SNSは常に進化しています。表示アルゴリズムの変化、機能の追加、新しいトレンドの発生など、ユーザー体験が変わるようなアップデートがしばしば行われています。
企業でSNSを運用する場合は、これらの変化も追いかけていくことで、ユーザーとのコミュニケーションを深めていけます。
今回取り上げるのは、Instagramで利用できるSpark ARという機能で、今後さらに力を入れていくとされている分野です。
この記事では、Spark ARの今後の可能性を考えながら、企業が導入するメリットや事例などをご紹介します。
Spark ARとは
AR(Augmented Reality、拡張現実)は、実在する風景やものに対して、仮想的な視覚情報を重ねて表示することで、「仮想的に現実を拡張する」ものです。
わかりやすい、身近な例は、スマートフォンゲームの『Pokémon GO』のARモードです。スマートフォンのカメラを通して付近の様子を表示すると、ポケモンが現れます。現実の世界にバーチャルな視覚情報を加えて、仮想的に拡張することで、その場にポケモンがいるように見せているのです。
また、人の顔を認識して、デコレーションする『SNOW』アプリもARです。カードやはがきなどの物理的なものにARマーカーを印刷し、スマートフォンのカメラでARマーカーを表示すると、仮想的な映像が浮かび上がるタイプもあります。
そして、2017年からFacebook社が提供しているのがSpark ARです。開発者ツールの一つとしてSpark AR Studioというツールが用意されており、これを使って独自のARエフェクトを作成できます。
作成したARエフェクトは、InstagramまたはFacebookに公開することができます。Instagramの場合は、カメラから検索して公開されたエフェクトを利用することがきるので、通常のARサイト・アプリよりも多くの人に利用してもらえる可能性があります。
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Spark AR活用事例
企業や組織でも、Spark ARのエフェクトを作成し公開しています。
パリ・サンジェルマン
パリ・サンジェルマンはフランスのサッカーチームです。9回目のリーグ優勝を達成した際のプロモーションとしてSpark ARのエフェクトを作成しました。
チームのエンブレムまたはシーズンのユニフォームのエンブレムをARマーカーにして、カメラをエンブレムに合わせることで、エンブレム内で優勝を祝う動画が流れる仕組みです。ファンを楽しませるコンテンツでありつつ、エンブレムがないと動作しないので、ユニフォームの購買促進に影響を与えた可能性があります。
https://www.instagram.com/psg/
ピュレグミ
エフェクトを選択して、録画ボタンを押すと顔を認識し、ARのエフェクトが流れます。
エフェクトの指示に従ってタイミングよくウインクしたりや口を開けたりすると、最後にその判定結果が表示されるゲーム性のある構成となっています。
エフェクトの中でピュレグミのシャリシャリ、もちっとした食感を自然に訴求しています。
https://www.instagram.com/kanro_pure_photo/
スターバックス
顔を認識し、おでこに「あなたはどのスターバックスドリンク?」という文言が表示されたあと、様々なドリンクがスロットで入れ替わり、最後にいずれかのドリンクで止まるという診断系のARエフェクトです。
「今日はどれを飲もうかな」という時に試すと、思いがけない商品との出会いになり、販促効果がありそうです。
https://www.instagram.com/starbucks/
オレオ
商品パッケージの一部をARマーカーとしており、カメラを合わせると、キャラクターが出現してダンスをします。商品を購入したユーザーしか使えないエフェクトのため、購入者の満足度向上、購買意欲促進につながりそうです。
https://www.instagram.com/oreo/
Gentle Monster
ARエフェクトの利用をキャンペーンの参加条件とすることもできます。韓国発のアイウェアブランドのGENTLE MONSTERでは、Gentle MonsterのARエフェクトを使った動画をInstagramのフィードとストーリーズに投稿することをキャンペーンの参加条件としました。
韓国の人気4人組グループ「BLACKPINK」のメンバーの一人、ジェニとのコラボレーションで企画され、キャンペーンの参加ハードルが高いにも関わらず、数多くのユーザーが参加しました。
インフルエンサーを使ってファンを巻き込み、自社のARを使ったUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)創出につながった事例です。
https://instagram.com/gentlemonster/
紹介した事例のように、ユーザーが試したくなるARエフェクトを用意することで、ブランディング、購買意欲促進、ロイヤリティ醸成などにつなげています。
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Spark ARを活用するメリット
Spark ARを活用するメリットとして、次のようなものがあります。
拡散性がある
ユーザーの立場から見ると、自分の写真や日常の動画を撮影する時に、Spark ARを加えるだけで、一味違ったコンテンツになるので、フィードやストーリーズに投稿したくなります。そのエフェクトが仲間のうちで流行れば、それがじわじわと多くの人に拡散する可能性もあります。
スターティアラボ株式会社によるAR活用に関する市場調査レポートによると、約54%の消費者がARを紹介したいと答えているため、ARを使った投稿を参加条件とするようなキャンペーンとの相性も良さそうです。
Instagramでエフェクトを追加するときに、検索でキーワードを入力するので、ブランド名の認知向上、記憶定着の効果もありそうです。
興味関心・購入意欲を上げることができる
スターバックスの事例では、ランダムで止まった商品をおすすめドリンクとして紹介しています。「試しに飲んでみようかな」と購入意欲をわかせることができます。
興味関心についても、AR自体が没入感のあるコンテンツであるためフィード投稿やストーリーズ投稿よりもコンテンツ(ブランド)の消費時間が長くなる事が考えられます。
なんとなく購入した商品のパッケージの一部がARマーカーになっていれば、ARエフェクトを試すことで、よりブランドや製品に興味関心を持つようになります。自分がフォローしているユーザーがARを使った投稿をしていれば、そのエフェクトに目を止めて、自分でも試したくなることもあるでしょう。
また、スターティアラボ株式会社によるAR活用に関する市場調査レポートでも、一般消費者の61.3%が実際にARコンテンツを体験した後に、興味関心・購買意欲が上がったと答えています。
親密度を上げることができる
Instagramは、アルゴリズムで使われる重要なシグナル「親密度」を上げる方法の一つとして、ARフィルターを挙げています。
親密度を上げるシグナル
①コメントに反応する
②Instagramライブを活用する
③インタラクティブスタンプを利用する
④長時間滞在させる
⑤投稿をシェアしてもらう
⑤投稿をシェアしてもらう
— Instagram & Facebook マーケティング JP (@FBBusinessJP) December 12, 2019
スターバックス コーヒー @Starbucks_J 様がハロウィン向けの新商品に合わせてリリースされた仮面舞踏会のARフィルターの事例です。
ARフィルターを使うことで、投稿がシェアされやすくなり、親密度が上げることができます。https://t.co/IPlbWVEOiT#IGDAYOSAKA2019 pic.twitter.com/kONMxRsvOo
開発コストがかからない
Spark ARでオリジナルのARを開発する場合、Facebook社が用意している開発ツールをダウンロードして作成します。簡単に作成できるようなテンプレートが豊富に用意されている他、チュートリアル動画も充実しています。簡単なエフェクトならコードを書くことなく開発できるので、他のAR開発ツールよりも敷居が低く、誰でも作成できるのもメリットです。
自社のアカウントのフォロワーもいる、InstagramでARを公開できるので、告知しやすく、ユーザーが使いやすいのもメリットです。
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Spark ARの作り方
いくつかあるARエフェクトの中から、比較的手軽に作れるフェイスフィルターの作り方をご紹介します。
用意するものは以下の4つです。
①Spark AR Studio
②顔に出現させたい画像
③Photoshopなどの画像編集ツール
④FaceReference Assets(PNG)
- Spark AR Studioをダウンロードする
- PhotoshopでFace Reference Assetsを開き、出現位置を調整する
- 不要部分(Face Reference Assets)を取り除く
- 作成した画像をSpark AR Studioにアップロ―ドする
- 顔追跡機能「Face Tracker」を選択し、反映させる
そして、完成したフェイスフィルターがこちら!
(執筆者の成田)
所要時間は約30分でした。
気軽に作れるので、これからSpark ARを取り入れたいと考えている方は、ぜひ作成してみてください。
※実際にInstagramのストーリーズで使用するためには、Spark AR Hubから公開申請が必要です。
まとめ
今回は、Spark ARの特徴や活用メリット、事例などをご紹介しました。
まずは、フォローしてくれているユーザーへのちょっとしたプレゼントのような気持ちで、ARエフェクトを公開してみてはいかがでしょうか?
ユーザーのエフェクトの使い方や反応で、新たな発見もあるかもしれません。
株式会社コムニコでは、Spark ARの企画や制作などの支援も行っています。
お気軽にお問い合わせください。

1996年生まれで青森県出身。 2019年株式会社コムニコに入社し、セールスとしてSNSを活用した施策・提案をしてます。
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