ECサイト売上を伸ばす! 購買率アップのためにやっておきたい施策4選
ECサイトの売り上げアップにはなにが必要なのか? 真っ先に思いつくのが「集客」だろう。広告やSEOによって、サイト来訪者の絶対数が増えれば、比例して売り上げも増えていく。
その一方で「集客を無駄にしない」という発想が重要だと語るのが、ブレインパッドの上村篤嗣氏だ。「Web担当者Forumミーティング 2021 秋」に登壇した上村氏は、顧客の行動を測定し、その分析結果にもとづいてECサイトの仕様を改善し、“購買率”を上げていくプロセスを解説した。
多くの指標を整理し、複数のKPIを構造化して考える
上村氏が所属するブレインパッドは2004年の創業以来、一貫してデータマーケティング関連のサービスを提供している企業だ。自社開発のデータビジネス・プラットフォーム「Rtoaster(アールトースター)」のほか、海外製プロダクトまでを幅広く提供。また上村氏自身はアパレル、化粧品、雑貨などさまざまな業種のECサイト運営を長年サポートしてきた専門家である。
膨大な指標から何をKPIとするか
その上村氏はまず、経営学の大家であるピーター・ドラッカーの発言「測定できないものはマネージできない」を引用し、顧客行動を分析するためには、それらの指標化が極めて重要だとした。
ただ、一口に指標といってもその種類は膨大だ。インプレッション(Imp)、ページビュー(PV)、ユニークユーザー(UU)など単純に量を測るもの、クリック率(CTR)やコンバージョン率(CVR)のように行動の割合を測るものもあれば、投資効果を計測するための顧客獲得単価(CPA)も含まれる。この中からどれを「KPI」(重要業績評価指標)として扱うかも、マーケターにとっては難題である。
さらに、その指標値が高いか低いかだけで、業績に即貢献しているかを断定できない点も注意が必要という。
たとえばCPAは広告効果を測定するためによく用いられ、基本的に数値は低い方がベターだ。だが、新規顧客獲得のために広告を出したのに、リターゲティング広告による既存客のリピート購入だけが促進されてCPAが低くなっているケースもあり得る(上村氏)
複数のKPIをつなぎ合わせ、構造化して考える
このように一つのKPIだけをとっても、さまざまな解釈ができてしまう。そこで重要なのは、複数のKPIをつなぎ合わせ、構造化して考えることだ。一般的に、売り上げはKGIだが、売り上げを上げるためのKPI、たとえばWebサイトのPV、CV率、顧客単価などがあり、相互に連携しあっている。これらの構造を意識し、整理すべきと上村氏は主張する。
ECサイトにおいて、こうした“大小のKPI”を測定するためにはGoogle アナリティクスの「拡張eコマース機能」でも採用されている「サイト内ファネル分析」が役立つ。サイトの全セッション、商品閲覧セッション、カート到達セッション、決済完了セッションなどを網羅的に把握できる。当然、改善すべきポイントも浮かび上がる。
購買率をアップする4施策とは? 場面別施策を徹底紹介
ここから上村氏は、ECサイトを訪問してくれたユーザーの購買率を上げるための具体的な施策について解説した。順に見ていこう。
購買率アップ施策①
商品詳細ページからカート投入まで
上村氏によれば、一般的なECサイトの商品詳細ページからカートに商品が入る率は2~3%が標準的な値。だがキッチリと対策することで、8%程度に向上させることが可能だという。その具体例をまとめたのが次の図だ。
カートボタンはすぐ押せる場所に
カートボタンが押しやすい場所にあるかどうかは、非常に重要だ。特にスマートフォンの場合は商品詳細ページが縦長になりやすく、配置によっては見つけにくい。たとえば詳細ページを最下段までスクロールしたのに、カート投入ボタンがページ最上段にあるといったケースが当てはまる。また洋服などの場合、色を選んでからでないとカート投入ボタンを押せない仕様だと、これも投入率に影響する。
在庫数を表示する
在庫数の表示は「まもなく品切れしそうな商品」であるかを顧客に伝える効果がある。リアル店舗では、具体的な数を示すまでもなく、棚への陳列量などから客は「今日買わないと品切れする」などと判断している。ECではそれができないため、在庫数表示は重要だ。
フローティングカートの採用
カート投入率アップのための比較的簡単な対策は、フローティングカートの採用だ。ページを一定以上スクロールされた場合でも、画面最下段などに常時カート投入ボタンを表示させる。
操作をわずか数秒改善するだけの施策だが、お客様が「買おう」と思った瞬間にボタンを押せるようにしておきたい(上村氏)
購買率アップ施策②
レコメンドによる商品接触数の増加
サイト訪問者に対して、購入希望商品に関連した別商品をおすすめする「レコメンド」は、購買額を増加させる施策として広く普及している。あるアパレルECサイトでは月間売り上げの7.5%がレコメンドによるものだというが、これは傑出した数字ではなく、一般的なサイトでも十分に狙えるレベルだと上村氏は説明する。
レコメンドはカート投入直後に出す
では、レコメンドはサイトのどこで行うべきか? 一例としては、カートに商品を投入した直後に「この商品を買った人は、こちらの商品も買っています」と表示する。リアル店舗であれば、コンビニやスーパーのレジ横に菓子類を陳列するイメージに近い。
そのお店に対してお金を支払う気になっている瞬間に提示すれば、それは当然「ついで買い」につながりやすくなる(上村氏)
商品詳細ページでの効果的なレコメンド方法
商品詳細ページでレコメンドする場合は、以下の3点が重要だ。
- 陳列されている理由を明示する
- 関連性の高い商品を陳列する
- 複数のおすすめ軸を配置する
1. 陳列されている理由を明示する
「関連商品」や「この商品と一緒に見られている商品」といった、陳列されている理由があいまいな商品よりも、「同カテゴリの人気ランキング」といったレコメンドの理由が具体的に明示されている商品の方がCV率は高まる。
2. 関連性の高い商品を陳列する
化粧品ブランド「SABON(サボン)」のECサイトの場合、商品詳細ページのレコメンドは、香りが同系統の商品を陳列した。たとえばバニラの香りのボディスクラブを閲覧しているユーザーに対し、バニラの香りのハンドクリームをレコメンドするというもので、これはリアル店舗における“合わせ買い”の傾向をフィードバックした結果だ。実際に他のおすすめ枠に比べてCV率が30%高いという。
3. 複数のおすすめ軸を配置する
商品カテゴリ別のTOPページでは、ランキングを表示する例が多いが、これも「総合」「カテゴリ」「ブランド別」など複数のランキングを用意すべきという。
たとえば動画サイトのレコメンドはマーケターにとって学びの宝庫。Amazonプライム・ビデオやNetflixでは「日本映画」「最近追加された映画」「○○を視聴した人にオススメ」など多くの軸がある。もしこれが単純に「関連作品」の1軸だけだと、定番商品ばかりレコメンドされ、売り上げが偏ってしまう。ロングテール商品にスポットライトをあてるのがレコメンドの理想(上村氏)
またカート画面では、送料無料条件をクリアするための商品をレコメンドするのが効果的。また場面に関わらず「最近見た商品」「最近カートに入れたままの商品」を改めてレコメンドする方法などもある。
購買率アップ施策③
カート投入から購入完了
カートに商品が投入されて実際に購入される場面でも、対策の有無でCV率は大きく変わる。いうまでもなく、会員登録しなくても商品を購入できる「ゲスト購入」の機能があったほうがよい。また、会員登録をしていない状態で買い物をしようとしたときに、一連の手続きの中で会員登録が同時に行えるようにしておくことも忘れてはならない。
Amazon Payなど外部決済サービスへ対応することも、新規客の獲得には如実に効果があると上村氏は指摘。
手数料は発生してしまうものの、モールではない自社ECの利用を促したいとき、ある程度の必要経費になるのはやむを得ないと考えよう(上村氏)
購買率アップ施策④
サイト来訪から商品詳細ページへの移動
検索などで流入したユーザーに対し、離脱せず商品詳細ページへ移動してもらうためには、まず商品への導線を多くすべきだ。高級ブランドのECサイトだと、ブランドをイメージさせるビジュアルや読み物記事へのリンクが優先されているケースが多いが、それでは移動率は下がってしまう。
ふるさと納税サイト「さとふる」の例では、TOPページで徹底的に多数の商品へのリンクを、前述の「複数軸でのレコメンド」を踏まえて用意している。
「Rtoaster」でECの成長をサポート
上村氏によれば、ここまで紹介した対策を徹底した結果、あるECサイトにおいて7%台だったカートイン率が0.47ポイント改善。また28%台だった決済率が1.3ポイント改善し、全体としての購入率は13.7%上がった。
これらは一過性のキャンペーンではないため、翌月・翌々月と効果が持続する可能性が高い。また、紹介された施策の大半は「集客した顧客を逃さない」という、広告とはまた別角度の施策であり、投資効果は高いと上村氏は訴えた。
ただ、こうしたECサイトの改善は、上村氏が冒頭で述べた各種データの測定・構造化をしっかりと実施した上で、さらにA/Bテストを重ねるなど、地道な作業を伴う。新たなマーケティングツールも必要になってくるだろう。
ブレインパッドの「Rtoaster(アールトースター)」は、ECサイトの成長に必要な機能をワンストップで提供できると上村氏はアピールする。CDP、Web接客、MAなどの各種ソリューションはもちろん、人的支援などのコンサルティング領域でも企業や担当者の力になりたいと訴え、講演を締めくくった。
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