保険市場がLINEを活用して相談予約数をアップさせたノウハウ公開―予約件数の10~20%がLINE経由に

パルス型消費行動を逃さない! 「LINE公式アカウント」と「LINE広告」を活用し、潜在顧客と長期的にコミュニケーションをとることで、相談予約数アップにつなげた事例を紹介
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株式会社アドバンスクリエイトが運営する保険選びサイト「保険市場」は、LINE公式アカウントとLINE広告を活用した取り組みによって、自社サイトへの流入だけでなく、資料請求や保険相談予約数の増加を実現。

さらには、ユーザーと継続的につながり続け、いつ訪れるかわからない「保険へのニーズ」が顕在化したタイミングでアプローチすることが可能な、長期にわたるコミュニケーション体制を構築した。

保険市場の広告運用を行うアドバンスクリエイトの田坂貴典氏に、LINE公式アカウントとLINE広告運用の秘訣を聞いてみた。

株式会社アドバンスクリエイト OMO営業本部 デジタルアセットマネジメント部長 兼 オンラインダイレクトマーケティング部長 田坂貴典氏

日本最大級の保険選びサイト「保険市場」

保険代理店事業やメディア事業をグループ各社で展開するアドバンスクリエイトは、1995年の創業以来、時代に合わせた最適な手法で顧客とのコミュニケーション接点を構築してきた。

同社が運営する「保険市場」は、保険の基本知識といった情報提供に加え、資料請求、保険の申し込みまで行える保険選びサイトだ。生命保険、医療保険、自動車保険など、さまざまな保険を取り扱っており、掲載商品数、保険会社数においても日本最大級を誇る情報サイトとなっている。

同サイトで資料請求をすると、電話やメール、LINEなどで専任のオペレーターがユーザーのニーズをヒアリングし、一人ひとりに合った保険商品の紹介や直営の「保険市場コンサルティングプラザ」や提携する近隣のショップへの来店を案内する。最近では、ショップに足を運ばずともコンサルタントに保険相談ができるオンライン保険相談も人気だ。

日本最大級の保険選びサイト「保険市場

保険のニーズが高まった瞬間をとらえるために、LINE公式アカウントを活用

アドバンスクリエイトは、2016年にLINE公式アカウントを開設し、ユーザーとの新しいタッチポイントとして活用するようになった。

LINE公式アカウントに注目した理由は、“中長期的にユーザーとの関係が築ける”という特性が大きい。そもそも生命保険や医療保険は、いつニーズが生じるかわからない。結婚や出産、転職といったライフステージが変化するタイミングでは比較的、保険のニーズが顕在化しやすいが、漠然とした将来の不安が潜在的にあるなかで、例えば、知人や芸能人の訃報や病気、事故のニュースなどをきっかけに、ニーズが突然顕在化することもある。

Googleでは、思い立ったら瞬間的に購買行動にうつる「パルス型消費行動」が近年の消費者トレンドであると提唱しているが、田坂氏は、保険の購買行動においてもパルス型消費行動が多く存在しており、そういった消費者の行動に備える必要があるという。

広告のなかでも検索連動型広告は、保険のニーズが高まった“瞬間最大風速”を捉えることができる。しかし、その分競合の出稿も多いレッドオーシャンのため、広告価格が高騰する傾向にあり、集客効率が年々下がりつつあるという課題があった。ニーズが顕在化する前のユーザーにリーチし続けるには、継続的にコミュニケーションが行える「LINE公式アカウント」が最適だったという。

私たちは、これまでもオウンドメディアやFacebook等のソーシャルメディアの運営等、ニーズが顕在化する前のユーザーにアプローチし、ユーザーが保険を調べたくなったときに第一想起してもらうためのインバウンドマーケティングを実践してきました。

ニーズが顕在化した瞬間に第一想起してもらうには、見込み顧客とつながりを持てるLINE公式アカウントは重要なタッチポイントの一つです。数年前にLINE公式アカウントの友だちになった方から保険の相談をいただく事例も増えており、潜在層のユーザーと継続してつながり続けることの価値を感じています(田坂氏)

LINE公式アカウントの運用には、友だち集めが欠かせない。保険市場では、自社のランディングページや資料請求の入力フォームに、LINE公式アカウントの友だち追加を促す導線を設計した。これは、資料請求をしたユーザーのフォローアップとして、LINEでのコミュニケーションを可能にすることを目的としている。

電話でのコミュニケーションに抵抗があるユーザーも、テキストベースのLINEでのやり取りには抵抗感を抱きづらい。また、通勤中等の電話にでることができない状況でもコミュニケーションが可能となる。そのため、きめ細かいフォローが可能になり、友だち追加した後にフォローするほうが、資料請求後の来店率が10~20%程度アップするという大きな成果もあった。

リッチメニューから、すぐにオペレーターに相談できる導線を設計

保険市場のLINE公式アカウントでは、保険のことが気になった瞬間にユーザーがアクションを起こせるよう、トークルームの下部に表示される「リッチメニュー」に、オペレーターへのチャット相談や保険料の見積りを請求するボタンを設置している。

リッチメニューからチャット相談に誘導し、オペレーターが個別で対応する

同社には、アクションを起こしたユーザーをフォローするための専属の部署が存在し、オペレーターがチャットや電話対応など、ユーザーが選択した方法で個別対応できるような体制を整えている。LINE公式アカウントの友だちから相談があれば、オペレーターが個別にコミュニケーションを行い、ユーザーの希望に合わせてWeb申し込みや来店予約といった次のアクションにつなげていく。

保険のニーズが生じた際に、コミュニケーションのきっかけをとりこぼさないようにすることが、LINE公式アカウントの運用において最も重要なところです(田坂氏)

配信内容に合わせてメッセージを送り分ける

LINE公式アカウントを開設した頃は全員に同じメッセージを配信していたというが、現在は配信内容に合わせて年齢、性別、地域などの属性でターゲティングを設定し、メッセージを出し分けて配信。週に1~2回行う配信では、保険のノウハウを紹介するコラムや保険商品の人気ランキングなどの情報を届けている。

メッセージを配信する時は、興味を持ったユーザーが簡単に反応できるように、「資料請求したい」「プロに話を聞きたい」などのボタンを表示することで、自由回答よりも反応率が高まる。

ユーザーが回答しやすいよう、選択式のボタンを表示

LINE広告でLINE公式アカウントの友だちを獲得

LINE公式アカウントだけでなく、保険市場では2016年からLINE広告の運用を開始した。当時LINEはすでに他SNSと比較して最も多くの国内ユーザーを獲得しているSNSに成長しており、集客効果に大きな期待があったからだ。

LINE広告の配信効果は想定以上で、資料請求のCPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)は他社のディスプレイ広告に比べ、半額程度に抑えられたという。

LINE広告から保険市場サイトへ誘導。他媒体に比べてCPAは半分に

アドバンスクリエイトでは、前述のようにLINE公式アカウントをユーザーとの重要なコミュニケーション基盤と位置付けている。そこで、LINE公式アカウントの友だちをより効率的に増やすために、LINE広告の「友だち追加」を活用。LINE広告の「友だち追加」は、LINE公式アカウントの友だちを獲得することに特化した広告だ。広告に表示される「友だち追加」ボタンをタップすると、LINE公式アカウントに遷移する。

「友だち追加」ボタンをタップすると、LINE公式アカウントの友だちになる

同社では以前、LINEプロモーションスタンプの配布による友だち獲得施策の実施を検討したことがある。友だち追加を条件に、無料のスタンプを配布するというものだ。この施策では、数万人単位で友だちを獲得できるが、スタンプが目的で友だちになるユーザーも多く、ブロック率も高くなることを懸念し、本来目指したいユーザーとの関係とは異なるため実施を見送った。

保険への関心の有無は、その後の長期的なコミュニケーションの実現を左右する。「友だち追加」がLINE広告に登場したとき、すぐに活用を決めた。

LINE広告の「友だち追加」では、「スタンプ施策に比べ、潜在的な保険のニーズを持っているユーザーを集めることができる」と田坂氏は語る。また、友だち一人あたりの獲得単価は、平均して数百円程度と安価に抑えられ、効率的な獲得ができている。

友だち追加はゴールではなく、始まりに過ぎません。その後に継続的なコミュニケーションができるユーザーとつながることを重視しています(田坂氏)

LINE広告で反応率が高い広告クリエイティブとは?

他媒体と同様に、LINE広告においてもクリエイティブの良し悪しがCVRやCPAに直結する。クリエイティブが響かなければ友だち一人あたりの獲得単価は高騰してしまう。

そのため、同社では広告クリエイティブの検証を丁寧に行っている。月に1~2回のペースで5~10種類ほどのクリエイティブを用意し、A/Bテストを繰り返しながら、効果的なものを検証する。その経験のなかで学んだ反応の良いクリエイティブのコツを教えてもらった。

個別商品の宣伝ではなく、ニーズに響くメッセージを打ち出す

LINE広告においては、個別の保険商品を紹介する内容はあまり反応が良くないという。潜在層のユーザーにいきなり保険内容の説明をしても興味を持ってもらえないためだ。「保険には入っていないけど、なんとなく関心がある」「いま入っている保険の料金が高い気がする」などのニーズに響くメッセージの方が、反応率は高い。

例えば、「診断系」「統計データ」「ランキング」などが該当する。

  • あなたと同年代の保険料は平均●●円!
  • 我が家に必要な保険はどれ? 診断スタート
  • 子どもの教育費、いくらかかるの?
  • がん保険、人気なのはどれ?

こうしたメッセージをフックに友だち追加をしてもらい、友だち追加後のあいさつメッセージやリッチメニューから「保険料診断」などのウェブサイトのコンテンツに誘導するのだ。

LINE広告で紹介した診断や統計データなどのコンテンツを提供し、ユーザーに「友だちになってよかった」と思ってもらうことが重要で、フックになるコンテンツの存在はその後の定着率にもつながる。

ビジュアルは「文字だけ」もしくは「写真だけ」が効果的

バナー広告と聞くと、つい画像とコピーの組み合わせを想像するが、同社の場合は、シンプルに「文字のみ」もしくは「写真のみ」のクリエイティブのほうが効果を感じられたという。

例えば、文字のみの広告ならば「あなたと同年代の保険料は平均●●円!」のようなメッセージをシンプルに表示すると、視認性が高まる。

文字だけのバナーはかえって目立つ

また、写真のみのクリエイティブも、写真とタイトルの組み合わせ次第では、効果的に集客できることがあると田坂氏は説明する。

写真だけの場合はタイトルでメッセージを訴求する

一方、写真とテキストで内容を盛り込みすぎている広告は反応率が低くなることが多い。視認性が悪く、直感的にメッセージが伝わらないためだ。

当社の経験上、LINE広告の「友だち追加」はタイムラインを中心に広告が配信されますが、タイムラインはユーザーの投稿や他のLINE公式アカウントの広告的な投稿も多く、さまざまな情報が雑多に表示されています。そこに、シンプルなメッセージだけのクリエイティブが表示されることで、逆に目立つのかもしれません(田坂氏)

動画と静止画、どちらが効果的?

田坂氏は、「動画フォーマットを使った広告が効果的だった時期もあったが、最近は静止画に回帰している」と語る。動画のほうが情報量を多く伝えることができるものの、制作コストや獲得一件あたりの配信単価、成果などを踏まえると、静止画でクリエイティブ数を増やし、効果検証を行ったほうが効率的という判断だ。

しかしながら、「この判断も日々変化していくだろう」と田坂氏は分析する。検証をしっかりと回しながら、LINEというプラットフォームだからこそ馴染むクリエイティブ、メッセージを見つけることが成功のカギといえる。

今では保険相談予約数の10~20%がLINE経由に

田坂氏は、LINE公式アカウントとLINE広告の効果について下記のように語る。

資料請求するユーザーはすでにニーズが高まっているので、1か月以内の来店予約率は高いです。LINEは友だちになってから保険相談予約まで、半年~1年以上かかることを想定しているため、時間軸は変わりますが、いずれは来店予約に至るユーザーが多く、今では保険相談予約数の10~20%がLINE経由になっています。長期間にわたって接点を持ち続けられることに価値があります(田坂氏)

まとめ LINE運用の3つのポイント

田坂氏は最後に、LINE公式アカウントとLINE広告運用のポイントとして次の3点をあげた。

クリエイティブの検証はこまめに

LINEに馴染む広告フォーマット、メッセージ、クリエイティブは商材によって異なる。同じクリエイティブを使い続けるのではなく、こまめに効果を検証し、反応率の高いものを探す必要がある。出稿のタイミングや時期によってもユーザーの反応率が変わるので、さまざまなパターンを想定してトライし続けよう。

LINE公式アカウント運用の考え方

LINE公式アカウントの友だちを獲得するのがゴールではない。潜在的なニーズを持つユーザーと継続的につながり、関係を築いていくことが重要だと心得ておこう。

ユーザーとのコミュニケーションが発生したときの体制

いざユーザーのニーズが顕在化したときに取りこぼしがないよう、オンライン・オフラインの垣根なく、一人ひとりのニーズに合わせて個別に対応できる体制を整えておこう。

LINE公式アカウント、LINE広告の活用事例としてぜひ参考にしてほしい。

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