友だち数3,300万人のオルビスが語る! 顧客獲得からファン化まで一気通貫で実現できるLINEの真価
新型コロナの影響で、生活者のライフスタイルは大きく変わりつつある。ECやオンラインサービスの需要が急速に高まるなかで、企業はどういったマーケティングを行っていくべきなのだろうか。
7月29日、「LINEで実現するダイレクトマーケティング」をテーマに、健康やコスメ、美容などのEC業界、ゲーム・アプリ業界などをはじめとしたダイレクトマーケティング企業向けの大規模オンラインセミナー「LINE Direct Day」が開催された。
著名企業が最新実績を公開するなか、女性向けビューティブランドのオルビスも登場。LINE公式アカウントの友だち数3,300万人達成の背景や、具体的な成功事例について語った。
コロナ禍で変わった、2つの消費者行動
イベント冒頭では、LINEで広告ビジネス事業を担当している池端氏が、LINEが提供する法人向けマーケティングサービスについて最新動向を解説した。
2020年上半期、日本国内のあらゆる産業に影響を与えたのが、言うまでもなく「COVID-19」(新型コロナウイルス感染症)である。政府による緊急事態宣言措置が終了した5月25日以降もなお、感染者は増え続けており、第2波、第3波への懸念は尽きない。
そうした状況下で、顧客の消費行動には2つの変化が見られると池端氏は言う。1つ目が、ECへのシフトだ。
PwC Strategy&が6月に発表したレポートによれば、そもそも2020~2023年にかけて「衣服・靴」「電子機器」「健康・美容用品」「食料品」など各分野において、EC比率は1~4%程度上昇すると予測されていた。そこにCOVID-19問題が台頭したことにより、さらに4~6%の上積みが見込まれるという。感染防止の意識がリアル店舗への訪問を遠ざけ、EC率を高める傾向がCOVID-19終息後も長期化するだろうという指摘だ。
そしてもう1つは、COVID-19流行の影で、アプリの利用およびダウンロード数が増加していることだ。
日本国内のアプリのダウンロード数は長期的に横ばい傾向にあった。しかし今年1月と4月を比較した場合、アプリのダウンロード数が31%も増加したという調査結果が出ている(池端氏)
結果として、オンラインで顧客を獲得するための競争や投資合戦はさらに加熱していくことが予想される。中間業者を通さずに、メーカー・サービス事業者が顧客とより直接的にコミュニケーションするダイレクトマーケティングの世界にも少なからず影響が出るだろう。
池端氏は顧客にリーチしたその先、企業が顧客と繋がり続けることがもっとも重要であり、すなわちコミュニケーションこそがLINEの強みだとアピールした。
圧倒的なリーチ力を誇る「LINE広告」も機能強化中
続いて、LINEの法人向けサービスの中では2017年スタートと後発ながら、積極的な機能強化が図られている「LINE広告」についてLINEの菅野氏が解説した。LINEはユーザー8,400万人(2020年6月時点)という圧倒的なリーチ力を背景に、他のSNSではリーチできない生活者と接触できるのが強みだ。
LINE広告の直近のアップデートではターゲティング機能の拡充が図られた。アップロードした顧客のメールアドレス・電話番号をもとにユーザーをターゲティングしたり、それまで都道府県、市区町村単位だった地域ターゲティングを「半径3km」などの単位でも指定したりできるようになった。2020年中には「類似オーディエンスの自動入札」機能の追加も予定している。
動画広告もLINEが力を入れている分野だが、コロナ禍の外出自粛要請期間中は、ユーザーの動画広告反応率が上昇したという。3月26日を起点に前後13週間の動向を比較したところ、インプレッション数は93%増、クリック率は33%増、10秒再生率が27%増という好結果が出た。
LINEアプリ内でも閲覧ユーザーが多い「トークリスト」画面最上部に動画広告を表示する「Talk Head View」の利用も広がっており、LINEでは今後も動画広告の配信在庫を拡大させる計画だ。
Webマーケティングが直面する「Cookie制限」への対応も
一方、広告業界全体を見回すと、目下最大の懸念はCookie規制であろう。Android端末におけるサードパーティCookieの廃止、iOS端末においても大幅なトラッキング規制がそれぞれ予定されており、特にリターゲティング広告はその在り方が揺さぶられている。
この対処法として期待されているのが「LINEログイン」だ。LINEのユーザーアカウントを用いて、外部のWebやアプリにログインする機能は2018年に提供を開始済みである。ファーストパーティデータ(おもに自社会員データ)と容易に連携でき、Cookie規制を回避したうえで、より踏み込んだパーソナライズへの応用が考えられると菅野氏は述べる。
LINE公式アカウントに3,300万人が登録するオルビス
さて、LINE広告以前からある、LINEを用いたマーケティングのもう1つの柱が「LINE公式アカウント」だ。企業・サービスごとにアカウントを作成し、一般ユーザーに「友だち登録」してもらうことで双方向コミュニケーションが可能になる。
単純なメールマガジン配信よりも高度な“出し分け”を行いたい企業側にとって、ユーザー属性に応じたセグメント別のメッセージ配信機能は大きな魅力だ。また、チャット対応、自社サイトへの誘導に便利な「リッチメニュー」など、周辺機能も充実している。
このLINE公式アカウントを用いて大きなマーケティング成果を上げているのが、女性向けスキンケア製品を中心としたビューティブランドのオルビスだ。1987年の創業とほぼ同時に通信販売を開始。インターネット登場以前から、ダイレクトマーケティングを事業の主力に位置付けている。
同社では2013年にLINE公式アカウントの運用を開始し、2020年には友だち登録数が3,300万人を突破した。この約7年にわたって、LINEプロモーションスタンプを18回以上実施するなどして友だち数を伸ばしてきた。ここからは、そんなオルビスのマーケティング戦略について同社の山口氏が語った。
オルビスでは、マーケティング戦略について、「売上=顧客数×顧客単価(LTV)」の考えを大前提としたうえで、さらに以下の3つのKPIを設定している。
- 獲得:純粋新規(顧客)獲得数と、そのCPO
- 育成:F4移行率(4回目の購入に至る率)と、その到達時点のLTV
- 優良活性:アクティブ顧客稼働率と、その顧客のLTV
LINEならコミュニケーションが分断されない
山口氏の所属する新規戦略グループは、3項目のうち1つ目にあたる新規顧客の獲得が専門だ。LINE公式アカウントの開設も、まさに新規顧客の獲得を目指す上での施策だった。山口氏はLINE公式アカウント機能を高く評価しており、その理由についてこう説明する。
他のSNSメディアでは、LINE公式アカウントと広告機能が分断されやすい。LINE公式アカウントはユーザーエンゲージメントの向上、広告機能は顧客獲得のそれぞれに特化してしまっている(山口氏)
B2C型ビジネスの多くは、顧客との関係を構築していくうえで、認知→新規獲得→ファン化というフェーズ別、いわゆる「ファネル」の考えに基づいて施策を行う。たとえば、認知のためにマスメディア広告を出し、そして新規獲得へ進んでもらえるようデジタル広告を配信するといった具合だ。
ただし、この方策においては、コミュニケーションが分断されてしまうという問題がある。たとえば、テレビCMで獲得した新規顧客が、最終的にどのぐらいファン化に至ったのかなどを把握しづらいのだ。
しかし、LINE公式アカウントなら、ファネルの変化を一貫して把握できる。国内8,400万ユーザーを抱えるLINEは、もはやマスメディア的ポジションに達していると言えるだろう。「認知」のためのマーケティング活動をLINEプラットフォーム上で行い、そのままチャット機能やセグメント配信などの機能を用いて、新規顧客の獲得へとつなげれば、認知から新規獲得までの割合や顧客をファン化するまでの投下コストも容易に把握できるのだ。
「カルーセル」で大きな成果、セグメント別配信でCPO節減
オルビスでは新規戦略グループ内にLINE関連の専任チームを設け、実際に配信する広告クリエイティブの制作や効果測定を行い、PDCAサイクルを回している。LINEのマーケティング機能が充実しており、実施できる施策の幅が広いことに加え、他のマーケティング手段と比較しても、LINEが新規顧客獲得で成果を上げているのも大きな要因となっているようだ。
講演では、オルビスが実際にLINEで実施した施策と効果も紹介された。
施策① カルーセル配信でクリック数が平均比147%
ユーザーに送信するクリエイティブの制作にも力を入れている。スキンケアの4ステップを4枚の画像にまとめた例では、単純に連続投稿するのではなく、「カルーセル」を活用。ユーザーが画像を任意に左右フリックできるようにした。
このケースでは、クリック数が当月の平均比147%を記録。加えて、メッセージの肝となる4枚目の画像のクリックが多く、結果的に内容の理解促進に繋がったとみられる。
施策② 音楽配信サービスと連携しブランド価値向上
緊急事態宣言下の4月末には、オルビスブランドの価値向上を狙ったメッセージも配信した。商品プロモーションを直接の目的とせず、音楽配信サービス「Spotify」上で公開しているプレイリストを活用してもらい、外出自粛期間を少しでも心地よく過ごしてほしいという内容だ。こちらのクリック数は当月平均値の320%を達成した。
施策③ セグメント配信で新規顧客獲得コストを21%まで低減
LINEでは配信先についても柔軟な設定ができる。LINE公式アカウントを登録してくれたすべてのユーザーへの一斉配信ではなく、化粧品の特性に合わせて特定年代の顧客にのみメッセージを配信したところ、新規顧客のCPO(Cost Per Order:顧客獲得コスト)は同月の他のメッセージと比較して21%に減らすことができた。
ID連携でさらに精緻な分析も
ID連携機能も、マーケティングプラットフォームとしてのLINEを語るうえで欠かせない要素だ。ユーザーはLINEアプリの利用にあたって固有のLINEアカウントを使うこととなるが、これを企業が保有するユーザーIDと紐付けることができる。ファネルの考えに基づけば、ID連携の実行をもって「ファン化」に至った、と分析することも可能だろう。
最も代表的な使い方は、自社通販サイトのIDとの連携だ。これにより、メールアドレス軸だけではなく、LINE公式アカウントを通じたメッセージ配信の面からも、効果測定を統合的に行えるようになる。
オルビスではすでに6月末の時点で50万人の会員がID連携を実施済みだ。これらの層に対し、よりファン化を促進するような記事コンテンツを配信したところ、クリック数は一斉配信時と比べて3倍と好調で、山口氏も大きな可能性を感じているという。
このように、マーケティングでは、効果と投下コストのバランスが重要なことは言うまでもない。その点においても、LINEを用いたプロモーションは優れているようだ。
SNSのフォロワー獲得キャンペーンを6月に実施したが、「LINEセールスプロモーション」を使った際の獲得コストが、LINEの場合、他のSNSと比較して10分の1程度だった。また、そこで友だちになってくれたユーザーが新規顧客となった場合のCPOも、他のSNSと比べて30.3%に抑えられている(山口氏)
LINEは、友だち追加から最終的なファン化に達するまでのコストパフォーマンスが非常に高い。それらの数字がわかりやすく把握できることも魅力──山口氏はそう評する。
オルビスでは今後、「LINEミニアプリ」の利用も検討していくという。また、山口氏が将来的に期待しているのが、クロスターゲティングの充実だ。「LINE広告」「LINE公式アカウント」双方のデータ連携性を高め、より高度なターゲティングを行いたいとした。
ここまで聞き手を務めたLINEの見田氏は、山口氏が求める各種機能の強化にむけて今まさに開発を進めていると説明。2020年下半期、そして来年の動向にもぜひ注目してほしいとアピールし、講演を終えた。
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