は現実的には少ないですが、確実に増えていくでしょうし、そうしないともはや変化のスピードにもついていけないですし、成長できないことは明白ですね。本日はどうもありがとうございました。

Omri:ありがとうございました

  • 杉原 剛
    杉原 剛

    アタラ合同会社CEO。KDDI、インテルでコンサルティング営業、マーケティングに従事。2002年にオーバーチュアの立ち上げメンバーとして営業戦略全般を担う。2007年にグーグルのAdWords、YouTube広告事業の戦略立案、オペレーション設計、APIエバンジェライズに携わった後、アタラ合同会社を創業し、代表を務める。WebAPIを活用した各種システム開発、マーケティングとITを融合した各種コンサルティングを行う。その傍ら、多くの起業、事業相談に対するアドバイスや支援を実施している。オーバーチュア プロフェッショナル制度の初代講師、Google 認定Advertising Professional、Salesforce.com 認定セールス、Domo 認定ビジネスコンサルタント 杉原剛についてもっと詳しく知る

「アタラ Unyoo.jp 特選コラム」掲載のオリジナル版はこちら【対談】Bright Data Orgadさんに聞く:ウェブデータで変わる企業の意思決定

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