Googleマイビジネスは本当に集客効果があるの? 来店予約を2倍にした美容室Ashの活用術
最近、飲食店などのお店選びで地図アプリ上の店舗情報やクチコミを参考にすることが多くなっていないだろうか。ユーザーの利便性もあってGoogle検索における地図アプリ情報(Googleマイビジネス)の存在感が増していることもあるだろう。コロナ禍では緊急事態宣言などで営業時間の変更、テイクアウトの有無、感染対策状況などもGoogleマイビジネス上に表示され、ユーザーにとってお店選びの重要な情報源になっている。
店舗ビジネスを展開している企業にとって、避けて通れなくなったGoogleマイビジネスの整備・活用だが、集客につなげようとするなら、正しい情報を登録するだけでは大きな成果は期待できない。
「Web担当者Forumミーティング 2021 春」のセッションでは、Faber Company(ファベルカンパニー)の中本俊一氏が聞き手となり、美容室Ashなどを展開する大手美容室チェーンのアルテサロンホールディングス 岩田良介氏が、Googleマイビジネス活用のメリット、運用ノウハウなどを紹介した。
Googleマイビジネスって、本当に集客効果があるの?
SEOツール「MIERUCA(ミエルカ)」を提供するFaber Companyは、チェーン店向けデジタルマーケティング支援ツール「ローカルミエルカ」も提供している。Googleマイビジネス一括管理やローカルSEOを支援することを主眼としたソリューションだ。
アルテサロンホールディングスは、関東のAshや関西のNYNYなど、333店舗を展開する美容系企業。岩田氏は大阪で美容師からキャリアをスタートし、今は全社的なマーケティングを担う立場だ。
同社ではGoogleマイビジネスの活用に力をいれており、IR資料にもGoogleマイビジネス活用について触れているほど。実際に登録されているGoogleマイビジネスの情報が以下の図だが、かなり情報が充実している。
美容室など美容業界の集客といえば、大手美容系ポータルサイトに広告費を支払って店舗情報を掲載してもらうのがお馴染みの施策だ。しかしアルテサロンでは、Googleマイビジネスからの集客がそれと同等か、むしろ上回る店舗もあるという。Googleマイビジネスの活用は無料で可能であることから、戦略的に活用すれば、広告費をかけずに十分な集客効果が得られるのだという。
ローカルミエルカの中本氏によると、「企業担当者としては(Googleマイビジネス活用を)やった方がいいと考えているが、成果が出るのか証明しづらく、会社を説得できないことがよくある」のだという。これについて岩田氏は、「当社では、僕が独自に数店舗の運用を開始して、成果が出たから全社でやりましょうという流れだった」と明かした。
自分の手の届く範囲からスタートし、成果を上げることでGoogleマイビジネス活用を社内に浸透させていった岩田氏が、以下の3つの視点からGoogleマイビジネスの活用ノウハウを解説した。
- 投稿の活用
- クチコミの獲得と返信
- インサイトの活用
1. 投稿の活用
効果的な投稿の要素と具体的な投稿ポイント
アルテサロンで実施している施策としては、「投稿」の活用がある。「投稿」は、店舗の最新情報を発信できる機能で、自店舗への来店検討ユーザーに効果的にリーチすることができる。岩田氏は、運用を任せている店舗スタッフに「本質的には、SNSのようなもの」と説明しているという。
効果的な投稿の内容(本質)として、岩田氏は以下の5点を挙げる。
- 商品が見えるもの
- 店内が見えるもの
- 売る人が見えるもの
- 買う動機があるもの
- 買う想像ができるもの
これらの要素を踏まえた投稿とは具体的にどういうものなのか、岩田氏はいくつか例を挙げて解説した。
投稿ポイント ①
来店時をイメージできる情報をアップする
どのような投稿をすればいいかを考える前に、「Googleマイビジネスにアクセスする人が求めている情報は何か、どんな状況で調べているのかを一度、想像してほしい」と岩田氏はいう。
クーポン情報やイベント情報を投稿することは有効な施策だが、Googleマイビジネスにアクセスしているユーザーの多くは、お店までの行き方やお店に行ってからの情報を知りたいと思っている。店内の雰囲気や駐車場は併設されているのかといったことだ(岩田氏)
店内の様子が伝わる情報を載せる
以下の写真は、岩田氏がユーザーとして実際に訪問した京都のラーメン屋のGoogleマイビジネスに投稿したものだ。
岩田氏がアップしたこれらの写真の中で、閲覧数が最も多かったのはどれかわかるだろうか? 美味しそうな料理の写真に目をひかれるが、実は右下の「長テーブルの座席写真」が最も閲覧されているという。
ここからわかることは、料理の写真は色々な人がアップしているし、他のSNSでも見ることも可能。しかしユーザーが知りたいのは、行ってからどうなのかという点。ラーメン屋なのでカウンター席しかないと思うかもしれないが「家族連れや友人同士でも楽しめるのか」ということを気にするユーザーが多いのかもしれない。
店内の様子がしっかり見えるようなものが、意外とポータルサイトには載っていない。Googleマイビジネスはそれを出しやすいし、ユーザーに求められていると気づいた(岩田氏)
この投稿写真の閲覧数チェックは、消費者行動、消費者心理を理解するのに役立つという。
投稿ポイント②
店舗やスタッフの個性が見える情報と出口戦略
投稿は本社が一括で行う方法もあるが、アルテサロンの場合は各店舗の責任者に任せている。店舗ごとの特徴や個性を発信するためだ。投稿内容について本社から指示はせず、効果的な投稿の本質や、好まれる写真やデザイン、文章のフォーマットなどの教育のみを行っている。
本社が一括で運用すればクオリティは高くなるかもしれない。しかし、各店舗のセンスや地域に根ざした情報がGoogleマイビジネスのユーザーには求められているはず。クオリティよりオリジナリティを出して運用できるようにしている(岩田氏)
また、忘れてはいけないのが「出口を用意する」こと。投稿内容を見て気に入ってくれたユーザーが迷わずアクションを起こせるよう、投稿には予約や購入、問い合わせボタンなどを設置することを忘れてはならない。
2. クチコミマネジメント 獲得と返信
最大限に「クチコミ」機能を活用する
Googleマイビジネスにはクチコミの機能がある。ユーザーでも通りすがりの人でもクチコミを書けるし、オーナーはそのクチコミに返信もできる。岩田氏は、「行ったことがないのに、クチコミを書けるのがすごく画期的で、地域の噂が可視化されたようなもの」という。
お客さんが「あそこの美容室、いいらしいよ」とか、「○○の奥さんが行ったけど、アカンかったらしいで」とか言っている「井戸端会議」がまさにGoogleマイビジネス上で可視化されている(岩田氏)
クチコミは、アルゴリズム面(検索上位表示)と顧客心理面の両側面で影響があると岩田氏は考えている。もちろん単にクチコミを増やせばいいというわけではないが、ユーザーにとって価値があるクチコミ獲得を強化した店舗では、Googleマイビジネス上での表示回数やアクション数などの各指標が上昇し、さまざまなキーワードでの検索順位も向上するという相関関係があったという。
しかし、この価値ある「クチコミを集める」ことに、多くの担当者が苦労しているという。ユーザーにとってクチコミを投稿することに、特にメリットがないからだ。岩田氏はクチコミ獲得のポイントを2つ挙げた。
クチコミ獲得ポイント ①
何を書いて欲しいか具体的にお願いする
クチコミを獲得するには、お店側からさまざまなタイミングでお願いすることが重要で、「何を書いてほしいか指定すること」も欠かせない。
以下の図はクチコミとその返信の画面である。施術の日付や内容、担当美容師についてなど、非常に具体的な内容のクチコミだということがわかる。これは、どのようなことについて書いてほしいかを具体的にお願いしているからだ。クチコミの内容が具体的であればあるほど、ユーザーの目に留まる機会も増え、集客につながる可能性も高まる。
クチコミ獲得ポイント ②
ネガティブなクチコミにも返信する
ネガティブなクチコミにきちんと返信するのもポイントだ。アルテサロンでは、クチコミへの返信も基本的には各店舗で行う。担当者には「実際の接客場面などでお客さんが自分たちのよくないところを指摘してくれたら、無視せず対応するはず。それと同じこと」と岩田氏は伝えている。
こうした誠意のあるコミュニケーションが顧客の信頼を獲得することにつながり、より多くのクチコミを集めることができるという。
3. インサイトの活用
多店舗でのインサイト分析にはツール導入もお勧め
アルテサロンでは、Googleマイビジネスの効果測定ができる「インサイト」機能も活用して分析している。
「間接検索(ブランド指名キーワード以外)のアクセス数、投稿のクリック数、ホームページへの流入を指標としている。予約が増えたら、Googleマイビジネス運用としては一番成果が出ていると判断している」(岩田氏)という。
これらの分析は本社が一括で実施している。しかしGoogleマイビジネスは店舗ごとにログインが必要な仕様のため、数十、数百店舗の分析となると膨大な時間や工数がかかることがネックになっていた。その課題はローカルミエルカの導入で、Googleマイビジネスが一括管理できるようになって運用負荷が減ることで解決した。「最近は、(分析作業だけではなく)仮説を立てて施策を打つ方に時間をシフトできるようになった」と岩田氏はいう。
また、チェーン展開するような企業は店舗数が多いと営業時間などの各店舗情報の整備だけでもかなりの手間が発生する。ブランドごとやエリアごとなど詳細分析のために店舗ごとのデータをダウンロードするだけでも膨大な作業時間がかかるだろう。
さらにGoogleマイビジネスではユーザーからの意図しない店舗情報の書き換えが発生することがある。この書き換えを防止したり、一括で全店舗の営業時間を更新するなども可能になるため、多店舗展開している事業者にはローカルミエルカ導入がお勧めだ。
視聴者との質疑応答後に、中本氏から「Googleマイビジネス運用は本当に意味があるのか」という問いに対して、岩田氏は「使う・使わないは経営判断だが、Googleマイビジネスを見ているお客さんは、実店舗でいえば興味を持ってこちら(お店)をじっと見てくれている状態と同じと考えれば、活用しない手はないし、運用した方がお得だと思う」と語りセッションを終えた。
\Web担主催リアルイベントが“オンデマンド配信”決定!/
満席で申し込みできなかった講演も聞ける【12/13(金)18:00まで視聴可能】
ソーシャルもやってます!